作家の誕生 (朝日新書48)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022731487

感想・レビュー・書評

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  • 漱石も鴎外もサラリーマン作家だった。手堅いといえば手堅いが、そもそもフリーランス作家が食べていけるだけの市場がなかった。新聞の連載小説や投稿雑誌が流行することで一攫千金も夢見れるようになった。

    井伏鱒二は早稲田の仏文学を中退し25歳で将来のあてもないころ同じような境遇の文学青年が2万人はいるだろうといっている

    菊池寛は芥川と第一高等学校で同級生(ただし4歳年上)、結局退学して京都帝大卒業、27で東京に戻る。

    現代日本文学全集は予約が25万以上の大ヒット。高等教育を受けられなかったが教養に手を出したい人が多くいた

    芥川の義兄も多額の借金で自殺してる

    太宰治は自殺未遂を繰り返し、芸姑と結婚して家を勘当されたり、26歳で大学卒業のめどが立たなかったり

    みんな悩める高等遊民

  • 時代の寵児となった作家と出版事情を追っていく感じ……?
    菊池寛の記述多め。

  • 「ペルソナ」や「ピカレスク」を読んだことのある人には、重複も多いが、
    重複も含めて全体像をつかむには悪くない。
    ただ、気合を入れて書いたという印象はまったく受けず、
    まあこれが新書レベルかなー、という程度。
    コンスタントにさくっと読めるところ、
    川端の投稿少年ぶり、
    文筆業界をジャーナリズムに引き付けて考える著者の立場は、
    まずまず評価できる。

  • 猪瀬さんの本の中で一番好き!明治から昭和にかけての文豪と作家を発掘してきた腕利き編集者をそれぞれの半生を通して描いています。それぞれが、文学のための文学、流行りとしての文学、ビジネスとしての文学、名誉のための文学など、追求してきたものに焦点を当てています。
    この本読んでれば、国語の授業も相当興味持てたのに~、今し更ながら思います。古典を読み返してみようかなと思いました。

  • 小説家とつきあって・別れたら、作品でネタにされてあらいざらい ぶちまけられるんだな。すごい時代だったのね。

  • 近代日本文学において、文学的価値がジャーナリズムとの関わりの中でどのように変容していったのかが、非常に分かり易く描かれている。文学青年の自己実現の理想が、「文学」的価値からではなくマーケット(読者)との関連で述べれば、何かとめんどくさい近代文学史がすっきりとする。その手腕はさすがに鮮やかだ。太宰に関しては、少々当たりが強いか。新書ながら、つまらない研究者が書く近代文学史を十分に凌駕する内容。

  • 猪瀬直樹さん ‏@inosenaoki
    旅に出たり詩を書いたり若者は「自分探し」にせわしないが、それは太宰治や芥川龍之介も同じ。昭和初期フリ-タ-のように「文学青年が2万人」いた。そこからいかに脱出し作家となったか。文豪以前の奮闘を描いた『作家の誕生』(朝日新書、720円+税)http://amzn.to/UNHPdd

    https://twitter.com/inosenaoki/status/253485628858179584 より

  • 01/09

    幸手 中古屋 ¥105

  • 色んな作家や編集者たちの裏話が満載で面白かった。
    最後の方は、著者が別に評伝を書いている太宰と三島に紙数が多く割かれていた。コラムもあまり知られていないことが詳しく紹介されていて楽しかった。

  •  罪つくりな本です。
     既に読まねばならない本を何冊も抱えてしまっている読書家は決して読んではなりません。私など、この本のせいでコレもアレもと読むべき本が10冊は増えてしまいました。

     田山花袋から三島由紀夫に至る近代日本文学の巨匠群を、どうやって「稼いで喰っていたか」、どんな「女(男)を好きになり付き合ったか、結婚したか、愛人にしたか、あるいは心中したか」という2つの観点から総点検してくれている。2つの観点とは、ようするに「生活者」としてどう生きたかである。
     
     「唯ぼんやりとした不安」との遺書を残し芥川龍之介は自殺した。そのことは誰もが知っている。だが、猪瀬氏はその1か月前芥川が出版社あてに送った「クルシイクルシイヘトヘトダ」という電報に注目する。芥川は僅かな講演料と客寄せパンダとして全集の宣伝をするため仙台、盛岡、函館、青森と文字通り喰うための「クルシイ」行脚を強いられていたのだ。
     そして、その芥川に憧れ焦がれた太宰は、芥川の名を冠した賞を貰いたくてもらいたくてしょうがなかった。彼の放蕩と淫蕩ぶりは周知のことだが、猪瀬氏の記述を追ううちに、受賞のレベルなど凌駕しているはずのこの男が運命の悪戯で果たせなかった不条理への無念に、なぜか共感してしまう。
     だが、西武王国も道路の権力をも葬り去った猪瀬氏の舌鋒は鋭い。四度も五度もの心中はすべて狂言やポーズに過ぎないと切り捨てている。公平で正当な記述は極めて小気味良い。

     同様の鋭さで、菊地寛の生活者としての図太さを、大宅壮一の卓見性を、川端を三島を、生活者としての視点というX線を照射することで正確な透視写真のごとく次々と写し取っている。

     結局のところ、田山花袋が「ヘンタイおやじ」もどきの自己を表現した『布団』から始まった私小説と職業としての「小説家」の歴史は、三島由紀夫の自殺で終わったと著者は受け止めている。
     私は、花袋とかいて「かたい」と読むのを受験勉強のための文学史テキストで覚えた。『布団』のエピソードも近代日本文学史上での意義についても大学の一般教養で教えられた。だが、本書を読んで初めて390円を支払って『布団』を買って読んでみる気になった。
     三島由紀夫についても、生活の糧を得るための大蔵官僚としての職を巡る逡巡、初恋の園子との成せぬ恋という2つのキーでかっちり読み解いている。

     本書の最後は、「敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされた」との檄文を遺し自殺した三島への猪瀬氏の鋭く厳しい評価で締めくくられる。

     猪瀬氏曰く「戦争に負けた、という事実をひっくり返すことなどできはしない。あまたの肉親の魂が戦地で、空襲や原爆で砕け散って日本人を打ちのめした。『敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ』たのではなく、ごまかすしかなかったぐらいに深い傷だった」

     私の父は三島由紀夫の二歳下、吉村昭とは同い年だった。『東京の戦争』で吉村昭がその戦争の惨状を極めて克明に書き残した記録を読んだ。同じ時期同じ場所で体験したはずの戦争について、父は結局一言も口にしなかった。その語らなかった思いは長らく私の中にわだかまっている。
     だが思い出した。三島の自決の報をテレビで見た瞬間、
     「ばかが」
     と、ひとことだけ呟いていた。ことばに相応しくない哀しい横顔を、子どもだった私は確かに見ていた。

     語らなかった父に、すこしだけ近づけた気がする。猪瀬氏の労作に感謝する。

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