メイド・イン京都 (朝日文庫)

  • 朝日新聞出版 (2024年4月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784022651433

作品紹介・あらすじ

第9回京都本大賞受賞作! 

****************************************************
仕事も恋愛も同じ。動かないとなにも始まらない!

美咲・32歳。婚約を機に京都の地に降り立つものの、たちまち京都人達からの洗礼を受け、婚約者との関係性にも違和感を覚えだす。
そんな時、あるきっかけで、かつて熱中したものづくりに再び挑戦することに――。
人生の岐路に立つ美咲の運命が変わり始める。
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解説は、物語のモデルとなったデザイナーの谷口富美さん。
「今まさにやりたい事に邁進されている方のお守りになるような本だと思います。私にとってそうであるように」(解説より)

感想・レビュー・書評

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  • 結婚を機に仕事を辞め、京都にある婚約者の実家に移り住んだ美咲。
    しかし、京都のしきたりに慣れず、家業を継いだ婚約者との関係性もぎくしゃくする中、時間があった美咲はミシンでTシャツに自らデザインした刺繍を始める。
    それが影響力のある人物の目に留まり、あれよあれよと売れっ子デザイナーになっていく、夢のある物語。
    なのだが。
    まず序盤。
    婚約者を含め、京都の人たちの意地悪さに辟易。
    美咲の一挙手一投足に嫌味を言い、読んでいて、気分が悪くなる。
    そもそも婚約だけで、美咲は京都に行く必要があったのか?
    きちんと籍を入れてから、仕事を辞めても良かったのでは?などと、小説にアドバイスをしたくなってしまうほど。
    そして、中盤。
    決別を決めた婚約者のストーカー化。
    それを受け入れてしまう美咲。
    美咲の芯のなさに、ここでもイラっとさせられる。
    さらに後半。
    信じていた瑠璃の裏切り。
    結局瑠璃は何をしたかったんだろう?
    仕事の腕は確かでも、無知の美咲を騙すような行動は個人的には受け付けない。
    それでも、最後はハッピーエンドだったから、ま、いっか、って言うのが感想。
    この作者の優しい感じの作品が好きだっただけに、今作はかなり裏切られた感じがする。
    決して悪い話ではないんだけど、悪意のある人の比率が多いと、やっぱり読んでいて辛くなる。

  • 藤岡さんのお話は大好きで
    何冊か読ませていただいてますが
    今回は、また雰囲気が違う感じがしました。
    主人公の美咲が社会人になり心の奥に置いていた、美大で磨いたセンスを京都の西陣織りを見たのをきっかけに再燃。
    むくむくとクリエイター魂がふくらみ一歩一歩、いろいろな縁と運と、信用が道を少しづつ広げてくれるのにわくわくしました。

    反対に恋愛のほうは、お互いに余裕がなかったり、お互いの家族とそりが合わなかったり
    相手を信じることが出来なかったり、その時は些細なことでも、
    何度か、すれ違いや不信感で半年前には思いもよらなかった
    方向に進んでいく。

    夢ががあってもそれを捕まえることができる人はほんの一握り。
    それでも成功すると頑張ろうと
    夢をあきらめない気持ち大事ですね。

    恋愛も同じで
    タイミングが縁が歯車のように噛み合うと思わぬ方向に進んでいく。それも人生です。
    今日が一番若い日
    毎日大切に過ごしたいなと思わせてくれるお話でした。

  • いろいろあったとはいえ、明るい未来も見えていて、ハッピーエンドでよかった。

    スルスル読み進められるし、展開が気になってガンガン読んで楽しめたけど、読後色んなことが置いてけぼりだったなぁと思ってしまった。
    茂木さん?月橋さん?
    犬を連れて大学に行った割には、おとなしめの主人公?

