朝日vs.産経ソウル発―どうするどうなる朝鮮半島 (朝日新書 20)
- 朝日新聞出版 (2006年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022731203
感想・レビュー・書評
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対韓国への態度がまったく違う二紙のソウル特派員が議論を交わすなんて、何と面白い! 10年前の本だっていうのが残念。知るのが遅かった。
論調の違う二紙の在ソウル記者の立場だけど、実際には黒田氏と速水氏はプライベートでは一緒に酒をくみ交わすような仲だそうで、そういう意味ではできなさそうでできなかった企画が形になったともいえる。いみじくも書中で、北朝鮮の核問題をめぐり、市川氏が以下のようなことを言っているんだけど、同じようなタブーに阻まれていたといえそう。
「黒田さんはいま、核武装をタブーだとおっしゃった。それはまずい考え方だと思います。非核は、タブーじゃないんですよ。本当に持ってはいけないと大多数が思ってる、公約数なんですよ。タブーと言うと何がますいかというと、今の日本はタブーを壊すことに熱心というか、タブー破りがかっこいいという風潮が横行している。非核三原則はタブーなんかじゃないと思いますよ。国是や国民の願いをタブーと定義づけ、それを破ることに快感を得ようとするのは、論理のすり替え、詭弁です。」(p.96)
さて、2人の話は白熱感がありすいすい読めた。でも、「黒田氏、ずるい」と思うことしばしば。突っ込まれては軽口で話をそらしたり、年輩面したり。一方、主張への共感度としては圧倒的に市川派なんだけど、それでもやや青さを感じたりもした。それが朝日新聞のスタンスともいえるのだろうけど。
2人とも社員の立場を離れた個人として話していると何度か言っているのだが、それでも黒田氏は産経っぽく、市川氏は朝日っぽい主張であり、性格だしって感じがした。両社ともしっかり社風に合った人を採用しているということか。黒田氏は韓国ウォッチャーとしての長い歴史から自分のなかでの答えが固まってもいるのだろうが、「自分の解釈・見方は正しい」「こういうもんなんだ」と断定的、決めつけ的な言い方をする。対して市川氏は、「自分はこう思う」「こういうことではないか」というような言い方。この相手にやさしい感じがリベラルの姿だとは思うんだけど、そうなると断定して自説を曲げずにがなる相手に対したときは分が悪いなあ。
とはいえ、黒田氏も勝手な印象で思っていたよりは急先鋒って感じじゃなかった(少なくとも2006年時点は)。黒田氏の記事を勝手に都合よく解釈し、その威を借る輩こそがリベラルと保守(っていうか右傾ぶりっこ)や日本と韓国の相互理解を阻んでいるんだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
黒田勝弘が案外産経らしくないのに驚いた。
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日韓関係より、米朝関係の方が印象に残る。
満足度7 -
企画としてうまく成功していると思う。新聞社同士の見解をたたかわせていると言うよりは、2大ご意見番の遠慮ない意見が聞ける。
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★企画勝ち★左と右の新聞の朝鮮半島ウォッチャーの対談。もちろん必ずしも新聞の立場と同じではないが、産経の黒田氏が原則論を語るのに対し、朝日の市川氏がそうは言っても現実を考えると、と応じる。新聞の短いコラムからだけでは分からない韓国・北朝鮮の現状が多面的に伝わってくるうまい企画。団塊ジュニアの自分よりひと回り以上、上の世代には、北朝鮮を代表とする社会主義賛美が(特にインテリ層に)意外に根深かったのだと知った。