悪医 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
4.05
  • (11)
  • (19)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 91
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648426

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】わずかな希望にすがりつき、治療を求める末期がん患者と、効果のない治療で患者を苦しめたくないと悩む若き外科医。現役の医師でもある著者が「悪い医者とは?」をテーマに真摯に取り組み、第3回日本医療小説大賞を受賞した感動の医療長編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 医者にとって医療とは、と問いかける医療小説であるとともに、一般読者にとっては、治療の余地がないと言い渡された場合どうするか、その生き方を問いかける小説である。
    医療の現場を知る、医者でもある著者にこそ書ける傑作。
    35歳の外科医が52歳のがん患者に、これ以上治療は行わないと告げるところから始まり、二人の視点を通してそれぞれの葛藤が交互に語られる。
    医者にとって医療とは、という問いかけも興味深いが、一般読者にとってはやはり患者の立場がより切実な問題である。
    幸いにして今だこういう経験はないが、余命宣告された場合、読み手は果たしてどういう行動をとるだろうか。
    3分の1の人々ががんにかかり、5分の1の人ががんで死ぬ、そんな現代に避けて通れない問題である。
    より多くの人が、読んでおくべき本の一冊と言いたい。
    作中、明晰医長とぼやき医長とせっかち医長という3人に託して語らせた医療情報やその背景は、その実態を知らない第三者にとっては興味深い。

  • 久坂部羊『悪医』朝日文庫。第3回日本医療小説大賞受賞作。

    たまたま入院先のベッドの上で読んだ。読みながら、リアリティと恐怖を感じた。

    最初は世の中の悪徳医師を批判するブラック小説かと思いながら読み進んだのだが、終盤からは雰囲気が一変、思いも寄らぬ結末が待っていた。非常に面白いが、入院中に読むものではない。

    もう治療方法が無いと見放された52歳の末期がん患者・小仲。小仲を見放し、末期がん患者への対応について苦悩し続ける若き医師・森川。対照的な二人の人物を描きながら、現代の医療に関わる問題を浮き彫りにする。

  • 小仲は胃癌が再発したあと、
    外科医の森川医師より「これ以上、治療の余地がありません」と告げられた。

    衝撃のあまり「私にすれば、死ねといわれたのも同然」と、小仲は診察室を飛び出すが、大学病院でのセカンドオピニオンを断られ、抗がん剤を専門とする腫瘍内科、免疫細胞療法のクリニック、そしてホスピスへと転々とする。
    それぞれの場所で小仲が会った医師とは?

    一方、森川は診療を中断した小仲のことを忘れることができず、末期癌患者にどのように対したらよいのか思い悩む日々を送る。

    悪いお医者さんの話かと思ったら、いいお医者さんのはなしでしたーw

  • 癌が再発した小仲辰郎は担当医師の森川良生から,新たな治療法はないと宣言され途方に暮れる.その後いろいろな代替法に挑戦するが思わしい結果が出ない.その過程で出会った看護師の吉武からヘラクレス会を主宰している稲本を紹介される.最終的には森川が出演したテレビ番組で彼の言葉を聞き,自分を忘れていないことを知り,安らかに死んでいく小仲.癌患者に対する医者の視点から書かれた物語だが,患者の癌治療に対する思い込みなどが複雑に絡んでいる.題名は「悪医」だが森川はそうではなく,タキソール腹腔内投与にこだわる徳永が典型的な悪医だろう.

  • 全体的に暗い雰囲気で物語は進みます。このまま終わってしまうのか、光は見えないのか・・・
    諦めかけた時、淡い光が見えて来ます。森川医師がテレビ番組のパネラーとして発言する場面からの描写は圧巻です。電車の中で人目もはばからずボロボロ泣いてしまいました。
    かく言う私もサバイバーです。昨今、医師は患者にハッキリとガンを告知します。私も目の前が真っ暗になりました。幸い私は、ほぼ完治と言える状態ですが、手術を受けるまでの不安な気持ちと毎日死を考えてしまい心から笑うこどがてきなかったことが、この本を読んでいて思い出されました。
    テレビ番組の司会者が言うように、ガンの終末期医療の宣告は大変難しい問題です。この物語とて答えは見えていません。

