公務員クビ!論 (朝日新書)

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  • 朝日新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022731968

作品紹介・あらすじ

「親方日の丸」はもう古い。大抜擢に、給与格差は当たり前。リストラや倒産だって現実に。財政破綻で、お取り潰しの自治体が続出?「県庁の星」や「ハニカミ公務員」が日本を救う?公務員になりたい人、辞めたい人、続けたい人、公務員をもっと知りたい人に、公務員を待ちうける七色の未来を、「公務員のカリスマ」が徹底解説。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、一種国家公務員から、地方公務員を経て、現在では公立大学准教授という筋金入りの公務員。だから言っていることがアマイ、アマイ。「公務員といえども将来は安泰でない」という主張など、今や当然、全く目新しくなどない。法的論拠を持って、「将来といわず、すぐにでも赤字自治体の公務員のボーナスや給料はカットすべきだろう」などと主張してくれないと、読むだけ無駄な本といわざるを得ない。「官民一致」や「公務は効率とは馴染まない」などという主張は、全くピンとはずれ。

  • 2008年刊。県庁管理職、市役所職員、旧労働省本省、国の出先機関での職歴を持つ著者(現在は大学教員)が、公務員制度の是非・長短を、官民の等距離から解説し(が、民間企業の就業経験はなさそうで等距離かは?)、公務員の実感を把握するのに良。公務員全員が悪人でなく、本書にある良き公務員がいるのも間違いなかろう。加えて、過剰な公務員叩きが教師へのモンペを生み出したのと同様の弊害を招く点も苦笑しつつも首肯。他方、公務が効率性と非整合的・単年度予算制等効率性を阻害するシステムが存在する点は否定しないが、弁解じみている。
    備忘録。①処方箋の一つとして、官民の流動化。②地方への権限委譲・地方間競争の促進は総務省(旧自治省)の財務対抗策の一つ。③あまり知られていないが、総務省若手の副知事出向は財務省の税務署長と同様の「若殿研修」。著者の経験でも他省庁の自治体出向ポストは軽量化・廃止の方向だが、自治省出向ポストは維持。④倒産は無理としても、退職等で職員の緊張感を一定程度維持する必要がある。⑤公務は多様な利害を持つステークホルダーがおり、利益追求のみの民間企業とは異なり、調整が困難で、舵取りが難しい。
    ⑥優秀な企画部門、人事・政策立案にいる公務員を前面に。説明能力の付与によるスーパー公務員の養成。⑦強すぎる年功序列賃金制度の緩和。職能給の拡充。足高の制?。

  • 【目次】
    はじめに [002-010]
    目次   [011-018]

    第一章 公務員はいかにして公務員になるのか――公務員のしられざる世界 
    (1) 公務員の種類――キャリア・ノンキャリァから地方公務員まで多様な公務員
    (2) 公務員の特殊さは民間との比較からわかる
    (3) 公務員の給料は高いか、低いか
    (4) 手厚い公務員の身分保障
    (5) 退職後こそ公務員人生のはじまり

    第二章 キャリア官僚受難の時代――実は苦悩しているエリート達麺 
    (1) キャリア官僚たちの「憂鬱」
    (2) セクショナリズムの横行
    (3) セクショナリズムはなぜ疲れるか?
    (4) 政治主導体制への幻滅
    (5) 怒鳴って労務管理される官僚――カレーライスでわかる幹部のビビリ方
    (6) 過渡期にある官邸主導体制の下で、最終的に苦労する事務方
    (7) 雑務の増加――コピーマシン化する東大生
    (8) 公務員バッシングに嫌気のさす官僚が激増
    (9) 「税金留学」で付加価値を高めて辞める官僚が続出
    (10) 優秀な若手役人が政治家を目指す不思議さ
    (11) 労働条件の官民格差が視野に入るのは退職寸前
    (12) キャリア官僚は労働条件よりも権限と権力
    (13) キャリア官僚はいつ頃から不満を持ちだしたか?
    (14) 国士型官僚から調整型官僚、そして「政治家の下僕=政僕」の時代へ
    (15) 利害調整にうんざりする官僚が増えている
    (16) 退職者続出でも、キャリア官僚の特権性復活はない
    (17) 特権性の排除は、どういう方向に進むのか
    (18) 「できるキャリア」と「できないキャリア」に選別される
    (19) 二大政党制の下で揺れる日本の官僚制

