聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.54
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本棚登録 : 2491
レビュー : 200
  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648228

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】社会人2年目の小和田君は仕事が終われば独身寮での夜更かしを楽しみとする地味な生活。ある日、狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」との出会いから、めくるめく冒険の一日が幕を開ける。第2回京都本大賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 京の夏の風物詩・祇園祭の前夜祭たる宵山。しかも会社休みの土曜日。地元民かつ天性の怠け者にとってはエアコンのある部屋でグウタラするに限るそんな日に勃発した、狸のお面をかぶった正義の怪人「ぽんぽこ仮面」を巡る、奇怪で愉快で幻想的で、なにより疲労感と脱力感に満ち満ちた、たった1日の短い冒険の時を描いた作品。

    超絶怠け者でどうにも冴えない青年主人公、それを取り囲んで厄介な騒動に引き込んでいくキャラの濃ゆい脇役たち、京の街の緻密な描写…と、とても森見さんらしい。

    果たして、怠け者の主人公小和田(コワダ)君以外のみんなが追いかけ回す正義の怪人「ぽんぽこ仮面」は何者なのか!?
    …なーんて、ミステリー要素は実はゼロで、割とさっくりあっけからんとネタあかしをされながら、途中からはぽんぽこ仮面の「中の人」の必死の逃亡や葛藤や悲哀(笑)も加えながら物語は展開していくのだけど、そのユルユルさがむしろ心地よい。

    盛夏に購入したのにうっかり晩秋に読み終わってしまったけど、小和田くんに負けない怠け者を自称する私としては、エアコンの効いた真夏の夜にグウタラしながら完読したかった。

    購入した本書に挟まっていた、葉書サイズの用紙に書かれた作中内の言葉が、これまた興を誘った。

    「役に立とうなんて思い上がりです 森見登美彦(+角印イラストスタンプ)」

    森見さんの直筆なのか、はたまた印刷なのかわからないようなつくりだけれど、そんなところも、いかにもご愛嬌で、まったりおかしな本作の内容によく似合っていた。

  • プロローグ
    前作(と思っているのは私だけ、だけど)の「夜は短し歩けよ乙女」で、すっかりファンになったと思い込んでいる私は、本屋で平積みになっている本書(文庫本)を手にとって迷わず購入したのだけど、当の本書は時間の塵の中に埋れて玉川さんみたいに何故か迷子になっていた。それが2016年9月中頃。春が来た。一年ぶりに部屋の片付けを始めると、ラッキーにも未読の文庫本が発掘される。時は正に、ムービックスで「夜は短し歩けよ乙女」のアニメが公開されようとしていた。アニメの出来には期待は出来ないが、またまたそれでいっとき森見登美彦ブームになった私は、本書を読み始め、森見登美彦の危なイヤ怪しい世界が、私を連れて行こうとする。生来の怠け者である私は、p121の伏線を発見してあらあらと思った隙間に睡魔が滑り込んで来て‥‥。
    平成29年3月15日記入。

    エピローグ
    ‥‥おや⁈ふと眠りこけて何時の間にか一ヶ月以上経った。生来怠け者の私は、文庫の続きを読むこともせず、やおら起き上がり、ムービックスへ映画「夜は短し歩けよ乙女」を観に行く。偽電気ブランや閨房調査団や狸の置物を懐かしく眺める。そもそも原作のファンなのだから、その映画作品は観る前から気に入らない作品になることは「運命」つけられている。映画は掃けて、夜の四十万の帳の端を、小和田くんのように歩いていると、玉川さんのような可愛い女性がちょっかいを出してくる僥倖は、当然のことながら無くて、ふと所長のように死ぬ前に誰からも直接的にもっと感謝されたいと哲学的思考に陥ることも無く、この上ない「冒険」を歩いている自覚もなく、ただ歩いていた。そして何時の間にか、あの伏線はたいした伏線じゃなくて、それでもすべてのどうでもいい謎は解けて本書を読み終えていた。文庫本初回限定(って、初版だけなのかもっとなのかとてもわかりにくいけど)の「著者からのメッセージカード」は、私の人生座右の書として、本棚の奥に仕舞っておこうと思う。「僕は人間である前に怠け者です 森見登美彦」。
    平成29年4月17日記入

    あとがき
    私の拙い感想をお読み頂いてありがとうございます。感想をネットに載せるにあたり、(いろいろ推敲するのはめんどくさくて嫌いだけど)本文に手を加えました。ごめんなさい。
    2017年4月30日記入

  • 愛すべきアホウのお話し。やっぱり好きです、この空間。
    本当の京都にもいたらいいのに、ぽんぽこ仮面。探してみて、柳小路に本当に八兵衛明神があったのにはかなり感動した。雰囲気も大分リアルだったし。
    実生活が辛い時期だったので、このアホウな空気に大変助けてもらいました。ありがとう。

  • 単行本で読んでいたけど、メッセージカード欲しさに文庫を購入、そして宵山の土曜日に再読。祇園祭の宵山のある土曜日の話。主人公が大学生から社会人に変わってもモリミーワールドは健在、正義の味方ぽんぽこ仮面を巡る長くて濃い1日の話を堪能しました。宵山という非日常、幻想的な空間で展開する不思議な世界が愉しい。『有頂天家族』や『宵山万華鏡』とリンクしていて、宵山万華鏡でも印象的だった赤い浴衣の女の子が今作でも登場。下鴨幽水荘や閨房調査団が出てくるのもニヤリとしたところ。怠け者万歳!私も人間である前に怠け者です。

