日本にノーベル賞が来る理由 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • レビュー :12
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732521

作品紹介・あらすじ

日本にノーベル賞ラッシュがやって来た!快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

感想・レビュー・書評

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  • ■書名
    日本にノーベル賞が来る理由

    ■著者
    物理学博士、作曲家、指揮者
    伊藤乾

    ■内容
    湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。
    原爆、核開発からポスト冷戦後まで、ノーベル賞の背景に
    あるパワーポリティクスを読み解き、日本の技術の生かし方、
    進むべき道を指し示している。

    ■所感
    ノーベル賞のイメージといえば、
    専門的に優れた理論、産業に高い業績をあげた技術などを
    創りだした人に与えられると思っていました。

    実はそうではないようです。
    ノーベル賞を授与するには単に理論・技術が優れているだけではだめなようです。
    ノーベル賞の性格として、
    ・世界の平和を脅かさない
    ・人類の発展に役立つ
    ・授与する人その人そもそもが1人の人間として優れている
    ・財団が考えるその年の企画にマッチしている
    ・・・・

    などなどいろいろとあるようですが、
    一番驚いたのは4つめの企画の話です。

    実は、その年の歴史的な背景や世界情勢を踏まえて、
    今年はこの分野にノーベル賞を出そう!と決めるそうです。

    え、一番優れているものにあげるんじゃないんだ、
    という気もしますが、
    そもそも違う分野の論理、技術を比較することはできないことはうなづけます。

  •  大学の博士課程まで物理学を専攻した著者が、日本のノーベル賞受賞が近年急増したことも背景に、その理由を分かりやすく解説する。
     本書の執筆当時受賞した小林・益川・南部氏らと、その指導者とも言える小柴博士の関係。同じ研究領域でもらうべきであったが早世した戸塚、須田氏や先駆的だった坂田博士。
     所属した研究機関や国と、研究を支えた真の背景は何か。国際情勢を踏まえたタイミングなど様々なバランスが配慮されるらしい。それでも性別、人種、地域に偏りがあるなど、様々な要因がからみあって、単なる「世界トップの業績」ではなく、受賞国への「期待」もあるようだ。
     その上で、著者の本業である音楽に必要な要素にもなぞらえて、科学技術そのもの、研究所など環境、人材育成を進めるべきと、日本が世界に貢献すべき道が提唱される。

  • 最初、日本賛歌の本かと思ったが、意外に重い内容の本である。日本人は、ノーベル賞とは業績が優れていればもらえると思っているかもしれないが、実は、出す側ははっきりとした理念、きちんとした企画のもとに出しているらしい。戦後すぐに湯川秀樹さんがノーベル賞をもらって日本人は勇気をもらったが、湯川さんの業績は、実は日本に落とされた原爆の核理論の原理を発見したものだった。だから、日本に落とした原爆に対する謝罪の意味もそこには込められていたのである。原爆が戦略的に意味のないことは今日よく知られているが(アメリカ人の大多数はあれで戦争が早く終わり、多くの人の命が助かったと考えているが)、実はあのまえに実験的に原爆と同じ大きさのパンプキン爆弾を何度も投下し、その殺傷力を測定したのだそうである。まさに、原爆とは戦時における科学実験だったのである。湯川さんは自分の発見した中間子論がそのもとになったことを自覚していたからこそ、戦後核兵器反対運動を続けたし、原爆を生み出したマンハッタン計画にかかわった科学者たちは,戦後10年の間はノーベル賞の対象とはならなかったのだそうである。このことに象徴されるように、ノーベル賞は、人類の平和という理念と、伊東さんが言う、男性優位、地域偏重、白人偏重等を是正する方向にあるものに与えられるようだ。日本が多くのノーベル賞を手にしたいなら、国として科学行政にこうした理念を取り込んでいくべきだ。

  • 日本の大学は成立からして特殊。明治維新以来、日本の科学技術研究は全て、富国強兵、殖産興業のため、国の大目的があった。戦前の日本には7つの帝国大学があったが、北大、阪大、名大は理系学部しかなく、全ての大学は本質的に軍事研究を通じて、国に奉仕することが唯一最大の目的だった。

