ウエストウイング (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 64
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648532

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】設計事務所のOLネゴロ、絵が得意な小5のヒロシ、土壌解析会社の若手サラリーマンのフカボリ──3人の人生が雑居ビルの物置場で交差する。人が誰かとつながり、影響を与えあっていくことのかけがえなさを、圧倒的なディテールで明るく描いた傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 知らないのに、知っている。

    わたしが本書の帯を書くなら、こう書きたい。

    ああ、津村記久子だ!
    わたしの好きな作家だ!
    読了したとき真っ先に思ったことがこれでした
    正直なところを言えば、この作品が津村さんのなかで一番好きなわけでも、最初からずっと面白かったわけでも、ない。でも、彼女の抜群のセンスと書ききる力、世界観の構築力、というか、生きているひとたちを描いている、津村さんの小説でしか味わえない何とも言えない多幸感に包まれたので、わたしにとってはとてもよい読書体験でした。

    前置きが長くなったが、本書はネゴロ、ヒロシ、フカボリという三人の世界を軸に、ひとつのビルの中で働いたり勉強したりご飯を食べたり生きている人々のお話だ。
    もはやビル自体も生き物のような。
    共通点は物置場。
    メモや物品を交換しあうだけの会ったこともどんな人物なのか性別年齢さえわからない他人同士の不思議な関係。
    トイレでのある出来事を共有することになるのだが、そのシーンは惹きつけられた。
    あと、雨の一夜、ゴムボート。
    津村さんは天災を書くのも得意。

    フカボリさんはあとから登場するのだが、彼が出てきたところらへんで読者としての集中力がとんでもなく切れてしまったのはあった。
    が、全部読んで、408頁に至ったところで鳥肌となんの涙かわからないものがこみあげた。
    たぶん、感動していた。
    すごい作家だ。
    そして、エブリシングフロウズのヒロシなのか、この子!

    ヨボヨボになるまでヨボヨボになっても書き続けてほしい。

  • エブリシングフロウズのヒロシが小学生だった時をまた思い出したくての再読。

    話の筋はある程度覚えていましたが、細かな出来事はすっかり失念していました。
    あー、3人は最後に会ったんだったっけ、という感じ。

    トイレでの出産、大雨の日のボートでの渡し、椿ビルディングの解体問題、
    どれも3人を語る上では大切な出来事。
    感情の起伏の激しくないニュートラルな3人が、津村さんの作品にいがちなタイプで好みです。

    この本の前半のはじめはとても読みにくい感じがしますが、どんどん面白くなります。
    挫折しそうな方がいたら、是非頑張って欲しいと思います。

  • わーめんどくさっ!やっぱり進まなくって、でもだんだんなじみが出てくると、ふんふん、そんで?でもなんかペースおっそ!って進まない。
    けど我慢してるわけじゃなくて、流し読みせず「ちゃんと」読んでるだけ。
    面白い。

  • 繋がりそうで、なかなか繋がらない3人の時間。
    古い建物の、忘れ去られた部屋を人心地つく場所として同じように使いながら、部屋で出くわすことがないのがなんだか面白い。たとえばこれが連作小説なら、読み進めるにつれてあっ、ここで繋がるんだ、っていうポイントがあるものだけど、最初から繋がる場所は明確なのに肝心の人はすれ違う・・・というのが、新鮮だった。
    津村さんの小説はゆったり構えているようでいて、いつの間にかがっちり捉えられているみたい。後半はそれでどうなるの、と先が気になるのに地の文が多いせいでなかなかページをめくれないというもどかしい事態に・・・。
    ヒロシがすごく印象的。どうやら他の小説の登場人物らしい。子供が身近にいないのでわからないけど、小さくても色々考えてるのかなぁ、とちょっと恐縮する思いだった。

    明らかに梅田のスカイビルへ抜ける地下道をモデルにした、ゴムボートの浮かぶ道はつい先日一部が閉鎖され、地上に通路ができたらしい。地上の道なんて普通すぎてきっとこんな物語は生まれなかっただろうな、と思うと時代の移り変わりを目の当たりにした気分。

  • エブリシングブロウズのヒロシくんが小学生時代のお話。無力な人たちが、全力で知恵を絞り、最小限の勝利を勝ち取るところは、共通している。彼らは自分が弱いことを知っているから、人に寛容だし、力を合わせるすべも知っている。

    ばかにするやつのことは受け流し、自分が助けられる人がいれば助け、好きなことには正直に生きる。それでいいのだと思う。

  • 傑作『八番筋カウンシル』もそうでしたが、三者三様の日々を緩やかに、伸びやかに描いています。

    三人それぞれの日常に起こる出来事。それらを流れるように読ませながら、同時に鼓動の高まりを感じさせ、そしてあざとくない程度にきちんと着地させる技量には、毎回のことながら感服します。

    まさに解説にある通り、「津村氏の精度の高い文章の魅力」を存分に味わえます。

  • 津村記久子の書くこどもが本当のこどもなのかもしれないな…。

  • 女性事務員ネゴロ、塾通いの小学生ヒロシ、若手サラリーマンのフカボリ。
    同じビルに通う3人は、それぞれが息抜きにと密かに使っているビルの物置場で、書き置きメモのやり取りと物々交換から姿は知らぬまま繋がりを持つことに。
    梅雨時のある日、豪雨警報が流れー
    古ぼけた雑居ビルに集う見知らぬ者同士のささやかな交わり。


    なるようになるし、なるようにしかならない。
    考えてはいるけどなんとなく流されつつ日々を過ごしちょっとづつ前進している普通の人びとの話、なのに何でこんなに面白いんだろう?

    かなり冒頭の方でエッセイ集『やりたいことは二度寝だけ』にあった“妖怪や妖精とみなす”考え方を主人公のひとりネゴロがしていて、こんなところに!ゆるーくスペイン語習得行動も、ここにも!初詣についての雑談もあって、あぁあのエッセイのエッセンスがそこここに-と、面白くなりました。

    グァナバナナよりグァババナナのが言いやすいと思う-

    大雨の日の話が特に好き-台風の時のようなちょっと危ないかな-っていう非日常感
    が凄く分かるというか。
    でも構造上水没しないと知っててもトンネルをゴムボートで渡るなんてアドベンチャーすぎる-
    そして(労働に対価は必要だけど!)小銭稼ぎして良いのか?

    ヒロシのパートでは、子供の頃の方がなんか頭良かった感のある自分を思い出したよ-
    大人になると決まったことにしか頭使わないし、子供の頃思ってたより大人がアホなのを実感体験するからかな-

    家庭電気機器取扱協会のおっさん、が文中にいっぱい出てきてなんか可笑しくなりました-

    3人がちょっとづつ踏み出したり達成感じたり、先があるエンディングなのも良いと。

    自分の知らなかった言葉メモ…
    ・ブラック・アニス=スコットランドの妖精。人食いの老婆の姿をしている。
    ・カリアッハベーラ=スコットランド高地の冬の創造女神。病の女神。
    ベニエ=ドーナツに似た、果物を詰めた・生地を油で揚げたペイストリー。仏語で“揚げた生地”の意。
    ・杓子せんべい=広島・宮島の縁起菓子。杓子の形をしたせんべい。“敵をめしとる”。

    p.346の『血』のところに言ってくださいねー、は行っての間違い?

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プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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