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- / ISBN・EAN: 9784022649119
作品紹介・あらすじ
【文学/日本文学小説】2月公開の映画「あの日のオルガン」の小説版。知られざる歴史の一ページ「疎開保育園」の物語。太平洋戦争末期の東京・品川の戸越保育所では、空襲におびえる日々が続いていた。保育士たちは、自分たちで園児を疎開させることを決断する。
感想・レビュー・書評
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映画がとてもよかったので、活字でも作品世界を味わいたくて購入。太平洋戦争末期、過酷な状況の中決行した保育園疎開。様々な苦難に喘ぎながらも53人の子供の命を守ることに奔走した若き保母達。
ノベライズのよさとは「読みやすさ」だと思う。本書も、映画の場面が鮮明に思い出せるような、なめらかな文章。保母達の泣き笑い、子供達の可愛らしさが戦時下でも生き生きと描かれている。映画では何となく察するしかできなかった保母達のバックグラウンドがさりげなく描かれているのもよかった。保母としては甘ったれで不器用な、主役の光枝。おいおい…と突っ込みたくなる場面もしばしばあったが、ノベライズを読むことで、己の能力不足を自覚した上で、それでも失敗を重ねてしまう不甲斐なさがひしひしと伝わってきた。そう…あまりにも重責な、疎開保育。実現に至るまでの道のり、いざ決まってからの準備も、気が遠くなるほどの重労働なのだ。それでも、天真爛漫な光枝と子供たちとの微笑ましい場面は心が和む。
東京大空襲以降の展開は、とにかく胸が苦しい。壮絶なシーンの連続、心が引き裂かれるような悲しさ。重く辛い状況に打ちのめされながらも、残されたものは生きていかなければいけない。そんなメッセージが胸に深く突き刺さる。
五十嵐佳子さん、読みやすいながらも、丁寧で深い描写が印象的だった。小説としても十分に読みごたえのある作品となっている。本書と映画、是非ともセットで味わって欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分だったら幼い子供を一人疎開させるか‥
すごく悩むって、まず思った。
まだ若い保母さん達の奮闘が泣けてくる。
子供達が親と離れて暮らすことを、どう思って過ごしたのか‥
やるせなく切なく悲しかった。 -
戦争は二度と起きてはいけない。
疎開して親代わりをするなんて、想像を絶する。
覚悟がすごいし、尊敬しかない。 -
映画を観てから原作を読んだ。主任保母として疎開保育園を立ち上げた楓の年齢が今のわたしと変わらないことに驚いた。戦争は絶対にしてはいけない、誰も幸せにならないことを改めて思わされる作品だった。いつの時代にも子どもたちが健やかに幸福に過ごせるよう奮闘する大人たちがいる。わたし自身も日々仕事で子どもと関わっているからこそ、それをより強く感じた。
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実話をもとに、戦争がいかに「子ども」「保育」「日常」を踏み荒らすかを教えてくれる作品。
「あの人はどうなったの?」という点がいくつか消化不良なので星は半分ほどだが、戦争ってこういうことも引き起こすんだという意識を持つには、大変貴重な作品だと思う。
戦争は大切なものを次々に奪っていく。
どこへ逃げたって同じ。……戦争は追いかけてくるんだから。どこまでも、どこまでも、どこまでも。
(本文より)
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映画をそのまま小説にした本。
映画の原作とは違います。
映画では聞こえなくされていた楓の年齢の設定がわかったので、スッキリしました(笑) -
戦争の悲惨さを改めて感じた。
原爆に焦点が当たるのは当然だが、多くの人の命を奪った焼夷弾。無差別攻撃。
戦争を起こしたのは誰か、もう一度紐解く必要があると思う。
疎開に付き添った保母さん達、本当に大変だったと思う。
子供達のおった傷は、大人になってどう影響しただろうか。
著者プロフィール
五十嵐佳子の作品





