道然寺さんの双子探偵 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648181

作品紹介・あらすじ

消えた香典の行方、水子供養に隠された秘密。道然寺の若和尚・窪山一海が巻き込まれる謎の数々を先に解決するのは、人を疑うレン?それとも人を信じるラン?生老病死-いつの世も人は苦悩を避けられない。捨て子だった双子探偵は、様々な出来事をどう受け止めるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 日常の謎ミステリーですね。
    青春と成長の物語でもあります。
    福岡の中央の山寺が舞台で起きる謎解きの4話、短編連作です。
    道然寺の次期住職の一海と書いて《かずみ》が語り部として物語を進めていく。
    一海が十六歳の時に寺に双子の赤ちゃんが捨てられた。寺の子として育てると住職の真海(一海の父)が決めて十四年の月日がたった。住職一家として成長した双子の活躍と家族のふれあい、成長の心温まる物語。
    岡崎さんは寺院勤務の経験があり、それをもととして物語を紡いだそうです。
    岡崎さんの文章はとてものびやかで、まったりとした味わいのあるものなので、私は好きですね。
    仕事で忙しい思いをしたときなどは、変な話、癒されているように感じます。
    物語も基本が人の優しさに根付いたものなので、暗い描写があっても安心して読み進めます。
    性善説の双子の女の子ランと性悪説の男の子のレンの推理を楽しみながら、それを見守る、一海との心のふれあいがとても素敵な物語です。

  • 道然寺の若和尚・一海の視点で各事件の推移を見守り解決に導く物語。
    お寺に置き去りにされた双子の子供レンとラン。
    お互いの個性と考えを持って事件の解決の手助けを。
    日常におけるミステリーが各話ごと綴られています。
    そこにある根底はヒューマンストーリー。
    血の繋がりこそないけど、そこにある家族の絆も見えて。
    読了後温かい気持ちになる作品でした。

  • タレーランの作者のホッコリイヤミス。お寺に捨て子として引き取られたレンとラン、様々な日常の謎に対して、善意で捉えるのか?悪意で捉えるのか?という多重解決型、仏教的ミステリ。
    なんというか新しいフォーマットだと感じた。面白い。

  • なかなかよかった。あるときは性悪説でなされた推理を性善説で否定、またあるときは性善説でなされた推理を性悪説で否定する。人には両方の面があるということ。
    お寺さんが舞台ということで、どことなくほっこりとするお話になっています。仏教に関わる人全てがそうではないでしょうが、基本的にこの話でお寺に関わる人は心の優しい人ばかり。その点も、なんかほっとする。

  • 小説トリッパー2014年夏季号、2015年春季号〜秋季号の連載に加筆修正して、2016年6月朝日文庫刊。4つの連作短編。お寺に暮す中学生のランとレンの双子のコージーミステリー。1話めの解決が、スッキリせず、消化不良気味ですが、残り3話は、うまくできていて楽しめました。

  • 元々は捨て子で、寺に拾われて暮らす男女の双子、
    レンとランが探偵役。
    物語自体は、寺の若住職目線で進む。

    連作短編集で、寺の人や周辺人物が遭遇する
    大小さまざまな謎を、双子が解いて行く。
    が、この双子が、それぞれ「正反対の推理」をする(^ ^;

    「寺の隣に鬼が住む」を座右の銘とするレンは、
    いわば人間性悪説の立場から物を見るきらいがある。
    反対にランは「仏千人神千人」とよく口にする、
    若住職と同じくお人好しで情にもろい。

    この二人の「正反対の推理」が、それぞれ破綻無く
    「なるほど」と首肯できるよう構成された文章は、
    かなり緻密に練り上げられている。

    さらに一冊を通して双子や若住職の成長が描かれ、
    また双子の出自に関わる謎や、最後に新たな展開もあり、
    これは続編を出す気満々と見た(^ ^

    ミステリに分類したが、どちらかと言うと
    人情もの、ヒューマンドラマかも(^ ^
    GW中に一気読みしてしまいました(^ ^

  • 人の善意と悪意の両面からそれぞれ双子のレンとランが推理を披露して、一海さんがまとめていくスタイルです。
    第4話のレンの心情の変化は涙が出ました。一海さんのほのぼのとした人柄がとても良いです。

