ことり (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 2237
レビュー : 200
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648037

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】人間の言葉は話せないけれど、小鳥のさえずりをよく理解し、こよなく愛する兄と、兄の言葉を唯一わかる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、世の片隅でつつしみ深く一生を生きた。やさしく切ない、著者の会心作。解説・小野正嗣。

感想・レビュー・書評

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  • 世界の片隅で紡がれた物語。

    この物語を優しいとか愛おしいとか、そんな温もりのある言葉で表現できるほど、読み終えた直後のわたしはまだ吸収しきれていない。
    哀しかった。ただただ哀しかったのだ。

    哀しいと感じたのは、何でだろうと考える。
    彼らのことを哀しいと思ったのではない。
    わたしが哀しかったのだ。
    だって、彼らは決して哀しい存在ではなかったのだから。
    うまく言葉にならなくて、もどかしい。

    それでも、鳥籠のなかは美しい世界だと思った。
    兄と弟と小鳥たちとの小さな世界はとても美しかった。

    “鳥籠は小鳥を閉じ込めるための籠ではありません。小鳥に相応しい小さな自由を与えるための籠です”

    嫌なことはいつも鳥籠の外からやってきた。ほんの少し胸が高鳴る瞬間も、そして迎える突然の終わりも、やっぱり鳥籠の外からやってきた。
    それでも小さな自由のなかで兄と弟はひっそりと生きてきた。
    ふたりだけの静謐な世界。そこには喜びがあった。楽しみもあった。ふたりの幸せがあった。

    わたしは祈る。哀しみを祈りへと昇華させる。
    ふたりの清らかな精神は、愛の歌をうたう小鳥となって空を舞うだろう。
    そうやって彼らは空へと戻っていくのだろう。

    • いるかさん
      地球っこさん。

      いつも素敵なレビューをありがとうございます。
      この本も読みたいと思い、買って机の上にスタンバイしています。

      と...
      地球っこさん。

      いつも素敵なレビューをありがとうございます。
      この本も読みたいと思い、買って机の上にスタンバイしています。

      とても哀しいのですね。
      今読んでいる本が楽しい本なので、その後に読んでみたいと思います。
      楽しみです~
      2020/12/01
    • 地球っこさん
      いるかさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      哀しいと感じたのは、何でだろうと今も考えています。
      彼らのことを哀しいと...
      いるかさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      哀しいと感じたのは、何でだろうと今も考えています。
      彼らのことを哀しいと思ったのではないのです。
      わたしが哀しかったのです。
      うまく言えません。
      うーん、でもレビューにちょっとつけたそうかな。
      だって、彼らは決して哀しい存在ではなかったのですから。

      彼らの内側の世界は、本当にひそやかで優しく美しいものでした。

      小川さんの「人質の朗読会」や「博士の愛した数式」に通ずるものがあったように思います。
      「ことり」も「人質の朗読会」も、どちらも美しい作品です。
      いるかさんは、どう思われるかな……
      機会がありましたら、ぜひ読んでほしいなと思います。

      ありがとうございました(*^^*)
      2020/12/01
    • いるかさん
      地球っこさん

      お返事ありがとうございます。
      ひそやかで優しく美しい世界。
      しかも「人質の朗読会」や「博士の愛した数式」に通じる小川...
      地球っこさん

      お返事ありがとうございます。
      ひそやかで優しく美しい世界。
      しかも「人質の朗読会」や「博士の愛した数式」に通じる小川洋子さんの世界なら、絶対に読まないといけませんね。

      今 瀬尾まい子さんの「戸村飯店 青春100連発」を読んでいます。
      それが終わったら「ことり」を必ず読みますね。
      とても楽しみです。
      ありがとうございます。。
      2020/12/01
  • 何という美しい物語なんでしょう。

    解説に書かれている「取り繕えない人たち」の物語。
    それゆえに純粋さが溢れている。

    「小鳥の小父さん」の生涯。
    お兄さん、薬局の店主、幼稚園の園長、鈴虫の虫箱を持つ老人。
    中でも図書館の司書さんへの想い。
    哀しいけれど、とても美しい。

    地球っこさんが言われるように「人質の朗読会」や「博士の愛した数式」に通じるものを感じました。
    この本も大切に手元に置いて何度も読み返したい、そしてずっと語り続けられてほしい作品でした。

    • 地球っこさん
      いるかさん、こんにちは。

      いるかさんのレビューを読ませていただいて、「ことり」を思い出すとじーんとなりました。
      美しい物語でしたよね...
      いるかさん、こんにちは。

