物語のおわり (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 1076
レビュー : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648730

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】妊娠3カ月でがんが発覚した智子、娘のアメリカ行きを反対する水木……人生の岐路、彼らは北海道へひとり旅をする。そんな旅の途中で手渡されたのは結末の書かれていない小説だった。果たして本当の結末とは。あなたの「今」を動かす、力強い物語。

感想・レビュー・書評

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  • イヤミスの異名をとる著者のイメージを覆し、読後感は『山女日記』に類する作品。
    「空の彼方」という短編小説が、北海道を旅する旅行者の手から手へと渡される連作。
    大きな事件が起こるではなく、北海道の各地の風景描写がリアルで、主人公たちと一緒に旅をする気分になれる。
    一人旅の友としてこの小説を携えて、読者も主人公たちとともに、自らの来し方行く末に思いを致すのも一興か。

  • この文庫本ではなく、単行本を読んだ時に書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>

    冒頭───
     あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は夫婦二人で小さなパン屋を営んでおり、午前二時に起きてパンを作り、午前六時から午後六時まで店を開け、仕込みを終わらせて午後九時には床に就くという毎日を過ごしていました。店の名前は<ベーカリー・ラベンダー>。しかし、父も母も生まれたときからこの町で過ごし、旅行に出たこともなく、紫色の花が絨毯のように広がっているという北海道のラベンダー畑など見たこともありません。
    ───

    湊かなえの一人称独白形式“ですます調”の語りを読み出すと、まだ物語の伏線も語られていないのに、何故か背筋がぞわぞわしてくる。
    まるで、パブロフの犬の条件反射みたいに。
    初めて読んだ『告白』の印象が強烈に残っているからだろう。

    イヤミスの女王、湊かなえ。
    その女王の作風がここ最近変わってきている。

    この前作の「山女日記」も嫌な読後感とは程遠く、爽やかな物語だったし、最新作のこの作品も、心がほのぼのするような物語だった。
    別にぼくは、これまで彼女のイヤミス作品を特に期待して読んできたわけではなかったから、作風が変わったからといって何の不満もない。
    それどころか、どんな作品でも書ける才能を持った湊かなえという作家に憧憬の念を抱くだけだ。

    誰が書いたのか分からない男女のささやかな恋愛『物語』。
    何故かその話は肝心の結末まで書かれておらず、『物語』は途切れている。
    女性は夢を叶えるために東京に旅立つのか?
    彼女を駅前の停留所で待っていた恋人の思いとは?
    はたして、本当の結末はどうなったのか?
    そんな序章のもとに、この小説は始まる。

    舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。
    その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。
    少女から、妊婦に。
    妊婦から、写真家志望だった若者に。
    若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。
    女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。
    父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。
    そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。

    いろいろな別れや後悔を伴った思い出を胸に北海道の旅を続ける人々の手によって、その『物語』は次から次へと受け継がれていく。
    この未完の『物語』を手にして読んだ人たちは、その人なりのエンディングを思い描くことで、自らの旅の目的に対する答えを見出す。
    それは、未来に希望に満ちた暖かな光が射し込むようなものだった。

    人生の曲がり角にはいろいろな選択肢がある。
    夢を抱きながら、その度々、誰もが迷い悩む。
    どちらが正解かなんて誰にも分かりはしない。
    でも、自分が本当に求めているのは何かを真剣に考えれば、それが結果的には正しい選択だったということになるはずだ。
    もちろん人間だから、後悔しない人生なんてありえないけれど。

    闇の中に一筋の美しい光が射し込んでくるような物語。
    ありきたりな言葉で締めくくりたくはないけれど、感動しました。

  • イヤミスの女王と言われる湊かなえさん
    でも、この本は読後感はとってもいい
    北海道は小樽に向かう船の中で物語が始まり
    富良野、美瑛、旭川、摩周湖、知床、網走、洞爺湖、札幌
    それぞれの場所に、色々なものを抱えて来た旅行者たち
    人間らしくていいなぁと思った
    こんなにうまくはいかない、やっぱり小説という気持ちもあるけど
    小説の中でくらい、うまく行ってほしいこともあるさ
    さっと読めて、楽しい時間だった

  • 病の宣告、就職内定後の不安、子供の反発…様々な悩みを抱え、彼らは北海道へひとり旅をする。その旅の途中で手渡された紙の束、それは「空の彼方」という結末の書かれていない小説だった。そして本当の結末とは。あなたの「今」を動かす、力強い物語。

  • 小さな閉ざされたまちに生まれ、大きくは変わらない人間関係の中で地に足をつけて生きていくのだと思っていた。だけど大きな夢に気づいた時、自分はどう動くのだろう。誰を説得して何を捨ててどこに行こうとするのだろう。

