ふくわらい (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.63
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本棚登録 : 1569
レビュー : 179
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647900

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】書籍編集者の鳴木戸定。彼女は幼い頃、紀行作家の父と行った旅先で特異な体験をする。不器用に生きる定はある日、自分を取り巻く世界の素晴らしさに気づき、溢れ出す熱い思いを止めることができなかった。第1回河合隼雄物語賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 変わり者、と言ってしまえばそれまでの編集者、定。

    ふくわらいをキッカケに、人の顔に飽くなき探求心を持ち、だが一方で人との関わり方を知らずにいる主人公である。
    私には分からない世界だけど、人の顔のパーツに執着する人の話を聞いたことがある。なので、意外と彼女の共感者は多いのではないかと思う。

    彼女が見つめる顔は、彼女自身が空想のなかで千変万化させ、操る術を持っている。
    つまり一方的なコミュニケーションしか成り立っていないのだと思う。だからこそ物語のはじめ、定の会話と地の文には隔たりがある。
    会話の内容と、彼女の視点が一致しない。

    けれど、定を魅了する顔の持ち主であるプロレスラーや、定に一目惚れしてしまう盲目の男性、更に一般的美女である同僚との関わりによって、定は変化していくのだった。

    特に、定が視覚に拘りを持つことと、盲目の男性が彼女に恋をすることの裏腹さは面白い。
    また、身体性と言葉を作品の中で、うまくテーマにしている。タトゥー、人肉、嘔吐、病。
    ラストになると、会話と地の文は一致を見せはじめる。物語ってこういうものだな、と、楽しませてもらった。

  • H30.6.12 読了。

    ・定、テー、廃尊、しずくなど、みんな好きだ。定が廃尊のプロレスの試合を始めてみたシーンや廃尊の自宅でカルピスを飲みながら、お互いの心の内を話すシーンもとても良かった。

    ・「定にとって、人の顔の判断基準は、美醜ではない。『面白い』かそうでないか、それだけだ。」
    ・人間は、におうのだ。どうしようもなく。」
    ・「他の誰かに変わりたいんじゃない。ただ、この私、私そのものを、愛してくれる人がいて、そして、私も愛せたら、そんな素敵なことはない、って思うんです。」

  • 「サラバ!」に続き西加奈子作品を読む。

    印象に残ったのは
    「私にとって、今の定ちゃんはすべてだよ、そんで、それは先っちょだよ!」
    という小暮しずくの言葉。
    武智氏の言葉でもあり定の言葉でもあるけれど小暮しずくから発せられた場面が一番ずしんときた。
    自分と他人との関係性というものに思いを巡らせたときに、この「先っちょ=全て」だという事実に思い当たりとても寂しく感じた、ことが昔あった。それからもう少し歳を重ねて、「先っちょ=全て」って楽ちんじゃーん、と開き直りのように思った、こともあった。
    そして更にもう少し歳を重ねた今、この文章に出会って、泣けてきたと言いながら定をテーブル越しに抱き締める小暮しずくのような友達を大切にしたいと思う。

  • 本屋大賞、2013年5位。これって文学ですよね。しかも純文学。ファンタジーでもあるのかな。なんだか良くわからんのだけど、「読む進めずにおられない強さ」がありますね。はい。小説家を目指している訳ではないのですが、小説ってこう書くんだってのがすごく勉強になった気がします。

