- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022649751
作品紹介・あらすじ
温かい気持ちになったあとに、思わず涙があふれてしまう。――風格のある原宿の洋館はGHQの接収住宅でもあった。そこに小さな女の子はなぜ出没するのか?戦時中、「踏めよ 殖やせよ」と大活躍し焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンの数奇な運命とは?少しぼけた仙太郎おじいちゃんが繰り返す、「リョーユー」という言葉の真意は孫娘に届くのか?おさるのジョージの作者たちは難民キャンプで何をしていたのか?やわらかいユーモアと時代の底をよみとるセンスで、7つの幽霊を現代に蘇生させる連作集。【目次】第一話 原宿の家第二話 ミシンの履歴第三話 きららの紙飛行機第四話 亡霊たち第五話 キャンプ第六話 廃墟第七話 ゴーストライター
感想・レビュー・書評
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おどろおどろしい感じでもないしゾクゾクもないし、でも前編が幽霊話。もう10冊なるのかなあ、どこも人物像が擦れてないし、亡霊たち曾孫なんか素直で優しいから。戦後の時代だから大変なのもあるけどミシンとか味がある、終わりがあっさりしてるのもあるし、その後どうなるかとかあるけど。
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広義での「ゴースト」にまつわる短編集。中島京子だし、なんとなくイメージ的に、ホラーじゃなくテンダーゴーストストーリーかなと軽い気持ちで読み始めたのだけど、意外と裏に重い「歴史」の話があり、実は気楽に読めないタイプの話が多かった印象。
個人的にいちばん印象に残ったのは「キャンプ」キャンプといっても愉快なアウトドアのあれじゃなくて、難民キャンプ。主人公のマツモト夫人は、2人の幼い息子とまだ赤ん坊の娘を連れて逃げてきたが今は…。日本人だから、満州からかなあと思ったけど、その難民キャンプには世界各国のいろんな人がいるので、そういう具体的なあれではなさそう…というか、そうか、すでに彼女自身が死者であり、ここは死者の難民キャンプ、生前の執着が断ち切れるまで彼岸へは行けないだけなのかもしれない。彼女に起こったことが辛すぎる。キャンプにいる老人が語るナチスから逃げたハンスとマルガレーテの話が思いがけない実在の人物の話だった。
すでに認知症とおぼしき曾祖父の世話を焼く女子高校生・千夏。曾祖父を訪れる「リョウユー」の亡霊の話「亡霊たち」も良かった。千夏のお母さんがおじいちゃんは「ヒトウ」にいた、というのを「秘密の島=秘島」と思っていたのを、お父さんが「比島=フィリピン」だと訂正するくだり、ありえそうなエピソードでくすっとするけれど、そこから千夏は、大岡昇平のフィリピン戦記ものを読み始めることになる。
ネグレクトされている幼い少女きららが、戦後の上野の浮浪児だったケンタの幽霊と交流する「きららの紙飛行機」は、救いがあるような、ないような、しかし切ないお話。「ミシンの履歴」は1台のミシンが辿る昭和記で、ミシンの履歴部分はとても面白かったのだけど、導入の、現代女性が古道具屋でミシンと出会うくだりは少々蛇足というか冗長だったように思った。総じて、意外とメッセージが強くて、そこで好き嫌いが分かれるかも。
※収録
原宿の家/ミシンの履歴/きららの紙飛行機/亡霊たち/キャンプ/廃墟/ゴーストライター -
幽霊や幽霊に遭遇した人などが登場する短編集。戦争の時代に生きていた人たちの語られなかった言葉や思いを浮かび上がらせるような舞台やストーリーだが、どの話もコミカルさと暖さでほろっとさせ読みやすい。生きている人は死んだ人のことを思うことができる。死んだ人の思いも世界のどこかに残っていてそれが伝わることもあるんじゃないかな。
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魂の執念や記憶、想い、
ありとあらゆる角度からゴーストを書いた作品です。
人を脅かしたり、怨んだりと、幽霊=怖い
というイメージですがこの本の幽霊は全くそんなことは無く、
なんだか少し寂しいものなんだなと思ってしまいました。
語れない魂達の生きた記憶、少し覗いてみませんか…?
ホラー作品ではありませんので、
気になる方は是非読んでみてください。 -
幽霊の話たち。ちょっと物足りない。
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決して怖い幽霊、とかではなく
そこかしこにいるのかもしれないよ、ね -
幽霊にまつわる7つの短編集、縛りがあるためか中島ワールドの自由な広がりに欠ける。
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NHKの朝ドラが好みそうな戦前・戦中の時代設定の話がほとんどで、朝ドラが決して描かない確かにその時代に存在したであろう下品な雰囲気が覆うことなく書かれていた。
あまりに細かく書かれているが、作者は戦争を知らない世代で意外だった。
そういう時代背景が好きな人にはよい本かもしれないが、話にオチがないあたりなども私には今ひとつだった。 -
【所蔵館】
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