法廷ミステリーアンソロジー 逆転の切り札 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022650474

作品紹介・あらすじ

法は守るためにあるのか──人のためにあるのか? 法廷で繰り広げられる駆け引き、証言から導き出される新たな事実が、やがて隠された真相を暴き出す。現役人気作家による傑作ミステリーアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • 阿久津辰海、伊兼源太郎、大門剛明、丸山正樹、横山秀夫の5作家による法廷ミステリー。
    ユーモアあり、シリアスあり、それぞれ短編としての切れ味があり、楽しめた。
    大門『偶然と必然』とヨコヤマ『口癖』の2作品は既読だった。
    丸山正樹『弁護側の証人』は、ろう者が使う「日本手話」と「日本語対応手話」の違いが丁寧に説明されており、興味深かった。
    伊兼源太郎は初読み。『置き手紙』は、司法担当記者の沢村慎吾が主人公。懇意にしていたが定年で退職した刑事に「創罪」があったのではと追及する。やがて事実が明らかにされ、法律の運用を巡って厳格な運用と逸脱が問われる。
    元刑事が発する言葉が印象深い。
    「たとえ記者の職分ってのが他人に何かを聞くことだろうと、本当に大事な問題ってのは、他人に求めるもんじゃねえ。頭を他人に預けるな。法律を真っ当に扱うってのがどういう道理なのか、自分の頭、経験、言葉で導き出せよ」

  • 法廷ミステリーアンソロジーと銘打っているので、ついつい、刑事裁判における逆転劇を思い浮かべる。が、阿津川辰海の裁判員と裁判官の評議のパロディモノから始まり、横山秀夫の家裁における調停委員会でのどんでん返しで終わる、計5作品はいずれもレパートリー豊かな内容。
    法廷モノといっても、民事と刑事があり、刑事裁判においても、警察、検察、被告、弁護人、裁判官と立場の違う多くの人が関わるので、それぞれにドラマがある。編者の西上心太氏による解説にあるように、近年は弁護士資格を持ったミステリ作家さんが増えているので、この手のアンソロジーは、更に幅広く楽しめるようになるのかもしれない。

  • 阿津川辰海、伊兼源太郎、大門剛明、丸山正樹、横山秀夫『法廷ミステリーアンソロジー 逆転の切り札』朝日文庫。

    5編収録の法廷ミステリーアンソロジー。5編中3編が既読作だった。既読作も法廷ミステリーという枠組みの中で、比較しながら読んでみるとまた違う味わいがある。

    阿津川辰海『六人の発狂する日本人』。初読みの作家。『十二人の怒れる男』のパロディ。アイドルグループのファンが被害者と加害者となった殺人事件の裁判員裁判の審議。あろうことか六人の裁判員全員が同じアイドルグループのファンと関係者という状況の中、コミカルな展開が続き、有罪か無罪かを巡り審議は白熱していく。オチは予想通り。★★★★

    伊兼源太郎『置き土産』。『地検のS』に収録された1作。前出の短編から一転してシリアスで硬質な短編。新聞社支局の司法担当記者の沢村慎吾が他社に抜かれた特ダネの挽回をするために悪戦苦闘するうちに、とある窃盗事件の犯人がベテラン刑事の創罪によるものであるのではないかという疑念を持つ。真の正義はどこにあるのかと読者に問い掛けるような作品。自分はこれは正義ではないと思う。★★★★★

    大門剛明『偶然と必然』。既読作。とある理由で離れ離れに育てられた若手刑事の川上祐介と若手検事の唐沢真佐人の兄と弟の邂逅と二人が関わるミステリーを描いた連作シリーズの第1作『不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳』に収録された最初の1編。妻を殺害した容疑で逮捕された医師が不起訴となる。医師の自白は強要されたものだったのか。兄よりも優秀な少し嫌味のある弟なのだが、最終的には互いの考えが同じことに気付くのだ。★★★★★

