物語のおわり (朝日文庫)

著者 : 湊かなえ
  • 朝日新聞出版 (2018年1月4日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022648730

物語のおわり (朝日文庫)の感想・レビュー・書評

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  • こうしたい、ああなりたいと夢を持っている時に家族や身体や金銭のことで悩む。あるいは夢に向かって進もうとしている人に嫉妬して、それを阻もうとする。自分の方が人生経験があるからといって、子供の未来に賛同できず、反対する。
    どうすれば正解だったのか?
    そんな経験に思い巡らせながら読んだ。

    田舎でパン屋を営む両親のもとに生まれた絵美は朝の通勤通学前にパンを買いに来る繁忙時間にお店の手伝いをしていた。そのお客の中に隣町の高校に通う青年がいた。毎日決まって買うパンはハム入り。絵美は心の中でハムさんと呼ぶ。ある日お釣りを間違えたことから、ハムさんと会話をかわす。夢は小説家という絵美にハムさんは本を貸してくれることで急接近。
    北海道大学へ進学したハムさんだったが、卒業後は地元に戻り、自身は教職員となり、絵美との結婚を約束する。だが、小説家になりたい絵美は誰にも内緒で東京へ行こうとする。が、バス停にハムさんが待ち構えていたー

    物語はここで終わる。この後、2人はどあなった?どうなってほしい?

    読むべき機会を与えられた旅人たちが、それぞれに出した答え。私も旅人となって、原稿を受け取った気分になり、考えさせられました。
    イヤミスではありません。

  • 結末のない短編作が読み継がれていくお話。登場人物のつながり方が絶妙。最後には,短編作の結末も明らかになって,すっきりした。

  • 帯にあるように新しい湊かなえの作品という感じ。
    暗闇の中に光がある。
    こんな連作短編小説好きです。

  • 小さな閉ざされたまちに生まれ、大きくは変わらない人間関係の中で地に足をつけて生きていくのだと思っていた。だけど大きな夢に気づいた時、自分はどう動くのだろう。誰を説得して何を捨ててどこに行こうとするのだろう。

    山に囲まれた田舎町でパン屋の娘に生まれた少女、絵美は、山の向こうに広がる大きくて光に溢れた世界に憧れつつ、小説家になりたい気持ちを募らせていく。絵美の才能を知った友人が東京の作家の元へ修行に出ることを勧めるも、婚約者であるハムさんも絵美の両親も強く反対する。気持ちを抑えきれずに、駅に向かう絵美。そこにはハムさんが待ち構えていてーー。

    結末が書かれていない原稿が、北海道という広大な大地を舞台に、様々な岐路に立つ旅行客の手から手へ渡っていく。それぞれの状況に当てはめながら理想的な結末を思い浮かべて、登場人物たちは自身の問題解決に向けて一歩前進していく。

    特殊造形の道に進むために渡米したいと主張する娘との確執を抱える父親は、娘の将来を心配しながらも笑顔で送り出してやろう、と気持ちを整える。
    「なぜ特殊造形の道に進みたいのか。具体的にどんな勉強をしたいのか。どんな職業に就きたいのか。なぜ映画なのか。メインは特殊造形なのか、映画なのか。夢を叶えるために必要な努力とは何だと考えているのか。リミットを設けるのか。夢を叶えるために、何を守り、何を失う覚悟ができているのか。」全部答えることができたら、娘の勝ちを認めよう、と決めて。

    地道な仕事を選びキャリアを積んだ女性は、大きな夢を追いかけていた恋人との別れを、少しの感傷を伴って懐かしく肯定できるようになる。
    「僕には地に足付いていないと思える職業を目指している人を見ると、働くってことをなめんなよ。とか、おまえの夢なんて地道な仕事に就いている大多数の人の上に成り立っている余興みたいなもんじゃないか、なのに、自分は特別な才能がある、って顔しやがって、なんて、その人から否定されたわけでも、バカにされたわけでもないのに、吠えてしまいたくなるんだよね。いっぱいいっぱいの自分を守る手段だってことにこの歳になってようやく気付いたんだけど。」と話してくれた男性との出会いに助けられて。
    彼と自分が人生の一点で交わったことは間違いではなかったのだ、と少しばかり涙を流して、同じ生活に戻る。

    そして最後には、「絵美」がおばあちゃんとして、孫娘の悩みに寄り添う場面に辿り着く。
    ハムさんは東京に向かう「絵美」を連れ戻さず、絵美は挑戦も挫折も味わい、自分の判断でパン屋に戻ってきたことが分かる。
    それでもこれから先の人生で、もう一度くらい物語をかいてみそうな希望を残し、優しさと潔さと深い思慮を感じさせる、自分と向き合う小説だ。

  • 私は札幌の街と千歳空港しか知らず、ジンギスカンとカニの食べ放題と夜のネオンの眩しいススキノの街が私にとっての北海道である。しかし本作は私の浅はかな北海道像をぶち壊し、美しい坂の街や幻想的な湖の数々、どこまでも続く長い道と水平線などの広大で美しい北海道を描いている!

    『山女日記』を読めば山に登りたくなり、『リバース』を読めば高原のロッジに泊まりたくなる。本作『物語りのおわり』を読んだら北海道に行きたくなった!
    湊かなえの筆力に引き込まれてしまうのか自分が単純なのか思わず考えさせられる。


    山に囲まれた街で暮らす絵美は少し年上のハムさんに恋をする話で始まり、次は北海道を巡る五人の旅人の話!
    妊婦の智子→プロカメラマンを諦めようと思う拓真→駄目男と付き合っていた綾子→公務員ライダー木水→アラフォーキャリアウーマンあかねへと物語りの襷は繋がってゆく。

    主人公達は物語に触れ開き直っていく。

  • 短編小説集かと思いきや、全部がちょっとずつつながりのある話。登場人物それぞれが辛さや迷いを抱えながら、正解のない問いの答えを自分で選んでいく。その決断の瞬間に、袖振り合うも他生の縁程度の他人の関りが意味を持っていて、世の中捨てたもんじゃないなって思える。1冊の中に共感できる人物がいっぱいいて泣ける。

  • 1話ごとに終わりを自分で考えるのかと思いながら読んでいたら話は繋がっていてた。なかなか面白い作品でした。しばらくしたらもう一度読み直したいと思います。

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