沈黙の町で (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
4.02
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本棚登録 : 546
レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648051

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】北関東のある県で中学2年生の男子生徒が転落死した。事故か? 自殺か? それとも──。その背景には陰湿ないじめがあった。町にひろがる波紋を描くことで、地方都市の精神風土に迫る。朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ大問題作の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 中学生の校内での不審死を発端とした物語は、宮部みゆき著『ソロモンの偽証』が白眉であるが、本作も発端は同様であるが、その後の展開は全く異なる。
    『ソロモン…』は、女子生徒が主役になって、不審死をめぐる中学生による異例な校内裁判へと進む、読者にとっても衝撃的なミステリーだった。
    対して、本作はいじめの被害者、それに関わった加害者、それぞれの家族、担任教師をはじめとする学校関係者、それに所轄警察の捜査官に、担当の検事までが登場し、それぞれの思惑が絡み合う群像劇となっている。
    前半は、一方的に不審死の裏にあるいじめの加害者を追及する場面が続くが、後半は一転する。
    事件前の時間と、事件後の時間とが、交互に語られ、真相に迫って行く。やがて、被害者側にも問題があり、加害者とみられた生徒たちにも意外な事実が判明する。
    このような作品を読むと、ストレートに正義をふりかざすメディアが報じる「いじめ事件」にも、様々な側面があるのではないかと、ふと考えた。
    「未完成な中学生」を、鮮やかに描き出した傑作と言っていい。

  • 北関東のある町で、中学二年生の名倉祐一が転落死した。事故か、自殺か、それとも…? やがて祐一が同級生からいじめを受けていたことが明らかになり、家族、学校、警察を巻き込んださざ波が町を包む…。地方都市の精神風土に迫る衝撃の問題作。

  • 被害者は圧倒的に被害者で、加害者は絶対的に加害者だ。
    法的には何があってもそれは変わることはないだろう。
    けれど、表にあらわれたものがすべてではないとしたら・・・。

    いじめられていたと思われる一人の男子中学生が死亡した。
    事故とも、事件とも、どちらとも取れるような状況が推測された。
    目撃者はいない。
    どんなに偉そうなことを言ったとしても、中学生は中学生でしかない。
    大人ぶっても、経験も足りず、精神的な強さもない。
    周りに流されることだって、感情に押さえがきかないことだって、日常にはあふれている。
    当事者の親だったら腹が立つんだろうな・・・とか、歯がゆい思いをしているんだろうな・・・とか、事実はどうなんだと問い詰めたいんだろうな・・・とか、いろいろ考えてしまった。
    親に何もかも話す中学生なんているとしても絶滅危惧種と同じようにほんのわずかだろう。
    話せばラクになる。話してくれさえすれば助けてあげられる。
    それは親の、大人の考えだ。
    話したってどうにもならない、話したくても話せない事情だってある。
    子供には子供の考えがあるのだから。
    親たち、とくに母親の子供に対する感情の激しさには圧倒された。
    時間が過ぎ自分自身が大人になれば感謝することもあるかもしれない。
    でもリアルタイムで目の当たりにしたら、ただ単純にうざったいだけだろう。
    ひとりの中学生が墜落死した。
    被害者の親。加害者の親。教師。刑事。マスコミ。
    それぞれの大切なものを守るために彼らは行動する。
    その行動によってあらたに傷つく人間がいることを無視するように。
    ある意味完結しているようなラストでもあり、始まりのようなラストでもあると感じた。
    ひとりの中学生の転落死。
    映画化で話題になっている「ソロモンの偽証」ときっかけは同じであるけれど、まったく違う印象を残す物語だった。

  • お、面白かった…!
    って書くと語弊があるけど。面白おかしいの面白かったじゃなくて、夢中になって読まずにはいられなかったという意味で。びっくりするくらい面白かった!まいった!

    田舎の中学校で、生徒が死んだ。部室棟の屋根から落ちたと思われるそれは、果たして事件か事故か。死んだ生徒と関係が深かったと思われる生徒が話す内容は真実なのか。

    シチュエーションだけ見るとソロモンの偽証が一瞬頭を過ぎるけど、切り口が全然違う面白さ。思惑の矛先と、感情を寄せる先。ラストにどんでん返しがあるわけじゃない。順を追って真相に迫っていく。そこに意外性はないのにこの面白さ。

    伊良部先生しか読んでこなかったのがもどかしい~!他の著作も買います…。

  • 結構なボリュームだったけど面白く、一気読み。色々な視点で描かれる事件。考えさせられる問題作。少年たちの思考・価値観、確かにそうかもと何度も肯く場面があった。
    あらすじ(背表紙より)
    北関東のある町で、中学二年生の名倉祐一が転落死した。事故か、自殺か、それとも…?やがて祐一が同級生からいじめを受けていたことが明らかになり、家族、学校、警察を巻き込んださざ波が町を包む…。地方都市の精神風土に迫る衝撃の問題作。

