国宝 上 青春篇 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版 (2021年9月7日発売)
4.36
  • (336)
  • (251)
  • (73)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 3958
感想 : 196
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (408ページ) / ISBN・EAN: 9784022650085

作品紹介・あらすじ

俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」――侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか? 朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2019年第69回 芸術選奨文部科学大臣賞
             (文学部門)
    2019年第14回 中央公論文芸賞

    吉田修一さん作家生活20周年記念作品
    そして2025年6月映画「国宝」公開
    オーディブルのナレーターは、尾上菊之助さん
    音羽屋!再生時間上下で43時間もあります。
    残念ながら聴いていませんが、
    この作品の特徴の一つは地の文の丁寧語。
    なんとなくドキュメンタリーのナレーターのような雰囲気で登場人物達の人生を俯瞰的に語る。
    音羽屋さんは講談調を意識したとか。
    なんというか大切に扱われている作品と思います。

    初めて歌舞伎を見たのは10年程前
    東京ってほぼ毎日公演がある事に驚いた記憶
    あり。
    芸術だとか国宝だとか歴史だとか
    少し気後れしてしまいがちですけど
    庶民の娯楽なんです。(ちょと高いけど、3階席あたりなら東京体育館のVリーグの一番後ろの席と同じくらい)
    大切にするだけでなく、観に行きませう。

    さて 下巻へ


    • 1Q84O1さん
      花の慶次は知ってますよー^_^
      パチンコはやりませんが…
      花の慶次は知ってますよー^_^
      パチンコはやりませんが…
      2025/05/03
    • おびのりさん
      1Qさんのアイコンって タイのお坊様?
      修行かな
      1Qさんのアイコンって タイのお坊様?
      修行かな
      2025/05/03
    • 1Q84O1さん
      そのとおりです!
      GWはタイに出張で修行ですw
      そのとおりです!
      GWはタイに出張で修行ですw
      2025/05/03
  • まるで時代劇が始まるような情景描写から物語が始まりました。読み進めていくに連れて、徐々にこの世界に引き込まれました。

    任侠の世界で育った喜久雄が才能を見いだされて飛び込んだ歌舞伎の世界。生粋の家柄で、幼い頃から歌舞伎の世界に育ってきた俊介と共に切磋琢磨しながらいい方向へ、とはやはり行かず紆余曲折で青春篇は進んでいきました。

    芸事の世界の上下関係や、家柄がなすこだわりや厳しさに、これから喜久雄がどう立ち向かっていくのかがとても気になりました。

    2025年6月に映画が封切りされますが、歌舞伎の美しさと、その裏側にあるものの対比が描かれて見ごたえのある作品になっているのでは、と今から期待しています。

    花道篇、楽しみです。

    • 傍らに珈琲を。さん
      フリージアさん、こんばんは。
      そーなんですよね、映画も公開になるんですよね…。
      それなのに私、上巻で挫折して上下巻共にここに積んでます(;つ...
      フリージアさん、こんばんは。
      そーなんですよね、映画も公開になるんですよね…。
      それなのに私、上巻で挫折して上下巻共にここに積んでます(;つД`)
      こんなに評判のいい作品なのに何故に挫折したかな~。
      少しずつ再チャレンジしてみようかなー。
      あ、でも映画はきっと美しい作品になるだろうなーって期待してます!
      2025/04/12
    • フリージアさん
      傍らに珈琲を。さん
      おはようございます。
      男性だけが表舞台の世界の小説なので、私も始めは取っつきにくく感じました。ただひたすら芸を極めること...
      傍らに珈琲を。さん
      おはようございます。
      男性だけが表舞台の世界の小説なので、私も始めは取っつきにくく感じました。ただひたすら芸を極めることにだけ焦点を当てて読んでいくうちに、のめり込んだ感じです。
      映画で演じる俳優の顔を思い浮かべたりもしてました( 〃▽〃)
      2025/04/13
  • おや?読む本、間違ったか?

