暗転 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 254
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647825

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】朝の通勤ラッシュ時、満員の乗客を乗せた電車が脱線した。事故の原因は何か? 被害者の一人となった雑誌編集者、事故の原因究明に走る警察官、婚約者を亡くした遺族、そして、事故原因を隠蔽しようとする会社側。4つの視点から事故を見つめるとき、本当の原因が明らかになる──。

感想・レビュー・書評

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  • 新装版が発売されることで存在を知り、図書館で借りて来ました。
    ほぼ福知山線の脱線事故が下敷きになっているのだろうと思わせる本作。事故の原因や責任の所在がテーマでは無く、人間とは?というある意味壮大な、それでいて基本的なコトがテーマだったのかと感じました。良心に従って生きる、当たり前だけれど実は難しいことを描いている。
    冒頭からの第一幕の主役の記者が苦手なタイプで、この人がずっと主役だったら読み続けられなかったと思う。章立てごとに主役が変わるスタイルで良かった。

  • 福知山線の脱線事故を彷仏とさせる大事故が発生。列車に乗り合わせて怪我を負った雑誌記者、事故により婚約者をなくした青年男性、捜査にあたる警官、鉄道会社の広報部社員と、4人の視点から描かれた物語。鉄道会社が発表した原因は嘘か真か。終わりは結構あっさり気味。

  • JR尼崎の脱線事故を想起させるストーリー。キーパーソンとなる登場人物それぞれの視点から、脱線事故を捉えているが、視点の移り変わりが非常にスムーズ。どの人物に肩入れすることもなく、登場人物ひとりひとりの視点から見た事故を丁寧に描き上げてある。
    被害者や遺族の心理描写はリアリティがある。かなり深く研究されたのではないかと思う。
    情景を緻密に描写されているため、活字を読んでいるにもかかわらず、その場面をありありと想起できる。映画を一本観たような気分となれる作品でした。

  • 脱線事故により多くの人がなくなった。
    事件の真相はどこにある??

    実際、過去に国内でも脱線事故で多くの死亡者や被害者を出した。
    「福知山」運転士1名、乗客106名死亡。負傷者562名。(2005)
    これより負傷者や死亡者が少ない事故も沢山ある。

    なぜ事故が起こったのか。それを伝えて、二度と同じことがないようにすることが、会社の仕事であり、報道するメディアの役割であると思う。
    嘘の報道では、結局嘘のレールに乗って、嘘の改善方法しか生み出されない。
    作られた事実ではなく、真実を伝えて、報道してもらいたい。

    真実を伝えるという部分は、事件事故の大小に関わらない。小さくても巻き込まれて、不幸な目をしている人が世の中には沢山いる。
    それを理解し、伝えられていることは報道のうち何%なんだろうか。
    多様性が求められる昨今、さらに重要なことではないか?

    この作品でも、会社を助けるのか、人を助けるのか。
    大きな分岐点がある。
    勿論、苦しい思いをするとは思うが、損得考えずに正しいことを行って欲しいと思う。
    そして、私も恥のないように生きたい。

  • 12年前に起きた尼崎の脱線転覆事故を思い起こさせる。事故当時企業側の刑事責任がなしって、今は法律変わったのか??

  • 物語を読み始めてすぐに思い出されたのは2005年4月25日に起きた「JR福知山線脱線事故」だった。
    ブレーキをかけるタイミングの遅れからカーブに約時速116kmで進入し、1両目が脱線。
    続いて後続車両も脱線した。
    死者は107名にのぼり、負傷者は562名を出す大惨事で強烈な映像とともに記憶に刻まれている。
    事故当初のJR西日本の発表では「踏切内での乗用車との衝突事故」となっていた。
    2時間後に警察発表によりこの情報は否定される。
    さらに事故から約6時間後の会見では「置石による事故」であることをJR西日本は示唆。
    直後に国土交通省が調査が済んでいない段階での原因断定を否定した発言を受けて、JR西日本もまた発言を撤回する。

    事故の当事者となった辰巳は、当初は事故のことを思い出すことも出来ないほど精神的にダメージを受ける。
    しかし、自分の下敷きになっていた女性が死亡したことを知り、またその婚約者と話したことで徐々にジャーナリストとしてではなく人間として「真実を追究する」ことに心は向かっていく。
    東広鉄道は会社を守るために、死亡した運転手にすべての責任を押しつけようとする。
    真実を知らされないまま、結果的に隠蔽工作をやらされる社員たち。
    一部の人間たちだけが決めた卑怯で姑息な隠蔽工作は、被害者たちへの裏切りでもあると思う。
    原因がしっかりと解明されなければ再び同じような事故が起きる可能性が残ってしまう。
    東広鉄道は何故気づかなかったのだろう。
    鉄道は人間という物を運んでいるのではない。
    人の命を乗せているのだと自ら気づいてほしかった。
    終盤の物語が悪いわけではない。
    ただ中盤までがよかっただけに少し惜しい気もする。
    「逃げるより、正しいことをしなさい」
    重いテーマの物語の最後にこの言葉が聞けてホッとした。
    何か救われたような気持ちで読み終わることができた。

  • 最初から引き込まれ、会社側とどんな戦いが待っているのかと期待しながらよみ進めるも、あまりにもありえない会社の対応にガッカリ。上場企業でこんなコンプライアンスの会社なんて実際に存在しないでしょう・・
    個人相手の警察小説から企業分野へ挑戦はかいますが、堂場さんにしては勉強不足。
    中盤までの展開や読ませる筆力は秀逸なので、残念です。

  • 列車事故に様々な立場で関わった人たちを描いた作品。
    一瞬、本当にあった事故なのかと錯覚を起こす。
    実際に事故にあった人、事故で身内、友人、恋人を亡くした人、事故に関わる警察、事故を起こした側の関係者。
    それぞれが重たい傷を抱えて生きていくことになるのか。

  • 事故の悲惨さは伝わるが、終わり方がいまひとつだったな

  • さまざまな人の観点から列車脱線事故について語られていく。
    そういう見方をすると登場人物は限定的ではあるが、それぞれの人の思いがはっきりとわかり共感できるところがある。
    物語の方は続編があるのかと思わせるほど、最後の最後まで事故の真相には迫らず、あるきっかけで一瞬で終わってしまう。
    もう少し突っ込みようがあったのではともったいない気がしました。

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著者プロフィール

堂場瞬一(どうば しゅんいち)
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」などのシリーズ作品のほか、『八月からの手紙』『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『砂の家』『ネタ元』『動乱の刑事』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『チーム3』『空の声』『ダブル・トライ』など多数。

「2023年 『ラットトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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