  • あまりにも残酷なお話。
    都会だけではない、田舎のほうが却って酷な事態に。
    最初に結末が分かり、それぞれの想いを回想していく流れ。んーどちらの言い分も分からなくないが…
    ラストシーンのあまりにも薄情な描写に言葉を失いました。

  • 北関東のある県で中学2年の男子が部室屋上から転落死した。一緒にいた4人の同級生が関わったとして、傷害罪で逮捕、補導される。小さな町で誰もが真実を語らない。真相は?と言う話。最初は亡くなった子が可哀想に思えるが、様々な真実が浮かび上がる。中学生の心理を巧みに描いていて引き込まれた。人生で多分一番心と体が不安定な時期。自分たちもなにをどうすれば良いのかが分からない。苦しいのかどうかさえも。終わり方はすっきりしないのだけど、それがリアルさを増している。教師、親、検察、弁護士、それぞれのキャラの立場からの動きも良かった。

  • 中2男子生徒が、放課後の校内で遺体で発見される。

    人間、立場が変われば考え方も変わる。加えて、平常ではいられない部分も。

    という面で、被害者家族、被疑者家族、当事者生徒、教師、刑事、検事、マスコミその他モロモロの人々の書き分けが秀逸。

    とくに中学生たちの心理描写がすんばらしい。(元)中学生だった(はるか昔)身としても、全然違和感なし。
    大切にしなければならないものの優先順位が、独特の価値観でズレまくっているという。

    最後の方で、教師が元同級生と飲みながら打ち明けた話、なんだか的を得ているような気がする。

  • 201601/これはすごいな…。例えどうであれいじめの理由にはならないと思ってはいても。被害者(という表現も微妙だが)とされる側の言動が明らかになるにつれ、「それなら仕方ないかも…ましてや中学生だし…」と思わせられてしまうんだけど、そう思わされてしまい自己嫌悪するとこまで含めて、作者が想定したと思える作品。名倉少年の「兄弟」設定のくだりはなくてもいいように思うけど、周囲の人々の狡さ等の描写もさすが奥田英朗。

  • それにしても奥田さんの本は、どうしていつも一気読みになってしまうのか。
    ここ最近本より夢中になってたモンハンを放り出しての読書でした。


    あらすじだけ読むと、「ソロモンの偽証」に似た感じ?と思いましたが、似てるのはストーリー的には「中学生男子が転落死」、だけでした。

    いろんな人の視点で話が進んでいきます。
    加害者の母親二人と被害者の母親、この三人の視点も出てきますが、加害者側と被害者側、どちらの心情もよくわかる。
    私が同じ立場だったら同じように思い、同じように行動するんじゃないかと思います。
    特に名倉くんの母親の気持ちは辛かった。
    加害者側は、子供が逮捕されようが相談所に送られようが、生きてるし、これからもまだまだ未来がある。
    でも被害者側は、二度と会えないし、未来がそこで閉ざされてしまったんだもん、被害者側の要求はもっともだと、私は思ってしまいます。

    そしてまた、私にも中学生だった過去があるので、中学生たちの感情もわかる。
    文中に「中学生の三年間は、人生で一番のサバイバル期」というセリフが出てきますが、まさにその通りだと思う。
    あの頃は、「人と違う」「仲間がいない」「ノリが悪い」と思われるのが一番怖かった。
    元来のお調子者なので、なんとか乗り切ってここまで生きてきましたが。
    今中1の娘も、がんばってほしい。

    朋美も思っていたけど男子は暴力に直結するのが怖い。
    女子も、まさにサバイバルだけどね。

    いじめは、「いじめられる方にも原因がある」とかよく言われますが、確かにそうかもしれないけど、それでもいじめちゃダメだと思う。
    ……って、大人になると当たり前のようにわかるんだけど、子供にはなかなかわからないんだろう。
    ましてや、「存在がミステリー」な名倉くんみたいな子がそばにいたら。
    いじめに加担しないと、自分に矛先が向くこともおおいにあるわけで。
    名倉も名倉だよなあ、と思っちゃうけど、でもでもそれでもダメなんだ。
    まあ、大人になってもそれがわからない人がいるから、職場とかママ友同士でもでもいじめが起こるんだからなあ。

    最後に余計なことだけど、この中学に一つだけ言いたい。

    「イチョウの木、切るか、他の場所に移しましょ!」

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