    第三章 追いつめられる普通の「ノホホン公務員」 
    (1) 末端公務員だって十分な既得権益者――公務員全員が批判される時代へ
    (2) 普通の「ノホホン公務員」にのしかかる重圧
    (3) 平等に扱われすぎた戦後日本の公務員
    (4) あまりにも一律平等すぎる公務員の給料
    (5) 日本にはエリート公務員制度は存在しない?
    (6) 威張っているノンキャリァ、没交渉のノンキャリア、支配されるノンキャリア
    (7) メリハリのある人員配置からすべては始まる?
    (8) 「高給ノンキャリア」「薄給ノンキャリア」に分かれる?
    (9) 抜擢人事が増える?
    (10) 実験場になるかもしれない出先機関
    (11) 出先機関でも人事評価制度の本格的導入が始まる
    (12) それでも文句のある出先機関勤務ノンキャリアは本省に来ればいい?

    第四章 格差が広がる地方公務員 
    (1) 地方公務員間格差の発生
    (2) 地方分権で地方公務員の給料は下がる?
    (3) 地方公務員の給料は何に基づいて支払われるべきなのか
    (4) 「稼げる自治体」vs.「破産する自治体」――組織の多様化
    (5) 労働条件の多様化
    (6) テレワークになじみやすいホワイトカラー公務員
    (7) 激しくなる民間との競争――仁義なき官民戦争
    (8) 正規公務員と非正規公務員とのサバイバル
    (9) 最終的には、地域間競争をしかけられる地方自治体
    (10) 総務省のしたたかな戦略に翻弄される地方自治体
    (11) 地域間競争が止まる可能性はあるか?

    第五章 世界標準は「官民統一」 
    (1) 世界的な公務員制度改革の流れを作ったNPM(新公共経営)
    (2) 日本におけるNPMの導入
    (3) イギリスの公務員制度改革の特徴
    (4) メージャー政権でさらに加速した公務員制度改革とブレア政権
    (5) 現在日本で行われようとしている公務員制度改革
    (6) 公務員制度改革はなぜ難しいのか?
    (7) 考えられる公務員制度改革の方向性
    (8) 果てしなき官民統一の夢
    (9) 「カリスマ公務員」の時代が来る?
    (10) 公務員のやる気をそがないために

    第六章 市場万能時代、公務員はどれだけ努力しても民間に勝てない? 
    (1) 公務員も「見た目が9割」?
    (2) お役所はつらいよ――多様な価値基準の追求を求められる公務員
    (3) 役所は慢性的赤字産業であることを忘れていませんか?
    (4) 役所や公務員は本当に効率性で劣っているのか?――役所はJRのみどりの窓口に負けているか
    (5) 構造的に顧客意識を持つことのできない悲しい性
    (6) 「できる人間」を背後に隠し、「できない人間」を窓口に出してしまう役所の悪弊
    (7) 自らの比較優位を自覚できていない地方公務員の愚かさ
    (8) 効率性を無理強いすると、公務員は偽装する?
    (9) 公務員の効率性偽装を防ぐ方法

    第七章 格差社会における行政サービス――三極化するニーズに公務員は対応できる 
    (1) お役所のビジネスモデルは高度経済成長期の大量生産モデルのまま
    (2) お役所のビジネスモデルが通用しなくなる格差社会の到来
    (3) 富裕層は役所のサービスをどう考えるか?
    (4) リッツ・カールトンと比較される役所のサービス――公務員に「お客様は神様です」という概念は本当に必要か?
    (5) 富裕層向けコンシェルジェを市役所に配置する日はいつ来るのか
    (6) 格差社会の到来で、揺らぐ官製市場
    (7) 官製市場の民営化で民間労働者に変身する公務員が急増する
    (8) 中間層の行政サービスへの満足度は確実に切り下がる
    (9) ニーズが把握しにくい中間層
    (10) 電子政府で中間層のニーズは捉えられるか?
    (11) サラリーマンの参加意識が高まるかどうかは「図書館の質」に依存する
    (12) 貧困層の増加がもたらすものとは……
    (13) 貧困層への対応を巡って、良識ある市町村職員は苦悩する
    (14) 貧困地区のレッテルを剥がすという難しい仕事――日本でもハーレム物語は可能か
    (15) 一部の自治体は「公務員自治」を放棄して警察権力を導入する?
    (16) 構造改革特区の隣に、政府の「天領」が出現する?
    (17) 天領と特区のモザイク自治の行き着く先は……

