美術ミステリーアンソロジー『歪んだ名画』 (朝日文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022649799

作品紹介・あらすじ

立石の営む古美術店に、なじみの客から大量の骨董品を売りたいと申し出があった。それらの品にはある秘密が隠されていて──(「老松ぼっくり」)。掛物、陶磁器、絵画、刺青など美術にまつわる傑作ミステリーを集めた短編アンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 美術に絡んだミステリー、恋愛もの。赤江漠、泡坂妻夫、恩田陸、黒川博行、法月綸太郎、平山夢明、松本清張、連城三紀彦の競作だが、力作ぞろいで、この本は掘り出し物だった。入れ墨、日本画、陶器、骨董、ポロック、焚書ならぬ焚美術、洋画家などに関して、目くるめく世界が繰り広げられる。法月綸太郎「カット・アウト」は、真正面からポロックの芸術に切り込んでいて、読みごたえがあった。

  • タイトルは『名画』だが絵画に限らない美術ミステリーアンソロジー。


    赤江漠「雪華葬刺し」(刺青)
    ウン十年振りに読んだがやはり衝撃的。赤江さんらしい業と官能の世界が繰り広げられる。
    業は刺青師だけでなく刺青を入れる側の人間にもあった。
    ミステリーというよりは悲劇。素朴な疑問…こんなことしてる人に針を刺すのは危なくないのか?

    泡坂妻夫「椛山訪雪図」(水墨画)
    犯人が殺人を犯してまで盗んだ水墨画を何故戻したのかという謎解き。これは絵画がしっかり絡んだミステリーになっていて、事件の謎解きも面白かった。

    恩田陸「曜変天目の夜」(天目茶碗)
    過去に突然亡くなった友人の死が曜変天目茶碗の鑑賞をきっかけに違って見えるという構図。
    主人公も友人も司法関係者というのが鍵になるだろうか。

    黒川博行「老松ぼっくり」(古美術売買)
    「離れ折紙」に収録されていた作品で既読。古美術や骨董品売買の世界での騙し騙されを描く黒川さんお得意のサスペンス。主人公が黒川さん作品らしくなくて真面目に商売に取り組んでいるキャラクターなのが新鮮。もちろんしたたかさはあるけれど。なんだか振り込め詐欺に通じるところもある。

    法月綸太郎「カット・アウト」(前衛絵画)
    妻の亡骸をキャンバスに絵を描くという衝撃的な行動の意味は? 死者への冒涜と感じ彼と絶交した主人公の方に共感出来るのは、私にはそこまでの業を背負う覚悟も芸術的感性も持たないからだろうか。理由が分かってなるほどとは思っても、亡くなった本人が納得していたなら良いかと思っても、共感は出来ないままだった。

    平山夢明「オペラントの肖像」(?)
    すみません。SF設定についていけなくて途中挫折しました。

    松本清張「装飾評伝」(幻想画)
    異端の天才画家の短い生涯を小説にしてみたいと調べ始めた主人公が、画家の評伝を書いた彼の親友で画家の男に興味を持ち始める。
    二人の奇妙なバランスが次第に明らかになるところが興味深い。才能がある側、声が大きい側が強いとは限らない。

    連城三紀彦「火箭」(日本画)
    これまた連城さんらしい危険な関係を描いたものかと思いながら読んでいたら、さらに上があった。いやいや、全く理解不能なんだが。結局この画家は何を望んでいたのか。自らを苦しめることもまた芸術への道なのか。

    結論:芸術家の『業』を背負った人々のそばで生きるのは大変だ。

  • 美術品が絡む短編ミステリアンソロジー。収録された8作品は何れも名作。
    美術ミステリと言うと、盗難や贋作系、コンゲーム等を思い浮かべるが、掲載作は、どちらかと言うとどっしり構えて読む感じ。
    情念、怨念、復讐、そして、どんでん返し。静かなる愛憎劇の要素高め。赤江瀑の濃密な入墨の世界にはじまり、連城三紀彦の大人の恋愛を美しく描いた作品で終わる。どれもテーマが色んな意味で濃い。

  • 変わった視点の短編小説。

  • 珠玉の短編が8つ.千街昌之の解説も素晴らしい.「老松ぽっくり」は立石の巧みな商才と駆け引き鋭さが楽しめるし、「装飾評伝」では清張の緻密な文章展開が味わえる.「火箭」は伊織周藏の凄い嫉妬が文章から溢れ出る感じで、読んでいてぞくぞくした.芸術作品がここまで人間の感情を湧きたてるのだという事実を再認識できた.

  • あまり私向きで無かったようで、思うようにページが進まなかった。
    たぶん、どれも作品としては優れているのだと思う。
    でも、、、
    特に最初の入れ墨の話は、無理!ってなってしまった。
    2作目の「椛山訪雪図」は、絵画の知識がなくて解くことはできなかったけど、ミステリとして読み応えがあってこれは好み。
    「老松ぼっくり」もああいう雰囲気は好き。
    法月倫太郎作品のずしんとくる読み応えはさすが。
    でも、私にとっての1番は、やっぱり連城三紀彦作品だった。あの雰囲気、あの空気感。短編なのがもったいない。

  • 「椛山訪雪図」が秀逸でした。あまり馴染みのない美術も、こんなに面白いミステリーに仕上げてくれると興味が自然と湧くし、知識もすんなりと入ってきて楽しい。

    「椛山訪雪図」と「曜変天目の夜」以外は、美術ものが出てくるというだけで、ミステリーではなかった。
    殆どが男女のいざこざ系。

  • ミステリーっぽくないもの多い。
    ある程度美術の知識があった方が面白く読めるかも。
    『オペラントの肖像』はSF。

  • ミステリというジャンルの奥深さを知る短編集

    ディストピア設定の話はちょっと好みじゃなかったな

  • 美術ミステリーのアンソロジー。赤江作品は初読みだけど美しい刺青がテーマの妖しくエロチックな話で印象に残り泡坂さんの短編は絵画に隠された仕掛けに驚く。密かに長い年月をかけて復讐する松本清張の「装飾評伝」は何度読んでも面白い。連城作品も復讐がテーマなんだけど老画家の行動、気持ちがいまいち理解できす。でも好きな作家さんの作品が何点もあり読み応えがあった。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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