    と本気でしばらく思っていた。

    始めに展開されるのは任侠の世界。
    「国宝」「歌舞伎」は一体どこに?ま、まあ上下巻だし、いつか出てくるんだろうと気長に待つ。

    そろそろ来たわね、待ってた甲斐があったわ♪と読み進め気付いたら、なんとあっという間に読み終わっていた。次から次へとくる早い展開に、読む勢いがつられる。そして何よりも読んでて辛いわ〜(ToT)

    それでも早く続きが読みたいので、早速下巻いかせていただきます!

    あっ、とりあえず応援を。
    喜久雄!頑張って下巻で這い上がれ〜!

  • 1964年、長崎の任侠の家に生まれた、ひときわ美しい顔を持つ喜久雄は、父亡き後、縁あって、上方歌舞伎の名門に引き取られ、中学生の頃から育てられ
    国宝と称される存在になるまでの、激動の人生を描く。天才ゆえの孤独と葛藤。
    素晴らしい大作だった。

    上下巻合わせて800ページ超。
    あっという間に読めてしまった。
    文章もまるでお芝居のようで、歌舞伎小説にぴったり。
    作者吉田修一さんは、3年間歌舞伎の世界に黒衣を纏い入り込み、地方公演にも同行して取材をしながら、新聞小説として書き続けたという。
    歌舞伎界の臨場感が、迫ってくる。

    映画が公開されるまでに読もうと決めた。

    本日、映画「国宝」を観てきた。
    素晴らしく美しく、「娘道成寺」を踊る2人は、歌舞伎役者だった。

  • 語り部風の文章が初めは読みにくかったけど、そんなことはすぐに気にならなくなるくらい内容が濃くて面白かった。
    任侠の家に生まれながらも役者としての類い稀な才能を持つ喜久雄。父親がヤクザ同士の抗争で亡くなり、歌舞伎役者花井半二郎の家で暮らすことになる。そこでは半二郎の息子、俊介と切磋琢磨しながら女形として着実に成長をしていく。

    順風満帆な役者人生を歩む喜久雄の転機となったのは、半二郎の事故。重傷を負った半二郎の代役に大抜擢され、実の息子ではなく実質的に半二郎の後継者となった喜久雄だったが、半二郎が病に倒れ、後ろ盾をなくしたことから、不遇の時代へ。

    歌舞伎の世界のことは何も知らないけど、役者だけでなく歌舞伎を取り巻く者たちの人間の欲望が交錯しその迫力とリアリティに読むのが止まらなかった。
    喜久雄に後継者の座を奪われ、失踪した俊介が戻りこれからまた喜久雄に苦難が待ち受けているのかと思うと、喜久雄かんばれ!と思わずにいられない。
    個人的にはどんな時にも喜久雄を支える徳次のことが好きです。
    下巻で喜久雄がどのような人生を見せてくれるのか楽しみでなりません。

  • 吉田修一さんの本を読むのは『横道世之介』シリーズ以来。
    上巻では、任侠の一門に生まれ、芸の道に進んだ立花喜久雄の波瀾万丈な人生前半(30歳くらいまで)が描かれている。誰の人生にも良い時もあれば悪い時もあるというのは真理だと思うが、いけ好かない後見人などによって順風満帆ではない様子も描かれている。複雑な生い立ちや苦境に陥っても素直で擦れていない喜久雄には好感が持てる。
    これから一体どうなるのだろう、俊介と喜久雄の関係はどうなるのか、という期待と不安の入り混じる終わり方だった。下巻を読み進めるのが楽しみ。

  •  まるで芝居を観ている感覚で、物語に没入しました。文体や構成が歌舞伎っぽく、その代表が人物の会話の合間にある口上だと思います。(例 〜と申しましょうか、〜なのでございます) お陰で、歌舞伎や伝統芸能のもつ堅苦しさや昭和の古臭さへの抵抗もなく、加えて展開の面白さに、するする読み進められました。
     片や人気歌舞伎役者の御曹司、片や九州にその名を馳せた任侠一家の跡取り息子。二人は切磋琢磨しながら芸の道に励み、時代の寵児として取り上げられるようになります。
     しかし、師匠の事故・病気をきっかけにして二人の明暗が分かれ、運命が大きく動いていきます。出奔、暗転、そして再開…、まさに上巻の副題〝青春篇〟の如く、苦悩の先の希望を期待しながら、展開から目が離せませんでした。
     下巻〝花道篇〟を早く手に取りたく、気がはやります。

