- Amazon.co.jp ・マンガ (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022690647
作品紹介・あらすじ
【芸術生活/コミック劇画】古今東西の童話や民話を諸星大二郎流にアレンジした魅惑的なブラック・メルヘン。「瓜子姫とアマンジャク」、「シンデレラの沓」、「見るなの座敷」、「悪魔の煤けた相棒」、「竹青」の5編を収録。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
諸星大二郎さんの作品はこれまで読めておらず、勧めて下さっている方のご意見を参考にいくつか購入してみました
最初に選んだのはこちらです
諸星氏は面白いが難解で、取っつきにくいが止められん魅力がある作家さん、というイメージを持っていたので、その中でも読みやすそうかも知れない、という勘で選びました
結果として、すごく面白いし童話や民話好きにはたまらない定番の作品が大胆な脚色がされていて、読んでて楽しくてニヤニヤするほどでした
『瓜子姫とアマンジャク』
瓜から生まれたところや機織りのエピソードをばっさり切って、瓜子姫は歴代に何人もいた予知の力を持っている(とされている)巫女姫とし、アマンジャクは近隣の森に住むしっぽの生えた猿の子供のような妖怪で、とても瓜子姫に優しい、何だったらボーイミーツガールみたいなお話
でもふたりが恋愛をするのではなく、瓜子姫は恋をした男のために、もう戻れなくても、どこまでも空高く飛んで行く、で、そこで終わるの!? っていう結末なんですが、でもそれでいい
もともとの瓜子姫が大人しくて、あまのじゃくにひどい目に遭わされる話(何だったらそれだけの話)だから、自分の意志で想う人の元に翔べるのなら、しあわせのはず
自らの意志で恋しい男のところへ翔ぶ女性って、別の作品にもありますね
ずっと瓜子姫に優しかったアマンジャクはとてもいい子だし、他の妖怪や精霊たちも、それぞれの定番のお姿もありつつ、諸星大二郎さんの個性もあって素敵です
屋敷に暮らす神様と野山に暮らす妖怪や精霊たちの興味やもたらす情報がリアルなのも凄くいい
そして人間の社会のままならなさ、愚かしさを対比する形で描かれるのも、構造が端正だなあと惚れ惚れします
難解さや取っ付きにくさはまったくない、すごく面白い作品です
『見るなの座敷』
あれ、この話って『うぐいす長者』とは違うんだっけ? と調べたら地域によって内容が大きく違う形で流布されている話だと知りました それもそうだ
現代にも渡り、幾度も押し掛け女房と暮らしてるって話ですが、意外な結末が発生したのは江戸時代、という事は、時代が下っても変わらずに押し掛け女房し続けるんだろうな、何をされようと…
『シンデレラの沓』
お城で働くシンデレラが沓を無くしてしまい、裸足のままお城の中を彷徨う話
当たり前のようにお城の中でコールセンターのような場所で働いてるシンデレラと貴族の姫君たち
しかしおとぎ話らしく魔法使いの陰者さまとやり取りして手助けを受けたりする
この話のシンデレラは、ガラスの沓にまったく浮かれない
裸足の心地よさを知り、王子のやや困った欲望も優しくスルーして、友たちと楽しく過ごす事に価値を見いだす、その姿がすごく嬉しい話です
『悪魔の煤けた相棒』
グリム童話の『悪魔の煤けた相棒』は読んだことはあったのですが、タイトルを認識できてなかったので、原作の概要を確認してから読みました
原作にも出てくる盗賊宿が舞台になってますが、その主の娘を語り手として“悪魔の煤けた相棒”を再構築されていて、その娘がとにかく不憫すぎる
『ベルセルク』や『レ・ミゼラブル』にもこういう境遇の女の子おったな…とそちらも思い出して悲しくなるが、それでも“悪魔の煤けた相棒”に優しい娘がほんとに偉い、地獄の釜で嫌な記憶をどんどん燃やしてしまえばいいよ! と思ったらわりとテクニカルな真相が出てきて面白い
恩義に忠実で誠実な人がああいう稼業してるのって、地獄の釜の世話をするような奴らはそういう人が好きだからなんだろうな
『竹青』
科挙の試験に通れずに死にかかってた青年が、カラスに助けられてカラスに変ずる話
そこから思わぬ方向に話が展開され、殺人事件の犯人探しをカラスの身で行うという意外さが面白いし、またカラスならではの情報集めをしているところとか、呉の甘寧を祀った廟のカラスと関公(関羽)の廟のカラスは仲が悪い、という下りにはニヤニヤしてしまう
人の姿とカラスの姿を駆使して真相に迫る過程も鮮やかで、何より家族の仇討ちのために犯人を探す女性、竹青が賢く凛々しき人ですごくいい
元になった『柳斎志異』はよく知らなかったので、また調べてみます
そういう訳で、諸星大二郎さんの作品を初めて読みました
多分この作品は、諸星大二郎さんの作品といえばこれ! という作品 ではない と思うんですが、すごく面白かったです
各話に出てくる瓜子姫、押し掛け女房、シンデレラ、宿の娘、竹青、メインどころの女性のキャラの魅力が素晴らしい短編集でした
諸星大二郎さんは女性のキャラが魅力的、だなんて読む前には想像もしていなかったので、うれしい意外さがある体験でした
-
諸星大二郎氏の作品『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』の文庫版を読了。 本当に素晴らしい作品。
特に好きなのは・・・・ 「瓜子姫とアマンジャク」と「竹青」 -
皆が知ってる童話を諸星先生が独自に解釈されたもの。瓜子姫の話がほんとに好き。
-
諸星ワールドです。このたび文庫化されましたので、買って読みなおしました。平成二五年度の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞しているそうです。古今東西の童話や民話を題材にこの作者独特の世界を描いていますが、お馴染みの諸星ワールドほどのどろどろ感は薄めです。淡い叙情が漂うような作品が多いです。こういうタッチも私的にはお好みです。