    丸山正樹『弁護側の証人』。既読作。『龍の耳を君に デフ・ヴォイス』に収録された最初の1編。社会的な弱者に光を当てた『デフ・ヴォイス』シリーズは毎回、興味深い内容と感動と哀しいストーリーに読まずにはいられない。ろう者の両親と子供時代を過ごした『コーダ』の新井尚人は警察事務官を辞め、手話通訳士を本業に聴覚障害者のコミュニティ通訳と法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳を行っていた。今回、新井が受けた依頼は林部学という40代のろう者が被疑者となった強盗事件での片貝弁護士の法廷手話通訳だった。★★★★★

    横山秀夫『口癖』。既読作。『看守眼』に収録された1作。ブクログで履歴を見ると10年前に読んでいた。家庭裁判所で調停員を務める関根ゆき江が新たに担当することになった離婚調停。調停を申し立てたのはゆき江の娘が高校時代に不登校となった原因を作った女性だった。調停を行ううちにゆき江が発した口癖から高校時代の娘の過去が暴かれる。男女ペアの離婚調停員は男性が夫の側に立ち、女性は妻の側に立つ場合が多く、特に判断や判定を下す訳でもなく、何のために居るのかよく解らない。★★★★★

    本体価格870円
    ★★★★★

  • 【収録作品】「六人の熱狂する日本人」 阿津川辰海/「置き土産」 伊兼源太郎/「偶然と必然」 大門剛明/「弁護側の証人」 丸山正樹/「口癖」 横山秀夫

    「六人の…」 『透明人間は密室に潜む』所収。アイドルオタクの殺人事件に陪審員たちが推理を繰り広げる。
    「置き土産」 『地検のS』所収。司法担当記者の沢村は窃盗事件の創罪を疑う。
    「偶然と必然」 『不協和音 京都、刑事と検事の事件手帳』所収。自白を翻した被疑者をめぐる闘い。
    「弁護側の証人」 『龍の耳を君に デフ・ヴォイス』所収。聾唖者が強盗事件の被疑者となり、荒井が法廷通訳を依頼される。
    「口癖」 『看守眼』所収。家事調停員のゆき江は、娘のかつての同級生の離婚調停事案を担当することになる。

  • アンソロジーは出会いがあって良い
    連作短編もあるようなので、いくつか読んでみたい
    地検のS
    不協和音
    デフヴォイス
    看守眼

  • アンソロジー5編。半数以上が既読ではあったけれど楽しく読んだ。どの作品も「逆転」という構想が効いていて様々な感情が生まれる。阿津川さんの「ウリャオイ!」はやっぱ面白い。オタクの心理が可愛い。どの作品も良かった。

  • 普段 アンソロジーはあまりよまないけど
    新しい出会いがあって良いですね

    円山さん 横山さんは 元々好きで読んでいたので 既読でした

    こっから 未読の 過去作へ遡ってみようかなあ

  • 2023.07.10
    阿津川辰海、伊兼源太郎、大門剛明、丸山正樹、横山秀夫以上5人の作品。いずれもケチのつけようなし。横山作品は再読だが、改めてうまいなと思った。

  • 阿津川さんの本が目当てで読んでみたけど、この短編は既読で、でもほかの四篇が面白かった。
    連作短編の中の一編が多かったから、ついバックボーンが知りたくて他の本も読んでみたくなるっていう、アンソロジーの思うつぼ。

  • 法廷ものという括りですがバラエティに富んでおり読み応えあるアンソロジーでした。最初の作品が比較的軽いノリで敷居を下げてくれたかも。
    アンソロジーの良いところ=要チェックな作家さんが増えました。

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著者プロフィール

1994年東京都生まれ。東京大学卒。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』(光文社)でデビュー。以後、『星詠師の記憶』(光文社)、『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)、『透明人間は密室に潜む』(光文社)を刊行し、それぞれがミステリランキングの上位を席巻。’20年代の若手最注目ミステリ作家。

「2022年 『あなたへの挑戦状』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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