石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

制作 : 瀬川 幸一 
  • 朝日新聞出版
3.24
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本棚登録 : 147
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732071

作品紹介・あらすじ

30年前、「30年後には石油資源は枯渇する」という話があった。だが、いまも石油が枯渇しないのは、なぜなんだ。こんな、一般のひとたちが抱く素朴な疑問に、石油学会の専門家たちが、懇切丁寧に答える。原油価格高騰のカラクリからバイオ燃料の将来まで、驚きの内幕。環境との意外や意外な関係、原油の原価は「たった数円」、近未来のクルマはどうやって走る?中東産油国の反乱など、3時間でわかる最新の石油事情。

感想・レビュー・書評

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  • 石油ありきの論争で偏った見方で書かれていると感じました。

  •  石油問題の知識をざっと抑えようと思い、手に取った本。この本の執筆には社団法人石油学会が関与しており、石油分野の専門家が把握している最新の知見を知ることが出来る(この本は2008年に出版された)。
     しかし石油業界の人物が携わっている事もあってなのか、石油に代わるエネルギーの長所と短所を説明する下りは、道理にあった説明をしているものの、自分たちの利権を失いたくないがために貶めているのではないかといらぬ邪推をしてしまった。杞憂に過ぎないといいのだが。

     第一章は石油と環境の関係を簡単に説明しており、より詳しいことは第二、三章を読むことで分かるようになる。
     20世紀中頃まで続いたイギリスのスモッグと日本の寒冷地の黒ずんだ景色(石炭の煤煙によるもの)を改善したのには、石油の登場が端を発しており、石油がなかったら今より酷い大気環境だったという事実の紹介を始め、知らなかった事が多くてとてもためになった。 
     具体的には、1.石油の二酸化炭素排出量は石炭より2〜3割低く(天然ガスは約半分)、石油が高騰化すると石炭が使われ、温暖化をさらに進ませかねない。
    2.温暖化ガスの排出寄与度は石油はトータルで20%(交通部門14%:石油化学原料10%)、農業・森林破壊の36%、発電・暖房の19%。 下手にダムで水力発電をしようとしたり、森林を伐採してバイオエタノールを作ろうとするとメタンガス・一酸化二窒素の排出につながる。  
    3.農地でバイオエタノールを作ろうとすると、食料価格が上昇してしまう 効率よく用途に応じて使い分けるべき。
    4.今のところ石油が枯渇していないのは、原油価格高騰を受け中東以外の油田の開発が進められて、OPECの石油供給の割合が低下したこと、脱石油・省エネルギー化が進められたこと、ある時点における経済活動・原油価格・技術を考慮して埋蔵量が算出されるため。 
    5.石油価格が大きく変動するのには、需給バランスが崩れると市場を経て回復するのに時間がかかること、非合法のカルテルで押さえられた反動などがある。 
    6.実際の生産量の1700倍の先物取引が市場で行われることで、投機家によって原油価格が乱高下してしまい、生産現場で働く人から不満の声があがっている。 
    7.何より怖いのが、石油の利用者・生産者の数が膨大なために市場参加者が誰も実需給動向を把握できておらず、正確な在庫水準・消費量・需要量・生産量が分からない、などである。  
     冒頭の、「戦前、豊富に収穫できた松茸がぜいたく品になった背景には、石油を輸入するようになってから柴刈りをしなくなり(薪炭を作る必要が無くなった)、松茸が育ちにくくなった事も一因していた」という話は、環境の悪化で値打ちが増したと思っていた私には意外な話であった。

