これが憲法だ! (朝日新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022731142

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  • 2006年刊。著者長谷部は東京大学法学部教授、杉田は法政大学法学部教授。◆憲法学と政治学のガチンコ勝負、とは煽りすぎだが、政治学専攻の杉田氏からみた憲法学、憲法による社会の切り取り方への疑問をぶつけ、長谷部氏がこれを料理していく書である。◆長谷部氏の著作は未読で、憲法学者としての立ち位置が判然としないが、種々違和感あり。①人権の普遍性を考える上で重要なマクリーン事件の解読。②日米安保が広義の憲法(憲法的慣習か)を意味充填してきたかの如き説明、ひいては条約と憲法の関係。③憲法改正無限界説に親和的論調等。
    ④主権論における国民の意義(人民主権論的な論法)。◇なお、③につき、結論的に限界説を採用しているようなお茶の濁し方だが(杉田の問題提起が秀逸)、彼の論法なら主権者の転換(国民⇒個人)、非立憲的憲法への転換も可能に見える。◇また、戦争を政治体制間の闘争と言い切る点は大いに疑問。WW2の米英ソ連合をどう説明するのか。◇憲法理念の異質な国(日中、信教の自由のないイスラム圏が想起)とは同盟できないというが、日中平和友好条約を締結、イスラム圏とも善隣外交が可能な事実をあまりに軽視し過ぎ。
    ◇このように各国憲法の体制の差を強調するあまり、例えば、日米安保条約が日本の憲法的慣習にまで昇華した(これは杉田の問題提起だが、長谷部も積極的に否定せず)というのは、おかしな事態を想起させる。例えば、権力分立制や信教の自由を採用しないイスラム圏との間でも、彼の国の制度を日本国内に強要する定めを置かない限り平和友好関係を条約で締結することは可能。現行憲法が否定する価値絶対主義(=ナチスの絶対否定)を採用するドイツとの関係も同様。
    ◇この点では、憲法尊重義務が課される外交官は、現行憲法に矛盾する制度を日本国内に強要されるような内容の条約を締結してはならない、そのような授権は憲法が行っていないというべきなのだ。◇これは、国家には非集団的な対外的自衛権が認められるとの国際法の解釈が憲法慣習にまでなりうるのとは全く異質である。◆加えて、国民主権の内容にもやや疑問が浮かぶ。
    ◇個人的な理解だが、国民主権の国民は、有権者団よりも広く、赤ちゃんから認知症のお年寄りまで含む概念。つまり、主権を行使する国民とはその構成員一人ひとりをいうのではなく、その総体。伝説巨神イデオンに出てくるイデ、第六文明人の意思の集合体が一つの意思となったものに相当(判らない人には全く判らない比喩か)。外国から見た日本国の意思とでもいうべきものかも(構成員には多数の異論があるも、外国から見たらある種統合された意思を措定可能)。そんなものであり、むしろ、国王主権や天皇主権に対するカウンターとしての意味が大。
    ◇この国民主権に過剰に意味づけし、政治への国民の当事者意識の醸成の根拠に仕立て上げる論法(杉田)には違和感。◇勿論、投票率低迷の懸念、自己決定による不利益甘受の正当化の必要性は同感だ。◇が、そのためだけに、治者と被治者の同一性を強調し、両者の階層性を隠蔽するのは危険だ。理由は、現実には、法律とその下位規範たる政令・省令を通じて政治が実行され、その法規範は被治者の行動の抑制・限定を不可避的に伴うものだ。なのに、その策定は成立過程を含め、官僚と国会議員が独占している。
    直接民主制が物理的に不可能(国民が全法案の賛否表明なんて無理)な中、まずは権力=法律等の規範策定機構の所属者とそれ以外とを明確に区分し、前者を抑制する意味とその手段である憲法の役割をいま一度噛みしめるべきだからだ。◆もっとも、諸々の問題点は脇に置いて、本書は間違いなく面白い。◇①帝国憲法もお上から国民(臣民)が内容を押し付けられた押しつけ憲法であるの言には爆笑。②フランスの憲法制定過程が正当で、その他は異端。これが憲法制定論におけるドグマ、憲法学での見えない縛りという主旨の杉田の言には苦笑を禁じ得ない。
    ③また、憲法を社会契約と見るべきではないという長谷部の見立て、そしてその卓越した説明には唸らされた。加え、④難民が日本に大量に流入したら憲法的な人権はどのように確保されるべきかという杉田の問題措定、新興国にお勧めな日本型議院内閣制など面白い視座も書き込まれている書。特に五章は実に秀逸。

