夜の声を聴く (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 323
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022649652

作品紹介・あらすじ

優秀でありすぎるが故に引きこもりとなった18歳の堤隆太の前で、突然手首を切った女性。その魅力に惹かれるがままに、隆太は彼女の通う定時制高校・通称ハル高に通い始める。彼は高校で知り合った大吾が働く「月世界」というリサイクルショップの手伝いを始めるが、そこは「よろず相談」を受け付けていた。他愛もない疑問を解決していくうち、隆太は数年前に起きた未解決の一家殺人事件の謎に巻き込まれていく。青春小説から一転して、驚愕のストーリーに姿を変える、書き下ろしミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 中学二年の時からIQが高すぎ、母親も亡くしている隆太は家の窓から飛び降りたことがあります。
    そして引きこもりになります。
    18歳の時公園でいきなり手首を切った23歳の女性百合子にとてつもなく魅かれ百合子と逢うために百合子の通っている県立春延高校定時制課程に入学します。

    そこで、その後の隆太の人生をすべて変えることになる重松大吾と出逢います。
    そこで起こった1年間のできごとは多くの人物の人生を変えるものでした。
    家族のいない16歳の大吾は勤め先のリサイクルショップ『月世界』の二階に住んで、そこを営む70代の社長の野口タカエと二人で暮らしています。

    『月世界』は便利屋もやっていて、そこにいろいろなことを頼みにくる客の問題を僕は持ち前の頭の良さで解決していきます。
    そして、客の問題から大吾の抱えているとても大きな問題が発覚します。

    以下ネタバレしているのでお気をつけください。


    大吾は11年前に起きた有名な一家惨殺事件でたった一人生き残った男の子で、野口タカエは自殺した事件の容疑者の母親だったのです。
    ハル高で出逢ったちゃらけた同級生、重松大吾。彼が真の姿を隠していたことに僕はおののきます。
    僕は客の家族で大学教授の廣紀さんとともにその事件をも解決しようとします。そして、今までの事件の線とすべてがきれいに繋がって、事件は解決するのです。

    ミステリーの部分もありますが、この物語は主人公の僕の成長を書いた青春小説です。
    ハル高の卒業生たちが18年後に再会する賑やかな場面は大吾だけは姿をみせませんが、とてもよかったです。

  • 便利屋「月世界」に依頼された数々の難題。
    一見何の関係性もない出来事が徐々に繋がっていく。
    バラバラに散らばったパズルのピースが次々に揃い、スッキリした爽快感を味わった。

    世の中に絶望し引きこもりとなった青年が、入学した定時制高校で出逢った貴重な経験はその後の彼の道標となる。
    人と人との縁…楽しいことも辛く悲しいことも、全てひっくるめて糧にして前進することの素晴らしさ。
    膝を抱えもがき苦しんだ夜の底から見事に這い上がった姿が眩しく清々しい。

    宇佐美さん初読み。
    噂と違いそんなに怖くなくてほっとした。

  • 北上次郎のこれが面白極上本だ!「夜の声を聴く」宇佐美まこと著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/280353

    朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:夜の声を聴く
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22199

  • 「愚者の毒」と同じ作者だったので。

    もともと、できる限り事前の情報が無い状態で本を読みはじめる。
    読み始めるように、している。
    電車の中の煽るような広告や、
    口の上手い落語家の書評に痛い目にあったせいもあるし、
    シリーズものを愛する反動なのかもしれない。

    とくにこの作者は、
    ミステリーなのか、ホラーなのか、ファンタジーなのか、
    どこに進むのかわからないピンボールを見守るどきどきがある。
    今回は、突き落とされたり、穴に落ちたり感はなかった。

    リストカッターの女性に出逢ったことで、
    ひきこもりから定時制高校生になった主人公。
    同級生が住み込んでいるリサイクルショップにも通うようになる。
    飛び降り事故の謎、狸の謎、リサイクルショップの謎。
    謎が解けた時、親友となっていた同級生は旅立った。

    人が成長していく過程は美しい。
    つぼみが開いて、花開くごとく。
    読み終わって、映画の「Stand by Me」を思い浮かべたのは
    私だけではないはず。
    いつもより、優しくて甘い「お話」だった。

