- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022649409
感想・レビュー・書評
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新興宗教(カルト)に飲み込まれていく家族の話。タイムリーな感じがします。主人公ちひろか幼少時病弱であったことから「金星のめぐみ」という水に両親が頼り始めます。
そこから、仕事を変え、家は引っ越しを繰り返す度狭くなっていきます。姉は16で家を出ていってしまいます。
全体に主人公ちひろがあっけらかんとしていて物語は明るく進展します。一方で怪しい祭壇や行事、ルールなどが時おり顔を覗かせます。
でも愛情いっぱいの親(ただし周囲の忠告は聞かない)や友達にかこまれ成長していきます。
カルト宗教はその家にとっての「文化」といえるほどの位置付けになり浸透していく描写がよくよく考えると恐い。
歴史を紐解くと、司馬遼太郎「妖怪」では生きることの苦しみから現世を否定し、極楽往生にのめり込んでいく京の人びとが描かれます。後の一向一揆もしかりです。
また同「世に棲む日々」では、尊皇攘夷という思想を手に入れた志士たちが猖獗の限りを尽くしていく様が描かれます。人間は思想を得ると世界が一気に広がった気がし、行動が飛躍すると言います。思想は本来硬質で柔軟性とは対極にあるともいい、一つの考えにとらわれる恐ろしさを示しています。
そう考えたときに、カルト宗教や特定の思想は、人びとの生きること、人生や社会への不安から巧妙に忍びより、入り込んでくるような気がします。
最後に両親と星を見る描写があります。
両親とちひろそれぞれに流れ星を見つけるけど一緒には見つけられず終わります。
やがてちひろが離れていく暗喩なのか。
それとも迫ってくるカルトにとらわれる暗喩なのか。ちょっと考えさせられる恐い終わりかたです。
今村さんははじめての作家さんでしたがとても読みやすい文章であっという間に読了しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ラストをどう読み取るか。
なかなか見えない流れ星。それは「この団体に対する信頼度合」につながるのかな。
わたしの伯母のこと。
伯母とは、高校生の頃まで一緒に住んでいた。今は、わたしのよき理解者。で、近年マルチ商法のようなものにはまっている。伯母とは離れて住んでいるし、それによってわたしに迷惑がかかっているということもないし、いつか困った時に力になれることがあればしたいと思っている。でも、もろに影響を受ける環境、たとえば一緒に住んでいるとか、わたしの友達までマルチ商法に巻き込んだりとか、そんな環境下にいたらどうだろうか。
巻末の小川洋子さんの言葉を借りれば、「疑問は持っているが親のことを非難せずにとりあえず受け入れる妹」と、妹のせいで両親がおかしくなってしまった、すでに自分には関心が向けられなくなってしまったと思う姉。わたしは妹と姉、どちらに近い感情を抱くだろう。
生まれてすぐ享受する環境を「そういうものだ」と受け入れる。生きていく中で、自分が受け入れているものに対して疑問を持つ力というのは、どこから生まれてくるのだろう。
「むらさきのスカートの女」を先に読みたかったけれど、みなさんの感想を読ませていただいているうちに、こちらを先に読みたくなりました。初の作家さん。
昔はこういう、解決できない部分の多い(ラストや雄三おじさんや姉のこと)作品を好きになれなかった。でも今、この読者にゆだねる形のラストを清々しいと思ってる。内容的には、虐待ともとれるし、ブチ切れたっていいはずだ。現に、その感覚はそれとして残ってる。それでも、清々しさの方が強く有るのは、ちひろの「疑問に思う力」がいつか「この家を出る力」になるのかな、と思ったからかもしれない。
そして、小川さんの「悪意のない家庭だとしても、平和ではないということが残酷です」「この子が世の中に出たら大変だろうな。新しい家庭をつくっても、安心して里帰りできるのかな」という視点が、「家を出ること」のはるか先をいっていて、さすがの想像力・洞察力だと思いました。-
私はこの作品を映画で見ました。ラストの星の場面はうまく描いていたようですが、考えさせられますね。私はこの作品を映画で見ました。ラストの星の場面はうまく描いていたようですが、考えさせられますね。2023/03/18
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myjstyleさん
こんばんは~
コメントありがとうございます!!
ラストシーンは、原作より考えさせられました。
いろんな...myjstyleさん
こんばんは~
コメントありがとうございます!!
