オウム真理教とは何か 現代社会に問いかけるもの (Asahi News Shop 021)

  • 朝日新聞社 (1995年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784022730510

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  • オウムが社会法制を破って、幾多もの犯罪を重ねた事実は、断罪されるべき事項である。ただ本書では、宗教が持つ社会的な意義を我らが見出せるように提言していく趣旨で書かれているので、新宗教全体を悪玉に祭り上げたり、国家が治安を乱す恐れのある宗教法人について、積極的に介入して解散へ追い込むべきだと云った戦前紛いの激論は、決して主張しない。何故、家族や世俗的な環境を一切捨ててまで、宗教に己の全存在を任せてしまうのか、予断的批判では無く、冷静に議論をする姿勢が感じられる。

    新宗教は、若者を騙して全財産をお布施として没収し、教団が自らの組織を安定的に拡大させる事のみに専心する強圧的な邪教であると、即刻に決めつけて断罪してはならないと、前置きしている。入信する若者にとって、教団の存在が何らかの救いに感じられている部分がある筈だ、と述べている。世俗的な人生よりも宗教の中で得られるものに自己の幸せを感じられる信者がいるから、こうした新宗教が存続できている部分はある筈だ。だからといって、一度入信した後に、教団の教義に疑問を感じて脱退する信者も、一定数居ることは確かであるが。

    社会の中に人間を脅かす不安要素が混在している事を、我らは既に気付いている。何が幸せかの基準も多様化する個人主義の蔓延によって、明確では無くなっている。世俗的な欲望から一切手を引きたくなるような絶望感を、若者たちが感じ取っているのかもしれない。宗教には、信じる者に心の安定を与えようとする、精神的な繋がりがある。競争ばかりが激化する実力社会で敗北する人間も、沢山いる事だろう。社会側にも悪い原因があるのではないか。新宗教に縋り付く若者を非難するだけでは、その問題の根本が解決されないままだ。

    どうすれば最大多数の国民的幸福が実現できるのか、社会の在り方にも批判を加えていく視点がなくてはならない。その上で、宗教とはどう在るべきなのか、真剣に議論を重ねていく事が重要であると、本書は語る。社会を不安に晒すだけの宗教は有害かも知れない。だが、若者たちから生きる気力を奪い取ってしまう現代日本の社会自体にも問題がある。そのような全体を俯瞰する為の知識と思考を持った人間同士が、最良の選択をしながら生きていける柔軟な生活基盤を、現在の社会に築き上げる事は出来ないのだろうか。宗教に全てを依存しなくては、生きている実感が持てない若者たちを、社会的に放置するままであってはならない。オウムの一連の事件を受けて、冷静に社会と宗教を考える契機が生まれるならば、我らにも希望がある。

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著者プロフィール

國學院大學・神道文化学部教授。宗教社会学、現代宗教論、宗教文化教育研究。著書に『教派神道の形成』『新宗
教の解読』『若者と現代宗教』『図解雑学 宗教』『宗教社会学のすすめ』『神道入門』『宗教社会学がよ~くわか
る本』『本当にわかる宗教学』、編著に『現代日本の宗教社会学』『世界の宗教101物語』『ワードマップ 神
道』『図解雑学 神道』『現代宗教事典』『近代日本の宗教家101』ほか。

「2011年 『グローバル化するアジア系宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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