     第二章は自動車と燃料エネルギーの話をした上で、検討されるエネルギーのメリット・デメリットを解説し、将来への展望を挙げている。
     自動車に使用出来るのは高いエネルギー密度を持った燃料で、かつ社内のスペースを確保するために液体である必要があることが前提で、以下の点に触れている。
    1.今日のディーゼル車は石油のサルファーフリー(硫黄を減らすことによって燃費を改善すること)によって、以前よりも環境に優しくかつ経済性が見込めるようになっている   
    2.ガソリンよりも約2割近くエネルギー効率が良く、力強いこともあってヨーロッパでは人気が高く、「ディーゼルシフト」が行われている(但し、本書には書かれていなかったが、ヨーロッパでは二酸化炭素の排出を意識しているのに対して、日本は窒素化合物に目を光らせている事に留意すべき) 
    3.ディーゼルシフトにすると燃料製造時の二酸化炭素(Well to Tank)と車から出る二酸化炭素(Tank to Wheel)を同時に削減出来る プラグインハイブリッドは使われる電気の発電方法によっては、より多く二酸化炭素を排出する(火力発電ではガソリンの2.5倍)  
    4.天然ガスは品質は良いが、そのままでは持ち運びに不便である。液体化して石油系と混ぜることで枯渇も防げる。 
    5.当たり前だが、バイオマスは利用しても二酸化炭素が発生しないという訳ではなく、極端な話、育てるのみで使わないことが環境に良い。エネルギー効率もガソリン精製時よりも悪くなる事があり、バイオマスを育成させ燃料にするまでの過程で出る二酸化炭素の量も考慮すべき。 
    6.バイオマスの生産は食料価格に多く影響を与えており、1億5000万klのエタノール利用を利用しようとすると約10億人分の年間の食料を費やす計算になる。そのため「土地を食料と争わない」ことが求められる。 
    7.日本は国土が狭いこともあり、アメリカやブラジルのように大規模の生産は出来ない。自国でのエネルギー供給と土地の利用を考ずに生産しないと、安定供給は行えない(原油の生産コストはリットルあたり数円だが、輸入すると40〜60倍になる)。ゆえに、エネルギーを考える上でも「地産地消」という考えかたが大切になる。 
    8.ペットボトルリサイクルは、自治体が回収したペットボトルが海外に売られる(販売価格が高い)、「バージンチップ」に近い品質まで処理を行うのでコストが高くつくなど、リサイクルしたほうが環境に悪影響を及ぼす(3倍以上のコストがかかる)という結果に陥りがち。サーマルリサイクルに利用したほうが効率が良い。 
     現時点では石油代替エネルギーは安定供給できているとは言えず、その利用頻度は限定的に留まっているので、石油を環境に優しくかつ効率的に製造できる技術革新が必要だと、筆者はこの章をまとめている。

     第三章はこれまでの人類と石油の歩みの説明である。石油問題についてざっと知識を得たい人は、この章から読み進めるのも良いかも知れない。
     章の前半は、後半への導入として読むために必要な情報が書かれている。古代メソポタミア・エジプトで既に利用されていた事や、ゾロアスター教、「燃える水(土)」として天皇に献上されたという記述(『日本書紀』)が世界随所に見られていたようである。戦前では中東に石油資源が存在するとは信じられていなかった(砂漠地帯・摂氏50度で石油成分が蒸発してしまうため)という、意外な話も載っている。
     日本が石油を中東に依存しているのは、アメリカ・インドネシア・ナイジェリアのガソリンが多く含まれる値段の高い原油を輸入して二次設備無しで生産する方法でなく、その逆の手段を中東を通じてまかなっているため。
    限りある石油を有効に利用するために、石炭や天然ガスで代替できる製品の製造には石油を使うのを控え、自動車・航空機など石油を利用せざるを得ない製品に使用するという考えを「ノーブルユース」という。
    石油代替エネルギーとして、カナダのオイルサンド、ベネズエラのオリノコタールがあるが、ガソリンの精製・地中や海底に固体で存在するため採取が困難であることが指摘されている。同じような理由でメタンハイドレートも手付かずだが、もし実現すれば日本はエネルギー資源大国と成りうる。
     この章の後半から石油問題の説明に入っている。読んだ限りでは、さんざんいい思いをしてきた先進国側(もちろん日本も含まれている)が中東から手痛い反撃を受けているように思われる。第一回アラブ石油会議での決議が無視され、公示価格が一方的に引き下げられるのは横暴にも程がある。一章の終わりに書かれていたが、「そんなに価格が上昇して困るのなら石油課税を引き下げればいい」と高圧的な態度をとられても仕方がない気がしてくる。もっともメジャーの豊富な資金力を考えると、今後の原油生産の発展が停滞してしまう事を産油国は憂慮すべきという、筆者の言い分も理解できる。
     本の終わりにおいて、現時点では経済的かつ利用しやすいエネルギーはやはり石油であり、今できる限りの節エネルギー法として、自動車の燃費向上を目的としたハイブリッド車の性能向上、炭素繊維の利用による車体重量の軽量化を挙げている。


