悪医 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 168
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648426

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】わずかな希望にすがりつき、治療を求める末期がん患者と、効果のない治療で患者を苦しめたくないと悩む若き外科医。現役の医師でもある著者が「悪い医者とは?」をテーマに真摯に取り組み、第3回日本医療小説大賞を受賞した感動の医療長編。

感想・レビュー・書評

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  • 医者にとって医療とは、と問いかける医療小説であるとともに、一般読者にとっては、治療の余地がないと言い渡された場合どうするか、その生き方を問いかける小説である。
    医療の現場を知る、医者でもある著者にこそ書ける傑作。
    35歳の外科医が52歳のがん患者に、これ以上治療は行わないと告げるところから始まり、二人の視点を通してそれぞれの葛藤が交互に語られる。
    医者にとって医療とは、という問いかけも興味深いが、一般読者にとってはやはり患者の立場がより切実な問題である。
    幸いにして今だこういう経験はないが、余命宣告された場合、読み手は果たしてどういう行動をとるだろうか。
    3分の1の人々ががんにかかり、5分の1の人ががんで死ぬ、そんな現代に避けて通れない問題である。
    より多くの人が、読んでおくべき本の一冊と言いたい。
    作中、明晰医長とぼやき医長とせっかち医長という3人に託して語らせた医療情報やその背景は、その実態を知らない第三者にとっては興味深い。

  • 久坂部羊『悪医』朝日文庫。第3回日本医療小説大賞受賞作。

    たまたま入院先のベッドの上で読んだ。読みながら、リアリティと恐怖を感じた。

    最初は世の中の悪徳医師を批判するブラック小説かと思いながら読み進んだのだが、終盤からは雰囲気が一変、思いも寄らぬ結末が待っていた。非常に面白いが、入院中に読むものではない。

    もう治療方法が無いと見放された52歳の末期がん患者・小仲。小仲を見放し、末期がん患者への対応について苦悩し続ける若き医師・森川。対照的な二人の人物を描きながら、現代の医療に関わる問題を浮き彫りにする。

  • 今の時代、がん=不治の病という認識はだいぶ変わってきてはいるものの、やはり医師からがんを宣告されたら、誰でも大きなショックを受けるでしょう。
    小説の主人公は50代のがん患者。そして、もう一人の主人公は30代の医師。数ページ単位で、それぞれの話が進んでいきます。
    この本の著者は現役の医師で、がん治療の描写がとてもリアルです。(私の身内にがん患者だった者がいて、それとの比較です)

    山崎豊子さんの白い巨塔のようなベストセラー本にはなっていませんが、とても現実的で、私も主人公と同じ立場になったらどうなるかと考えさせられる一冊でした。

  • 末期癌患者の52歳の小仲と拠点病院の外科医森川を主人公にその視点で交互に描かれている。森川はこれ以上治療をしないと告げ、小仲は俺に死ねと言うことかと。森川の本心は治る見込みのない患者をこれ以上抗がん剤で苦しめずに、残りの時間を体力のあるうちに有意義に暮らしてほしい。小仲は生に執着し、森川を悪医とし他の医療機関にかかるが論文の実験台にされるなど悲惨な状態に陥る。最後は医療ボランティアの助けを得てホスピスで安らかに逝く。その直前、森川の出演したテレビを観た小仲は森川の本意を知り救われたのかな感じた。

  • ストーリーは
    52歳の男性、ガンが再発、治療の結果
    「残念ですが、もうこれ以上、治療の余地はありません」
    と若い外科医に余命宣告されてしまう
    「つらい抗生剤治療で命を縮めるより時間を有意義に」と

    52歳の男性「先生は、私に死ねと言うんですか」
    納得いかない男性「もう先生には診てもらいません!」

    若い外科医を恨みながら「ガン難民」になってしまった男性
    苦しみの果てホスピスにたどり着くまでを

    患者の苦しみ、医者の悩みを対比させながら、展開される

    わたしなら?

    昨日見た再放送
    NHK「ドキュメント72時」「海の見える老人ホーム」
    の中でホーム住人高齢の男性がいみじくもおっしゃっていた

    「80代になっても気持ちは30代と一緒なんだよなぁ」
    「だってさ、みんな具合が悪くなれば医者に行くでしょ」

    その恬淡とした物言いが印象深い

  • 小仲は胃癌が再発したあと、
    外科医の森川医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。

    衝撃のあまり「私にすれば、死ねといわれたのも同然」と、小仲は診察室を飛び出すが、大学病院でのセカンドオピニオンを断られ、抗がん剤を専門とする腫瘍内科、免疫細胞療法のクリニック、そしてホスピスへと転々とする。
    それぞれの場所で小仲が会った医師とは?

    一方、森川は診療を中断した小仲のことを忘れることができず、末期癌患者にどのように対したらよいのか思い悩む日々を送る。

    悪いお医者さんの話かと思ったら、いいお医者さんのはなしでしたーw

  • 癌が再発した小仲辰郎は担当医師の森川良生から,新たな治療法はないと宣言され途方に暮れる.その後いろいろな代替法に挑戦するが思わしい結果が出ない.その過程で出会った看護師の吉武からヘラクレス会を主宰している稲本を紹介される.最終的には森川が出演したテレビ番組で彼の言葉を聞き,自分を忘れていないことを知り,安らかに死んでいく小仲.癌患者に対する医者の視点から書かれた物語だが,患者の癌治療に対する思い込みなどが複雑に絡んでいる.題名は「悪医」だが森川はそうではなく,タキソール腹腔内投与にこだわる徳永が典型的な悪医だろう.

  • 全体的に暗い雰囲気で物語は進みます。このまま終わってしまうのか、光は見えないのか・・・
    諦めかけた時、淡い光が見えて来ます。森川医師がテレビ番組のパネラーとして発言する場面からの描写は圧巻です。電車の中で人目もはばからずボロボロ泣いてしまいました。
    かく言う私もサバイバーです。昨今、医師は患者にハッキリとガンを告知します。私も目の前が真っ暗になりました。幸い私は、ほぼ完治と言える状態ですが、手術を受けるまでの不安な気持ちと毎日死を考えてしまい心から笑うこどがてきなかったことが、この本を読んでいて思い出されました。
    テレビ番組の司会者が言うように、ガンの終末期医療の宣告は大変難しい問題です。この物語とて答えは見えていません。

  •  有効が治療がなくなった末期癌の患者とその担当の外科医、それぞれの視点からがん治療と告知、医師と患者、病気の関わりが描かれる。以前読んだ医療現場の行動経済学にもあったように、医者と患者の考えは平行線になることが多く、互いに理解されないと不満を抱く。本作はその状況をよく表している。どちらが悪いということではなく、ただすれ違う。人間は論理だけでなく、感情で幸福感を容易に変える。ましてや、死が絡むと単純には片付かない。筆者が医師で、患者の言葉や治療経過もリアリティがあり、「もし自分なら」を考えさせられた。

  • 患者と医者の思いが、
    交錯しながら綴られていくのが
    面白かったです。

    小説だと、登場人物の考えとか、
    行動とかが一貫して同じになってしまうところ、
    この本の人達は、状況をいろいろに捉えて、
    現実っぽく考え行動していくところが、
    ノンフィクションを思わせました。

    がんを宣告されて、
    余命を充実させることができるのは、
    なにがしかの支えがあってこそなんでしょうね。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。小説に、『破裂』『無痛』『悪意』『芥川症』『いつか、あなたも』『介護士K』、エッセイに『大学病院のウラは墓場』『日本人の死に時』など、医療分野を中心に執筆。

「2019年 『黒医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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