  • ノーベル授賞の考え方に突っ込んだ考察で、なるほどと思うこと多数。思えば、そもそもこの賞の選考過程は秘密裏ということで、公平公正である必然性はなく、いろいろな思惑があって然るべきなのである。基本的には欧米出身者中心の授賞で、例外はイスラエルと日本ぐらい。とりわけ日本人はマイノリティの中で異常にメジャーだという不思議な結果になっている。日本がトップレベルだという理由も無いわけではないが、状況証拠を読み解いていくと、江崎玲於奈以前とその後で、日本人受賞の意味合いが大きく違ってきているのが分かる。益川先生の「大して嬉しくない」発言にも溜飲が下がるのだ。

  • [ 内容 ]
    日本にノーベル賞ラッシュがやって来た!
    快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。
    「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。
    原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。
    世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

    [ 目次 ]
    1 幻の物理学賞と坂田昌一、戸塚洋二
    2 ノーベル賞を勘違いした日本人
    3 究極のパワーバランス
    4 「対称性」でノーベル賞を見る
    5 知の好循環は回っているか?
    6 問われる「ノーベル賞受賞後」の活動
    7 「壁」を超えて…世界が日本に期待するもの

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 三葛館新書 377.7||IT

    いくら優れた発明や発見をしてもノーベル賞をもらえるわけではない。
    ノーベル賞のもつ独自の個性や判断基準とは?
    あまり知られていないノーベル賞の裏側が分かりやすく解説されていて、とても興味深い内容です。

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=58276

  • ノーベル賞の取得を、賞の戦略面から考える。
    非常に面白いです。

  • 日本にノーベル賞ラッシュがやって来た!快挙の背景には国際社会の明確な意思がある。「対称性の破れ」とその「回復」をキーワードに、湯川秀樹以来の16人の受賞者を検証。原爆、核開発からポスト冷戦後まで、パワーポリティクスを鮮やかに読み解き、日本の進むべき道を指し示す。世界の研究と開発を左右する、「最高権威」ノーベル財団の戦略とは。

  • 興味深く読むことが出来たひとつの理由のは、ノーベル賞という話題を通して、日本が非西欧世界の中でかなり特殊な位置にあることが明らかにされるからだろう。今、世界では先端的な科学研究が推進されている場は、北米大陸とヨーロッパに限られる。それは、科学分野のノーベル賞でどの国の授賞者が多いかを見れば一目瞭然だろう。それに対するきわめて少ない例外が、日本やオーストラリア、そしてイスラエルなのである。その中でも日本は、「自国で生まれ、自国語で世界最高度の教育を受けた科学者が、内外で世界をリードする研究を進めている」非常に例外的な国だという。

    ノーベルの授賞式に先立ち、益川敏英・京大名誉教授は、英語に自信がなく日本語で記念講演を行ったが、これはむしろ恥ずべきことではなく、自国語で世界最高度の教育を受けて最先端の研究を成し遂げることができるということの証しなのだろう。

    もうひとつ面白かったのは、ノーベル賞が持っている個性であり、科学分野のノーベル賞でもそこにかなりの政治的な判断が入り込んでいるということである。ノーベル賞には、個別審査以前に「企画段階」が存在し、たとえば湯川秀樹へのノーベル賞の授与は、「原爆投下への謝罪の意を込めて、日本科学を世界の第一線のものと承認するセレモニー」としても企画されたのだという。これ以外にも、朝永振一郎や川端康成などへのノーベル賞授与にどんな企画性が潜んでいたかなどが次々に明らかにされて興味深い。

    著者はまた、日本の科学研究は「知の好循環」が充分ではないと指摘する。科学的な発見が特許収入とスムーズに結びつき、その資金がさらに基礎研究の推進に投入されるような好循環。iPS細胞で話題の山中教授が直面している状況を考えると、日本の現状がまだいかに「知の好循環」と縁遠いかが、よくわかるという。

    小著だが、ノーベル賞という賞そのものの性格を浮き彫りにし、またノーベル賞をめぐる科学分野の知識も吸収できるように工夫された好著である。

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