    さいごに〜公務員冬の時代、「ひきぬかれる公務員」になれ

    あとがき(2008年1月 中野雅至) [249-250]

  • 日経夕刊の書評を見て思わず買ってしまいました。

    不祥事を起こす官僚、年金問題を抱える社保庁などのせいで、何かとイメージのよくない公務員ですが、よくよく考えてみるとその中身は多様で、一括りで論ずるのはおかしいというのがよくわかります。

    公務員畑を歩んできた筆者の分析により問題点は、その辺りのコメンテイターが述べるよりもよっぽど適格に捉えているように感じます。が、対策については歯切れが悪いところもあり、世間のバッシングをドラスティックな案として置き去りにするだけで終わっており、公務員体質が垣間見えた気がしたのが残念です。

    メディアによる一方的な公務員否定論を感じる方は是非読んでみることをお勧めします。

  • 地方公務員→国家公務員キャリア→公立大学准教授へとキャリアップした著者が書いた、公務員の実態暴露本。

    とかく批判されがちな公務員だが、実際は、多くがまじめに働いている方々。公務員と民間との人材交流が活発になるのは望ましい。

    しかし、著者が望むような、成果主義についてはどうなのだろう。事実、業績重視に移行した民間企業でも、正常に能力が評価されていない、成果を横取りされる、社内の人間関係がギスギスしはじめた、という弊害が出ている。

    最近の、アダルトサイト動画ダウンロードで停職処分の課長が、依願退職して退職金もらえるケースなどは怒りを禁じえない。そういう公務員を見てきた覚えがあるだけに。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:317.3||N
    資料ID:95080068

  • 公務員の役割は何か。公務員にしか出来ないことは何か。それは意外に少ないと著者は言う。また、しかしそれは重要だとも。
    地方分権が進めば、公務員の立場も変わる。もう、民間だ官だと分けず、『官民の流動化』が必要なのだとまとめられていた。
    世間の厳しい目に、臆することなく、しかし、その目に誠実に接していく、日本を良くしていこうという公務員の活躍を応援したい。

  • いささか刺激的なタイトルであるが、著者は市国県を渡り歩いた公務員だけあってまっとうな内容である。著者の言う通り、公務員のあり方は変化を求められていると思う。(マスコミの報道は批判の粋を超えたバッシングである事が多いのでげんなりするが叩いた先に何があるのだろうか気になる所である)

  • [ 内容 ]
    「親方日の丸」はもう古い。
    大抜擢に、給与格差は当たり前。
    リストラや倒産だって現実に。
    財政破綻で、お取り潰しの自治体が続出?
    「県庁の星」や「ハニカミ公務員」が日本を救う?
    公務員になりたい人、辞めたい人、続けたい人、公務員をもっと知りたい人に、公務員を待ちうける七色の未来を、「公務員のカリスマ」が徹底解説。

    [ 目次 ]
    第1章 公務員はいかにして公務員になるのか―公務員のしられざる世界
    第2章 キャリア官僚受難の時代―実は苦悩しているエリート達
    第3章 追いつめられる普通の「ノホホン公務員」
    第4章 格差が広がる地方公務員
    第5章 世界標準は「官民統一」
    第6章 市場万能時代、公務員はどれだけ努力しても民間に勝てない?
    第7章 格差社会における行政サービス―三極化するニーズに公務員は対応できるか?
    さいごに―公務員冬の時代、「ひきぬかれる公務員」になれ

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    [ 参考となる書評 ]

  • 公と民間を比べることが、そもそも間違ってると思うのだけども
    でも、貧困化していく過程で、
    納税者の立場からすると苛立ちを感じるという見方があることも
    知っておかなければならないということ。

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著者プロフィール

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

「2018年 『没落するキャリア官僚 エリート性の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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