  • 流行りの日常の謎タイプの作品ですが、お寺の住職が主人公になっていて、仏教の知識が散りばめられていることろにオリジナリティがあります。
    影の主役である双子が常に裏表の推理を展開していくパターン化された展開も、裏を想像する楽しみに繋がって良いと思います。

  • “珈琲店タレーラン”シリーズの作者による、福岡県のお寺が舞台の日常ミステリ。
    道然寺の若和尚・窪山一海(くぼやま いっかい)の周りで起きるさまざまな謎の出来事を、中学生の双子・姉のランと弟のレンが推理する。
    一海は、真面目で考えも深いし、ちゃんと若和尚を務めているのだが、何かといじられてトホホな感じ。
    お人好しだからか。

    双子は、寺に捨てられていたという過去を持つ。
    そのせいか、レンは物の見方もシニカルで、人間の行動をナナメに見るきらいがある。
    ランは逆に、性善説にのっとって推理する。
    物の見方が逆ならば、推理も真逆。
    反対から光を当てることで、見えなかったものが見えてくるのが面白い。

    人気シリーズを持つと、“○○の方が良かった”などと言われがちだが、この作品は、一海さんのフラットな視線も良いし、双子や、お手伝いさんのみずきのキャラも良い。
    加えて、お寺という舞台は様々な人間模様が垣間見られそうだし、たくさんの檀家さんともかかわるし…シリーズとして続いてほしい気がします。
    キャラ達の、この後の成長を見たいです。

    第一話 寺の隣に鬼は棲むのか
    資産家のお葬式で、香典袋の中身が無くなる。
    若い後妻は、受付のお手伝いさんを疑うが…

    第二話 おばあちゃんの梅ヶ枝餅(うめがえもち)
    商店の子に生まれたことへの複雑な思い。

    第三話 子を想う
    水子供養をしたから新しい子を授かった、と吹聴する若い主婦の真意は?

    第四話 彼岸の夢、此岸(しがん)の命
    彼岸の入りの日、一海と双子たちの夢枕に女性が立つ。
    見知らぬ人が伝えたかった願いを解く。

  • 双子の一人が解決したと思ったら,もう一人が意外な真実を解き明かすという,くるりと変わるストーリー.
    「ミステリ」と聞くと「唯一絶対の真実」を想像してしまうが,「動機」の面は,はたから見れば他人のことなんてわかるはずがないのだから,ともすれば「真実」にたどり着けていない可能性もある.
    性善説と性悪説の両から人をとらえる双子探偵.
    二人でいることで,二人は,真実と大切なことに気づいていく.
    できたての梅が枝餅はマジで美味い.

  • 【善】と【悪】からなる双子の推理劇。
    大人も加わってわりとてんやわんや。
    いろんな形の『家族』の物語。

  • 普段から人間嫌いを称している者として、他人の悪意を敏感に察知する双子探偵の一人「レン」の損な役回りを不憫に思いましたが杞憂に終わり、続きが読みたくなりました。今は梅ヶ枝餅とはかた通りもんが無性に食べたいです。

  • 消えた香典、家業のお菓子、水子供養、子供達の親。

    寺に置いて行かれた双子が、かわるがわる解決します。
    主人公は、それをヒントに迷推理をして
    どうにか解決?
    後で真相っぽいものが分かるわけですが
    納得して終了しているので、問題はないかと??

    すべての話で、主人公の善良さというか、が
    にじみでています。
    双子は幸せだな、というのも、じんわりしてきます。
    特に最後の話。
    ようやく、職業柄な感じの最後でした。

  • 「寺の隣に鬼は棲むのか」
    消えた香典と虚偽の真実。
    傍からみたら尽くしていたのは彼女だったのかもしれないが、彼等は遠縁に住んでいる訳なのだから24時間全ての出来事は把握しきれてないだろうにな。
    歳の差が大きく病を患っている人間と結婚となると、どうしても愛情よりその後の遺産目当てではと勘繰ってしまうのだろうな。

