- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022648730
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学小説】妊娠3カ月でがんが発覚した智子、娘のアメリカ行きを反対する水木……人生の岐路、彼らは北海道へひとり旅をする。そんな旅の途中で手渡されたのは結末の書かれていない小説だった。果たして本当の結末とは。あなたの「今」を動かす、力強い物語。
感想・レビュー・書評
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未完の物語が、北海道を旅する人から人へと渡り、それぞれの思いで完結していく連作短編集。
短編ごとの主人公の価値観によって、違ったかたちで完結していく未完の物語には、その人ごとの思いが込められていてホッコリさせられ読後感の良い作品だった。
しかしながら、どうやら私はそれを求めていない。
喜怒哀楽の隙間にある湿った本意を、遠慮なく突き付けてくる、読み手胸中を平気にえぐってくる、湊かなえが私は好きだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まったく覚えていない。
やはり
インプットだけでは何も残らない〜
だからこそ
ブクログに稚拙ながら
レビューを載せることにより、
アウトプットの真似事で少なくとも記憶に残るし、また振り返れば読んだときの気持ちも思い出す。
とにかく夢中で湊かなえばかり読んでた中の一冊!
だからまた、これからも読んだらレビューを頑張ろう。 -
結末が書いてないストーリーが最初にあり、そのストーリーを北海道旅行中のそれぞれ色々な状況下にある人物が読み、旅先で出会った人に手渡していく物語。一番最後には、実際の結末がどうだったかが分かる仕組みになっている。
斬新な感じで面白かった。
旅に出る動機も様々だし、本人が置かれている状況や元々の性格により、終わりのない物語からどんなものを得るのか、どんな最後を想像するのかが違って興味深い。
北海道の自然の描写も雄大。 -
未完の物語が、訳ありな旅人達にバトンのように渡されていく…。旅先での登場人物達の出会いが素敵でした。
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引き込まれるように、すごい勢いで読みました
人によって、環境や自分の状況によって、同じ文章でもラストは変わる
人生は、結局全部自分で選んでいるのだと改めて考えさせられました。
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読み終えた後、北海道を旅したくなること間違いなし。いやいやそれは本筋ではないだろう。『山女日記』の読後のような感じでしょうか。あぁ、そこでそう繋がるか! と膝を打つ。人の縁と運、今だからできること...。また、こっち系の作品をぜひ生み落としてください!
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空の彼方のストーリーが、其々の事情を抱えた北海道の旅人の手に渡って行く。其々の人生を一遍の小説で繋ぐ。斬新で試行的な作品と思いました。
この小説は素敵ですが、読後のイヤミス不足は否定できず。。。 -
小さな町のパン屋の娘「絵美」はこの町から出たことがない。。
絵美の楽しみは小説を書くこと、そして心を寄せているパン屋の常連「ハム」
さんに感想を聞くこと
北海道大学へ進学したハムさんだったが、卒業後は地元に戻り、自身は教職員となり、絵美との結婚を約束する。だが、小説家になりたい絵美は誰にも内緒で東京へ行こうとする。が、駅にハムさんが待ち構えていたー
と短い小説で終わる・・・この続きはご自身で考えてくださいと
小説が北海道旅行へと旅に出るそこで出会った人々は?
舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。
その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。
少女から、妊婦に。
妊婦から、写真家志望だった若者に。
若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。
女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。
父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。
そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。
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この文庫本ではなく、単行本を読んだ時に書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>
冒頭───
あの山の向こうにはなにがあるのだろう。物心ついた頃にはすでに、わたしはぼんやりと遠い景色を眺めながら、そんなことばかり考えていました。深い山間の盆地にある、小さな町で生まれたわたしの目に映るのは、町を取り囲む大きな壁のような山とその上に広がる青い空ばかりです。両親は夫婦二人で小さなパン屋を営んでおり、午前二時に起きてパンを作り、午前六時から午後六時まで店を開け、仕込みを終わらせて午後九時には床に就くという毎日を過ごしていました。店の名前は<ベーカリー・ラベンダー>。しかし、父も母も生まれたときからこの町で過ごし、旅行に出たこともなく、紫色の花が絨毯のように広がっているという北海道のラベンダー畑など見たこともありません。
───
湊かなえの一人称独白形式“ですます調”の語りを読み出すと、まだ物語の伏線も語られていないのに、何故か背筋がぞわぞわしてくる。
まるで、パブロフの犬の条件反射みたいに。
初めて読んだ『告白』の印象が強烈に残っているからだろう。
イヤミスの女王、湊かなえ。
その女王の作風がここ最近変わってきている。
この前作の「山女日記」も嫌な読後感とは程遠く、爽やかな物語だったし、最新作のこの作品も、心がほのぼのするような物語だった。
別にぼくは、これまで彼女のイヤミス作品を特に期待して読んできたわけではなかったから、作風が変わったからといって何の不満もない。
それどころか、どんな作品でも書ける才能を持った湊かなえという作家に憧憬の念を抱くだけだ。
誰が書いたのか分からない男女のささやかな恋愛『物語』。
何故かその話は肝心の結末まで書かれておらず、『物語』は途切れている。
女性は夢を叶えるために東京に旅立つのか?
彼女を駅前の停留所で待っていた恋人の思いとは?
はたして、本当の結末はどうなったのか?
そんな序章のもとに、この小説は始まる。
舞鶴からフェリーに乗っての北海道の旅。
その旅の途中で手渡されるのが、この一つの『物語』。
少女から、妊婦に。
妊婦から、写真家志望だった若者に。
若者から、テレビ番組制作会社に就職が決まった女子大生に。
女子大生から、進路問題で娘と喧嘩をした父親に。
父親から、今の自分の姿に疑問を抱く四十代の女性管理職に。
そして、女性から『物語』を手渡された最後の人物は───。
いろいろな別れや後悔を伴った思い出を胸に北海道の旅を続ける人々の手によって、その『物語』は次から次へと受け継がれていく。
この未完の『物語』を手にして読んだ人たちは、その人なりのエンディングを思い描くことで、自らの旅の目的に対する答えを見出す。
それは、未来に希望に満ちた暖かな光が射し込むようなものだった。
人生の曲がり角にはいろいろな選択肢がある。
夢を抱きながら、その度々、誰もが迷い悩む。
どちらが正解かなんて誰にも分かりはしない。
でも、自分が本当に求めているのは何かを真剣に考えれば、それが結果的には正しい選択だったということになるはずだ。
もちろん人間だから、後悔しない人生なんてありえないけれど。
闇の中に一筋の美しい光が射し込んでくるような物語。
ありきたりな言葉で締めくくりたくはないけれど、感動しました。 -
イヤミスの異名をとる著者のイメージを覆し、読後感は『山女日記』に類する作品。
「空の彼方」という短編小説が、北海道を旅する旅行者の手から手へと渡される連作。
大きな事件が起こるではなく、北海道の各地の風景描写がリアルで、主人公たちと一緒に旅をする気分になれる。
一人旅の友としてこの小説を携えて、読者も主人公たちとともに、自らの来し方行く末に思いを致すのも一興か。