  • 上下巻とかに分かれた本は全部を読了してから感想を書くべきなのかいつも悩む。
    暑さの関係で分冊しただけならば一つの作品として全巻読了してから書くべきなのかもしれない。
    この作品も、上巻だけでは全く完結していない、話途中の状態だ。

    だけど、上下巻それぞれに対して感想を書きたいと思った。山半ばまで登った時の感想と頂上まで辿り着いた時の感想にどれだけの差があるのか、自分自身で気になるからだ。

    だからまず上巻を読み終えた時点でこの感想を書いている。

    この本を手元に置いてから2年近く積読していたことを少し後悔している。もっと早く読めば良かった。
    ページを捲り出したら止まらない。珠玉のエンタメ作品だった。
    語り口調の地の文のテンポの良さが心地よい読み易さを生んでいる。
    そこに綴られるは2人の天才若手歌舞伎役者の波瀾万丈のストーリー。
    歌舞伎には全く詳しくないが問題なかった。重要なことは地の文で易しく解説してくれる。

    かたや生まれも育ちも歌舞伎界に縁もゆかりもないヤクザ者、かたや梨園の名家の御曹司。良きライバルとしてお互いを認め合い高め合う若者たちが、血と才能、成功と挫折、親愛と嫉妬、など相反する2つの狭間で揺れ動き、運命の悪戯に翻弄されながらそれぞれのドラマを紡いでゆく。

    ライバル関係が巧く描かれている作品は傑作が多い。その証左がまた増えた。

    下巻も楽しみたい。

  • 大好きな俳優の吉沢亮さんが演出するとのことで、映画上映前に読まねば!と思っていたら、ちょうど上巻だけ図書館で借りれることに。

    梨園の跡取り息子と極道の跡取り息子。
    中学の時に親を殺された極道の息子、喜久雄。
    ある傷害事件から生まれ故郷、大阪を出て東京の歌舞伎役者「花井半二郎」の家でお世話になることに。
    そこには同じ歳の半二郎の一人息子の、俊介。

    2人はライバルであり親友だった。
    しかしある日、半二郎が交通事故にあい、命に別状はないものの、しばらくは舞台に立てないことに…当然のごとく周りは一人息子の俊介が代役を勤めると思っていたが、半二郎が指名したのは喜久雄だった…

    そこから喜久雄の人生は更なる苦難の道となる…


    語り手がいて独特の世界観。本を読んでるのに語り手つきの舞台を観ている感じ。

    歌舞伎もなんならミュージカルもみたことないのに引き込まれた…

    上下巻あるだけあって、ゆっくり丁寧に話が進んでいく…

    血の繋がりが全てと言われている梨園の世界。
    また狭き厳しい世界…
    俊介は失踪し、半二郎は喜久雄に自分の名を与え病死…残ったのは今までの恩と多額の借金…
    そして後ろ楯を失った喜久雄への虐め…


    もうずっと喜久雄がんばれ!どっかでバズれ!
    って、願い続けてたけど…上巻では無理だった…そんな生ぬるくなかった…更なる試練で終わった…ウワァァ━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━ン!!

    下巻を借りに行かなければ!!図書館にありますよーに…

  • 吉田修一(2018年9月単行本、2021年9月文庫本)。上巻/青春篇、下巻/花道篇に分かれている大作の上巻。
    凄い小説だ。長崎の任侠の家に生まれた一人の男が歌舞伎の世界に入り、頂点を極めるまでを描いた作品。
    主人公の立花喜久雄が14歳の任侠時代から63歳で人間国宝になるまでの大河ドラマで、上巻/青春篇は14歳から30歳までの話だ。

    舞台は長崎から大阪、そして東京へと移っていく。
    最初から物語の中にぐいぐい引き込まれる。惹きつける魅力的なストーリー展開と情景描写が凄い。目の前に今起こっている情景がはっきり見える。歌舞伎の演目の描写も、歌舞伎なんて全く知らなくても演じている役者が見えるのである。
    そして色んな登場人物が喜久雄を支える個性設定が共感できて気持ちいいのだ。特に長崎の任侠時代からずっと喜久雄を支え続ける2歳年上の徳治の存在が強く印象に残る。喜久雄は歌舞伎の世界でどうなっていくのかは想像つくが、徳治はどうなっていくのか非常に気になるのだ。もう一人同じく長崎からの付き合いで喜久雄より1歳年上の女性の春江だ。幼い頃から苦労しただけあって若い時から自立した女性で色んな人を支えて生きる頼もしい女性だ。

