物語のなかとそと (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 861
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022649843

作品紹介・あらすじ

読むことと、書くことにあけくれて暮らす著者の日常は、現実を生きている時間より、物語のなかにいつ時間のほうがはるかにながい。散歩も、旅も、お風呂も、その延長のなかにある。

掌編小説と 全身で拾い集めた世界じゅうの瑣末なものものについて書かれた文章たち。著者の創作と生活の「秘密」がひもとかれるスリリングな散文集。

「すばらしい本を一冊読んだときの、いま自分のいる世界まで読む前とは違ってしまう力、架空の世界から現実にはみだしてくる、あの途方もない力。それについて、つまり私はこの散文集のなかで、言いたかったのだと思います」(あとがきより)

目次

【I】 書くこと
無 題
秘 密
「飛ぶ教室」のこと
パンのこと
食器棚の奥で
二〇〇九年の日記
地味な小説
運ばれてくるもの
透明な箱、ひとりだけでする冒険
神秘のヴェール

【II】 読むこと
読書ノート
模索と判断 ―― 私の人生を変えたこの小説
自 由
マーガレット・ワイズ・ブラウンのこと
奇妙な場所
川上さんへの手紙
絵本の力
あのひそやかな気配 本たちのつくる陰翳の深さ
辞書とおなじもの ―― 『ちいさなうさこちゃん』のこと
好きなもの
ここに居続けること
代官山の思い出
ゆうべのこと
最近読んだ本
二十年目の近況報告 ―― 二〇〇八年秋のこと
この三冊
こことそこ
荒井良二さんへの手紙
窓、ロアンの中庭
物語のなかとそと ―― 文学的近況

【III】 その周辺
散歩がついてくる
上海の雨
外で遊ぶ
所有する街
でかけて行く街
街なかの友人
弦楽器の音のこ
子供の周辺(一)
子供の周辺(二)
遠慮をしない礼儀
かわいそうにという言葉
豆のすじ ―― 作家の口福 その一
インド料理屋さん ―― 作家の口福 その二
お粥 ―― 作家の口福 その三
ほめ言葉 ―― 作家の口福 その四
旅のための靴
蕎麦屋奇譚
エペルネーのチューリップ ―― 春
近所の花 ―― 夏
なでしこのこと ―― 秋
雪の荒野とヒース ―― 冬
“気"のこと
彼女はいま全力で

あとがき

解説
小説家のなかとそと 町屋良平

感想・レビュー・書評

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  • 「ああ、かわいそうに! あれだのそれだの言われて、どっぷりと本のなかに身を沈められないなんて。と、思うことは思うのだけれど、現実と地続きの場所で読むからこそ、世界が立体的になるのだ、とも言える」

    「読むことは、どこに行ってもここに居続けること、なのだ。湿った土の上に、カエルのいる場所に、薄暗くなっていく部屋のなかに、降りだしていた雨のなかに」

    本に没頭すること、それは、いつでもどこでも可能なわけではない気がする。
    私は、私という身体が許すときでないと、本を手に取れないときがある。
    それに、窓から見える景色や気温、そんな現実世界の環境だって少なからず影響していると思う。

    けれど、私にとっては大切な「ここ」だ。
    それは、とてもよく分かるような気がする。

    江國さんは、旅にも出るし、美味しそうなご飯も食べる。

    女流作家は食に恵まれているのだろうか、私がよく読む人たちは皆、食事のシーンを丁寧に描く。
    そういう、自分の外にある物事に、私は無頓着な気がするので、いいな、素敵だなと思う。

    「わかりやすいことはいけないことなのだろうか、という疑問が随分以前から私のなかにあって、それが、わかりにくい方が文学的なのだろうか、というある種の憤慨となって、エネルギーをくれたようにも思います」

    ナラティブのように、わかりやすく心に沁み通る小説を書きたいと言う。
    けれど、ナラティブの奥底を覗き込むと、ぽっかりと深い穴が空いているのでは、と思うのだ。
    そしてその穴は、人の想像力でしか補えないものなんじゃないかなとも、ふと思った。

