ふくわらい (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.62
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本棚登録 : 1898
レビュー : 211
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647900

感想・レビュー・書評

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  • 変わり者、と言ってしまえばそれまでの編集者、定。

    ふくわらいをキッカケに、人の顔に飽くなき探求心を持ち、だが一方で人との関わり方を知らずにいる主人公である。
    私には分からない世界だけど、人の顔のパーツに執着する人の話を聞いたことがある。なので、意外と彼女の共感者は多いのではないかと思う。

    彼女が見つめる顔は、彼女自身が空想のなかで千変万化させ、操る術を持っている。
    つまり一方的なコミュニケーションしか成り立っていないのだと思う。だからこそ物語のはじめ、定の会話と地の文には隔たりがある。
    会話の内容と、彼女の視点が一致しない。

    けれど、定を魅了する顔の持ち主であるプロレスラーや、定に一目惚れしてしまう盲目の男性、更に一般的美女である同僚との関わりによって、定は変化していくのだった。

    特に、定が視覚に拘りを持つことと、盲目の男性が彼女に恋をすることの裏腹さは面白い。
    また、身体性と言葉を作品の中で、うまくテーマにしている。タトゥー、人肉、嘔吐、病。
    ラストになると、会話と地の文は一致を見せはじめる。物語ってこういうものだな、と、楽しませてもらった。

  • H30.6.12 読了。

    ・定、テー、廃尊、しずくなど、みんな好きだ。定が廃尊のプロレスの試合を始めてみたシーンや廃尊の自宅でカルピスを飲みながら、お互いの心の内を話すシーンもとても良かった。

    ・「定にとって、人の顔の判断基準は、美醜ではない。『面白い』かそうでないか、それだけだ。」
    ・人間は、におうのだ。どうしようもなく。」
    ・「他の誰かに変わりたいんじゃない。ただ、この私、私そのものを、愛してくれる人がいて、そして、私も愛せたら、そんな素敵なことはない、って思うんです。」

  • 強烈。その一言に尽きる。

  • 登場人物が揃って濃いキャラクターですが、
    「常識にとらわれずに生きる難しさ」を難しさとも感じない
    定の真っ直ぐさが読み手を惹きつけます。

    主人公の定も満身創痍のプロレスラー守口廃尊もそうですが、
    「自分に誠実に生きていれば、誰かが認めてくれる」
    というのが、大きなテーマのように感じました。

  • やっぱり西加奈子はすごいな!!
    この人にしか表現出来ない。感情の臨場感。
    大人になった私たちの中にも僅かに残ってる、ある種の純粋さを直接刺激してくる感じ。
    泣ける!と謳ってる本よりよっぽど泣ける。なぜか。
    すっごく変わってるけど、何故か共感できちゃう。
    だって心の何処かにきっとある、もしくはあった感情だから。理屈や常識や経験で押さえて忘れてきただけで。
    鬱の人も、ガンも、人肉食べるシーンもあるんだけど、ラストは爽やかな開放感。
    読後感は人間として生まれてきて、今生きてる幸せを感じた。
    ちょっと大げさか笑
    でも、そんな感じ。
    でも読書初心者には勧められないな…

  • 物語は面白いです。
    主人公の定が編集者としての仕事を通じて関わっていく人とのやり取りの中から少しずつ変わっていく様がとても面白い。友達もいない、恋愛もした事がない、そんな定の様な人って珍しくない。この物語はそんな人に何かヒントを授けてくれるのではないでしょうか?
    人の顔を福笑いのように自由に動かす事ができる定の変な特技は、実は母親を早くに亡くしたせいで身についたものなのかもしれない。きっと誰もが変な顔だと思うような人でも定はそう思わない。顔で人を判断したりしないのだ。誰にでも誠実に接している。目の見えない次郎が定を美人と言った理由はそこにあるのではないか?
    泣いた事がなかった定がプロレスの試合で泣くところは感動した。

  • 乗りに乗ってる西加奈子先生。読んでて、書きたいものを楽しく書いているような(本人はそうじゃないかもしれないけど)、とにかく読んでて、書き手の楽しさが伝わってくる文章。

    ものに名前はあまり関係なくて、存在と配置によって成り立つ通常の物差しでは測れない、独立した世界は浮いているのではなく、ただその場所に馴染まないだけ。

    それが有り、そこに存在することで初めてひとつの形となす、それをあるがままに受け入れること、受け入れる環境がある素晴らしさ。パーツ、人類、生命としてだけでなく、その器の深さこそ、今自分に問いかけるべき問題なのではないだろうか。ただただ感服。