  • 悪医。
    久坂部羊さん。

    もうだめだとなったら、
    治療はしない。
    治療の余地がないという現実を、しっかり受け止めて、
    残された時間を大切に、
    その時が来るまで、
    一生懸命に生きる。
    抗がん剤ではガンは治らない。
    延命効果でしかない。
    アフリカでは助かる命が死んでいるが、
    日本では助からない命を無理に助けようとしている。

    患者の気持ちは複雑。
    医療者側の理屈。
    患者側の理屈。
    助かる患者。
    治らない患者。
    答えの出ない疑問な森。
    患者は、
    治療=病気を治すこと。
    医療者は、
    治療=やりすぎると大変な事になる。
    医者と患者。
    永遠の平行線
    患者の希望は、病気が治るということだけじゃない。
    医者が見離さないでいてくれることが励みになる。
    希望は患者なりの、心の準備。
    命を縮める治療でも、いい面がある。
    患者側の気持ち。
    医者の気持ち。
    支える看護師の気持ち。
    それぞれの気持ちが、
    痛いほどわかった。
    伝わった。

    気持ちが変わる本です。
    おススメ。
    素晴らしい本でした。
    涙があとからあとから。
    止まりませんでした。
    大号泣。
    清々しい涙です。
    良かった。

    第3回日本医療小説大賞受賞

  • 「がん患者は最後まで抗がん治療の継続を望む」のが当たり前みたく書かれているけど、ここまで治療継続に固執する患者さんに出会ったことはないな。いるとしても大多数ではないと思うのですが。患者さんと医者とは言っても結局人対人だから、コミュニケーションの問題で、小仲さんの場合は医療者を恨むことが生きがいになっている気もするので、恨まれるのもまたひとつの手段と思う。
    医療者側から見れば、手術がうまくいっても感謝されないこともあれば逆に治療がうまくいかなくても感謝されることもある。再発患者をここまで意地でも入院させない病院にも出会ったことはない。「治る患者しか診ない」というのは言い過ぎ(フィクション)だろう。

    ちなみに、食道OPを終えて帰りの電車で「今日の患者さんは助かりそうだ」なんて確信が持てる外科医はいないと思う。

  • 以前読んだ『最後の医者は桜を見上げて君を想う』のレビューに、
    このテーマなら『悪医』が面白く深い とあったので、読んでみました。
    確かに。

    悪徳医師の話かと思って読み始めましたが、そうではなかったです。

    私の母も、わかったときには末期癌でしたし、製薬会社に勤めており
    この先生の言っていることは理解できましたので、
    これが悪医? と思ってしまいました。

    治療方法が無いので、あとはやりたいことをして過ごすようにと言われた末期がん患者と
    末期がん患者への対応について苦悩し続ける若い医師が
    それぞれの視点で語られていきます。

    末期癌を扱うストーリーなので、明るい話ではないですが、
    ラストは少し明るい感じになりました。

  • 読後感悪し。
    やはりハッピーエンドの物語であって欲しいと願う。

  • 評価に迷った。☆3.5くらいかな。でも読んでよかった。

    末期がん患者と医者の両局面が見えて、とても興味深い。自分ががんを宣告され、もう治療の術がないと言われたらどうするだろう。「生きる」ことをあきらめることはそう簡単じゃない。患者の立場も分かるし、でも久坂部羊作品を読んできて、医者や医療がパーフェクトじゃないのも分かってるつもり。限界がある。でも、患者としては寄り添って欲しいのを分かってほしい。特に独り身だと縋る相手がいないからね。。
    結局答えは出ないと思う。患者にも医者にも。それが辛い。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院にて外科および麻酔科を研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(幻冬舎)で2003年に作家デビュー。近著に『院長選挙』(幻冬舎)、『カネと共に去りぬ』(新潮社)がある。

「2018年 『祝葬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

悪医 (朝日文庫)のその他の作品

悪医 (朝日文庫) Kindle版 悪医 (朝日文庫) 久坂部羊

久坂部羊の作品

ツイートする