シフォン・リボン・シフォン (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 236
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647887

作品紹介・あらすじ

乳がんの手術後、故郷に戻ってランジェリーショップをひらいたオーナーのかなえ。彼女のもとを訪れる、それぞれの屈託を抱えた客たちは、レースやリボンで飾られた美しい下着に、やさしく心をほぐされていく。地方都市に生きる人々の希望を描く小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 人を大切に、とは日々思うことだけど、自分を大切に、とはそんなにいつもは思わない。
    この小説を読んで、自分を大切にしなきゃ、と思えた。

    乳がんの手術後、東京から故郷の地方都市に戻ってランジェリーショップを開いたオーナーのかなえ。地方にはなじまない輸入ものの下着が並ぶショップは、ネット販売があるから成り立つと言えるほど、訪れる客は少なかった。
    しかしその数少ない客は皆それぞれの屈託を抱えていて、レースやリボンで飾られた美しい下着に、優しく心をほぐされていく。

    綺麗な下着をつけていると、自分を大切に扱っているような気持ちになる。
    この小説の登場人物の1人が語った言葉について、しばし考えた。私も綺麗な下着は好きだけど、そんな風に考えたことがあっただろうか、と。
    女性の美しい下着は、何も誰かに見せるためだけにあるわけじゃない。つけているだけで気分が上がったり、自意識を満たすためにも存在するものだ。

    顔は綺麗じゃないのに胸だけが大きすぎるというちぐはぐさをコンプレックスに思う女性や、男として産まれながらその性に違和感を抱える男性などが、かなえの開いたランジェリーショップの客として登場する。
    とくに濃密な接客をするわけではないけれど、彼らはその店の存在に癒されていく。抱えてきたものを、解き放ってもいいのだ、という安心感に。

    当のかなえは30代の頃に乳がんで片方の乳房を失っている。再建手術はしたものの完全ではなく、この先恋愛をすることも半ば諦めている。
    そんなかなえだからこそ、乳房を失ってしまった人用の下着に着目していち早くそれを取り入れたり、経験者だから分かることを人々に分け与えるような働きをする。

    個人的なことで言えば私の母も乳がんで片方を部分摘出している。母は既に60代だったから「別に今さら胸なんて無くてもいい」くらいの潔さだったけれど、若ければ若いほどこだわりや執着はあるだろうし、そこまですぱっと割り切れるものではない。
    他人はそこまで気にしていないと分かっていても、自分は気になるという事実は変えられない。
    そんな時にかなえのような人に出逢えたら、きっと心強くなれる。

    女のこだわり、女の幸せ、女だから分かる執着。複雑さと温かさが詰まった物語。
    自分をもっと大切にしよう。前向きにそんなことを思った。

  • タイトルがなんだか甘い優しい物語を予想させるけれど
    近藤史恵さんの小説だもの、そうはいかない。
    胸の奥が痛くなるような現実を抱えながら
    自分では気がつかない闇に蝕まれていたりもしながらも
    いつもと違う、美しい下着で気持ちが癒され
    一歩、前に進むことで、思ってもいない前が開ける
    つらい現実も、明るい未来も、ドンとこいな気分になれる
    すてきな小説でした

  • タイトルからふわっとしたお話をイメージしていたらきれいに裏切られました。さすが近藤史恵さんといったところでしょうか。といっても、シフォンやリボンがお話を包んでいるのは間違いないです。親と子。とくに母親と娘の関係ってなかなかに複雑ですね。読みながら自分の過去を振り返って、胸が痛くなったり、ため息が出たり。愛もあり憎しみもあり、お互いに甘えもあり。それでも親子。ばっさり!とはいかないものですね。読み応えのある連作短編集でした。

  • フリフリヒラヒラを連想させるタイトルだったけど、読み始めてみたら思ったより現実的。乳ガンの話も知らないことばかりで色んな発見があったけど、どちらかというと、周りに(無意識に)虐げられて苦しんでいる人たちの話だった。

    最初の話で、娘をコントロールするために、お前の胸は大きすぎてみっともない。だらしない。慎みがない。と責める親がいた。
    でも字面にするとわかるけど、それって性格に関係なくないか?
    因果関係が全くないこじつけだ…。

    赤い下着を着たくらいで、そんないやらしいもの!と目くじら立てるほどかなぁ。
    確かに下着を外に堂々と干してたら怒るかもしれないけど。
    解説に、素敵な下着を身に付けると、自分が大事にされている気がする。とあって、確かに。と思う。
    下着→性的アピール→おおっぴらは慎みがない
    ではなく
    下着→魅力のひとつ→恥じらいが大事
    と考えたい。

    男友達が、ショーツにリボンを着けることを考えた人は神だ!と熱く語っていたことがあったが、
    確かに、人目に触れさせるでもなく、実用性皆無なのに、可愛い素敵なデザインのもので、かつフィットするとスタイルも良くなって、本当に気分が上がる。

    高ければ良い訳じゃないけど、自分のためにかけるお金の使いどころは自分が魅力的になれるために使うべきだと思った。

  • オーナーさんの芯の強さと気遣いの柔らかさがすてきです。

  • 衰退する地方から若者は都会を目指し、残る家族やコミュニティには閉塞感が漂う。親の呪縛に生きづらさを感じる子世代の心の機微が手に取るよう。子世代は次第に、自分を大切にする意義を見つけ、光が見える。よかった。辛抱、忍耐、自己犠牲等を美徳としてきたこの国は、自分やその主張よりも周囲からの期待に応えることや、その評価に重きを置く。盲目的な親への服従は、結局子ども自身が摩耗するだけ。自分を大切にすることは、わがままでも何でもない。自分を大切にし、誰かも大事にすると、結局自分も大切にされる。

  • 2018/08/05

  • 何の気なしに読み始めたのだけど
    とても良かった。

    じんわり。じんわり。

    自分を大切にするためだけの下着を買いに行きたくなる。

    親子と時代の流れ。

    お上手でした。

  • 話が心に響きすぎる程強烈で、私には合いませんでした。痛くてその先にいけない、そんな本です。
    ただ、繋がりのある短編集みたいなものなので、他の話は読むことが出来ました。

  • 20170725 読みやすくて、心がほっとする話だった。きれいなものを見るだけで、心が前向きになる。ただ、きれいなものだけを見てはいけない。主人公が魅力的だった。

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著者プロフィール

近藤 史恵(こんどう ふみえ)
1969年大阪生まれの推理作家、小説家。
大阪芸術大学文芸学科卒業後、1993年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。
2008年、『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞受賞、2008年度本屋大賞部門惜しくも2位、第61回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門候補作になる。これがシリーズ化もされた代表作となった。ほかの代表作に、ドラマ化された『天使はモップを持って』シリーズ。
2006年から、母校の大阪芸術大学文芸学科客員准教授に就任している。

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