嘆きの美女 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 120
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647443

感想・レビュー・書評

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  • 結果、全部うまくいきました!というお話。
    なんだかんだ、ヤイコは博識でおもしろい人だもんな〜。普通のただの引きこもりだとこういうわけにはいかないから・・・(現実)

    そしてやっぱり、柚木さんは手に職系の仕事してる女子推しなのだね。

    以下引用
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     わかる。升本雄介とやらの気持ちが手に取るように。自分と正反対のまぶしいものに惹かれてしまう。本当は素直になりたいのに、怖くて近づけない。そんな自分がもどかしくて情けなくて、対象を傷つけずにはいられなくなる——。

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    「赤ちゃんを育てる、植物を育てる、ペットを飼う。後輩や教え子を、可愛がって指導するのもいいわね。自分以外の何かを手をかけて導いてあげることによって、女としての潤いと余裕が生まれるもの。生活や言葉もいつの間にか丁寧になるし、良いこと尽くしよ」
    「まさか、そんなことくらいで」
    「あら。この家にいる美女たちを見てごらんなさいよ。私は真奈美を、ユリエちゃんはメルローを、葉月さんはお店のファンたちを、優子ちゃんはあなたを、大切にして面倒みているわけでしょう。守りたいものがある女は、皆ことごとく美しいのよ」

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     敬意を込めた眼差しの葉月と、目を合わすまいとする。変人のブス、と言い切ってくれた方がはるかにやりやすい。こうした歯の浮くような褒め言葉を聞く度に、気恥ずかしさで死にたくなる。何よりぞっとするのが、彼女たちにお世話を口にしているつもりがなく、本気でそう思っている点なのだ。ああ、やっぱり美人は苦手だ。受け入れられるのが当たり前の人生だから、素直に他人を認められる。うがった見方をするこちらが悪者みたいではないか。

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     胸を突かれた思いだった。自分をどれだけわかっているかで、女の魅力は決まるのかもしれない。美しくないというだけで、すべてをあきらめる必要はなかったのかもしれない。

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     玲子の紅潮した頬を見て、耶居子は心底驚いた。どうやら、本気で怒っているらしい。夕べ、ユリエを心配してやってきた宗佑と打ち解けた様子で話していたのが、よっぽど気に食わなかったのだろうか。それにしても——。こんなことを言ったらますます怒鳴られそうだが、プリプリ怒っている玲子は見とれるほどに愛らしい。好きな男のために、妬いている美女というのは、なんてコケティッシュな魅力に溢れているのだろう。これがブスだったら醜悪で目もあてられないことだろう。宗佑の前でもこんな表情を見せればいいのに。

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    「耶居子さんみたいに人の目なんて気にせず生き生きと楽しそうな人を見ていると、たとえようもなく嫉妬とむなしさを感じるの。私のしてきたことって、なんだったのかな、って思う。世の中の基準に自分をすり寄せて生きてきただけで、本当に好きなことをやったり、言いたいことを言ってきたのかなって。そもそも自分がどういう人間だったのかも、もう思い出せないわ」

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    さらされる側になって、初めて自分がしてきたことの残忍さに気が付く。ずっと自分は社会の被害者だと思ってたけれど、ようやくわかった。罪もない人たちに八つ当たりしてきただけではないか。自分の不満を誰かに肩代わりさせ、現実を見ないようにしてきただけではないか。努力も挑戦せず、他人を責めてばかり。一体自分は何をやっていたのだろう。

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    引用終わり

    解説が森三中の黒沢さん。素敵なあとがきだったな。「無理に弱さを隠していない人って、たとえベースがネガティブであったとしても私からは魅力的に映ります」、これはそうかもなあ。あと、震災のあとに「自分のようなネガティブな人間がお笑いをやっていいのか、と悩んで落ちた」というところ。まっすぐお笑いと向き合ってる感じが伝わってくる。


  • 出だしのネットで悪口を書きまくって引きこもっていた主人公が美女たちに拾われた瞬間から最後までびっくりするくらいの夢物語でした。
    あまりにも堂々とシンデレラストーリーなので逆にすごいと思いました。笑
    でもいくら核心をついているとはいえネットに悪口を書いてたのをあんなにあっさり許してもらえるんかいな…。

  • 16/08/18
    ・「ひがみっぽくて、強情。自分からは動かないくせに文句ばかり。まず、内面がブスよ」(P31 玲子→耶居子へ)

    ・「奥沢さんの写真は冷たいんですよね。最初はシャープで都会的な印象で圧倒させる。見るものを服従させる。でも、すぐに底の浅さと弱さが露呈して飽きられるんです。あなた本人そのものじゃないですか。身近な人にいつの間にか去られたり、裏切られたりしたこと、これまで何度もあるんじゃないですか?」(P72 耶居子→エイジへ)

著者プロフィール

柚木麻子(ゆづき あさこ)
1981年、東京都生まれの小説家。立教大学文学部フランス文学科卒業。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」で第88回オール讀物新人賞を受賞し、2010念二同作を含む初の単行本『終点のあの子』を刊行。2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞小説部門受賞。2015年『ナイルパーチの女子会』で第28回山本周五郎賞受賞、直木賞候補に。2017年『BUTTER』で直木賞候補。2019年、『マジカルグランマ』が第161回直木賞候補となる。

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