嘆きの美女 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.77
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本棚登録 : 1073
レビュー : 110
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647443

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】ほぼ引きこもり、外見だけでなく性格も「ブス」、ネットに悪口ばかり書き連ねる耶居子。あるとき美人ばかりがブログを公開している「嘆きの美女」というHPに出合い、ある出来事をきっかけに彼女たちと同居するハメに。全女性に贈る成長小説。

感想・レビュー・書評

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  • ずっと気になってた柚木麻子さんの小説。
    読みやすく、結果的に後ろ向きな感情は残らなくて、エンタメ性の高い面白い小説だった。

    仕事を辞めた後ほぼ引きこもり、外見だけでなく性格もブスな25歳の耶居子。
    ネットに悪口を書き込むのが趣味の彼女は、あるとき美人ばかりがブログを公開している「嘆きの美女」というサイトに出会い、そこを荒らしのターゲットにする。
    そしてとあるきっかけからその美女たちと出逢うことになった耶居子は、ひょんなことから彼女たちと同居することになってしまう。

    美人は得とは言うけれど、実際は得なことばかりではない。美人というだけで同性から嫌われたり、異性からストーキングされるという憂き目に遭ったりもする。
    …と美人たちは主張するけれど、美人ではない耶居子にはそれは信じがたく、絶対に美人側に問題があると思い込んできた。だけど美人たちと暮らしはじめて彼女たちの真の部分に触れたとき、美人たちの苦労が何となく理解出来るようになってくる。
    私の周りにも美人はいるけれど、美人も人それぞれ、という印象。でも学生時代まで思い返してみると、ちょっと儚げで異性に人気のある美人は大抵同性からは嫌われていたかも。個人的には、実際その美人と話してみると良い子であることが多かったから、同性の嫉妬ってやっぱり怖い。
    ただ人生全体で見るとやっぱり得することの方が多いのかも。同じ失敗をしても美人ならなぜか許されたりもする、というのもまた真理だし。

    耶居子は頭が良いから物事の色んな側面に気づきやすく、それが負の方に向かっていた時はネットで荒らしをやっていたけれど、その頭の良さが違う方向に向いた瞬間にプラスの方向に花開く。
    物事を皮肉的に見る性格の悪さは一貫して変わらないものの(笑)、そういう面があるから気づけることもたくさんある。

    この小説に出てくる美人たちはそれぞれけっこう個性的で、とくに耶居子の同級生だったユリエは自分を解放した途端ステレオタイプの美人から脱却する。その様はとても格好よく、きっと耶居子とユリエは一生毒づき合いながらもずっと友だちでいるのだろうと思った。
    美人と不美人が心から分かち合えることもある。お互いの醜さもさらけ出し合って。どろどろしているようでさっぱりした、不思議な関係性。

    本編の後の「耶居子のごはん日記」も面白かった。恋は思いがけないところに転がっている。

    どんな立場にもそれなりの悩みがあって、そうじゃない立場から見ると理解しがたいことでも、実際触れてみたら分かる苦悩ってたくさんあるのだろう、と改めて思った。

  • ブスでデブでオタクで引きこもりニートの耶居子は、ネットで気に食わないブログやサイトの管理人(※おもにリア充アピール女性)を攻撃、荒らしを趣味にして憂さを晴らしている。美女同志が美女ならではの悩みを相談しあうサイト「嘆きの美女」が目下の彼女のターゲット。彼女らのオフ会を盗撮して曝してやろうと思いつき1年数か月ぶりに電車に乗って出かけるも(その行動力があれば他のことに使いなさいよ・笑)誤解や事故が重なった結果、彼女らと同居するはめになり・・・。

    序盤の耶居子の毒吐きっぷりはなかなか痛快でした。やってることは最低なのだけれど、気持ちとしてはわからなくはないし、そうしてネット上で培った、他人の弱点を見つけて容赦なく攻撃するスキルを思いがけず現実で発揮したら不本意ながらも誰かを庇うことになったり、そしてそれを不本意と思うブレなさがいっそ憎めなくて面白い。好きなタイプが荒俣宏っていうのも渋い(笑)。