  • 勝手に、江角香織は小学校みたいな正しさとかを押し付けてくる小説を書く人だと思っていた。(本当にごめんなさい)時間が少しゆっくりになるような、現実逃避をしながら現実を生きられるような本だった。

  • ひとにはどれだけ年齢を重ねても変わらない部分があって、
    江國さんの場合、
    心のどこかでかつて女の子だった部分が成長をとめて、
    いまも残っているのだと思います。

    ひとによっては過去のことなんて思い出したくもない、
    蓋をして忘れたふりをしている、
    あるいは覚えているのがあまりにもつらくて
    ほんとうに忘れてしまったなんてこともあるでしょうが、
    江國さんは、
    幼いころのことや思春期だった時分のことも
    くっきり覚えておられ、楽しげに綴られています。
    そのような意味で健やかさを感じる散文集でした。

    心のどこかに無垢な部分が残っていると、
    それだけで大きな魅力になるんですよねぇ。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • この本を読んでいると、江國さんの文章の中にとぷんと浸かってゆらゆらしてるような感じがしてとても心地良い。
    本の中で紹介されている本も読んでみたい。
    ヒースの茂みであしたのジョーを胸中口ずさんだエピソードでは笑いを堪えるのが大変だった。静かな図書館で読んでいたので、そりゃあもう必死に堪えた!

  • 自分の生活も多分これくらい
    拾えるものは落ちているんだけど、
    拾える眼と紡ぐ言葉を持っていない。

  • 書くこと、読むこと、その周辺について。物語だったりエッセイだったり何かへの寄稿文だったり日記だったり。なんて独特でユニークで愛らしいんだ江國さん。そこにクスッとなったりグッときたりはまり込んでいく感じ。読んでいる本も食べているものも日常生活そのものも全てに江國さん自身が宿っている文章。一冊の本が江國さんそのものだった。素敵でトリコになりました。

  • 江國香織さんという人物に、すこしだけ近づけたような気がする一冊。
    読み終えたあとの、付箋の数がすごい。
    何度も読み直したいと思えた一冊。

  • 江國香織さんの紡ぐ言葉が大好きで、作品を読みあさった日々。

    今まで生きてきて、一体どのくらいの時間を「江國ワールド」で過ごしてきたのだろう。



    言葉と言葉が繋がり生まれる温度。

    さらさらと流れる文体が魅せる景色。

    染め上げられる色とりどりの色。

    ハッとする香り。

    心に沁みわたる物語たち。



    ページを開くと在る その「物語のなか」の世界に、私は何度でも夢中になり、入り浸りだった あの日々。

    そこで過ごした時間は、浸透し自分の一部となって、こっくりと「物語のそと」である人生を濃密にする。



    なんどもなんども「物語のなか」と「物語のそと」を経て、

    私自身の「物語」自体が終わりを遂げた後、

    江國さんがもたらしてくれた「物語のなか」である本たちがずらりと並ぶ私の本棚を見て、



    「贅沢なかただったんですね」と言われたい。



    そこにこの『江國香織散文集』も ひっそりときちんと 在ってほしい、と思うのだ。

  • 散文集。エッセイあり、掌編小説あり。書くこと、読むこと、その周辺、と分類されている。エッセイでも小説でも印象が変わらない作家さんだなと改めて思った。読むこと、からの『ここに居続けること』の中で本を読んでいる自分自身がそこにいていないものになる、に連なって「本に没頭していて日が暮れたことに気づかず、気がつくとひどく薄暗い部屋のなかで活字を追っていた、というとき、私は自分が長時間そこにいなかったことに気づくのではなくて、自分が長時間そこにいたことに気づく。」の一文が江國さん作品を好んで読む理由の一端だなと思った。

  • いかにも作家さんらしい文章だと思った。
    内容も教科書みたいで堅いかな。

    江國香織さんの本を初めて読んで、これが江國さんの世界なんだろうけど、他の作品に手を伸ばすことはすぐには無いかなあ。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。著書に『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(山本周五郎賞)、『号泣する準備はできていた』(直木賞)、『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』(谷崎潤一郎賞)などがある。

「2021年 『にっこり、洋食 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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