ある男 (朝日文庫)

著者 : 木内昇
  • 朝日新聞出版 (2015年10月7日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022647931

作品紹介

明治政府が敷いた中央集権体制に昂然と抗った男たち。"意識"に目覚め立ち上がる者がいる一方、旧弊な立場に縋る者もいた。歴史に飲み込まれていった名もなき数多の痛切な叫びを描く、時代短編集。

ある男 (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 御一新、ゆっくりと激しく日本が変わった時。先を見る者、取り残される者、呆然とやり過ごす者。そんな中の「ある男」。男に名前はない。でも考え、憤り、体を燃やし確かに生きていた。偽札作りを持ちかけられ、自分の腕を試すために試行錯誤する男。この男が燃やしたもの、それは男の矜持だ。男は名誉のため、偽札作りに命をかけのめり込む。もう誰も求めていないのに。そこから、ひゅんと場面が変わり若かりしころの男と弟と母の話。急激に訪れたまろやかなあたたかさにくらくらし、えも言われぬ懐かしさがこみ上げてくる。これが木内昇の物語だ。

  • 明治初期。
    もはや時代に合わなくなり、世界情勢にもついて行けなくなった徳川幕府は倒され、明治新政府が誕生した。
    しかし、「壊すところまでしか考えていなかった」…新政府は、迷走する。
    混迷の時代を生きる人々の短編集。

    各短編の主人公には、名が記されていない。
    「男」として語られるのみである。
    脇役は皆名前があるのに…
    そして、各短編の結末は、何かがスッキリ解決して終わるものはない。
    こうやって、必死にもがいていた「男」がいました、というスタンスだからだ。
    どれも、丹念にコツコツと、鑿で石を彫るようにして形になったような作品ばかりである。

    『蝉』
    『喰違坂』
    『一両札』
    『女の面』
    『猿芝居』
    『道理』
    『フレーヘードル』

  • どれもやるせないなぁ。
    後味悪い、というか背中ゾワゾワしたり冷たくなったりする終わりかた。
    願うけれど、救われたりスカッとしたりはしない。
    人生の多くは苦虫つぶしたようなことの連続なんよね。
    個人の選択のせいなのか、時代や国みたいな勝手かつ大きな力のうねりに翻弄されるせいなのか。

  • 男たちの人間くささが、いい

    時代の大きな転換期に直面し
    不器用だったりやり方が間違えていたりしつつも
    一生懸命、それぞれの信念にまっすぐに
    ときに迷い惑いながらも
    生きた男たち

  • 重厚な歴史短編小説集です。
    明治初頭、幕府を倒しながらも旧弊に陥ったり、権力を笠に着るような政府・県令達と、維新で生活が楽になるという期待を裏切られた農民庶民達。この作品の特徴であり目新しさは、両者に挟まれた名も無き中間層に焦点を当てた事でしょう。
    全ての短編で、それぞれ異なる主人公が「男」と称され、それがタイトルの「ある男」になったのでしょう、歴史背景がしっかり描かれ、庶民の姿も鮮やかなしっかりした歴史小説で、木内さんの力量を感じます。しかし。。。
    どうも上にも下にもいい顔をしようとし、結局は追い詰められていくというタイプの主人公が多く、どうもお話しとしてはのめり込めないのです。

    私にとっては「良い小説だが、あまり好きになれない物語」でした。

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