    しかし中盤の展開は一種のシンデレラストーリー。確かに造形的に圧倒的な美形というのは少数存在するけれど、世の中の女性の美醜の大半は、生まれもった容姿よりメイクやファッション、髪型、いかに自分を魅力的にみせるかというスキルを知っているか否かによるところのほうが大きいですから、きちんと痩せてメイクや服装に気を使えばそれほど醜いわけではなかった耶居子、意外にも男性ウケも悪くなく、急に美女たちよりモテ始めたりする。

    そこから後半にかけてはちょっとご都合主義展開というか、いろいろ上手くいきすぎなところもあるけれど、予想を裏切らない安心感・爽快感もこういう作品なら有効かなという範囲。ちょっと物事の運びをエピソードの説得力ではなく言葉にして強引に結果に結びつけるきらいがあるのも気になりましたが、ラノベ感覚で読む分にはいいかも。

    外見は性格や人生に確かに影響を与えますが、それがすべてではない。結局外見の美醜に関わらず本人次第、というストレートなテーマは悪くなかったです。

  • 黒沢かずこの解説万歳!
    どう読んでも、主人公耶居子に結びついてしまい、作品から一続きとして素晴らしい後味を演出してくれている。必見。

    引きこもりニートで、ネットに罵詈雑言を載せることが趣味のブス、耶居子は、美人であるが故の悩みを打ち明けるサイト「嘆きの美女」を標的にする。

    彼女たちの素顔を盗撮し、情報を晒してやろうと画策。わざわざその憎悪のためだけに、部屋から出て外に赴くパワーがあるのか!とまずはツッコミたくなる。

    続く美女たちの優雅な生活に対する、耶居子の毒舌モノローグも、ひたすら笑える。
    なのに、決してドロドロと嫌な気分が渦巻かない、不思議な健全さがある。

    それは、耶居子に有吉的真実を感じるからではないかと思う。
    他人を滅茶苦茶に罵っても、そこに一本の筋があり、その筋に共感してしまったが最後、それはただの悪意ではなくなるのが面白い。

    それから、作品中に散りばめられたキーアイテムの充実ぶりにもそそられる。
    柚木麻子は、きっと楽しみながら書いたんだろうなあ……(というか、そうであってくれたら、きっとこの人を好きになるな)と思わせられた。

    タイトルからは想像もつかない、ハチャメチャ感が内側には秘められている。
    非常に、楽しく味わえた!

  • 面白かった~。
    最初は「どうなる?ドロドロ系?」と思いましたが、全然そういう系統ではなくて、楽しかったです♪

    引きこもりでネットで荒らしをしているブスの耶居子。最初はなんだこいつは??って思うのですが、それも長くは続かず。すぐに耶居子ちゃんの虜になりました(笑)

    しかし美女たちの住む家がすごい。美女しか住んでない豪邸なんて、おとぎ話ですよね(^▽^;)

    でもその美女たちにも、それぞれ悩みやコンプレックスがあり、日々悩んでいる。そこにやって来た耶居子によって起こる変化。美人にもブスにも悩みはある。それをお互い認め始める過程がいいですね。

    ユリエの豹変ぶりにはびっくりしたけど(笑)
    ユリエと耶居子ぐらい分かり合えた仲なら楽しいでしょうね。

    そして、耶居子のごはん日記。
    ちょっとした番外編ぐらいの軽いノリで読んでいたけど
    意外と耶居子ちゃんの事が分かってかなり面白かった!