  • 2009年6月から2010年2月まで、朝日新聞の夕刊で連載していたものを、大幅に加筆修正(ほとんど長編丸々書き換え)して単行本化。さらに文庫化にあたって大幅にスリムにした作品。この文庫になるまでに、二度生まれ変わっているのが、この作品が難産だったことを言い表している。

    関西、とりわけ京都を舞台にした不思議物語において森見登美彦さんの右に出るものはいないと個人的に思っているし、森見さんファンの多くが同じ感情を持っていると思う。『聖なる怠け者の冒険』も例外なく、京都をふんだんにちりばめた不思議物語だ。

    ちなみに青春まっただ中ダメ男子学生を描かせても右に出るものはいないが、本作品に青春まっただ中ダメ男子学生はいない。いるのは怠け者たちと、土曜日をいかに生きるかに心血を注ぐ者だけ。

    物語は宵山の土曜日が舞台となる。

    ・主人公は怠けるためには手段を問わないという青年、小和田くん。
    ・小和田くんの知り合いカップルの恩田先輩と桃木さんは、土曜日をいかに充実させるかに命をかけ、スケジュール帳をまっ黒にしている。そしてそこに必ず小和田くんを巻き込もうとする。
    ・京都に現れる正義の味方「ぽんぽこ仮面」は日々人助けに暗躍する。しかし引退を考えているらしく、なぜか小和田くんに跡を継がせようと小和田くんを追いかけ回す。
    ・探偵事務所の浦本探偵と玉川さんは、依頼人からの指示で「ぽんぽこ仮面」の正体を暴くべく奔走する。そして「ぽんぽこ仮面」のしっぽをつかむために、小和田くんを尾行する。

    宵山の土曜日に起きる、怠け者の一日の冒険を描いた、不思議な夢のような作品。

    主人公は通常自ら動き回らないと物語が成立しないものだが、こちらは例外。小和田くんは自ら動かない。動かぬ主人公がどんな物語を紡ぎだすのか。

    森見さん自身があとがきや別のインタビューで、「難産だった」「暗礁に乗り上げかけた」などと話しているように、物語として成立させるのに大変な苦労があったようだ。主人公が何かを成し遂げたり、何かに役に立ったりするのではなく、ただ“聖なる”怠け者として何もなさぬままに冒険して、最終的にその物語が収束するにはどうすればよいのか。苦しみぬいてできたのがこの作品だ。

    「怠け者であることが冒険になる」というコンセプトのため、主人公が大活躍するような普通の盛り上がりを求める読者には、少々退屈かもしれない。

    特筆すべきはこの物語の語り手が「筆者」であること。筆者が登場人物たちを俯瞰し、時に応援しながら描写する様は、森見さんが登場人物に命を吹き込んでいる場を目撃しているようでとても新鮮だった。

  • 京都が舞台の物語で、ちょうど祇園祭の季節、読めてよかった。狸に化かされているようだった。新聞、単行本、文庫、とだいぶ変わっているとのこと。挿絵集も見てみたい。

  • 今回も、やはりやはり不思議世界でした。
    最近、立て続けに森見さんの本を読んでいるので、他の本の話もちょこちょこ出てきて、ちょうどよかったです。
    絵も素敵で、特に「アルパカ」!
    素敵すぎます。
    ちょっとした推理?を働かせる場面もあり、題名にもあるように、怠け者が主人公というのも、ひねりがあって面白かったです。

  • 土曜倶楽部、下鴨幽水荘、赤い女の子、宵山。
    どこかで見たことのある言葉がたくさん出てきてちょっと楽しかった。

  • 今回も京都森見ワールド全開でとても面白かったです。内なる怠け者の声に負けて、休日をだらだら過ごすのも悪くないんじゃないかなとも思えるお話でした。
    ぽんぽこ仮面という名前がかわいすぎてステキでした。やっぱり森見さんの言葉選びは好きだなあと思ったし、玉川さんは最高にかわいかったし、宵山には是非一度行きたい!と思わせられるお話でした。
    どこまでが本当でどこから嘘なのかわからなくなる世界観はすごく好きです。
    そしてこのお話が、土曜日をどう過ごすかというただその一点のお話というのも面白かったです。

  • 肩の力がふっと抜けて、「頑張らなくてもいいや、怠けよう」と思える小説。ふわふわの森見ワールド、さすがだ。

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著者プロフィール

森見登美彦(もりみ とみひこ)
1979年奈良県生まれの作家で、京都を舞台にした作品が多い。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2006年に『夜は短し歩けよ乙女』で本屋大賞2位、山本周五郎賞などを受賞し注目を集める。2010年『ペンギン・ハイウェイ』で2010年日本SF大賞、2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞、2017年『夜行』で第7回広島本大賞をそれぞれ受賞。2010年に『四畳半神話大系』がTVアニメ化、2018年8月に『ペンギン・ハイウェイ』が劇場アニメ化された。2018年11月に『熱帯』を刊行し、第160回直木賞、2019年本屋大賞にノミネートし、第六回高校生直木賞受賞。

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