    1964年元旦の任侠の新年会、喜久雄14歳の時、抗争で「立花組」組長の父親が殺され、その新年会に同席していた上方歌舞伎の大名跡「丹波屋」二代目花井半次郎との縁で喜久雄は一門へ入ることになる。喜久雄15歳の時で、同い年の半次郎の息子の大垣俊介(花井半弥)と出会い、任侠のぼんと梨園のぼんが歌舞伎の世界に青春を捧げる物語が始まる。

    幾多の登場人物で二代目花井半次郎(四代目花井白虎)と俊介以外で喜久雄に大きく関わって来るのは、長崎で同じ立花組の2歳年上で常に喜久雄を守る早川徳次、喜久雄の女だった1歳年上の春江(後の俊介の女房)、立花組の弟分「愛甲会」の若頭で後の「辻村興産」の代表取締役社長となって喜久雄を援助する辻村将生(実は秘密がある)、大阪へ出て来てから出会ったお笑い芸人の弁天(後に売れっ子大物タレントになる)、半次郎の後妻の幸子(日本舞踊相良流家元、俊介と共に喜久雄も支える)、稀代の立女形「遠州屋」六代目小野川万菊、万菊と人気を二分する立女形の姉川鶴若、関西歌舞伎のもう一つの名家の生田庄左衛門、日本俳優協会理事長で江戸歌舞伎の大看板である吾妻千五郎とその次女の彰子、京都の舞妓の市駒、市駒が産んだ喜久雄との子の綾乃、興行会社「三友」の社長の梅木と新入社員の竹野、地方巡業での喜久雄の才能を見出す劇評家で早稲田大学の藤川教授。これらの人物が喜久雄の人生に大きく関わって来る。

    喜久雄15歳で大阪の二代目花井半次郎の元で歌舞伎の修行を始め、17歳で半次郎の部屋子となり花井東一郎を襲名する。そして喜久雄20歳の時、半次郎が事故に遭ってしまい代役を俊介ではなく喜久雄を指名する。失意の俊介はこの時より10年間春江を伴って姿を消す。そして俊介が失踪して3年後、二代目花井半次郎は四代目花井白虎、花井東一郎(喜久雄)は三代目花井半次郎を23歳で同時襲名するのだが、白虎は既に病に侵され襲名披露の場で倒れる。そして喜久雄25歳の時、白虎は70年の生涯を閉じたのだった。
    それからの喜久雄の歌舞伎人生の苦難が始まる。白虎の残した1億2000万円の借金を自分が負うことに決めたのだが、喜久雄の後見人になった姉川鶴若の喜久雄に対する処遇がいじめに近いものだった。地方回りに役も傍役ばかりで借金は減るどころか増えるばかりだった。
    そんな状況の中で喜久雄30歳になった時、竹野が俊介を見つけて10年振りの再会となる。そして春江とも再会となるのだが、俊介との間に3歳になる子、一豊も一緒だった。俊介の後見人には小野川万菊がつき、喜久雄とは反対に順調にいい役で人気を集めていくのだった。珍しく悔しさを態度に出す喜久雄を吾妻千五郎の次女、彰子が笑顔で訪ねて来る。まだキャピキャピの女子大生だが、これからの喜久雄の人生が大きく変わる予感を醸し出すところで「青春篇」は終わる。


  • 公開初日に映画観まして‥
    なんか、すっごいもの見ちゃったなと放心状態のまま書店へ直行し上下巻購入。

    映画→小説の流れがおすすめです。
    歌舞伎に馴染みないのであれば尚更。

    演目、小道具、どんな着物を着て、どんな化粧で、どういう舞をしてるのか。
    すでに映像でインプットできていた分、すんなりと情景を浮かべることができ読み進められました。