  • 「美人」か「ブス」か。
    どちらか選べると言われたら美人になりたいけれど、美人だからといって何もかもが上手くいくわけでも、ブスだからといって何もかもが上手くいかないわけでもないですよね。

    そういう意味では、「ブス」だから、と周りを妬んで引きこもって、呪詛を吐きながら生きるのも、「美人」だから、と叩かれないよう自分を殺して曖昧に微笑んで過ごすのも対極でいて似ているような気がします。要は容姿に囚われすぎなくてもいいんだと思います。容姿の持つ影響力は大きいけれど。

    本書では変わった共同生活を経て、互いの強みを吸収しながら自分にしていた「言い訳」を捨てて強くなっていく魅力的な女性が描かれていました。
    綺麗な部分だけじゃなくて醜い部分もしっかり書かれているのがまたいいですね。人間だから、時にやさぐれて八つ当たりしたくなるような時期だってありますよね。

    それから改めて思ったのは、それぞれ人にはその人に合う活躍できる領域があるということ。女子大卒業後に入社した保険会社は、同僚になじめず半年で辞めて、アルバイトも続かなかった主人公だけど、それは主人公が駄目だったというより、主人公に合わなかったということに過ぎなくて、そういう意味で自分を知って、自分が一番輝ける場所で働けるというのはとても重要なことに感じます。
    我慢強い人ほど合わない環境でもなんとか耐えて過ごしたりするけれど、本当は一歩踏み出したらもっと自分に合うところが見つけられるんじゃないか、なんて。
    なので、一歩踏み出した人たちの物語はカッコよくて魅力的。

    それから個人的には番外編の「耶居子のごはん日記」が大好き。本書に出てくる食べ物たちにはすごくわくわくさせられます。初柚木さんでしたが、おもしろかった。

  • 結果、全部うまくいきました!というお話。
    なんだかんだ、ヤイコは博識でおもしろい人だもんな〜。普通のただの引きこもりだとこういうわけにはいかないから・・・(現実)

    そしてやっぱり、柚木さんは手に職系の仕事してる女子推しなのだね。

    以下引用
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     わかる。升本雄介とやらの気持ちが手に取るように。自分と正反対のまぶしいものに惹かれてしまう。本当は素直になりたいのに、怖くて近づけない。そんな自分がもどかしくて情けなくて、対象を傷つけずにはいられなくなる——。

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    「赤ちゃんを育てる、植物を育てる、ペットを飼う。後輩や教え子を、可愛がって指導するのもいいわね。自分以外の何かを手をかけて導いてあげることによって、女としての潤いと余裕が生まれるもの。生活や言葉もいつの間にか丁寧になるし、良いこと尽くしよ」
    「まさか、そんなことくらいで」
    「あら。この家にいる美女たちを見てごらんなさいよ。私は真奈美を、ユリエちゃんはメルローを、葉月さんはお店のファンたちを、優子ちゃんはあなたを、大切にして面倒みているわけでしょう。守りたいものがある女は、皆ことごとく美しいのよ」

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     敬意を込めた眼差しの葉月と、目を合わすまいとする。変人のブス、と言い切ってくれた方がはるかにやりやすい。こうした歯の浮くような褒め言葉を聞く度に、気恥ずかしさで死にたくなる。何よりぞっとするのが、彼女たちにお世話を口にしているつもりがなく、本気でそう思っている点なのだ。ああ、やっぱり美人は苦手だ。受け入れられるのが当たり前の人生だから、素直に他人を認められる。うがった見方をするこちらが悪者みたいではないか。

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     胸を突かれた思いだった。自分をどれだけわかっているかで、女の魅力は決まるのかもしれない。美しくないというだけで、すべてをあきらめる必要はなかったのかもしれない。

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     玲子の紅潮した頬を見て、耶居子は心底驚いた。どうやら、本気で怒っているらしい。夕べ、ユリエを心配してやってきた宗佑と打ち解けた様子で話していたのが、よっぽど気に食わなかったのだろうか。それにしても——。こんなことを言ったらますます怒鳴られそうだが、プリプリ怒っている玲子は見とれるほどに愛らしい。好きな男のために、妬いている美女というのは、なんてコケティッシュな魅力に溢れているのだろう。これがブスだったら醜悪で目もあてられないことだろう。宗佑の前でもこんな表情を見せればいいのに。

