調律師、至高の音をつくる 知られざるピアノの世界 (朝日新書)
- 朝日新聞出版 (2010年11月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022733672
感想・レビュー・書評
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ピアノの調律の世界は知らないことがいっぱい。タカギクラヴィアの、社長さん。
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筆者はピアノ調律師。一般向けの調律のほか、コンサートやレコーディングの際にプロ演奏家のための調律を行っている。プロ向けに、自社で管理するスタインウェイのピアノの貸出も行っている。
プロの矜恃を強く感じさせる1冊である。
ピアノの貸出事業は以下のような経緯で始めたものだという。プロの音楽家はほとんどが自分の楽器を持ち歩くが、ピアノは重いためにホールに置かれているものを使うのが普通だ。保管状態が悪く、音程が狂っていたり弾きにくかったりするピアノも多く、短時間で調律師が手を入れ(時には「修理」し)、演奏家が状態を見極めつつ弾くことになるらしい。筆者はこれに疑問を持ち、自分で運搬装置を開発して、自社で完璧に管理したピアノをコンサート開催地まで運ぶ事業を行っている。
一流の演奏家は、音楽性豊かに弾くことを目的とするため、小さい音が美しく響くようにするなど、プロの要求にしたがって調律したピアノは、技量の落ちる人には必ずしも弾きやすいものとはならないのだそうだ。筆者は車に例えて、F1レースカーのようなものと言っている。テクニックがなければ魅力も引き出せないというわけだ。それを支える調律師にも相応の高い技術が必要とされるのだという。
その他、ピアノの構造や歴史、筆者の会社も所有・管理するスタインウェイのピアノの魅力、日本クラシック音楽界の今後の展望など、プロの裏方ならではの話が多く、興味深く読めた。
*作夏、スタインウェイのピアノに触れる機会があった。娘と1曲連弾させてもらった(のだめで有名になったモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」を易しく編曲したもの)のだが、すてきな音色で弾きやすいピアノだった。筆者の言葉を借りれば、さしずめ、オートマ仕様に調律してあったのだろうけれど(^^;)。素人ながら、幸せな気分になりました。今でも思い出すとちょとほっこりする。すてきなピアノだったなぁ。 -
調律(特にコンサートホールやレコーディング)の世界をちょろっと垣間見れる本。もうちょっと技術的な内容について踏み込んでたら面白いのになぁ、というのも後半からはほとんどドヤァな話だったから。でもステージでのピアノを置く位置など、プロの演奏する音にすごい責任を背負う仕事で面白そう。著者は松涛でピアノサロンやってる。スタインウェイの持ち込みを始めた人。
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201011 まぁ大変。
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スタンウェイのピアノが運ばれているのを見たことがある。
知る人には分かる、端正で洗練された、あの美しいロゴマークの描かれた大型のトラックがホールの通用口に横付けされ、巨大なコンサートグランドが2台、縦型に収まっているのを見て、すべてのホールがスタンウェイを所有しているわけではなく、こうして運ばれているということ知った。
それはさておき、スタンウェイ万歳の調律師さんの自己顕示欲満載の本。プロ意識を持った仕事は本来素晴らしいものであるはずなのに、残念ながら鼻につくような内容であるのは、まるで日経新聞裏の「私の履歴書」みたいな感じ。自分の仕事に誇りを持つのはよいけれども、そうじゃない側のひとびとを貶すような書き方はいただけない。 -
調律師=崇高な精神で心清らかに、というこれまでの自分の勝手なイメージを覆し、現場(=コンサートやライブ会場)で時にはとっさの対応をして、ピアノやピアニストと熱く関わる人間臭い職人、と思わせてくれた作品。
外見は同じグランドピアノでも1台1台音色が違う。保存状態、特に湿度によって調律の具合は変わり、逆によく保存されていれば、振動には強く、遠くまで運んでもほとんど狂わない。高級なピアノであればあるほど、崇められるかのように、あまり触れずに弾かれない、というのはよくありそうと思ったが、実際は逆で、どんどん弾かないとダメになると。勝手のわかった自前のスタインウェイを準備して、全国のコンサート会場に運ぶというスタイルが、多くの演奏家の信頼を得て今に至るという。
後半は、業界にまつわる人々の話。調律師の見分け方、関わり方からわかるよいピアニストの見分け方など。特に地方で見られる調律師周りの権威主義的扱われ方や、バブル時代のホール乱立で、手入れの行き届かないホールやピアノが残ってしまっている現状などを憂える文章が続き、強い思い入れがあるのだなと感じた。 -
職人のこだわりは、思ったより視野が広い。