  • 藤岡さんの小説は大好きですが本書もやはり…好き。
    婚約を機に仕事を辞め婚約者の実家のある京都へ…が、思いもよらぬ京都のしきたり、家業を継いだ婚約者の変貌、何の為に好きな仕事を辞め京都へ来たのか、戸惑う十川美咲32歳。
    東京で仕事をしている頃には持てなかった【時間】を手にした彼女が元々好きであった物作りへの衝動に駆られミシンを動かし始めたところから美咲の人生が大きく変わって行く。
    自分は何がしたいのか、どうやって生きていきたいのか、事あるごとに立ち止まりながら、臆病になりながらも自分の気持ちと向き合い一歩一歩自分の足で人生を歩き始める…そんな美咲の人生から目が離せませんでした。
    誰だって傷付きたくない、傷つく事は怖い、自分に自信が無くて臆病で決断が出来なくて自分には無理…と始める前に引いてしまう…美咲のそんな心の揺れが手に取るように分かる。
    何か大きな新しい事を始めるのは想像以上に心の体力とエネルギー、覚悟と本気が必要だ。
    そして時に才能、技術、資金も…。
    それらの葛藤を抱えながら必死に動こうとする美咲の人生に気付いたらのめり込んでました。

    運を良くしたいなら人に信用される事。
    動かないと何も始まらない。
    過去は変えられない、時間も戻らない、ならば今しかない、今をどう生きるか。
    自信を持つ、自分を信じる、今の気持ちをまっすぐに口に出来る人間になりたい。

    これらはとても印象に残った言葉たち。

    そう、動かないと始まらない!
    「考えるより動く」…が大事な時がある。考えると怖くて面倒で動けなくなるから。
    そんな時はまず動く…動いたエネルギーでその先が変わるかもしれない…動いた事で人生が追いかけてきてくれる事もある。
    慎重になる事も大事!でも自分の気持ちをきちんと口にし、気持ちに正直に動く事が人生を大きく変えてくれる事もある…美咲のように。

  • おもしろかった。
    「リラの花咲くけものみち」の主人公が学生に対し、こちらは結婚を控えた大人の女性。
    どちらの作品も悩み、葛藤しながら自分の生き方を模索する主人公を応援したくなります。

    美大を卒業しインテリア会社に勤める美咲と銀行マンの和範。家業の跡継ぎとして帰郷する彼とともに、会社を辞めて彼の実家で同居することになります。

    京都独特の文化、婚約者家族の威圧的な態度、これまで知らなかった婚約者の意外な一面を知っていく美咲。
    日常の些事にも神経をすり減らし、疎外感、孤独感を増していく毎日。
    これは辛い、先が思いやられる…。

    そんな苦しさの中、美咲が少しずつ作る楽しさを思い出して、作業に没頭することで息を吹き返していく。やがては広い世界へと泳ぎだす様子に私もすごく嬉しくなった。
    読むと、ちょっとお高い一点モノ商品をじっくり見てみたくなります。

    美咲と圭太との静かで穏やかな時間が、心地よくて好きでした。
    新たな一歩を踏み出す美咲の姿が心に響く。
    ほぼ一気読みでした。


    『行きたい場所にはロケットのようにまっすぐ飛んでいき、興味があることはとにかくなんでもやってみた。正解も成功も成果も気にしない。なにか新しいことを始める基準は一つ。自分が楽しんでいるか、わくわくしているかどうか。』

    『運は信用に値する人間のもとにしか訪れません。あなたがこれまで運が良かったというのであれば、それはあなたが周りの人に信用されていたからですよ』

  • 読みやすく感情移入しやすく、とても面白かった。
    私は京都出身なので、さすがにここまでのことは無いんじゃないか?こんなにいじわるかな?とちょっと気になったけど、旧家の商家だとこれがリアルなんだろうか。絶対に嫁ぎたくない。

    跡取り息子が追い詰められてモラハラ的な言動に走ってしまう場面や、酷い言葉を浴びせてきたくせにめちゃくちゃ執着してきて普通に怖い場面など、ちょっと自分の経験と重なりすぎてトラウマを刺激される部分があり、だからこそ美咲を応援したい気持ちが高まっていく。
    ただ、和範と佳太の人間的魅力にさすがに差がありすぎてフェアじゃないというか、和範が物語のために悪者にされているような感じがあって少し可哀想だった。

    最初は趣味だった美咲の服飾作りが人に注目され成功して行く姿は、結局"持ってる"人だからだよね、と思わなくはない。でも自分のセンスややりたいことが明確であっても、安定とは程遠いその道を歩むことを選べる人がどれだけいるんだろう。
    私はやりたい事が明確ではないことに不安を抱えているからかなり羨ましく映った。
    仕事も人生もやっぱり、一生懸命に頑張った方が絶対に楽しい。まっすぐ向き合いたいと思うものが出来たとき、また再読したい1冊です。