  • 憲法学者である長谷川氏の自説に対して政治学者の杉田氏がツッコミを入れ、それに長谷川氏が反論するという形を取っており、長谷川憲法学を立体的に理解できるようになっている異色の憲法本。
    長谷川憲法学の特徴は、なんといっても文言解釈に拘らない点。憲法の「コトバ」よりも憲法が何を守れるか、いかに機能しえるかという観点からダイナミックな解釈を展開しています。
    また、杉田氏のツッコミも鋭く長谷川氏がうろたえる場面も見受けられますが、何とか答えようとする姿に自説の自信も感じられます。

  • 『考えさせられます。新書でよくぞこんなに深い議論を展開したなーという感じ。
    やっぱり対談っていいですね。2人で作る化学反応、みたいな。
    信じるか信じないかは勝手ですが、このふたりがこれからの憲法界と政治学界を牽引していく両エースらしいです。』

  • [ 内容 ]
    国の安全に関わる重要な問題を、内閣法制局や憲法学者だけに任せていていいのか?
    圧政に苦しむ人々を、助けに行かなくてよいのか?
    憲法で縛るより、国会でその都度議論すべきではないのか?
    日本国憲法をめぐる最重要論点を、いま最も注目の憲法学者と政治学者が徹底討論。
    憲法学の現状への痛烈な批判も飛び出す、スリリングで最先端の憲法対論。

    [ 目次 ]
    第1章 憲法はデモクラシーを信じていない
    第2章 絶対平和主義は立憲主義と相いれない
    第3章 憲法解釈はだれのものか
    第4章 絶対的な権利なんてない
    第5章 あらゆる憲法は「押しつけ憲法」である
    第6章 憲法をいま変えることは無意味である

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    [ 参考となる書評 ]

  • NDC分類: 323.01.

  • 従来の議論においては、憲法というものは特別な地位を与えられていたように思われる。

    護憲派については、憲法が成立するまでの闘いや、憲法の規定の素晴らしさ等を強調し、それを根拠に護憲を訴えていたし、

    一方、改憲派については、特別な地位を与えていたからこそ、自分たちで決めなおそう、という主張になる。

    しかし、長谷部の理解によれば、憲法にはそのようなロマンチシズムなどはなく、単に「調整問題の解」にすぎない、ということになる。

    調整問題とは、大勢の人が、みんなと同じ行動をしたいと思っているときに、多くの選択肢があるときに発生する問題である。
    例えば、車を走らせるのに、右を走るべきなのか、左を走るべきなのか、これがまさに調整問題である。


    長谷部は、憲法を調整問題の解であると論じる。
    従来の議論からすれば、まったくもってロマンの欠片もなく、身も蓋もない。
    しかし、一種の憲法教義化ないしは聖典化から大きく離れ、憲法をこのような比較的ドライなものとして捉えると、今まで見えなかったものが見えてくる。
    ドライなものとしてもなお、改憲の必要がないというのは、憲法の素晴らしさを説くことで護憲の必要を訴える議論よりも幾分説得力があるように思える。

  • P157-の 憲法の及ぶ境界 の議論が個人的には面白い。「なぜ、われわれの範囲はネーションなのか。一級市民、二級市民とした方が 多くの価値が得られませんか?」や、境界線は移動するものなのに、なぜネーションという境界線を大切にするのか?という杉田さんの問い。長谷部さんを戸惑わせているけど、これから避けて通れない問題だと思う。

  • 2006.11刊。2007.1池下の三洋堂でDVD「コンドル」とともに購入。時節柄とてもためになりました。

  • 「立憲主義」を「価値観、世界観の多元性を前提にした上で、その間の公平な共存をはかるための手立て」(p12)と定義する長谷部恭男の憲法理論に対し、政治学者の杉田敦が様々なツッコミを入れる一書。内容としては難しいところもあるけれど、対談形式ということでわりとさくさく読める。

    長谷部は「憲法典」と「憲法原理」(日本の場合はリベラル・デモクラシーがこれにあたる)を分けて考え、さらに「憲法典」は「原理」ではなく「準則」なのだから、「憲法典」だけの改正にはさして意味がないとする点が印象的。いいかえれば「憲法典」を改正したからといって、状況が変わるわけではないとする発想である。また長谷部は現状認識として、リベラル・デモクラシーを変える状況にはないとしており、そこからも憲法改正の必要もないとしている。

    また「国家」や「権利」「主権」といったものも、絶対的なものとして考えず、常に疑ってかかる姿勢が印象的だった。

  • 「絶対平和主義は立憲主義と相いれない」という項がいちばん興味深かった。


    「平和が絶対なんだ」という考えに基づいて社会の方向性を決めると、一体どうなるのか。

    国家の自衛権は、個人の自衛権という前提に基づいて成り立っている。という視点がヒントになってくる。



    右でも左でもない日本国憲法をめぐる対談。

    この本が考えるきっかけになるはず。

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