      いるかさんのレビューを読ませていただいて、「ことり」を思い出すとじーんとなりました。
      美しい物語でしたよね。
      哀しいけれど美しい……あぁわかります。
      2020/12/12
    • いるかさん
      地球っこさん

      コメントありがとうございます。
      本当にじんわりといい物語でした。
      宝物にします。
      今、読返していますが、すごくいい...
      地球っこさん

      コメントありがとうございます。
      本当にじんわりといい物語でした。
      宝物にします。
      今、読返していますが、すごくいいですね。
      ありがとうございます。
      2020/12/12
  • ことり 小川洋子さん

    1.購読動機
    ブクログの感想をみて、安らかな、閑かな気持ちになれそうだったため。

    2.読みすすめて
    物語が叙事詩、叙景詩的な印象です。
    語り手ならびに主人公たちの気持ちは、こちら側読者に委ねられているように感じます。

    そのためでしょうか?

    章を進める過程のなかで、主人公たちの家族そして周りの環境に対して理解とともに、感情が芽生えていきます。

    読書途中ですが、皆さんのレビューのとおり、読者の心にひとつひとつの文章がしずくのように溢れおち、広がる感じです。

    静かに時間と向き合える小説。
    夕陽をみて感傷的になりそうな小説。

    3.読み終えて
    主人公が歳を重ねるなかで、環境の変化もあり無くしていくものがあります。 

    母親、そして父親。
    兄。
    定年退職。
    日課となっていた幼稚園の鳥の世話。

    これらの出来事を読書で追体験することで考えたことは以下です。
    無くなる結果には、二つの流れ、原因があること。
    ①自らの意志で無くすもの、捨てること。
    ②流れのなかで、無くなってしまうこと。
     自らコントロールできないこと。

    ことり。
    主人公にとっては、大切な兄との繋がりでした。
    そして、現実世界との接点でした。
    晩年に向けて、数少ない大切なものを無くし、彼が最期に手にしたものも ことり でした。

    「人生の最終にむけて、人は心に何を大切なこととして留めるのか?いえ、留めたいのか?」

    ページを閉じおえて考えた内容でした。

    #読書好きな人とつながりたい

  • 至福の時間の一冊。

    ポーポー語を話す兄と唯一通じ合える弟は小鳥の小父さんと呼ばれ毎日を丁寧に決められたように過ごしていく。

    小川さんはその一瞬を丁寧に掬い取り美の言葉で紡ぎ、ポツンポツンと読み手の心にせつなさの雫を落としこんで行く。
    その雫が柔らかく心を満たしていく至福の時間を味わえた。

    鳥籠のような限られた世界。人はそれを奇異、気の毒と思うかもしれない。

    でも限られた世界だからこそ得られる小さな自由と幸せ、気付きがあると思う。

    そしてどんな些細なことも大切に感じる心が小さな声を言葉をも掬い取れるのかもしれない。

    • いるかさん
      私もこの本 大好きです。

      哀しいけれど美しい物語。
      小川さんの世界に浸っている時間が、なんとも幸せです~
      私もこの本 大好きです。

      哀しいけれど美しい物語。
      小川さんの世界に浸っている時間が、なんとも幸せです~
      2021/06/10
    • くるたんさん
      いるかさん♪こんにちは♪
      コメントありがとうございます!

      哀しい、うん、わかります〜!でも心地良いんですよね〜♫現実にちょっとだけギリギリ...
      いるかさん♪こんにちは♪
      コメントありがとうございます!

      哀しい、うん、わかります〜!でも心地良いんですよね〜♫現実にちょっとだけギリギリの非現実を絡ませるような小川ワールドが特に好きです¨̮♡
      2021/06/10
  • 「小鳥の小父さん」 なんて優しい響きなんだろう。

    お兄さんの言葉は、弟である小父さんにしかわからない。
    僕たちが忘れてしまった言葉。それは小鳥のさえずり。

    母を病気で亡くし、父親も亡くなり、お兄さんは29歳、小父さんは22歳で、二人で暮らすようになる。
    二人のささやかな満足は、昨日と同じ一日を過ごすこと。

    お兄さんが亡くなってひとりで暮らす小父さんが年月を重ね、物語の冒頭の部分に至るまで、多くを語らずとも、ひとときも目が離せない。
    胸が熱くなるようなことばかり。
    心の片隅にいつまでもそっとしまっておきたいような物語だった。

    • 大野弘紀さん
      そう。目が放せないのです。その息づかいを感じながら固唾を飲んで見守る観客のような、心境で。
      そう。目が放せないのです。その息づかいを感じながら固唾を飲んで見守る観客のような、心境で。
      2019/12/22
    • m.cafeさん
      大野さん、コメントありがとうございます。

