芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022732583

作品紹介・あらすじ

第一回芥川賞選評で、「生活の乱れ」を指摘された太宰治。受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子…。「私小説を生きる作家」として良質な文学を世に問い続ける著者が、芥川賞を逃した名作について、その魅力を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00395236

    太宰治、吉村昭、島田雅彦、干刈あがた……彼らはなぜ芥川賞を取れなかったのか。「私小説を生きる作家」として、良質な文学を世に問い続ける著者が、当時の選評を振り返りつつ、敬愛する名作たちの魅力を語りつくす。芥川賞落選史にみる、もうひとつの文学史。(出版社HPより)

  •  自らも「芥川賞を取りそこなった作家」の一人である著者が、同賞の長い歴史の中から“受賞を逸した名編”11編を選び、それぞれの魅力を探っていく一冊。

     取り上げられているのは、太宰治の「逆行」(第1回/1935年上半期候補作)から干刈あがたの「ウホッホ探検隊」(1983年下半期候補作)まで、戦前からバブル前夜に至る昭和期の作品。平成に入ってからの作品は一つもなし。

     仙台文学館で著者が講師をつとめた連続講座をベースにしたもの。ゆえに、文章は話し言葉でわかりやすいし、ゲストに招いた作家や編集者の話、受講生とのやりとりも随所にはさまれていて臨場感がある。

     以前このブログでも書いたことがあるが、芥川賞を取ってから鳴かず飛ばずの作家は多く、むしろ受賞を逸した人の中にこそ、文学史に名を遺すような重要作家が少なくない。太宰のみならず、三島由紀夫も村上春樹もよしもとばななも、芥川賞を取っていないのである。なので、本書は企画として優れていると思う。

     取り上げられた作品を読んでからのほうが面白いのは当然だが、梗概などは本文で紹介されるので、“読んでいないとチンプンカンプン”ということはない。
     
     『文学賞メッタ斬り!』的な毒舌の笑いを期待する向きも多いだろうが、本書のスタンスはもっと生真面目だ。『文学賞メッタ斬り!』は読んで楽しむ本だったが、本書は“「芥川賞を取らなかった名作」を通じて、佐伯一麦が教える小説の書き方講座”というスタンスなのである。

     ただ、取り上げた作品が落選した際の選評は細かく紹介されるので、『文学賞メッタ斬り!』にあった“選評を批評する愉しさ”は、本書でも十分味わえる。

     また、取り上げた作品をめぐる作品論・作家論としても読みごたえがある。
     とくに、干刈あがたの「ウホッホ探検隊」を取り上げた最終章は、感動的ですらある。同じく『海燕』から登場した作家という意味で同志的連帯感を抱いていたであろう干刈に対する、佐伯によるレクイエムという趣もある(干刈は92年に49歳の若さで病没)。

     巻末には、島田雅彦(芥川賞落選6回)と著者の対談を収録。これが、島田のいつもながらの言いたい放題が痛烈で、なかなか笑える対談になっている。「本文が生真面目だから、読者サービスとして笑えるページも作ろうか」みたいな意図で入れたのかも。

  • 文学

  • 私自身は芥川賞に何の思い入れもなく、
    賞を取った作品だからどうという事もない。
    寧ろミーハーな感じがあり、近年の受賞作品は避けてすらいる。
    しかしながら友人に
    芥川賞を取った作品を好んで−近年に至っては欠かさず−読むという人間がいて、
    その友人が勧めてくれた本。

    当然のことだが受賞作品に脚光が当たりがちなわけであるが、
    受賞を逃したからといって出来が悪いわけではなく、
    作品の出来は十分でありながらも運悪く逃した作品は多いはずで、
    そこに焦点を当てた点は非常に好奇心を刺激した。
    やはり人間の選考には好みや偏見や理解や無理解・その時々の事情や背景があり、
    またドラマもある。
    必ずしも作品そのものの評価だけではなく、
    今後の文学界や芥川賞の在り方も踏まえての選考であったりと、
    表には見えない話が興味深かった。

    しかしながら友人ほどの評価をしないのは、
    やはり私が芥川賞という賞に興味がないからなのだと思う。

  • 太宰治や吉村昭、島田雅彦といった今も売れている作家の作品だけでなく、消えてしまい、読まれなくなった作家の作品にも光を当てている。作品をどうやって読んだらいいのか、大変に勉強になった。芥川賞を取れなかった佐伯さんだからこそ語り口に切迫感があり、なお良かった。

    干刈あがた、森内敏雄の作品をさっそく注文してみた。

  • 自分の好きなブックガイドシリーズ。でも予想してたのとは違って、これはちょっと違った目線で楽しませてくれた。芥川賞の候補に挙がった作品をつらつら並べて、それに関する簡単な紹介が羅列されてるのかなと思ったけど、そうではなかった。筆者が特に優れていると思った作品をピックアップして、なぜ取れなかったのか、そのときの評者の意見などをうまく交えながら考察していく、っていう寸法。この本を読むと、むしろ芥川賞を取っていないこれらの作品群をこそ読みたくなってくる。巻末に候補作の一覧が載ってるけど、殆ど未読の作品ばっかで、まずそっちを読めよ、って感じだけど(苦笑)

  • 私小説作家、佐伯一麦さんの丁寧な解説で、芥川賞を逃した隠れた名作が紹介されている。小山清と木山捷平の二人が取り上げられているのが嬉しい。

  • 文字通り、芥川賞を取ることの出来なかった作品・作者にスポットライトを当てた書評本。自身にとって知らない作品・作者ばかりだったことに加え、著者の考えなど読み込ませる文章もあり一日足らずで全てを読むことが出来たため読み応え、魅力は十分だと思う。後ろの頁には過去から発売当時に至るまでの芥川賞作品タイトルを載せていることも好感が持てた。

  • 本書は芥川賞にまつわるスキャンダラスな出来事よりも、受賞できなかった名作にスポットをあて、鑑賞することに重点を置いています。本書のあおり文から連想するよりも、至極真っ当な文学批評ですね。

  • ガイドとして活用している。木山捷平・小山清・小沼丹は私も素晴らしいと思う。

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著者プロフィール

佐伯一麦(さえき・かずみ)
1959年、宮城県仙台市生まれ。仙台第一高等学校卒業。上京して雑誌記者、電気工などさまざまな職に就きながら、1984年「木を接ぐ」で「海燕」新人文学賞を受賞する。1990年『ショート・サーキット』で野間文芸新人賞、翌年『ア・ルース・ボーイ』で三島由紀夫賞。その後、帰郷して作家活動に専念する。1997年『遠き山に日は落ちて』で木山捷平賞、2004年『鉄塔家族』で大佛次郎賞、2007年『ノルゲNorge』で野間文芸賞、2014年『還れぬ家』で毎日芸術賞、『渡良瀬』で伊藤整賞をそれぞれ受賞。


「2019年 『山海記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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