海に沈んだ町 (朝日文庫)

著者 : 三崎亜記
制作 : 白石ちえこ 
  • 朝日新聞出版 (2014年2月7日発売)
3.76
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  • 24レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647344

作品紹介

【文学/日本文学小説】数千人の人々を乗せて海を漂う“団地船”、永遠に朝が訪れない町、海に沈んでしまった故郷──。私たちが生きる現実から少しだけ乖離してしまった町を舞台に、そこに住む町人を淡く繊細に描いていく、九つの物語。写真・白石ちえこ。

海に沈んだ町 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「怪異」や「災厄」と呼んでもいいような不思議な現象に見舞われ、でもそれが「日常」と化してしまった町や人々を描いた九つの短編集です。

    そんな不条理な日常を舞台にしていながら、登場する人物たちの暮らしぶりや感情が、しっかりと描かれていて、大いなる共感や一種のノスタルジーを抱きながら、物語世界にスーッと入り込まされます。

    現代の現実世界が抱えるいろいろな問題が、こっそりと投影されている気もして、一編が20〜40ページ程度の話なのに、すごく考えさせられたようにも思います。

    白石ちえこさんという写真家が撮影された、いくつかの(人物が一切写っていないモノクロ風景)写真が、挿絵の代わりに挿入されていて、それが物語の静かな不条理さを引き立たせています。

    九つの物語は、それぞれが独立してはいるものの、最後の一編を除いて、必ず次の話に繋がるキーワードが出てきます。
    それを探すために、ページを戻したりしながら読み進めるのも、楽しみの一つかも知れません。

    三崎亜記さんの文章にあてられたのか(いや、実際には僕自身の表現不足によるものですが)、このレビュー自体が、脈絡のない不思議なものになってしまいましたが、派手さはないものの、なんとも言えない余韻が残る物語としてオススメします。

  • 三崎亜記の不条理は、単なる唐突な不条理ではなくて、一種SF的な、ちょっとしたズレで現在の延長線上に起こりうる可能性のある、なんというか親近感の沸く不条理ですよね。

    この短編集も、不思議な事件に見舞われながらも、海に浮かぶ「団地船」や、保護観察される「ニュータウン」のような街は本当にあってもおかしくないし、「ペア」みたいな話になると、いわゆる「婚活」的なことや彼氏彼女がいないと人間失格みたいな強迫観念に対する皮肉とも受け取れるけれど、それだけに妙なリアリティがあるし。

    個人的に好きだったのは、ちょっと良い話系の「遊園地の幽霊」と「彼の影」。どちらの主人公の女性も、奇妙な事件に見舞われたおかげで、運命の相手(?)と出逢えているので、不条理な事態もそんなに悪くないかも、って思わせてくれます。

    ※収録作品
    「遊園地の幽霊」「海に沈んだ町」「団地船」「四時八分」「彼の影」「ペア」「橋」「巣箱」「ニュータウン」

  • 短篇集。今が舞台だけど少し寓話的な感じが丁度いい。いい感じの作品がたくさん。

  • 住まう、場所、居住、ひとがテーマの連作。と、見た。日常の地続きにある不安を描いたような作品集。

  • 普通の世界に当然の如く紛れ込んだ我々の価値観では非常識なできごとがまさに三崎節。
    掃除シリーズも大好きだけど、いろいろなアイデアを見せてくれる短編集もいいな。

  • 三崎亜記の海に沈んだ街を読みました。

    不条理な前提で物語を書いている三崎亜記の短編集でした。
    今回の短編集では、一時期はもてはやされていたものが時代の流れにつれて廃れていく情景を描いたものがいくつかあって、興味深く読みました。

    場面の設定は不条理なのに、登場する人物たちがいきいきと描かれているのが気に入りました。

  • 短編が9篇。この作者独特の視点からの異質な日常風景が描かれています。
    モノクロの風景写真が物語の合間に挟み込まれていて、その写真はいつの間にか異次元の世界に紛れ込んだ不思議な感覚を呼び起こす効果を高めています。
    身近かな所から始まり境い目も曖昧なままに日常が侵食される恐怖‥こんな馬鹿なことと思いつつも、何だかざわざわするのは、心に不安や疑惑が浮かび上がってくるからかもしれません。

  • ジャンルで言えばSFの短編集になると思います。SF…と言えば星新一のショートショートしか知らない私。でも、とても楽しめました。奇想天外なストーリーというのではないけれど、深い海の底を歩いているような静謐なスリルと、子供の時に見た光景をふと思い出す瞬間のような郷愁がありました。この小説は、ただのSFというのではなく、人が抱える悲しみが背後にあるような気がします。小川洋子さんもそうだけど、人の悲しみが根底に流れているような小説が私は好きなのです。
    ひとつひとつの物語が、微妙につながっている所もよかったです。ラストの物語では、なぜか涙が…。
    この作家の他の小説も読んでみようと思いました。

  • 僕の周囲では「ワケが分からない」の一言で片づけられがちな三崎亜記。この短編集もいい感じにワケが分かりません。「水上に浮かび、推進機能を備えた団地」の盛衰を語る「団地船」、「となり町戦争」を思い出させる謎の市役所職員が住人を不安に陥れまくる「橋」が特に好き。こちらには分からない理屈が現象として現れているのである、ということを受け入れれば違和感の無くなる三崎作品(エヴァンゲリオンを見て、使徒とは何で、なぜ攻めてくるのかを問うてもあまり意味がないのと一緒)、しかし今回、「ペア」という作品だけは全くその「分からない理屈」の現れかたが理解できず、とても怖かった。分かる三崎作品は哀しくて、分からない三崎作品は単純に怖い。それがよくわかりました。

  • 現実と少しかけ離れた世界、読んでいてとてもワクワクです。
    やっぱり短編では物足りないかな。

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