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    「耶居子さんみたいに人の目なんて気にせず生き生きと楽しそうな人を見ていると、たとえようもなく嫉妬とむなしさを感じるの。私のしてきたことって、なんだったのかな、って思う。世の中の基準に自分をすり寄せて生きてきただけで、本当に好きなことをやったり、言いたいことを言ってきたのかなって。そもそも自分がどういう人間だったのかも、もう思い出せないわ」

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    さらされる側になって、初めて自分がしてきたことの残忍さに気が付く。ずっと自分は社会の被害者だと思ってたけれど、ようやくわかった。罪もない人たちに八つ当たりしてきただけではないか。自分の不満を誰かに肩代わりさせ、現実を見ないようにしてきただけではないか。努力も挑戦せず、他人を責めてばかり。一体自分は何をやっていたのだろう。

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    引用終わり

    解説が森三中の黒沢さん。素敵なあとがきだったな。「無理に弱さを隠していない人って、たとえベースがネガティブであったとしても私からは魅力的に映ります」、これはそうかもなあ。あと、震災のあとに「自分のようなネガティブな人間がお笑いをやっていいのか、と悩んで落ちた」というところ。まっすぐお笑いと向き合ってる感じが伝わってくる。

  • *ほぼ引きこもり、外見だけでなく性格も「ブス」、ネットに悪口ばかり書き連ねる耶居子。あるとき美人ばかりがブログを公開している「嘆きの美女」というHPに出会い、ある出来事をきっかけに彼女たちと同居するハメに。全女性に送る成長小説*

    漫画みたいなお話。地味で目立たない女が眼鏡をとったら実は魅力的だった系の(笑)
    そんな突込みどころは満載ですが、「顔も美人、性格も美人って、あー、うざい」のくだりには笑えるし、耶居子の毒舌も小気味いい。一種のファンタジーと思えば楽しく痛快に読めます。

  • 面白くて、30分だけ読むつもりが全部読んでしまった。美女とかブスとか関係なく、みんな必死にかっこ悪く生きてて、それがどうしようもなくかっこいい。大事なのはさらけ出すこと。
    そして最後、きゅんとした。バレンタイン、どうなったんだろう?想像してにやける。

  • 冒頭の頃、イヤ~な話かなと思いつつ読んでいたら
    早々に面白くなってきました。
    耶居子さん、ハンパなく凄いです!
    ドラマ化されたとは知りませんでした。見たかった。

  • サクサクっと読めて面白かった。
    黒沢さんの解説もよい。
    人間の暗い部分を描いてるのに、全体に
    明るくて、楽しめた。
    ただ、この小説に出てくる人物よりも
    もっともっとヒトのことを思いやることが
    出来ず、ひたすら卑屈な人間が現実には
    いて、最悪の事件を起こしてるんだよなぁ
    って思いがよぎってしまい、軽さが否めな
    かったので、☆マイナス1です。
    でも、社会派小説を目指したわけでは
    ないと思うから、これはこれで楽しめる
    小説として、すごく良いと思う。

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著者プロフィール

柚木 麻子は日本の小説家で、1981年 東京都世田谷区生まれ。

立教大学文学部フランス文学科卒業。
大学在学中から脚本家を目指してシナリオセンターに通い、ドラマのプロットライターを勤めたこともあった。
卒業後は製菓メーカーへの就職を経て塾講師や契約社員などの職のかたわら小説の賞に応募し、2008年に第88回オール讀物新人賞を受賞した。受賞作「フォーゲットミー、ノットブルー」を含む初の単行本『終点のあの子』が2010年に刊行された。

2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞 小説部門受賞。
『伊藤くんA to E』『本屋さんのダイアナ』『ナイルパーチの女子会』『BUTTER』が直木賞の候補作となる。

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