ラストシーンは、原作より考えさせられました。
いろんな意味に捉えられますし、星と家族という、一般的にいうとポジティブな意味合いのもので終わらせていますが、この作品的にはそうでもないような。個人によって本当に多様な意味合いで受け取れそうな、いいラストでした。2023/03/18
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同じところにいて、同じものを見ていても、
見えているものは違う。
それはたとえ親だろうと。
信じるものが違うから。
でも、信じるものが違うからといって、
相手を否定してはいけない。
私とあなたの見えているものは違う。
私は私の道を行く。
それを最後の流れ星を見るシーンで
表しているのだと思った。
あのシーンは色々な見方をする人がいるだろう。
信じたいものを信じれば良い。
それは宗教だけじゃないんだ。
自分を見直せる素晴らしい作品だった。-
2022/02/09
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入門におすすめですか。
うーん、難しいところですね。
私は「むらさきのスカートの女」を読んで今村夏子
さんにハマりました。し、今村夏子を...入門におすすめですか。
うーん、難しいところですね。
私は「むらさきのスカートの女」を読んで今村夏子
さんにハマりました。し、今村夏子を初めて読む
友達にすすめたところ、面白いと言ってました。
読み終わった後は「意味がわからない」と言っていましたけど…
賞もとっている作品なので、
「むらさきのスカートの女」ですかね。2022/02/11 -
2022/02/12
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今村さんの小説には、世界観がなんだかよく分からないままに、さらりと流れで読んでしまえる不思議な力があると思う。
ちいさな子どもと会話をしているような気分にさせられる、と言えるかもしれない。
この小説は、中学3年生の主人公、林ちひろの視点で「怪しい宗教」にのめり込んでいく家族を描いている。
暴力と悪意に満ちた世界。そして、家庭の崩壊…
とても恐ろしいものを描いている。
でも、視野が狭い子どもの目線で描かれているから、確定的なものではない。
乗れるようになったばかりの自転車のようにふらふらしてるけど、たまに転ぶけど、まだ明るいものが感じられる。
悲惨な内容も目を逸らさず読むことができる。家庭の状況は、児童相談所介入レベルな気がするけど。
翻訳家の鴻巣 友季子さんは、この小説を読んで、以下のことを思ったという。
―「知らざる人の目」を通してくっきり見えてくるものがある。知らない、見えない、わからないというのは、知った、見えた、わかった後からすると、二度と取り戻せない「力」でもあるのではないか。
なるほど、確かに。
この小説には様々な謎が登場するが、ほとんどが謎のまま終わる。しかし、深い洞察もなく淡々と描かれているがゆえの不穏さ、心地悪さが漂っていて、それがなんとも言えない魅力となっている。
そして結末。人によって解釈は大きく異なると思う。僕にはとても恐ろしく感じました。
しかし、「家族」って、ほんとうに厄介ですね… -
宗教を巡る家族のお話。
女の子が身体が弱かったことがきっかけで、両親は宗教に入る。
高級で万能な水を頭上のタオルにかけると健康になるというもの。
確かに両親の心は救われた。
しかし、周囲から奇異な目で見られ、友だちもできず、親族とも上手くいかなくなり、女の子の姉は家を出ていってしまった。
宗教で得たものと失ったもの。どちらが大きいのだろうか。
両親も女の子も幸せそうなのだから、それでいいのかもしれない。
ところが、女の子は恋をしたことで現実を直視させられる。そして、親離れしていくのかと思いきや…
自分の意思で選んでいるつもりでも実はそうではないこと。環境によって無意識にコントロールされていることって意外と多い。特に宗教は。
女の子は物心ついた時から宗教に入っていて、それが当たり前だった。 少し大きくなっていた姉とは違ったのだろう。
宗教を信じる両親と、両親を信じる女の子の間にも大きな差を感じる。
信じるものに救われることと、当たり前を受け入れることは何かが違う。
どちらにしても、信じるものを否定することなど誰にもできない。
なんとも言えない不穏と恐怖と愛と…どう受け止めたらいいのだろう。
もしも大切な人が宗教に入ろうとしたら…
そこまで追い詰められていたのかとショックを受けるだろう。助かる方法は他にないかと必死に探すだろう。