  • 総合的にはミステリー小説でしたが、部分部分に着目すると、恋愛に発展?や定時制学校のヒューマンドラマ?、何でも屋の日常的なミステリーなどあらゆるジャンルが含まれていました。読み進めれば進むほど、着地点がわからない状況になっていくので、展開に良い意味で裏切られました。
    そして、要となる11年前の殺人事件が、後半に登場するのですが、それまでの様々なエピソードがキーワードとなります。それらを総合して、殺人事件へと結びついていくので、壮大な作品に仕上がっているなと思いました。

    この作品では、様々な生と死に関する感情・気持ちが、はびこっています。十人十色、みんな違う願望を持っており、なかなか全てを解決することはできません。しかし、他人がいることで、自分はもしかしたら考えを変えられる事ができるかもしれません。前に進もうとしている登場人物たちの姿に温かな感動がありました。

    もちろんミステリーとしての醍醐味もあり、徐々に明らかになっていく殺人事件の全貌が、興味をそそられました。
    表紙の雰囲気からホラー的な感じを想像したのですが、そういった場面は少なく、日常な生活にピリッとビターな要素をアクセントに加えた作品かなと思いました。

    殺人事件のバックボーンが重厚で、それを色んなエピソードに散りばめているのは、読み終わってみて改めて素晴らしいなと思いました。

  • 登場する人物たちがいい意味で想像することができて、
    だんだん身近に感じるようになっていった。

    しかし主人公の「親友」とリサイクルショップのお婆さんの関係が、どうしてもそこまでショックなものに思えず…
    主人公が悩めば悩むほど冷めてしまった。

    でもいろいろな相談を解決する過程は楽しくて、
    もっといろいろな話を読みたいな、とは思った。

  • 学校に馴染めず中2で引きこもりとなった隆太は、公園で目の前で手首を切った女性に引き寄せられるように、彼女が通う定時制高校に入学した。隆太が所属する「浅見クラス」にいたのは、様々な事情を抱えた同級生たちだった。やがて、同級生の大吾が住み込みで働くリサイクルショップ兼便利屋「月世界」を手伝うことになった隆太は、店に持ち込まれる厄介な相談事を解決していく。
    些細な不思議と疑問に端を発して、いつしか11年前に起こった一家殺人事件へと踏み込んでいく。それは、隆太の人生をも変える道だった・・・・・・。

    「月世界」に持ち込まれる奇妙な相談事を生き物の習性に着目して解決する前半は、さながら「探偵ガリレオ」のようで、これならなにも長編じゃなくても連作短編の方がすっきりするのになぁ~などと思いながら読み進める。
    だけど、謎が次の謎に連なり、隆太が、大吾が、ショップの社長・タカエが抱える闇が明らかになるにつれ、長編でしか語れない壮大な物語が見えてくる。

    全ての要素が収まる所に収まり、殺人事件の真相も明らかになり、隆太と大吾をはじめとする浅見クラスの生徒たちの今が描かれるラストは、爽やかでじんわりと涙も・・・。
    ミステリでもあり、少年たちの成長物語でもあり、社会派の要素もありとさすが宇佐美さんといえる充実の物語でした。

    文庫本書き下ろしっていうから、失礼ながら期待してなかったのですが、読んでよかった!
    でもなんで、いきなり文庫本なのかな~モッタイナイ

  • カバーを隠してどんな内容の本か先入観持たずに読み始めた。

    最初は自殺願望のある者同士のライトノベルかと思い、なかなか読み進まなかったのだが、途中から、あれ?これは少年探偵団の推理ものか?と。

    しかし色々な伏線が明らかになるにつれ、物語はそれはそれはもう壮絶なものに。
    『罪の声』を思わす壮絶さに。
    でもあれとは違い救いがありよかった。

  • 一人称(主人公目線)からの物語だったので、
    三人称(登場人物それぞれの目線)からの物語であった方が良かったかもしれない。
    主人公の彼が周りからどう見られていたかを描いた方が、物語が濃く深くなったような気がします。
    好みの問題ですが。

  • 目の前で手首を切った女性に惹かれた隆太は、彼女が通う定時制高校に入学した。やがて、彼は同級生の大吾が働く奇妙な店を手伝い始める。しかし、それは11年前の一家殺人事件に端を発する、歪んだ悲哀が渦巻く世界への入口だった!平穏な日常が揺らぐ衝撃のミステリー。(e-honより)

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著者プロフィール

1957年愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で第1回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞しデビュー。2017年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。作品に『入らずの森』『角の生えた帽子』『死はすぐそこの影の中』『熟れた月』『骨を弔う』などがある。

「2021年 『文庫 少女たちは夜歩く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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