    映画と原作の違いとしては、
    主人公の喜久雄と俊介の青春にフォーカスしてるのが映画
    喜久雄とその周りの人にもスポットが当てられ、「芸」という世界が描かれてるのが原作
    かな…と思いました。

    原作は、第三者目線での語り口調というのもあって、歌舞伎の演目を鑑賞してるかのような感覚。

    歌舞伎一家に生まれた俊介、ヤクザの頭の息子の喜久雄。
    共に励まし合い、ライバルとして高め合いながら芸を磨いていくながで、芸に対する姿勢や悩みの違いが描かれてるのは一緒。

    日本の伝統芸能のため、息子俊介や喜久雄のために身銭を切ってでも公演し続ける半二郎、
    歌舞伎一家の母・女として覚悟を決め、夫を支え続ける幸子、
    少年時代から相棒のように喜久雄を支え続ける徳次…映画では描ききれてない(敢えて映像化してない?)各人物の心情がさらに掘り下げられていて、
    理解を深められるのが面白い!

    映画で喜久雄が娘に
    芸を求めてどれだけ人を犠牲にしてきたか…というような言葉を投げかけられており、
    あまりピンときてませんでしたが、
    小説で、喜久雄が舞台に立てるように、誰がどんな風に関わったか、行動したか、身を削っていたかが書かれていて、深みを理解できました。

    舞台上での美しさが人の心を揺さぶるのは、
    舞そのものだけでなく、
    裏で関わってきた人の想い、苦労や我慢、エネルギー、歴史も含めた膨大な時間、あらゆるものが重なって、目には見えないけど空気としての凄みを、感じ取れるからなのかなと、思いました。

  • 上巻一気読み。

    歌舞伎や歴史に詳しくない私はちょっと読みにくいかなと思いきや、喜久雄と俊介を始めとした登場人物みんなの先が気になってどんどん読み進めてしまった。

    血筋に才能で抗っていくお話かと思っていたら、当然ながらそんな単純なものではなく。皆どうしょうもなくやり切れなくそれが却って魅力的。

    花道編も楽しみです。

  • 単行本の頃より気になっていた作品。
    任侠の出自ながら上方歌舞伎の世界へ。その美貌と才能を見込まれて役者の道へ踏み出した主人公、喜久雄の波乱万丈の人生。上巻は子供〜青年時代の前半となるが、まだこれからもいろいろ起こりそうで続きで気になる。

    喜久雄の周りの登場人物もそれぞれ個性と人間味があり、映画で観たら引き立つだろうなぁと思いつつ読んだ。でもやっぱり喜久雄と俊介の舞台がすでに予告編でも気になって仕方ない。

    世襲が物を言う歌舞伎界で喜久雄という異例の存在も、役者と支える家族も、華やかな舞台とは裏腹にそこにすべてを捧げる過酷な世界が克明に浮かび上がる。歌舞伎に詳しくなくとも、語り手の言葉に乗って舞台鑑賞しているかのような心地でスルスルと読めた。

    早速花道篇に進みます!

  • 長崎のヤクザの組長の息子として生まれた喜久雄。

    抗争により父を亡くし、大阪の歌舞伎役者である2代目花井半次郎に預けられ。半次郎の息子である俊介と共に女形として成長していく。
    半次郎が骨折した時、代役として選んだのは息子・俊介ではなく…

    俊介の出奔、2代目半次郎の死、3代目半次郎襲名…
    2代目半次郎という後ろ盾を失い、思うような活動ができない喜久雄…

    そして俊介は…

    3代目半次郎として、なかなか思うような活動ができないところに歯痒さを感じる…
    部屋子上がりだからか…
    歌舞伎の世界だけならまだしも、映画ででも…

    春江は喜久雄と、と思っていたのに、あっさりと…
    市駒は市駒で、ひとりで娘・綾乃を育てて。
    何かじめじめしたものが全くない女性たち…

    どうなっていくんだろうか…

  • 神田伯山がラジオで本作の映画を「万難を排して皆さん観てほしいと思った」と熱弁しているのを聴いたのと、吉田修一さんと李相日監督が再タッグという事も相まり手にした本。いざ下巻へ!

