物語のおわり (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.80
  • (40)
  • (80)
  • (68)
  • (5)
  • (0)
  • 本棚登録 :937
  • レビュー :82
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648730

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • この文庫本ではなく、単行本を読んだ時に書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>

    冒頭───
     あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は夫婦二人で小さなパン屋を営んでおり、午前二時に起きてパンを作り、午前六時から午後六時まで店を開け、仕込みを終わらせて午後九時には床に就くという毎日を過ごしていました。店の名前は<ベーカリー・ラベンダー>。しかし、父も母も生まれたときからこの町で過ごし、旅行に出たこともなく、紫色の花が絨毯のように広がっているという北海道のラベンダー畑など見たこともありません。
    ───

    湊かなえの一人称独白形式“ですます調”の語りを読み出すと、まだ物語の伏線も語られていないのに、何故か背筋がぞわぞわしてくる。
    まるで、パブロフの犬の条件反射みたいに。
    初めて読んだ『告白』の印象が強烈に残っているからだろう。

    イヤミスの女王、湊かなえ。
    その女王の作風がここ最近変わってきている。

    この前作の「山女日記」も嫌な読後感とは程遠く、爽やかな物語だったし、最新作のこの作品も、心がほのぼのするような物語だった。
    別にぼくは、これまで彼女のイヤミス作品を特に期待して読んできたわけではなかったから、作風が変わったからといって何の不満もない。
    それどころか、どんな作品でも書ける才能を持った湊かなえという作家に憧憬の念を抱くだけだ。

    誰が書いたのか分からない男女のささやかな恋愛『物語』。
    何故かその話は肝心の結末まで書かれておらず、『物語』は途切れている。
    女性は夢を叶えるために東京に旅立つのか?
    彼女を駅前の停留所で待っていた恋人の思いとは?
    はたして、本当の結末はどうなったのか?
    そんな序章のもとに、この小説は始まる。

    舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。
    その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。
    少女から、妊婦に。
    妊婦から、写真家志望だった若者に。
    若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。
    女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。
    父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。
    そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。

    いろいろな別れや後悔を伴った思い出を胸に北海道の旅を続ける人々の手によって、その『物語』は次から次へと受け継がれていく。
    この未完の『物語』を手にして読んだ人たちは、その人なりのエンディングを思い描くことで、自らの旅の目的に対する答えを見出す。
    それは、未来に希望に満ちた暖かな光が射し込むようなものだった。

    人生の曲がり角にはいろいろな選択肢がある。
    夢を抱きながら、その度々、誰もが迷い悩む。
    どちらが正解かなんて誰にも分かりはしない。
    でも、自分が本当に求めているのは何かを真剣に考えれば、それが結果的には正しい選択だったということになるはずだ。
    もちろん人間だから、後悔しない人生なんてありえないけれど。

    闇の中に一筋の美しい光が射し込んでくるような物語。
    ありきたりな言葉で締めくくりたくはないけれど、感動しました。

  • こうしたい、ああなりたいと夢を持っている時に家族や身体や金銭のことで悩む。あるいは夢に向かって進もうとしている人に嫉妬して、それを阻もうとする。自分の方が人生経験があるからといって、子供の未来に賛同できず、反対する。
    どうすれば正解だったのか?
    そんな経験に思い巡らせながら読んだ。

    田舎でパン屋を営む両親のもとに生まれた絵美は朝の通勤通学前にパンを買いに来る繁忙時間にお店の手伝いをしていた。そのお客の中に隣町の高校に通う青年がいた。毎日決まって買うパンはハム入り。絵美は心の中でハムさんと呼ぶ。ある日お釣りを間違えたことから、ハムさんと会話をかわす。夢は小説家という絵美にハムさんは本を貸してくれることで急接近。
    北海道大学へ進学したハムさんだったが、卒業後は地元に戻り、自身は教職員となり、絵美との結婚を約束する。だが、小説家になりたい絵美は誰にも内緒で東京へ行こうとする。が、バス停にハムさんが待ち構えていたー

    物語はここで終わる。この後、2人はどあなった?どうなってほしい?

    読むべき機会を与えられた旅人たちが、それぞれに出した答え。私も旅人となって、原稿を受け取った気分になり、考えさせられました。
    イヤミスではありません。

  • 最高の愛の物語
    それぞれの迷いに 想いを巡らせ 愛を感じた
    一気に読み終えた 素晴らしい

  • ほっこりした。
    北海道に行きたくなる一冊。

  • 未完の物語が読み手によって全く違う展開になっていくけどどのストーリーも前向きでいい雰囲気。そして最終章はこの物語の本当の結末や未完の物語がどうしてこんな運命をたどることになるのかも想像してなかった展開でミステリーではないけど驚く結末でした。道産子にとっては北海道の魅力を紹介してくれるうれしい内容でもあります。

  • 結末のない短編作が読み継がれていくお話。登場人物のつながり方が絶妙。最後には,短編作の結末も明らかになって,すっきりした。

  • 「あなたならどんな『物語のおわり』にしますか」というのは、よくあるテーマではある。ただ、この本は理想の“物語”だけではなくて“人生”が綴られている。あくまで架空の話ではあるが。それでもやはり『物語のおわり』を想像してしまう。物語を読んで感じたり、自分の人生経験によってもその想像は変わるのだろう。物語は終わるが人生は終わらない。私としては続いていく人生の節目節目でこの本を読み、そのときどんな終わりを頭の中で描くのか、その変化も楽しみたいと思う。

  • 面白かった。

  • とりあえずお勧めの読み方を。そんなに厚い本でもないので、休まず一気に読んでしまうことをお勧めします。

    最初の「空の彼方」は中途半端なところで終わり、末尾には「この物語に続きはない」とある。次の話は場面も人物も全く違っていて、ああなるほど、結末を読者にゆだねる形の独立した物語を集めた短編集か…と思ったら違った。最初の短編「空の彼方」の原稿が色んな人の手に渡り、その人たちがそれぞれ想像した結末が語られるという構成になっている。こんな構成の本は個人的には初めてで、とても新鮮だった。
    原稿は最後、収まるべきところに帰ってくる。
    「空の彼方」のほんとうの”物語のおわり”は実はあって、本の最後で明かされる。自分は最初、それは野暮なんじゃないかと思った。せっかくいろんな人にとっての”物語のおわり”が描かれたのに、そこに正解のようなものをわざわざ示さなくてもよかったんじゃないのか、と。でも、考えてみると、「空の彼方」の結末は示されたけど、それを読んだ人たちの物語はやっぱり中途半端に終わっていて。今度はその人たちの物語の続きを想像するのも、楽しいのかもしれない。

  • 最初に始まる物語が、次々と色んな人に関わり、そして、それぞれの人達がそれを読み考える…
    思わずその度自分も考えてしまいます。

    そんな物語の結末も描かれており、それに対しても読者が考えされられる様なお話でとても惹きつけられる物語となっているのではないかと思いますね。

湊かなえの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
湊 かなえ
辻村 深月
湊 かなえ
米澤 穂信
湊 かなえ
湊 かなえ
恩田 陸
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする