ホラー・ミステリーアンソロジー 『魍魎回廊』 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022650160

作品紹介・あらすじ

雨の日に現れる喪服の女、地方の風習に隠された秘密、鬼の定義を追求する男、蘇る忌まわしき前世の記憶――。
恐怖と怪奇が支配する世界=ホラーと、謎解き=ミステリーが絶妙に絡み合う。
ホラー界の巨匠たちが怪奇現象を紐解く、至高のミステリーアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 満足感得られた一冊。

    再読のものもあれど、どれも満足感を得られた七人が紡ぐアンソロジー。

    宇佐美さんの「水族」から、雨繋がりのような流れの小野不由美さんの「雨の鈴」は再読でも楽しめた。

    しっとり匂いたつような湿度の中、響く鈴の音がたまらなくゾクゾクさせて、たまらなくもの哀しさへと落とし込んでくるのが良かったな。

    高橋克彦さんもラストまでゾクリとさせて、改めてホラーの名手だと感じた。

    初読みの都筑さんは読みやすく、怪異も楽しめて満足。

    そして道尾さん。
    せつなさと怪異のバランスが絶妙。構成も良い。トリにふさわしい読後感。

  • 小説すばる2020年4月号宇佐美まこと:水族、幽vol.17(2012年7月)小野不由美:雨の鈴、小説現代1997年3月号京極夏彦:鬼一口、小説現代1983年10月号高橋克彦:眠らない少女、月刊小説1977年11月号都筑道夫:三つ目達磨、週刊小説1998年8月21日号津原泰水:カルキノス 、野生時代2008年4月号道尾秀介:冬の鬼、の7編のアンソロジーを2022年3月朝日文庫刊。いずれもよくできたホラーミステリ。千街さんの解説前半で語られるホラーとミステリーの作品は数編を読んでいるだけで後は知らないものばかりが登場します。深いなぁと思いました。

  • 宇佐美まこと、小野不由美、京極夏彦、高橋克彦、都筑道夫、津原泰水、道尾秀介『ホラー・ミステリーアンソロジー 『魍魎回廊』』朝日文庫。

    7編収録のホラー・ミステリーアンソロジー。

    7編のいずれも恐怖を感じるホラー・ミステリーなのだが、小野不由美『雨の鈴』、京極夏彦『鬼一口』、高橋克彦『眠らない少女』が面白かった。

    宇佐美まこと『水族』。死んだはずの人間が復讐を果たすという、よくあるパターンのホラー・ミステリー。ミスリードを誘うための描写のは解るが、読み手は少し不自然な描写に身構えてしまい、著者の目論みは見事に外れてしまう。★★★

    小野不由美『雨の鈴』。雨の日に現れる小路に佇む喪服姿の女性。訪れた家に次々と死をもたらす謎の女性。ミステリー色よりもホラー色の強い短編。しっとりした描写が恐怖を増幅している。★★★★★

    京極夏彦『鬼一口』。鬼とは一体何なのかという答えを求める主人公は、幼い頃の記憶と鬼という異形の存在とが次第に結び付き、やがて全てを知る。芥川龍之介の作品のような恐怖を味わえる短編。★★★★★

    高橋克彦『眠らない少女』。京極夏彦の『鬼一口』と似たようなテーマの作品。瓜子姫とあまのじゃくのお伽噺をベースにしたホラー。昔のお伽噺の中で、実際には何があったのか……★★★★★

    都筑道夫『三つ目達磨』。予言を行ったと言われる三つ目を持つ男の子に因み、古くから続く三つ目達磨の風習。非処女が達磨に目を入れると禍をもたらす。★★★

    津原泰水『カルキノス』。美味という噂の紅蟹を食べるために友人と一泊二日の旅行に行った作家が味わう恐怖。★★★

    道尾秀介『冬の鬼』。幻想的な短編。余り恐さは無く、物足りない。★★

    本体価格850円
    ★★★★

  • ホラー✖️ミステリの作品を集めているので、どの話もそこまで怖くない。個人的に好きだったのは、予測不能な展開が度肝を抜く「眠らない少女」と、鬼とは何かについて考察する「鬼一口」。小野不由美の「雨の鈴」は、幽霊が定められたルールでしか動けない点が新鮮で印象深い。

  • 【収録作品】「水族」宇佐美まこと/「雨の鈴」(『営繕かるかや怪異譚』所収)小野不由美/「鬼一口」(『文庫版 百鬼夜行-肆』所収)京極夏彦/「眠らない少女」(『悪魔のトリル』所収)高橋克彦/「三つ目達磨」(『都筑道夫恐怖短篇集成3 雪崩連太郎全集』所収)都筑道夫/「カルキノス」(『蘆屋家の崩壊』所収)津原泰水/「冬の鬼」(『鬼の跫音』所収)道尾秀介

  • 珠玉のホラー・ミステリ短編を詰め込んだアンソロジー。執筆陣もなんと豪華なと手に取らずにはいられなかった。
    てっきり本書のための書き下ろし集なのかと思いきや、いずれも既存の作品集から特によきと選者の千街さんが選び抜いた話らしい。

    宇佐美さんの「水族」以外はお初だったので、解説含め読了した感想としては「おわー!全部読みたいぞーー!!!」でした。
    結構、鬼や食人、達磨など共通するモチーフがあり、そこらへんも共通しながらもある違いを楽しみながら読めた。
    「雨の鈴」はしっかりと恐さも感じさせつつも、美しい言葉遣いと描写でうっとりとするところもある。
    特に好きだなと思ったのは「眠らない少女」。
    最初は幼い一人娘がなかなか寝付けないという話からどんどん不穏さが増していき、まさかの展開に終わるところがスリリングで一気に読んでしまう。瓜子姫について個人的に詳しく調べたくなった所存…
    とはいえどれも面白いから甲乙はつけがたいのだけど!
    解説も、ホラーとミステリの共通点・現在までの変遷などが記述されており興味深い。
    あんまり感想を書くと、これから読む方にもったいないと思うので、出典と共に備忘録がてら各話の題と作者を書くに留めるとする。


    ・宇佐美まこと「水族」(本書刊行当初は単行本未収録だったそうだが、現在は「夢伝い」に収録されている。)
    ・小野不由美「雨の鈴」(「営繕かるかや怪異譚)
    ・京極夏彦「鬼一口」(文庫版 百鬼夜行ー陰)
    ・高橋克彦「眠らない少女」(悪魔のトリル)
    ・都筑道夫「三つ目達磨」(都筑道夫恐怖短編集成3 雪崩連太郎全集)
    ・津原泰水「カルキノス」(蘆屋家の崩壊)
    ・道尾秀介「冬の鬼」(鬼のあし音(あしは漢字なのだけど変換できなかった…))

  •  事故で婚約者との未来を喪った女、雨の日に佇む喪服の女、“鬼”の定義を追究する男、妻が娘に語る昔話に戦慄する男……“謎”が解けた時、解決ではなく新たな恐怖が現れる7編収録のアンソロジー。
    “ホラー・ミステリー”と謳ってはいるが、フーダニット的謎解き要素が中心になるのは宇佐美まこと「水族」、都筑道夫、津原泰水の2編がやや……くらいか。元来ホラーも怪異の正体を探るという謎解き要素はほぼ含まれるわけで、“ホラー要素十分なミステリ”を期待した人はやや肩透かし?かも。とは言え、各作品とも高水準で短編ホラーとしては十分愉しめるものではあるが。