      小川さんの描く優しさは格別で、触れるのがもったいないくらいです。
      大野さん、コメントありがとうございます。

      小川さんの描く優しさは格別で、触れるのがもったいないくらいです。
      2019/12/22
  • かなしい、やりきれない。と、ただただ思った。
    だけど、それだけでいいのか。
    人間、普通でなくていいとか。常識にとらわれるな、とかいうことを聞く。頷いている自分。
    だけど実際は、普通という枠の中に身を委ね安心している自分がいる。

    お母さんにあげたポーポーの小鳥のブローチ。
    たから物がいくつか入った白いバスケット。
    小父さんとお兄さんの架空旅行。
    青空薬局の店員との絡み。(私が小さい時も、ドラックストアは無くて商店街の薬局でした。商品には少し埃もつもっていたり。それを何気に拭う店主、この感じがすごくわかり、懐かしさがこみ上げてきました。)
    司書への淡い恋心では、実らないと予測がつくだけに読んでて切ない。メジロの鳴き声、バラが咲き誇って。

    本当に好きなことを一つ出来て、そこから喜びを得られたのだから、小父さん、お兄さんは幸福であったと思いたい。

  • 鳥の言葉がもし理解できたら、きっと、この物語と同じくらい繊細なのではないかと思うくらい、繊細で優しく静かな本。

    ほんの少しの風の音、光、生き物の気配に敏感に気づく。そういう世界の中で生きている"小鳥の子父さん"の小さな生活の中に起こる静かな変化が描かれている。けれども、途中涙が止まらない程哀しくなったりすることも起こる。

    ダイナミックな変化の中にだけ喜びや悲しみがあるのではなく、この小さくて静かな暮らしの中のささやかな変化にも、同じくらいの喜びや悲しみがあった。

    本当に、この物語自体が鳥のさえずりではないかと思うような、美しくて哀しくて素晴らしい作品。 

  • 小鳥の小父さんが、社会の片隅で、鳥語を話す兄と鳥籠という二人の世界で暮らす幸せを願った、静かな物語。
    そんな願いとは裏腹に、小鳥がいつの間にか鳥籠から飛んでいくように、みな小父さんを置いていなくなる。
    そして、「普通」といわれるものを常識として流れる社会に近寄ると、傷つけられる。

    多くの人から見れば理解しがたい、閉鎖的な自分だけの世界。それでも、その世界を容認してくれ、さらには、一緒にいてくれる人がいるというのは幸せなこと。自分の世界を広げられる居場所や心のよりどころというのは、生きていく上でとても大事なことなのだろうと思った。

  • 心地の良い孤独感。

    孤独は決して悪いものではない。

    解説(小野正嗣さん)では、この2人はマージナル(境界)であると。

    その通りだと思う。

    このマージナルな2人は、おそらく、社会的には適応的ではないのだろう。

    そして特に、兄に至っては、およそ了解不可能な独自言語、妄想的心的現実(幻想)から精神医学的には種々累々の「診断」を下すことができる。

    しかし、そこにどれだけの意味があるだろうか。

    社会との距離、他者との距離は人それぞれに違うし、そうあって然るべきだろう。

    彼らの距離感は彼らにとって心地よい、ほどよいものなのだろうと推測、いや期待したい。

    このように考えれば、誰もが、各々の幻想に生きている訳で、了解の可不可の限界だってそれぞれにあるはずだ。

    誰も生き方を強制する事はできない。

    そんなに好きならば、それを趣味として外界と交流すればいいじゃないか。

    マージナルな人たちへのそんな願望の押し付けは無意味どころか有害であることもこの物語は示唆している。

    そんなことを考えてしまう。

  • あまりにも切ない物語で、終始胸が締め付けられていた。

    伝えたいことを理解してもらえないって、本当に辛いよね。慎ましく、穏やかに暮らしたいだけなのに、拒絶されてしまう世界で、懸命に生きた小父さん、お兄さんを尊敬する。きっと、2人は遠い小島で会うことが出来たのだろう。

    閉塞感漂う世界観と、際限ない空の広がりを表す小鳥のコントラストがとても良かった。

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著者プロフィール

1943年 鹿児島県生まれ
1974年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位
取得退学

主な訳書
テオプラストス『植物誌1』(京都大学学術出版会)
フィンレイ編著『西洋古代の奴隷制』(共訳、東京大学
出版会)
クラウト編著『ロンドン歴史地図』(共訳、東京書籍)
ストライスグス『ギリシア』(国土社)

「2015年 『植物誌2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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