  • 婚約を機に京都に移り住むことになった美咲、婚約者とのすれ違いもあり美大時代の才能を生かして新たに人生を歩み始めるというサクセスストーリー。京都の独特な文化があってこその話しの展開でとても面白かった。

  • なるほどねー作品のタイトルがなんとなく理解出来たかな、京都で作ったモノは人生かもしれない…そんなストーリーでしたよ…続編が欲しい終わり方も良い。
    追記 
    京都は結構好きで年数回行きますが本作情報だと結構というか、やはり仕来たりは厳しそう、伝統と格式の世界は現代でもあるんでしょうネ!
    とは言え、あの街の雰囲気は魅力的。
    本作では北白川あたりが舞台ですが、これまた良い場所が舞台だなぁと思いますね、銀閣寺周辺で哲学の道とか、岡崎、南禅寺も近いし…イメージしながら読んでました…最後に本作読んだ動機は京都が好きだから…でしたー

  • 運がいいことは、偶然どこかからやってくるのではなくて、人との縁、そして、その縁は人から信頼される人でなければ繋がることはない。夢を叶えるために前を向き、懸命に挑戦する主人公に何度も励まされた。

  • 京都の人ってそうなの⁈ってくらい偏見が残ります。京都の人の言葉って他県の人が読み取るのが難しいと聞いた事がありますが、やっぱりそうなのかと勉強になりました。
    藤岡陽子さんの作品はどれも面白いのですが、こちらの作品は読了感がいつもと違うので星3です。

  • タイトルだけ読んで、京都の職人さんが作った京都のええもんを紹介する本かと思って図書館で借りて本を開いてみたら全くそういうガイド本みたいな内容じゃなくて小説だった笑
    気持ちを改めて読み始めたら、なーんや〜東京の女の子が京都に嫁に来て苦労するみたいな恋愛話にちょいちょい京都の伝統モノや名所などを絡めていく感じの話か〜とちょっと残念気味に読んで行ったらそんな単純な物語じゃなくて、芯はもっと別の物でした。
    もちろん京都のいい面と悪い面(悪いというと語弊があるが)も描かれているけど、物語を通じて、今から何かを始めようと思ってる人、ものづくりをやっていきたいと思ってる人の背中を押してくれたり、ビジネスの流れの一例を教えてくれたりしてるなぁと思いました。
    あとは、、読んでみてください。
    作中に出てくるTシャツ、実際にどんな感じのTシャツなのかな〜とめっちゃ気になってたら、実際にモデルになってるなってるブランドがあるんですね!サイトで作品を見たけどほんとに素敵でした!"Read Thread"というブランドです。

  • 恋する気持ち、仕事を頑張りたい気持ち、好きなことを突きつめる気持ち、大切な人を大事に想う気持ち、

    主人公のように、どんなことがあっても好きを諦めたくないなと思った
    自分1人で頑張れないときは周りを頼って、
    そして私も周りの力になれる人になりたい

    表現もきれいで、主人公の心がきれいで、読んでいて心地よかったです♩

  • お仕事小説としても面白いし、恋愛や人間関係、人生の選択という重要なテーマが詰まっていてとても良かった。京都発のブランドを一から立ち上げ色々な苦労や困難に立ち向かっていく姿に勇気を貰えたし、終始応援していた。誰にでもささる一冊だと思いました。

  • まぁ…全体的には面白かったけど…

    なんか…「へぇ…」と思ってしまった。

  • 読みやすくて京都が感じられて、仕事のモチベーションと気持ちを少し前向きにしてくれる、そんな本。

    最初は図書館本で良かったと思ったけど、やっぱり買おっかなぁ?

  • 婚約者の実家に移住した女性が、京都の洗礼を受けて結婚が危うくなり、美大で培った刺繍の技術でブランドを立ち上げる話

    以下、公式のあらすじ
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    第9回京都本大賞受賞作! 

    仕事も恋愛も同じ。動かないとなにも始まらない!