  • 映画館で観た予告の吉沢亮の演技に引き込まれ、内容が気になった。ならば、先に原作から読もうと手に取ったのがこちらの本。

    前半を読んだだけで、これはすごい小説に出会ったと確信し、嬉しくてテンションが上がった!

    タイトルや作者の代表作のイメージで、もっと堅苦しい文章を想像していたけど、意外と語り口調がポップで非常に読みやすかった。歌舞伎の知識が全くなくても内容がスルスルと入ってくる。

    ここからは、本の内容について感じたことをいくつか書きます。

    気性も穏やかで喧嘩も強くなく普段はあまり極道を感じさせない喜久雄だけど、平気で春江に立ちんぼをさせていることを知り、やはりカタギの感覚ではないと感じた。女性に対して非道なところは、病の前妻を見捨てて乗り換えたた父に似てしまったのかもしれない。

    本作で1番好きなキャラは徳次。複雑な心を持つキャラばかりの中で、一途に喜久雄に忠義を貫く徳次は言葉と行動が一貫しているので見ていて安心する。下巻でも変わらないままでいてほしい。

    親同然に可愛がってくれた花井半次郎が病床で死の間際に呼んだのが俊ぼんだったり、弟子は取らないと喜久雄の面倒を拒否した万菊が俊ぼんに稽古をつける場面などは、喜久雄側に感情移入していたので辛かった。

    万菊が俊ぼんに再会したときに最初に掛けた言葉は「生きててくれてありがとう」
    この一言に2人の関係性が全て詰まっていて、目頭が熱くなった。

    血筋か?才能か?
    下巻でこの勝負がどのような結末を迎えるのか楽しみだ。

  • 映画「国宝」のキャストがあまりに豪華なので、気になって読み始めたところ、
    主演の吉澤亮くんの「隣家侵入事件」
    この映画の主役は間違いなく吉澤亮くんしかいない、と読み進めていたので、公開が延期になるとかお蔵入りするとか、心配でたまらなくなりました。……どうかこの映画が吉澤亮主演のまま公開されますようにと、祈るような気持ちのまま、上巻を読み終えました。

    (「舟を編む」は再読なので)久しぶりに引き込まれる本に出会いました。
    登場人物がどの人も個性豊かで、芸達者で、一生懸命で。芸が好きで好きでたまらないけど口べたな喜久雄、そんな喜久雄が大好きな徳次、実の息子を差し置いても芸のために喜久雄を選んだ白虎。
    彼が死ぬ間際に「俊ぼーん」と叫ぶところは歌舞伎役者と親の間で葛藤し続けた彼の辛さ、苦しさが出ていて、とても切なかったです。
    上巻は、落ちるところまで落ちた喜久雄と俊介にようやく少し明るい日差しが見え始めたところで終わります。
    もちろん、下巻もワクワクしながら今日からすぐ読み始めます。
    楽しみで仕方ないです♡♡

  • 物語を繋ぐ軽妙な語り口に「横道世之介」を思い出した。 そして所々演目のあらすじを紹介してもらえるのは歌舞伎に疎い私にとっては有り難かった。中でも「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」には正直ゾッとした。〝何を尊ぶのか?〟 時代や置かれた立場によって選ばれるものが違うのは当然なのか…

    白虎が最期に俊介の名を呼びそれを聞いた喜久雄がわけもなく謝ってしまうという場面はなんとも悲しかった。

    上巻ではついに喜久雄の父の死の真相は喜久雄に明かされなかった。全ては下巻。俊介の動向も気になる。


  • 独特の語り口調でのナレーションに導かれ、極道の世界から歌舞伎の世界へ飛び込んだ喜久雄の半生を読み進めた。
    破茶滅茶とも思える青春から芸の道に進むのだけれど、才能だけでは無理なのか?潰れてしまうのか?…と、最後に「ここから這い上がんだよ」の一言がガツンとくる。
    続きが気になる〜!!(下巻の花道篇に続く)

  • 本作は映画化が決まっており、吉沢亮主演で来年公開らしい。

    独特な地の文の語り口調を読みながら、本作は映画ではなく、NHKの朝ドラや大河を狙って書かれたのでは、と勝手に思った。

全196件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

吉田修一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×