    「おばあちゃんの梅ヶ枝餅」
    思わず投げ返した和菓子。
    今となっては意味の無い嫌がらせに一人でずっと戦ってきた彼女にとって、タイミング悪く渡された梅ヶ枝餅は悪意にしか感じなかったろうな。
    自分からアプローチをしていたのか、もしくは振られた後なのかは分からないが彼女に対し嫉妬し嫌がらせをするのは筋違いではないだろうか。

    「子を想う」
    勘違いし乗り込んできたのは。
    義母から護るまでは良かったが、一度妊娠し経過を知っているはずの彼には週数の知識を得る機会が無かったのか少し気になるな。
    宗教らしい物に感化された考えを持つ母親という事を知っていたのであれば、最初から安定期に入るまで伝えないという手もあったのではないだろうか。

    「彼岸の夢、此岸の命」
    夢の中に出てまで伝えたかった事。
    双子と彼の夢に出てきた人物が違っていたのは、互いに簡単な特徴を当てはめたからだろうが立っていた場所まで同じとなると少し引っかかるよな。
    貧困でDVを受けていても彼女はきっと必死に小さな命を育てるつもりだったのだろうが、彼女の身体は限界だったのだろうな。

  • 道然寺の住職の息子である一海さん視点の語りで物語が進みます。この寺に住む中学二年生の双子、ランとレンのふたりが一海さんの身の周りでおこった様々な出来事に対して推理をおこない事の真相を解き明かし当事者を救うという構成になっています。
    双子による推理は事件の性質と二人の性格とも相まって、片方の推理にちょっとした誤りが含まれており、もう片方の推理がそれを正すという構図なのですが、1~3話まではいわゆる”安楽椅子探偵”の様相を呈しており、後から語られるほうの(=真相を言い当てている)推理がなぜそのように行き着いたのかの手がかりが乏しい、あるいはラン or レンだけが知っている事実によって推理が展開されており、読者として作中に散りばめられたヒントを回収する(回収してもらう)機会がないのがちょっと残念なところ。
    が、最終話である4話だけは双子の生みの親かもしれない人物を巡って、赤ん坊の隠し場所や南京錠の番号など、事前のヒントを手繰り寄せながら読み手としても謎を解決してゆく楽しさを味わえる構成になっていました。1~3話を読んだ時点では二巻は読まなくてもよいかと考えていましたが、やっぱ二巻も読んでみようと思えた最終話の面白さでした。

  • んーーー。
    残念だけど、私には合わなかったみたい。
    お寺に子供を捨てるって、いつの時代だよってのは置いといても。
    双子たちの性格が、どちらも好きでない。
    中学生なので、子供っぽいのは当然かもだけど、あれはないわー。
    お寺の宗教法人だけど儲けてることをあまりに正当化するのにも違和感。
    さーて、次行こ。次。

  • 連作短編集。

    寺に住む 父親海、息子一海、親戚みずき、双子で寺に捨てられていたレンとラン達が日常の謎を解決していく物語。

    最終章でレンとランを捨てた母親に巡り会えるような展開がやってきて物語が収束するのかと思ったが違う展開へ進んだのが以外だった。

    全体的にのんびりホンワカ進むので肩の力を抜いたまま気軽に楽しめた。
    続編で是非 双子たちの出生の秘密明らかにされる物語を書いて欲しいと思う。

  • サブキャラや時間軸がこんがらかってしまって最後まで取り戻せなかった。方言だとちょっと読みにくいかな。

  • 軽く読み切れる作品。謎感はそんなにはなくて、むしろ人間関係を楽しむモノかもしれないなと思う。

  • レンとランの推理が正反対なのが面白い。2人で補い合うんだなと。
    お寺の日常や法要や仏像の意味にも興味持てたし家族はいいなと。一海さんの穏やかさにも癒されました。
    縁はあると思う。

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著者プロフィール

1986年福岡生まれ。京都大学法学部卒。2012年、第10回『このミステリーがすごい!』大賞隠し玉に選出された『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』でデビュー。翌年同作で第1回京都本大賞受賞、累計250万部を超える人気シリーズに。この他の著書に『夏を取り戻す』、『貴方のために綴る18の物語』、『Butterfly World 最後の六日間』など多数。

「2022年 『下北沢インディーズ ライブハウスの名探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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