    自分用キーワード
    千三つ 背斜構造 映画『ジャイアンツ』 ローマクラブ「成長の限界」 増進回収法(EOR) 米国地質調査所(USGS) ハバート曲線 オイルピーク論 資源ナショナリズム 環境クズネッツ曲線 ニューヨーク商業取引所(NYMEX):WTI(アメリカの標準油種) レント(差額地代) サルファーフリー リーンバーンエンジン 三元触媒 潤滑油(摩擦エネルギーを減らせる) カーボンニュートラル FAME(脂肪酸メチルエステル) インド会社「ユニオンカーバイド」の化学物質漏洩事故 GCの12カ条 GSC(Green Sustainable chemistry Network) リサイクル方法(マテリアル・ケミカル・サーマル) 武田邦彦『リサイクルしてはいけない』 ロイヤル・ダッチシェル ジャングルの法則 シャーマン反トラスト法 フランク・ホームズ メジャー及びスーパーメジャー(石油業界用語) スタンダード・オイル(企業名)セブンシスターズ(石油業界用語) アクナキャリー協定

  • 石油や化石燃料に関する話題を世界的な視点から書いた本。石油の埋蔵量はそのときの技術水準、原油価格などによって変わるとか、全世界的から見たらとても少量のニューヨーク先物市場でのWTIの原油価格の基準は決定されてるなど、かなり勉強になった。

  • 石油や化石燃料・エネルギーに関する話題を、グローバルな視点から平易に書き下した本。複数の執筆者によるもので、技術的な面、歴史的な背景、社会的・政治的影響などの多彩な話がコンパクトに織り込まれていて、良い勉強になった。NYの先物市場では、日産30万バレルの原油に対して、5億バレル分の取引量があるというのは驚き。中東情勢以上にファンドの投機的な思惑のほうが原油価格に影響を与えるようだ。なにかと立場が微妙なエネルギー問題において、本書は総じて石油文明を肯定的に捉えている。(法)石油学会なる経産省の公益法人の筆によるものなので、一定のバイアスを認識した上で読む必要あり。

  • ガソリンが高くなった時期だから読んだ本です。枯渇による高騰ではなくて、投機による高騰だと知ったのはこの本ででした。

  • [ 内容 ]
    30年前、「30年後には石油資源は枯渇する」という話があった。
    だが、いまも石油が枯渇しないのは、なぜなんだ。
    こんな、一般のひとたちが抱く素朴な疑問に、石油学会の専門家たちが、懇切丁寧に答える。
    原油価格高騰のカラクリからバイオ燃料の将来まで、驚きの内幕。
    環境との意外や意外な関係、原油の原価は「たった数円」、近未来のクルマはどうやって走る?
    中東産油国の反乱など、3時間でわかる最新の石油事情。

    [ 目次 ]
    第1章 石油をめぐる世界の動き(石油と環境の意外な関係 石油は環境に良い? 地球環境問題は、そう単純ではない ほか)
    第2章 石油を上手に大切に使う(これからの自動車は何で走る? 自動車燃料にはエネルギー密度が必要 まず燃費の改善 ほか)
    第3章 石油文明は終わらない(古くて新しい石油とのかかわり 人類の歴史のほとんどは真っ暗闇? チャーチルの英断―海軍の燃料を石炭から石油へ ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 事実をたんたんと。

  • 環境問題は科学的、論理的に考えなければならない。感情的にエコを叫んだところで、実際にそれがエコとは限らない・・というのは事実だある。

    したがって、石油を使うことのほうがエコである、ということもきっとありえるとは理論的にはわかる。しかしそれを書いているのが、社団法人石油学会であれば、どうしても眉唾というとになる。まあ、そういう本である。

  • 石油に関連する話題がかなり盛り込まれており、何も知識がない人にとっての入門書としては良い。
    新エネルギーなどの話題にも触れており面白い。

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