医療ミステリーアンソロジー『ドクターM』 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022649614

作品紹介・あらすじ

医療ミステリーで著名な人気作家たちを中心に、医療にまつわるミステリー作品を収録したアンソロジー。人気シリーズからの短編のほか、近未来を舞台にした作品や大学病院の政治闘争を描いた作品など、色彩豊かな短編集となっている。

感想・レビュー・書評

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  • 海堂尊、久坂部羊、近藤史恵、篠田節子、知念実希人、長岡弘樹、新津きよみ、山田風太郎『医療ミステリーアンソロジードクターM』朝日文庫。

    8人の作家による医療ミステリー短編アンソロジー。『ドクターM』の『M』はミステリーの『M』らしい。

    期待していた作品だったが、今一つ切れの無い作品が目立つ。この中で、長岡弘樹『小医は病を医し』と新津きよみ『解剖実習』が群を抜いて面白かった。

    海堂尊『エナメルの証言』。非合法組織の歯科医を主人公にした短編。こういう非合法な医療ビジネスのアイディアは面白いが、もう少しミステリーとしての捻りがあっても良かったかな。

    久坂部羊『嘘はキライ』。嘘が分かる主人公の医師は大学病院に勤める友人医師の病院内での権力争いに巻き込まれる。確かに今の世の中は嘘つきばかり。

    近藤史恵『第二病棟の魔女』。小児科病棟に夜現れる魔女の正体と魔女が解き明かす事件。やや冗長。2つの謎を描く必要性があったのかと思ったら、シリーズの第1作ということで納得。

    篠田節子『人格再編』。近未来の日本の現実を描いた短編。認知症の老女に人格再編手術を施すと人が変わったかのように。

    知念実希人『人魂の原料』。天久鷹央シリーズの1編。ユーモラスな一面のあるラノベチックな医療ミステリー。一見不可能なトリックを短編の中に上手く描いている。

    長岡弘樹『小医は病を医し』。もはや名人芸の長岡弘樹のミステリー短編。結末には毎度唸らされる。

    新津きよみ『解剖実習』。初読みの、この短編は面白かった。医学部で解剖実習に挑む女子学生。何故か物語の視点は解剖される遺体に移り変わり、まさかの展開に……

    山田風太郎『厨子家の悪霊』。時代を感じるミステリー。二転三転の展開。

    本体価格920円
    ★★★★

  • ありそうでなかった8人の作家による医療ミステリーのアンソロジー。
    海堂尊、久坂部羊などの医療ミステリーの代表格や、最近人気の知念実希人の安定の病院ミステリーから、脳内にチップを埋め込むことで人格を変えてしまうという、少しSFっぽい話があったりで、アンソロジーだけど、ほとんどが中編で読みごたえがあった。
    うち3作が既読であったはずなのに、全く覚えていない・・・
    大好きな近藤史恵の既にシリーズ終了となった「キリコ」シリーズの記憶がなかったことがとてもショック・・・
    それでも最近は読まなくなった篠田節子や新津きよみなどを久しぶりに読めたのは、アンソロジーならでは。
    他の方のレビューにもあったが、やはりダントツで新津きよみの「解剖実習」が面白かった。
    ラストの山田風太郎だけ初読みだったが、時代背景のせいか文章も読みにくく、二転三転する証言についていけなかった。ラストにこの話はちょっときつかったかな。

  • タイトルには「ドクター」の文言が入っているので、医師が主役となる作品かと思いきや、掲載作品は広い意味での医療系ミステリーアンソロジー。
    海堂尊は玉村警部補の作品。シニカルな主人公と桜宮サーガの馴染みのキャラクター達が繰り広げるファンならニヤニヤする作品。
    久坂部羊は、嘘をついているのが分かるという特殊な能力をもった総合病院勤務の内科医が、母校の大学病院前の時機教授選挙に巻き込まれる話。
    近藤史恵は、清掃人探偵キリコからの作品で、総合病院の小児科入院病棟で奮闘する新人看護師のどこかほっこりとしたお話。
    篠田節子は、近未来的内容なのにリアリティありありで流石な内容。
    知念実希人は、天久鷹央シリーズからの1編。キーポイントは若手看護師。
    長岡弘樹は、短編なのに内容の濃い傑作。この本では一番良かったかも。
    新津きよみは、ひねりが効いたナイスな一編。
    そしてラストの山田風太郎。流石に隔世を感じる内容だがあっと驚くどんでん返し。
    コロナ禍の2020年に編纂され、書き下ろし作品は無いが、初読の作家に出会えるのがアンソロジーならではの楽しみ。

  • 医療物のドラマは好きで、よく観ています。
    ミステリの要素が多いし、生き方や家族の問題も絡んで、見所が多い。
    テレビドラマでは、主人公がスーパードクターで、最後に水戸黄門的にピンチを救う、というパターンのものが多いですね。
    この本は、医療にまつわるアンソロジーですが、かなりバラエティーに富んでいる。
    COVID-19蔓延する中で医療従事者の方に感謝を捧げ、全ての人たちにお大事に、という願いを込めて編まれたアンソロジーです。

    『エナメルの証言』海堂尊
    ★★★★
    歯科医のもぐり稼業。
    こういうネタをトップに持ってくるところ、なかなかやる!

