悪医 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648426

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】わずかな希望にすがりつき、治療を求める末期がん患者と、効果のない治療で患者を苦しめたくないと悩む若き外科医。現役の医師でもある著者が「悪い医者とは?」をテーマに真摯に取り組み、第3回日本医療小説大賞を受賞した感動の医療長編。

感想・レビュー・書評

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  • 一気読み。久坂部先生のマジメ本ではトップクラス。感動する作品です。
    「余命三か月」と医師からこう宣告され残された時間を有意義に生きなさいと宣告される患者。
    セカンドオピニオン外来から始まり、がん免疫療法と現実を受け入れることなく、最期まで諦めません。結局ジタバタすることが、有意義な過ごし方だったんです。
     治る見込みのない患者をこれ以上抗がん剤で苦しめずに、残りの時間を体力のあるうちに有意義に暮らしてもらうにはと悩む医者と必死に生きようとする患者が交互に出てきます。
    癌に罹患していない今だから冷静に読める本ですね。

  • 医者にとって医療とは、と問いかける医療小説であるとともに、一般読者にとっては、治療の余地がないと言い渡された場合どうするか、その生き方を問いかける小説である。
    医療の現場を知る、医者でもある著者にこそ書ける傑作。
    35歳の外科医が52歳のがん患者に、これ以上治療は行わないと告げるところから始まり、二人の視点を通してそれぞれの葛藤が交互に語られる。
    医者にとって医療とは、という問いかけも興味深いが、一般読者にとってはやはり患者の立場がより切実な問題である。
    幸いにして今だこういう経験はないが、余命宣告された場合、読み手は果たしてどういう行動をとるだろうか。
    3分の1の人々ががんにかかり、5分の1の人ががんで死ぬ、そんな現代に避けて通れない問題である。
    より多くの人が、読んでおくべき本の一冊と言いたい。
    作中、明晰医長とぼやき医長とせっかち医長という3人に託して語らせた医療情報やその背景は、その実態を知らない第三者にとっては興味深い。

  • 「もし、私や身内が癌になったら」と考えながら読みました。

    有効な治療が無いことを上手く伝えられない事に悩む医者の様子を読んでいると、無理に治療を求める患者を煩わしく感じました。しかし、もし自分や家族が患者という立場になった時、私は医者の言葉を素直に受け止める事ができるのか。この小説を読んで、医療現場で働く人の考えを知ってもいざ自分が当事者となるとなかなか難しいと思います。

    ならないのが1番ですが、もし実際に直面した時この小説を思い出したいです。

  • 久坂部羊『悪医』朝日文庫。第3回日本医療小説大賞受賞作。

    たまたま入院先のベッドの上で読んだ。読みながら、リアリティと恐怖を感じた。

    最初は世の中の悪徳医師を批判するブラック小説かと思いながら読み進んだのだが、終盤からは雰囲気が一変、思いも寄らぬ結末が待っていた。非常に面白いが、入院中に読むものではない。

    もう治療方法が無いと見放された52歳の末期がん患者・小仲。小仲を見放し、末期がん患者への対応について苦悩し続ける若き医師・森川。対照的な二人の人物を描きながら、現代の医療に関わる問題を浮き彫りにする。

  • タイトルからどんな腹黒い医師が登場するのかと思ったら全然違っていた。
    治療法がもう無いからと自分に余命宣告をした医師を悪医と呼ぶ患者とその宣告をした医師、2人の視点から描かれる物語。両者とも悩みながらもがきながら懸命に生きる人。今の自分は「生」にしがみつく気持ちはないけれど、土壇場になったら果たしてどうだろう?と考えさせられた。

  • 読了後は、ご飯を食べてもお風呂に入っても
    それができることのありがたさを
    しばらく感じました

    がんと向き合おうとする医師と、がんと闘う患者で交互に一人称が変わり、本当に読みやすい

    生きる意味がないと、
    何か結果を残さないとその一生は無駄だったのか

    患者の言動から
    結果を出すことより
    進むことをやめて自分のことを見つめ直して
    非があることさえ認められたそのとき
    何かつきものが落ちた、スッキリした気持ちになる、一歩踏み出す(それが自分の死であっても)勇気になるのではないかということを学べた気がします

    さすがお医者様の作品とあって
    いろいろなことがリアルすぎて
    自分の最後はどうなるのだろうと考えてしまった

  • 今の時代、がん=不治の病という認識はだいぶ変わってきてはいるものの、やはり医師からがんを宣告されたら、誰でも大きなショックを受けるでしょう。
    小説の主人公は50代のがん患者。そして、もう一人の主人公は30代の医師。数ページ単位で、それぞれの話が進んでいきます。
    この本の著者は現役の医師で、がん治療の描写がとてもリアルです。(私の身内にがん患者だった者がいて、それとの比較です)

    山崎豊子さんの白い巨塔のようなベストセラー本にはなっていませんが、とても現実的で、私も主人公と同じ立場になったらどうなるかと考えさせられる一冊でした。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    余命宣告された52歳の末期がん患者は、「もう治療法がない」と告げた若き外科医を恨み、セカンドオピニオン、新たな抗がん剤、免疫細胞療法、ホスピスへと流浪する。2人に1人ががんになる時代、「悪い医者」とは何かを問う、第3回日本医療小説大賞受賞の衝撃作。

    余命を言い渡された患者の絶望的な気持ちや、何かにすがりつきたいと思う気持ちが痛いほど伝わってきた。確かに医師は自分の仕事を精一杯努めるしかないだろうが・・がん難民いつか誰にでも訪れるだろうと思うと切なかった。

  • 医療小説は好きで良く読んでいますが、文句なしに面白かったです。

  • 一気読みでした。

    抗がん剤は毒で、逆に命を縮ませることもあるから、残りを有意義に生きるためにやめた方がいい。という医者の気持ちも分かります。

    ただ、患者からすると、治療法が無くなるのが怖いのです。
    特に、色々な治療をしてきた人にとっては、使う薬が無くなったと言われると、死ぬしかないのか。ってなると思います。

    医者と患者のこの距離がどこまで縮めることができるか。これが、この本の読みどころなのかなと、思いました。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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