犬身 下 (文庫)

  • 朝日新聞出版 (2020年1月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784022649461

みんなの感想まとめ

物語は、強い犬化願望を持つ30歳の女性が犬に変身し、知人の飼い犬としての生活を送るというファンタジックな設定から始まります。しかし、物語は次第に重苦しい展開へと進み、主人公の置かれた環境や人間関係の複...

感想・レビュー・書評

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  • 梓こそ犬のように従順な人だと思っていたから物語の終盤で兄からの虐待を暴露したことを意外に感じた。私は加害者もまた何らかの被害者でないかと考えるので彬も或る意味で虐げられた人だったのではと思う。また梓は兄の暴力より母の無関心の方が辛かったのではとも思う。クリスマス前にヴァン・ショーを分け合う場面が最も美しく記憶に残っている。梓はどう過去と折り合ったのだろう。フサが居て良かった。でも。

  • 社会通念上想定される型からこぼれ落ちた感情や関係性の機微を描かせたら、松浦先生の右に出る人はいないのではとすら思えてしまう鮮やかさ。主人公と久喜の(人間としての)今生での別れのシーンなど、読んでいて本当に切ない。『どう』なりたいわけではなく、しかし自分にはこの人しかいないのではないかという、帰結する場所のない関係性。こののっぴきならなさ。

    私には、「犬になる」ことは、「社会規範に縛られない関係性を模索すること」よりも、むしろ「“飼い主と犬”という絶対的かつ相互に幸福な関係性へ向かって収斂していくこと」への予感を孕んでいるように思えました。フサと梓だけが、「犬と飼い主」という社会通念に綺麗におさまる関係性の元に収斂し、末長く幸せに暮らす結末を手に入れたのだ、と。

  • フサが生き返ってよかった。
    今度こそ、梓と犬生を幸せに全うしてほしい。
    朱尾がフサの魂をどうするか、気になる。

  • これだけページ数が多いのに、人間→犬に変身するというファンタジックな展開は数行で言及するだけで終わる。また、結末もあっさりしていて、物語の肝となる出来事の真相(朱尾の正体、ブログの書き手)は明確に語られない。その代わり、梓とフサの濃密な時間がじっくり描かれることで、読者も一緒に生活を共にしていたような錯覚を得る。
    「最愛の子ども」には及ばないが、その突飛な設定からはかけ離れているような生活に徹頭徹尾寄り添ったナチュラルな小説であった。
    房恵と仕事相手である久喜の関係性と、「奇貨」の登場人物のリンクについて、時間があるときに考えてみたい。

  • 強い犬化願望のあった30歳の女性が、ある日犬になる。望みどおり知人の飼い犬として幸せな日々を送れるかと思いきや……。読売文学賞受賞作。

    LGBTを通り越して、人間であることに違和感を覚える女性という設定にひかれ、また登場人物の名前も南総里見八犬伝の面々を用いて遊び心があったため、愛犬家が気軽に楽しめるファンタジーかと思っていた。ところが、初っ端からなかなか生々しく、本に向かう姿勢を早々に改める。

    話が進むほどに重苦しい展開となり、飼い主である女性の置かれた環境があまりにもおぞましく強烈で、読むのがつらくなってくる。またそのせいで、せっかくのユニークな設定や犬としての主人公の心のうちは、印象が弱くなってしまった感も。読みごたえはあったけれど、どちらをメインに書きたかったのか、長い割には半端な感じも否めなかった。

  • 分厚い本(上下巻に別れてないものを読んだので)。最初から気味の悪い描写が多くて、全く読み進めなくて挫折しそうだった。我慢して読んでいると、犬と飼い主の愛がほんわかと伝わってくる部分になって、なるほどふむふむと読んでいると、まさかのファンタジーに突入。えっ嘘でしょと思いながら、そこから本格的に気味の悪い世界になっていく。読んでいてどの登場人物も好きになれない。これでもかこれでもかと闇を描く。
    犬としての感情、散歩の気持ちよさや飼い主に対する愛情表現はとても生き生きとしていて、引き込まれるのに、なぜ人間のことはここまで悲惨に描き出すのか?と思ってしまう。
    最後までファンタジー部分は解明されないままだが、最後の数ページで突然気持ちが救われる。この数ページのために今までの暗黒があったのか?と思うくらい。
    その数ページがあるために後味は悪くはないが、読むのが疲れた。

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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