    美咲・32歳。婚約を機に京都の地に降り立つものの、たちまち京都人達からの洗礼を浴び、婚約者との関係性にも違和感を覚えだす。
    そんな時、あるきっかけで、かつて熱中したものづくりに再び挑戦することに――。
    人生の岐路に立つ美咲の運命が変わり始める。

    解説は、物語のモデルとなったデザイナーの谷口富美さん。
    「今まさにやりたい事に邁進されている方のお守りになるような本だと思います。私にとってそうであるように」(解説より)
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    十川美咲(32)は美大を卒業後、家具の輸入販売会社に就職。先輩の紹介で知り合った銀行勤務の古池和範と付き合い始め、婚約する。そんな折り、和範の父親が亡くなり、彼が実家の会社を継ぐため、美咲も共に京都に移住する事になる。しかし、彼の実家は大きな屋敷で、いかにも京都のしきたりを守っていそうな家で……

    和範の家族による数々の京都の洗礼
    実家に戻って変わったように思える和範
    そんな中で始めたTシャツへの刺繍


    京都の「いけず」が「本当に現代でもあるの?」と思えるような感じ
    相手を褒めるのは、ある意味で貶しているとか
    京都での疑問形は命令というのは怖い
    そんな文化知らない人にとっては普通に言葉通りに受け止めてしまいますよねー

    観光に行く分にはいいけど、住みたい土地ではない
    仕事をするのは大変だろうなぁ……

    そう言えば、とあるセミナーで京都のお菓子屋さんのプレゼンで言ってたけど
    「創業100年以内はベンチャー」というのも結構本気なのかもしれない
    今から100年前でやっと第二次世界大戦後というのを考えると、100年でもまだベンチャー扱いかもしれないけどね


    読み終わってみれば、まぁ悪くはない読後感ではあるが、完全にスッキリしたかというと若干のモヤモヤが残る

    そもそも、Tシャツに刺繍って相性悪くない?
    刺繍は洗濯に向かないので、あまり実用的ではないと思う

    使えるものならせめてシャツの方がいい気がするし
    そして素材の質を上げるべきだと思う
    でも、この手の個人ハンドメイド作家はこんなものなのだろうか?


    月橋瑠衣序盤から既に完全には信用してはいけない存在の片鱗がある
    うーん、まぁ世の中こんな人いるよなー と思えるいやらしさではある
    でも、美咲が新たな道を選べるようになったきっかけはこの人なわけで、一概に批難はできないかな

    「二十年に一度、京都は大失敗しますねん」というセリフ
    何の事かはよくわかならないけど、今現在インバウンドのオーバーツーリズムは大失敗しつつある状況なのだろうか?
    それとも。本格的な失敗はこの後の展開かもしれない



    総合しての印象として、婚約者のモラハラが読んでいて辛い
    そりゃぁあなたも難しい立場なのでしょうけど、自分の都合で京都に来てもらったんだからもっと気遣うべきじゃない?と思う
    まぁ、京都に帰ってきて変わったというよりは、元からそんな人だったように感じたかも
    特に、ストーカーにまで発展するは、京都の大きな会社の跡取りという自負や自尊心のなせる業なのではなかろうか?



    あと、物語のモデルとなったデザイナー 谷口富美さんの解説全文が公開されている
    https://note.com/asahi_books/n/n475e2c5f51e2

    何かを創る行為には憧れを感じる
    自分も何か創作するような趣味があったらいいのにとは前から思っていたわけで
    この小説を読んで刺繍に興味が出た
    なので、そのうち簡単なものに挑戦してみる気にはなったかな

  • 直接体験したことはないし、嘘か真か知らないが、古くからのお家が歴史の長さでマウントとるのは本当に馬鹿馬鹿しいと思う。

  • 元気をもらえるお仕事小説

  • 3.7

  • 美咲は、結婚が決まり、仕事を辞めて京都の婚約者の家に同居することになった。婚約者の実家は京都で事業を行う老舗で、東京から移ってきた美咲は受け入れてもらえない。また、婚約者の和範も実家に帰ったら、実家の考え方で行動するようになり、美咲とはすれ違いが多くなる。
    和範とぶつかり家を出た美咲は、大学時代の知り合いで陶芸家となっている佳太に話を聞きに行くが、そこで出会った瑠衣の誘いもあり、Tシャツに刺繍をするビジネスを始めて、チャンスをつかみはじめる。
    京都の閉鎖的な老舗の考え方と自分のやりたい事も大事にしたい美咲の溝をどうやって乗り越えていくのか、軌道にのりそうになったところでのトラブルなどおもしろく読めた。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

藤岡陽子の作品

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