  • 主人公は、紀行作家の父親の趣味でマルキ・ド・サドのパロディのような名前をつけられた上、同じく父の影響で幼い頃から一緒に未開の地や秘境を旅したりという特殊な生い立ちを持つ鳴木戸定(サダという名はサドよりむしろ阿部定を連想させられるけど)。その生い立ちゆえ結構ワイルドな体験(人肉食やら刺青やら)を沢山しているにも関わらず、乳母がいるようなお嬢様育ちでもあり、どこか常識や感情が欠如している不思議なキャラクター。

    幼いころ唯一夢中になった遊びが「ふくわらい」だったせいで、いまだに他人の顔のパーツを脳内で移動させて遊んだりしてしまう定は、おそらく対人関係において相手の内面・人格をスルーし、紙で出来た「ふくわらい」のパーツとしてしか人間をとらえていない。だからこそ淡々と心を動かされることなく仕事をこなし、それを寂しいと感じることもなく生きてきた、そんな定がプロレスラー作家の守口廃尊と出会って、少しづつ変化し始める。

    定自身も変わった子ですが、編集者として働く定が担当する作家が廃尊含めことごとく奇人変人だけど面白い。引きこもり作家の「之賀さいこ」とか妙に愛着感じてしまった(笑)でもやっぱり廃尊の存在感が圧巻だったなあ。私は次郎より廃尊のほうが好きだった。イタリア人ハーフの武智次郎はイケメンなのだろうけど「先っちょだけ」とか結構うざかったので(笑)、しずくちゃんの素早いツッコミが気持ち良かったです。

    この小暮しずくちゃんと、定の友情が結構個人的には泣きツボでした。友達いなかった定に初めて出来た女友達。乳母のテーに会わせたときにどっちも号泣しちゃうくだりとかとても好き。

    ラストシーンだけはちょっといただけないと思ってしまったのだけれど(捕まるって!笑)、きちんとカタルシスのある素敵なお話でした。表紙絵は、定の刺青になってるんですね、読み終わってから気づいた。

  • 人の表情は特別

  • 西加奈子節が効いてた。
    ただラストシーンは意味がわからなかった

  • レスラーが不器用ながらも懸命に生きている姿に涙しました。この物語のレスラーが好きだ。
    西さんの本はとても深い。物語であるが物語以上に深く心で考えされられ、これが本当の物語だと思わせられるよう。心に沁み入る本である

  • 独特な世界観。読んでる時、変な夢を見ている時の感覚と似ている。
    初心者の私にはブクログを読んで、いろんな人の意見を見てから始めて「視野が広がる、おもしろい本を読んだかも」と思えた。

  • 顔や文章のパーツの組合わさり方に感動を覚える女性、丸木戸定が、愛とか諸々の他者とのつながりにも感動を覚えていく話。

    最初から最後まで読者の五感の想像力を攻めてくる小説(特に嗅覚と味覚)。
    読後感はある程度良いけど、読んでる途中で気持ち悪くなる描写が多々あり。挑戦的な小説だなー。

    三人で会話する愉快なシーンが二回ほどあった。

  • 始めはグロテスクな表現が吐き気すると思って読み進めた。でも、作者の思惑通り?か、段々とグロテスクって思うのはそもそも何で?と思うようになり、主人公も、その周りの人たちも皆好きになっていた。

    始めの方に描かれていた、福笑いを主人公が好きになった場面が好き。所詮は、子供の遊びと思うものも、実はひとつひとつ丹念に見ていくと、とても奥深いものなのかもしれないと思わされた。

    今後西さんの他の本も読みたいと思った。メディアで見たご本人のさらっとしたイメージとはちょっと違ったけど、やはり面白い。グロく無いのもあるのかな、、、あるといいな。

  • ことばに真摯に。
    からだが、ことばが、自分が、そのひとたるということ。
    なんだか泣きたくなった。

    解説もよかった。愛を感じた。

  • 西加奈子作品はサラバに次ぐ二作目。ビビッドな描写や、強く揺さぶってくる激しい感じは似ているけど作者の暖かさを感じる。

  • 淡々として奇妙なのに、愛のあふれたものがたり。読後感もよい。

  • 幼いころに出会った「ふくわらい」
    好きすぎて人の顔のパーツを心の中で自在に動かす癖がついてしまった主人公「定」

    心の機微がわからない、感情を理解できない
    かなりの変わり者。

    この人の作品は「ちょっと変わってるけど純粋」な登場人物が多いけど
    これは純粋というより疾患では・・と最初は拒絶感の方が先にたった。

    なのに読んでるうちにどんどん魅力的に思えてしまう不思議。

  • 言葉がうつくしい。定も人との出会いで変わっていった。素敵な女性になった。

  • 切ない。

著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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