心の拠りどころとなる人、もの、場所。宗教もそのひとつだとは思うが、最終手段だとも思う。
身近に相談できる人がいたら、いることに気づいていたら、と胸が苦しくなった。-
ひろさん、こんばんは♪
「宗教で得たものと失ったものどちらが大きいのだろうか。」
「もしも大切な人が宗教に入ろうとしたら…」
もちろん...ひろさん、こんばんは♪
「宗教で得たものと失ったものどちらが大きいのだろうか。」
「もしも大切な人が宗教に入ろうとしたら…」
もちろん宗教がすべて悪いとは言いませんが、難しい問題ですね…
考えさせられる一冊のように思います…
2023/05/20 -
1Qさん、おはようございます♪
そうですよねぇ。宗教にもいろいろあるし個人の自由だと思うのですが、入るに至った経緯を思うと…やっぱりいろいろ...1Qさん、おはようございます♪
そうですよねぇ。宗教にもいろいろあるし個人の自由だと思うのですが、入るに至った経緯を思うと…やっぱりいろいろと考えちゃいます。
ただひたすら女の子の視点で淡々と語られていて、いろんな読み方や感じ方ができる小説だなぁって思いました。
他の方の感想も気になります(*^^*)2023/05/21
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今村夏子 著
今村夏子さんの作品、好きだなぁって思う。
不思議な感覚の虜になる。
「星の子」ってタイトルで、読み始めが
病弱な幼い頃から始まるので、何となく、
そこに焦点をあてた“星の子”なんて思ってたら、
予想もしない展開が待ち受けていたが、期待を裏切らない…う、うむ⁉︎、と奇想天外な発想に迷いながら、唸らせてくれる作品。
巻末対談に豪華な
小川洋子×今村夏子の対談が用意されている
これはもう、好きな作家さん同士の対談
というのもあり、興味を注がれた上、
流石と言うべき、
小川洋子さんの視点鋭くって…私としても
疑問に思ってたことを、ズバリ解決してく
れたようで、スッキリした感じだった。
新興宗教、或いはカルト集団?的な要素を含みつつ、進行してゆく物語りは不穏な空気と不安な気持ちのまま、続いてゆくのに、登場人物の優しさと偽善、かと思えば、素直過ぎる着地に笑えたり、不思議な作品健在!と…いったところだ(笑)
ラスト対談の小川洋子さんの書評が面白い。
この作品について 書評などで、「このラストは希望が見えてすごく良かった」というように書かれたりしていて、
「ええーっ。これのどこに希望が?」と私は思ったりするのですが。の下りには笑えた( ´ ▽ ` )
それと、なべちゃんの彼氏のピントハズレなやり方の慰め、いい味出してますよね( ̄∇ ̄)同感、同感!
「おれてっきりかっぱかなにかだと思った」というところに、小川洋子さんは傍線を引いたらしいが(笑)私は読みながら思わず、吹き出して爆笑してしまいましたよ( ^∀^)
今村夏子さんの面白さ、才能を上手く具現化出来ないので、またもや、
小川洋子さんの言葉を借りれば…
“子供の目に映ったままを書こうと思っても、
ふつうは大人になった自分が子供のころを思い出して書くやり方でしか書けないですよね。まだ生まれて何年かしかたってない、
みどりがかったような瞳の中に作家が入れる
のは、それは稀有な才能ですよ。”
まさに、今村夏子さんは、
そんな作家さんだと思う。
他の今村さんの本も読みたいと思うばかり。
”書くことがない。”って言ってるけど…。
余談であり、私事ですが、
実は、現在、私は入院中のベットの上で
この本を読み…感想を書いてる
疲れが、本を読んでるといつの間にか本を
片手に眠りこけたりしながら…(_ _).。o○
しかし、辛い時にも、本を読むと癒される。
今、病院でニュースを観ると、コロナ拡大の驚きの暗いニュースばかりだ
現在、入院にあたっては、先ずPCR検査が
優先される
その結果により、治療もスタートか否か決まる(延命治療にあたる癌治療も嫌だが…)
PCR検査結果-陰性となれば…ホッとする。
治療出来るというモチベーションよりも、まわりに迷惑かけなくてよかったって思いの方が強い。
この、病院には外来でPCR検査もなく、普通に通ってたわけだが、実際、入院の為のPCR検査を受けるとなると、結果出るまで、病室から出ないことは、無論のこと、家族でさえ、完全面会謝絶、看護師さんもピリピリしており、まるで…(・_・;
えっ!検査受ける前まで普通にマスクして、接してたのに…こちらも、こんな状況で検査するのも…不安と、やるとなると心配になったり、妙な気分だったが、こんな時でなければ、検査すら受けられないのだと思うと、
有難いのだろうか?有難いのだろう…
ワクチンの予定は全くの未定だ!