    以下軽く感想。
    ・事故により婚約者との未来を喪った女性が、思い出の水族館を一人訪れる「水族」(宇佐美まこと)。邪気のない善意と鈍感さは時に他者の心を抉る、か。
    ・雨の日だけ現れ路地の角に佇む喪服の女。彼女が訪った家には死がもたらされるという「雨の鈴」(小野不由美)は、連作シリーズ『営繕かるかや怪異譚』からの、静かで怖い一編。
    ・復員後天涯孤独となっていた男は〈鬼〉という存在に強く興味を惹かれていた(「鬼一口」京極夏彦)。これも『百鬼夜行―陰』からの一編。作中で繰り返されるフレーズ「鬼に喰われる」の真意が明らかになるラスト3行の戦慄。
    ・深夜、寝付かずに本読みをせがむ幼い娘に「瓜子姫とあまのじゃく」を読み聞かせる妻。その言葉に言い知れぬ不安を覚える夫(「眠らない少女」高橋克彦)。昔ばなしは過去の陰惨な、表立って語られぬ歴史を反映していた側面もあるわけで。某テーマが「鬼一口」に続いて用いられているのが……。
    ・5年に1度、三つ目の達磨が奉納されるという奇祭の取材に米子を訪れたトラベルライター(「三つ目達磨」都筑道夫)。トラベルライター雪崩連太郎を主人公にしたシリーズとのこと。ストーリーやら演出やら、まぁ色々と……昭和であるw。
    ・怪奇作家の“伯爵”と無職の猿渡が、講演仕事の傍ら珍奇で美味という紅蟹を味わうため訪ねた先で殺人事件に遭遇する「カルキノス」(津原泰水)。このコンビが活躍(?)する『幽明志怪』シリーズから。紅蟹は旨そうだが見た目は相当にグロテスクなようで。
    ・ある女性の日記を一月八日から遡っていくことで明かされる、彼女が叶えた願いとは(「冬の鬼」道尾秀介)。短編集『鬼の跫音』からの一編。元日の日記まで逆に読むことで冒頭の八日付の日記「鬼の跫音が聞こえる」の意味が判明する。鬼とは一体誰だったのか。

     通読するとアンソロジー全体の裏テーマは(タイトルや作中で言及されるものに限らず)“鬼”だったのではないかとも思える。「鬼一口」で記される「生きたまま人は鬼となる」「普通人には出来ないことをするモノ」に倣うならば、訪った家に死をもたらす喪服の女も、因習から逃れようとした男も、紅蟹漁の網元もその若い妻も皆“鬼”だったのではないだろう、か。

  • ホラー・ミステリーの一流作家を7名集めた豪華な短編集だが、どれも怖い.小夜子と子どものマキが織り成す「眠らない少女」、雪崩連太郎が探り出す達磨にちなむ「三つ目達磨」が面白かった.多種類の蟹が出てくる「カルキーズ」もゾッとする話だ.暑い夏の夜に一人で紐解くのに最適だなと感じた.千街昌之の解説はこれだけで楽しめる奥の深いものだと思う.

  • 7人の作家さんによるアンソロジー

    こういうのって初めましての作家さんに触れれるのいいですよね

    小野さんと京極さんのは既読でしたが
    どの話もそれぞれ面白かったです

    うわ〜ってなったのが
    「鬼一口」と「眠らない少女」の鬼の話

    好きなのは「雨の鈴」と「冬の鬼」でした

  • 好みの作家さんばかりで飛びついたが、書下ろしではないのでいくつかは既読。しかし、既読作品もものすごく印象的なお話だったり考え考え何度か読み返したものもあったので再読でもどれもとても良かった。じっくりゆっくり堪能。宇佐美さん(これは単行本未収録)の納得の読後。小野さんのその後への想い。京極さん、高橋さん、都筑さん…昔話や縁起物って実は怖い…。津原さんの猿渡と伯爵ににやにやしながら結末に呆然とする。道尾さんの手法の美しさには再読でもため息が出た。既読は小野さん津原さん道尾さん。他の未読の底本もぜひ読みたい。

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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