  • 打ちのめされました。
    登場するのは、いずれも超の付くほど個性的な人物ばかりですが、実に魅力的です。
    何故でしょうか。
    それは「正直さ」にあるのだと思いました。
    登場人物のだれもが、思うに任せぬ現実に直面しながらも、正直に生きている。
    それが、読んでいて最後まで頼もしく、また本作の最大の魅力だろうと感じました。
    主人公の「鳴木戸定」は、かなりヘンな人です。
    西さんの友人でもある村田沙耶香さんの芥川賞受賞作「コンビニ人間」に登場する「私(古倉恵子)」もヘンでしたが、定の方が輪をかけてヘン。
    他の登場人物もヘンな人ばかりで、必然、会話も実に滑稽で愉快なものになります。
    たとえば、編集者の定と、定の担当作家の之賀さいこと会話。
    之賀は執筆している小説のラストシーンで、Kという人物が頼朝の生首をリフティングしている様子を描こうとしています(何だ、それ笑)。
    「そうなんです。相当重いんですよ。もっとも、生首だけを純粋に手に持ったことはありませんがね。鳴木戸さんはありますか?」
    「私も、生首だけを手に持ったことは、ありません。」
    「そうですか。」
    「申し訳ありません。生首だけを手に持った経験がなくて。」
    「いいえ。どうか気にしないでください。」
    全体、こんな会話があるでしょうか。
    西加奈子は、実に油断のならない作家だということが、これだけでも分かります。
    個人的には「守口廃尊」という登場人物に括目しました。
    鬱のプロレスラーという人物ですが、妙なリアリティーがあったのですね。
    本を閉じた今でも、「鳴木戸さんかよう」「言えねぇよう」という独特の語尾が耳について離れません。
    そして、終盤の定と守口の会話のシーン。
    定の吐しゃ物と守口の腕から流れる血が相まって壮絶な現場と成り果てていますが、そこで交わされる二人の会話に私は釘付けになりました。
    ホント、胸が潰れるかと思いましたよ。
    あと、そうだ、言葉が連なって文章になる、その美しさに定や守口が魅了されていることに、文章を書くことを生業と趣味にしている自分も感銘を受けました。
    「言葉はツールだ」と主張する向きもありますが、単にツールなのではありません。
    日常的にまとまった文章を書く人なら、ひとつの言葉が思念を呼び起こし、次の言葉を連れて来るという感覚を味わったことがあると思います。
    その時、言葉は単なるツールではなく、生命そのもののように感じられます。
    「言語」は本作の裏テーマではないかと、勝手に解釈した次第です。
    もっとも、登場人物の派手さと比べ、物語自体はどちらかと言うと地味な部類です。
    ただ、ぐいぐいと読ませます。
    それは恐らく、西加奈子が全力投球でこの物語を書いているからです。
    メーターは最初から最後まで振り切れています。
    プロの作家ですから技量はありますが、技量に頼って斜に構えるようなところは一切なく、これでもか、これでもかと、自分の信じた球を全力で放り込んできます。
    それが実に清々しい。
    個人的なことですが、実は西加奈子を読むのは本作が初めて。
    もちろん、かなり前から存じ上げていました。
    ただ、読む前から「西加奈子は自分にとって特別な作家になる」という予感があり、それがどうも重くて手が出なかったのです。
    で、「そろそろ読むべきだ」と判断し、本作を手に取った次第。
    予感は的中しました。

  • 乗りに乗ってる西加奈子先生。読んでて、書きたいものを楽しく書いているような(本人はそうじゃないかもしれないけど)、とにかく読んでて、書き手の楽しさが伝わってくる文章。

    ものに名前はあまり関係なくて、存在と配置によって成り立つ通常の物差しでは測れない、独立した世界は浮いているのではなく、ただその場所に馴染まないだけ。

    それが有り、そこに存在することで初めてひとつの形となす、それをあるがままに受け入れること、受け入れる環境がある素晴らしさ。パーツ、人類、生命としてだけでなく、その器の深さこそ、今自分に問いかけるべき問題なのではないだろうか。ただただ感服。

  • 定という人と、定の周りの人々が
    どんどん愛おしくなっていくうちに
    『ふくわらい』の世界から抜けられなくなり
    読み終わって、なんともいえない感動
    素敵な物語、希望や優しさがムクムク
    余韻たっぷり、読んでよかった

  • 主人公は、紀行作家の父親の趣味でマルキ・ド・サドのパロディのような名前をつけられた上、同じく父の影響で幼い頃から一緒に未開の地や秘境を旅したりという特殊な生い立ちを持つ鳴木戸定(サダという名はサドよりむしろ阿部定を連想させられるけど)。その生い立ちゆえ結構ワイルドな体験(人肉食やら刺青やら)を沢山しているにも関わらず、乳母がいるようなお嬢様育ちでもあり、どこか常識や感情が欠如している不思議なキャラクター。

    幼いころ唯一夢中になった遊びが「ふくわらい」だったせいで、いまだに他人の顔のパーツを脳内で移動させて遊んだりしてしまう定は、おそらく対人関係において相手の内面・人格をスルーし、紙で出来た「ふくわらい」のパーツとしてしか人間をとらえていない。だからこそ淡々と心を動かされることなく仕事をこなし、それを寂しいと感じることもなく生きてきた、そんな定がプロレスラー作家の守口廃尊と出会って、少しづつ変化し始める。

    定自身も変わった子ですが、編集者として働く定が担当する作家が廃尊含めことごとく奇人変人だけど面白い。引きこもり作家の「之賀さいこ」とか妙に愛着感じてしまった(笑)でもやっぱり廃尊の存在感が圧巻だったなあ。私は次郎より廃尊のほうが好きだった。イタリア人ハーフの武智次郎はイケメンなのだろうけど「先っちょだけ」とか結構うざかったので(笑)、しずくちゃんの素早いツッコミが気持ち良かったです。

    この小暮しずくちゃんと、定の友情が結構個人的には泣きツボでした。友達いなかった定に初めて出来た女友達。乳母のテーに会わせたときにどっちも号泣しちゃうくだりとかとても好き。

    ラストシーンだけはちょっといただけないと思ってしまったのだけれど(捕まるって!笑)、きちんとカタルシスのある素敵なお話でした。表紙絵は、定の刺青になってるんですね、読み終わってから気づいた。

  • *図書館の所蔵状況はこちらをコピペしてね
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50110909

  • 初、西加奈子。にしては、毒強めのものを選んでしまったかも。色々強烈。次はもっと読みやすそうなのを読んでみよう。

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