で、検査結果はOKだったので、満を持して、
治療スタートだ!あんなに怖がっていた看護婦さんも、嘘みたいに緩くなった
見えない恐怖は続いてるのに、見える検査結果には誰しも、一旦ホッとするのだろうか。
かなり、話は逸れてしまったが、これは
ブクログで、個人のブログでないことは承知しているが、出来れば、同じように、病気で不安や悩みを抱えている方達に生の声を、時々…お届け出来たらって、私なりに真剣に思っている。
今の自分には、多分、身近な形では、本にしか癒しを求められないのかもしれない…しかし、ブクログの皆さんの本棚を拝見し、
レビューに勝手に心癒されている。
そして、私も思うがままに、ひとつの趣味みたいに、感想を書かせて頂いている。
まだまだ…読みたい本やブクログさんのレビューもあるので、
何とかしぶとく頑張ろうって思ってます。
今、TVのニュースで吉村知事が現時点のコロナについて、語っている。
隔離されたような病室でいるのが…安全なのかな?しかし、どんなに、ダラダラ怠慢にしたり、苦しんだりしていても、
やはり家は落ち着くなぁと改めて思う。
この本もそうだが、何だか不安を残したようなラストになりつつあったけど、主人公にとっての家族(両親)とは自分の中のその時の住処をあらわしていたのかな…。
ただ、お姉ちゃんは何処に?が気になりつつ読了。-
私は闘病経験があるので病院が大の苦手で嫌いな人。この状況下での入院は大変でしょうね。頑張って下さい! 陰ながら応援しています。フレーフレーh...私は闘病経験があるので病院が大の苦手で嫌いな人。この状況下での入院は大変でしょうね。頑張って下さい! 陰ながら応援しています。フレーフレーhiromida2さん2021/05/01
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しずくさん、ありがとうございます。
しずくさんも体験されてるんですね(^人^)
誰しも、拘束感あるのは辛いですね( ; ; )
私も、精神...しずくさん、ありがとうございます。
しずくさんも体験されてるんですね(^人^)
誰しも、拘束感あるのは辛いですね( ; ; )
私も、精神的ストレスが大きいです、連休前に一旦退院して、毎週外来の方向で考えてます(^◇^;)応援嬉しかったです♪
応援受け止めて頑張ります。
今は、コロナとの闘いにも、皆んな同じように大変な時期、心の置き場に戸惑いますが、
しずくさんも、どうぞお体大切に、頑張っていきましょうねヾ(´▽`*)ゝ2021/05/01
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今村夏子さんの作品は、「むらさきのスカートの女」、「あひる」という順で読んできており、私の頭の中で勝手に、「不穏で微妙に怖い作品を書く人」というイメージが出来てしまい、この作品を読んでいるときも大袈裟だが、いつ不穏になるんだと、常に背中にナイフを突き付けられているような落ち着かない気分だった。
が、これが意外にすんなり進行するし、怖さを感じないしで、少し毛色の違う印象を持ちました。
あらすじには、家族のかたちを歪めていくと書いてあったが、ひねくれているのか、私には、あまりそうは思えなかったんですよね。
確かに主人公の中学三年生、「林ちひろ(ちーちゃん)」にとって、両親がきっかけで、悲しい思いを何度も味わってきているのだが、これが意外に重苦しくならないのは、なぜだろう?
「なべちゃん」や「新村くん」のような、両親は両親、ちーちゃんはちーちゃんって、良識をもって見てくれる人がいることも確かだが、ちーちゃん自身の素直な人間性、例えば、美味しいものが食べられるだけで単純に幸せな気持ちになったり、社交的で過去を振り返らず、今、その瞬間を素直に楽しむことができる事など、いたって普通の子であること。
また、それとは別に、ちーちゃんのニュートラルな感じが、私には印象に残り、両親のせいで嫌な思いをしているのに、ちーちゃん自身の両親への接し方は、あまり変わらないこと。
もしかしたら、姉が家を出ていって帰ってこないことが一因になっているかもしれないとも考えたが、それなら、叔父の誘いを断るちーちゃんの真意と、ラストの星空のシーンが矛盾しているように感じられる。
そう、ラストシーンは、散々失礼なことを書いておきながら、あっ、いい光景だなと思ってしまった。
ちーちゃんにとって両親は、人からどう見られようと、あくまで両親なんじゃないかなと思えるような、ちーちゃんの人柄の良さには、注目すべきなのではと思いました。
いやいや、分からないよ。捉え方によっては怖いラストシーンでしょう、と思う方もいるでしょうが、ちーちゃんは多分、それも含めて、両親は両親なんだと覚悟していると思う。