    『嘘はキライ』久坂部羊
    ★★
    医療とは関係ない特殊能力を持った内科医。
    白い巨塔ばりの教授選が描かれるが、短編なのに名前多すぎで派閥関係を把握するのが大変。
    の割に、その落ちか…と思ってしまった。

    『第二病棟の魔女』近藤史恵
    ★★★★
    子供が苦手なのに小児科に配属されてしまった新人ナース。
    彼女の成長と、子供達の家族の事情も描かれ、マルチな面白さ。
    元の、“モップ”のシリーズも読みたい。

    『人格再編』篠田節子
    ★★★★★
    若き女性脳外科医。この本で唯一の「失敗しない」系スーパードクターかもしれない。
    でも、面白さはそこではなく。
    SF…かもしれないけれど、ありえないという言葉を口にするのを忘れるリアリティと面白さ、そして、ちゃんと主張もあるしっかりした落ち。さすがさすが。

    『人魂の原料』知念実希人
    ★★★
    少し軽く感じるが、名コンビのシリーズ物ならかなり楽しめそう。

    『小医は病を医(なお)し』長岡弘樹
    ★★★★
    心筋梗塞で倒れた公務員と、肝硬変の警察官が同室にされ、医師のカウンセリングを受ける。
    少し短い話だったが、何か滲み入るものがある。

    『解剖実習』新津きよみ
    ★★★★
    成績が良いから、と担任教師から医学部を勧められて医師を目指した娘の解剖実習の日。
    母親は何故か、娘が医師に向いていないことを願い、本人は何故か、医師に向いていないと証明されることを恐れる。
    読み進むうち沼にハマる。
    この作家はアンソロジーで読む3作目。
    そろそろ、単行本を読みたい。

    『厨子家の悪霊』山田風太郎
    ★★★★★
    最後に全部持っていかれた。
    医療ものというか、主人公の肩書きが医師であるが、レトロな横溝正史ふう探偵小説の態。
    豪家の夫人の殺人事件の話であり、推理は二転三転し、単行本一冊読んだほどの満足感があった。

  • 8人の作家の医療小説アンソロジー。
    これは豪華だ。「医療ミステリ」と言われれば思い浮かぶ作家たちの短(中)編集から選ばれた8つの謎。
    どれもこれも読み応えありあり。いろんな切り口が楽しめてお買い得!!
    比較的最近の作品たちの中で最終章山田風太郎が異彩を放つ。いやぁ、ほんと面白いねぇ。癖になりそう。
    そして解説で紹介されるその他の作品たちがどれも面白そうでたまらない。この解説罪だね。

  • この手のオムニバスものはひとつふたつが良ければみっけもんだが、その通りで近藤史恵氏「第二病棟の魔女」と新津きよみ氏「解剖実習」は良かった。このお二人の作品は不勉強で読んだことが無いので今後読んでみたい。文章力でいうと篠田氏と山田氏が一段上手だが、題材と内容が今一つ。

  • 8にんの作家による、医療に纏わるアンソロジー。
    海堂尊『エナメルの証言』、近藤史恵『第二病棟の魔女』、知念実希人『人魂の原料』は、それぞれの作家のシリーズの一遍。
    篠田節子『人格再編』は、好ましくない人格を変えてしまう近未来にあり得るかもしれない医療法を扱ったSF。
    『小医は病を医し』の長岡弘樹は、警察小説で名を馳せたが、解説を読むと、デビュー時から医療小説を扱っていたよう。
    新津きよみ『解剖実習』は、進むにつれて視点を変えて行き、読者のミステリー感を刺激する。

  • 医療ミステリーアンソロジー。どれもひねりを出してる短編集。ずば抜けて面白いのはないけど、悪くもない。
    近藤史恵と新津きよみのがまあまあだった。

  • 読書備忘録597号。
    ★★★★。
    ちょっと勘違いしてた。
    過去に出版された短編集に含まれる医療ミステリーをピックアップしてまとめた本、ということです。
    主人公のシリーズものもいくつか含まれているので、シリーズとして読んだらより一層楽しめたかも!と思ってしまいました。
    ということで備忘録は不要と判断。
    エナメルの証言、第二病棟の魔女、人格再編、解剖実習の4作がめっちゃ面白かったです。
    短編集だけど600p近いボリュームは読み疲れ・・・。

  • 既読の作品も未読の作品も、意外な真相が隠れていて面白かった(^^)そして最後の丁寧な解説に、読みたい本が増えていく(^^;)

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著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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