    山に囲まれた田舎町でパン屋の娘に生まれた少女、絵美は、山の向こうに広がる大きくて光に溢れた世界に憧れつつ、小説家になりたい気持ちを募らせていく。絵美の才能を知った友人が東京の作家の元へ修行に出ることを勧めるも、婚約者であるハムさんも絵美の両親も強く反対する。気持ちを抑えきれずに、駅に向かう絵美。そこにはハムさんが待ち構えていてーー。

    結末が書かれていない原稿が、北海道という広大な大地を舞台に、様々な岐路に立つ旅行客の手から手へ渡っていく。それぞれの状況に当てはめながら理想的な結末を思い浮かべて、登場人物たちは自身の問題解決に向けて一歩前進していく。

    特殊造形の道に進むために渡米したいと主張する娘との確執を抱える父親は、娘の将来を心配しながらも笑顔で送り出してやろう、と気持ちを整える。
    「なぜ特殊造形の道に進みたいのか。具体的にどんな勉強をしたいのか。どんな職業に就きたいのか。なぜ映画なのか。メインは特殊造形なのか、映画なのか。夢を叶えるために必要な努力とは何だと考えているのか。リミットを設けるのか。夢を叶えるために、何を守り、何を失う覚悟ができているのか。」全部答えることができたら、娘の勝ちを認めよう、と決めて。

    地道な仕事を選びキャリアを積んだ女性は、大きな夢を追いかけていた恋人との別れを、少しの感傷を伴って懐かしく肯定できるようになる。
    「僕には地に足付いていないと思える職業を目指している人を見ると、働くってことをなめんなよ。とか、おまえの夢なんて地道な仕事に就いている大多数の人の上に成り立っている余興みたいなもんじゃないか、なのに、自分は特別な才能がある、って顔しやがって、なんて、その人から否定されたわけでも、バカにされたわけでもないのに、吠えてしまいたくなるんだよね。いっぱいいっぱいの自分を守る手段だってことにこの歳になってようやく気付いたんだけど。」と話してくれた男性との出会いに助けられて。
    彼と自分が人生の一点で交わったことは間違いではなかったのだ、と少しばかり涙を流して、同じ生活に戻る。

    そして最後には、「絵美」がおばあちゃんとして、孫娘の悩みに寄り添う場面に辿り着く。
    ハムさんは東京に向かう「絵美」を連れ戻さず、絵美は挑戦も挫折も味わい、自分の判断でパン屋に戻ってきたことが分かる。
    それでもこれから先の人生で、もう一度くらい物語をかいてみそうな希望を残し、優しさと潔さと深い思慮を感じさせる、自分と向き合う小説だ。

  • 201801/最初の章を読んでもやもやしつつ、バトン形式がやや強引に思える途中章もそうはいっても面白く、最後でこうきたかと、見事な構成。

  • こうしたい、ああなりたいと夢を持っている時に家族や身体や金銭のことで悩む。あるいは夢に向かって進もうとしている人に嫉妬して、それを阻もうとする。自分の方が人生経験があるからといって、子供の未来に賛同できず、反対する。
    どうすれば正解だったのか?
    そんな経験に思い巡らせながら読んだ。

    田舎でパン屋を営む両親のもとに生まれた絵美は朝の通勤通学前にパンを買いに来る繁忙時間にお店の手伝いをしていた。そのお客の中に隣町の高校に通う青年がいた。毎日決まって買うパンはハム入り。絵美は心の中でハムさんと呼ぶ。ある日お釣りを間違えたことから、ハムさんと会話をかわす。夢は小説家という絵美にハムさんは本を貸してくれることで急接近。
    北海道大学へ進学したハムさんだったが、卒業後は地元に戻り、自身は教職員となり、絵美との結婚を約束する。だが、小説家になりたい絵美は誰にも内緒で東京へ行こうとする。が、バス停にハムさんが待ち構えていたー

    物語はここで終わる。この後、2人はどあなった?どうなってほしい?

    読むべき機会を与えられた旅人たちが、それぞれに出した答え。私も旅人となって、原稿を受け取った気分になり、考えさせられました。
    イヤミスではありません。

  • 最高の愛の物語
    それぞれの迷いに 想いを巡らせ 愛を感じた
    一気に読み終えた 素晴らしい

  • ほっこりした。
    北海道に行きたくなる一冊。

  • 未完の物語が読み手によって全く違う展開になっていくけどどのストーリーも前向きでいい雰囲気。そして最終章はこの物語の本当の結末や未完の物語がどうしてこんな運命をたどることになるのかも想像してなかった展開でミステリーではないけど驚く結末でした。道産子にとっては北海道の魅力を紹介してくれるうれしい内容でもあります。

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プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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