それから最後の、今村さんと小川洋子さんの対談、すごく読みたかったけど、「こちらあみ子」のネタバレがありそうだったので、途中で断念することに。残念無念。-
たださんこんばんは
今村夏子さんの作品は「常に背中にナイフを突き付けられているような」気持ち、わかります!私は「こちらあみ子」を昔読んで、...たださんこんばんは
今村夏子さんの作品は「常に背中にナイフを突き付けられているような」気持ち、わかります!私は「こちらあみ子」を昔読んで、あまりにゾワゾワして怖かったのでそれ以来読んでないです。でも興味はあるので皆さんのレビューでうっすら堪能してます(笑)
小川洋子さんのラジオで前に「あひる」が紹介されてたのですが、怖さと笑いの両立みたいにとても面白くお話しされてたので、対談も読んでみたいと思いました。2021/12/16 -
111108さん、おはようございます。
コメントありがとうございます(^o^)
小川さんの「あひる」の紹介を読み、私も似たような気持ちを...111108さん、おはようございます。
コメントありがとうございます(^o^)
小川さんの「あひる」の紹介を読み、私も似たような気持ちを持ったのを思い出しました。
そう、「星の子」も、何かぷっと笑えるような、可笑しみが共存しているから、ひとつの感情では表現しづらい独特の雰囲気をまとっているのかもしれませんね。
まあ、それはそれで却って怖いのですが(笑) 「あひる」は、まさしくそんなイメージでした。
それから、「こちらあみ子」は、ゾワゾワするのですね。怖そうだけど、それはそれで読みたくなりました♪
今村さんと小川さんの対談を読んだのは、序盤だけでしたが、「書くことがないという人は信用できる」という小川さんの発言に、はっとさせられるものがあり、真摯な思いを感じました。2021/12/17 -
2021/12/18
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◆あらすじ
病弱な自分を救う為に両親が宗教にのめり込んでいくー。
◆感想
成長していくにつれて自分の家族の生活習慣が明らかに周りと違うことに気付いていく。だけど、その原因は自分が生まれつき病弱だったこと、そして自分に向けられた両親の愛情の印あるということの皮肉。ちーちゃんの複雑で苦しい心境が伝わってくる。
最後の終わり方がふわっとしていて筆者から明確なメッセージがあるというよりは、読み手に託された感が残った。
読後にちょうど本作の映画の記者会見があり、芦田愛菜ちゃんが"信じる"ことについて語っていて、その深さに感心させられるばかりでした。 -
子供は親を選べない。
もちろん親に感謝しています。それとは別のところで、親がこうだったらああだったら、と届かぬ望み(贅沢なかんじで)みたいな持つとこはあります。
それが、程度を超えて、不信感、社会的に問題を及ぼしそうなとき、子供はどう対処すればいいのか。
ちひろは5歳から中学と人格形成出来きつつある渦中で親の違和感に気づく。例えばこれが赤ちゃんの時からだったら、それさえ気づかないのだろう(こわい)。もう少し年が上だったら姉のように家を飛び出すこともできたかもしれない。
最後の研修旅行の章。親子で流れ星を見つける。
親が醸し出す「微妙な空気の間」に、これはちひろを手放す覚悟ができたのか、とも読み取れたが。いや、違う、気になるところがいくつかあって、これは地獄への入り口かともとれた。しかし、この親子にとっては地獄ではないかもしれない。取り込まれるかもしれないと薄々感じているちひろさえ、徐々になびいてゆくのか。こういう親子の愛もあるということか。
終始、ちひろは自分を客観視している。ある程度世間を見てきた大人側からでなく、純粋な少女のちひろから見える正直な世界がかえって重く、不穏な空気で行き場がなく苦しい。
思春期特有の友だち関係で傷ついた気持とかが、ずっとずっと前を思い出されるように表現されていて、ああその感じわかるー、とひとり頷く。
するすると読ませられ感が凄い。愛と狂気に満ちていたと思う。やっぱり、最後はICチップか・・。 -
生まれて病弱だった主人公を救いたい思いで両親は宗教にのめり込んでいく。それは家族の形を変え、親戚との関係も変え、主人公の人生にも大きい影響を与える。結末は明るくもなく、これからこの家族はどうなってしまうのだろうかと思ってしまうけれども両親からの愛情や周りの人達からの優しさを感じ、けして主人公は不都合な事は多くても不幸とは思えないそんなお話でした。
読み終えると幸せって周りが考えている事とは違うのかも、、、そんな気持ちになりました。
最後に小川洋子さんとの対談も書かれていてこれがまた良かったです。
著者プロフィール
今村夏子の作品





