歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734099

作品紹介・あらすじ

どう守り、返還させるか?威勢のいい言葉だけでは進展はない。解決策は「歴史」の中に書かれている!明治維新時の領土と、その後の戦争による拡大。敗戦での急激な縮小と、戦後の枠組み。それらの歴史の裏側までを厳正に検証する。21世紀の視点に立った日本の主張。

感想・レビュー・書評

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  • 竹島、尖閣については、日本人としてしっかりと学ぶべきだ。

    じゃあ、中国や韓国の人に堂々と語れるかといえば、ぜんぜん自信がない。

    とにかく他人事じゃないことを認識し、考え続けなければならない。

    あとがきにあるように、ロシアとは「歴史」が土台にある。プラス「外交」

    韓国とは「条約」プラス「外交」

    中国とは「資源」プラス「外交」

    それぞれの国ごとに対応を変えるのが重要だ。

  • 領土問題に関してはキチガイが多過ぎるためなるべく近づきたくなかったのだが、「保阪正康なら安心だろう」と思い手にとった。強気な書名がつけられてはいるが、内容的にはやはり冷徹な保坂史観。日本近代史を「領土」の観点から見直し、事実と論点を細かく整理している。

  • 竹島、尖閣諸島を日本の領土だと威勢のいい言葉でどなりたてても問題は進展しない。相手の主張も正確に理解した上で、その主張の問題点を反論していく姿勢が必要だと思うようになった。国境とは力関係で決まってきた経過があるので、いつの時点までさかのぼって考える必要があるのか。どちらにしても真摯な話し合いは必要である。

  • 読了。

  • 北方領土、竹島、尖閣諸島と日本が隣国と領有権を争っている領土の歴史的経緯に詳しく参考になった。ただ読後感は何となくすっきりしない。本書で3つの地域とも’暴力で奪い取った’ものではないことは明らかにされたが、編入手続きに若干の不備があったり、外交交渉でうまいことやり籠められたりして、正々堂々と日本固有の領土だと主張しにくい面もある。このような背景を踏まえ、我々一国民が何をすれば良いのかについての示唆が敢えて曖昧にしてある感があり、どうもすっきりしない。

  • ロシア、韓国、中国と抱える領土問題を歴史を紐解きつつ、著者は昭和18年の日本が高揚している時期の日本地図を度々引用しながら、領土とは何かを冷静に考えさせてくれる好著である。ソ連、中国の強かさだけではなく、ヤルタ会談以降、サンフランシスコ講和条約、沖縄返還に至るまでの米国の政治的な思惑が曖昧さをあえて残したということで、現在の日本と3国の対立の芽を残したという考え方はもの凄いですが、事実なのでしょう。著者によれば、ソ連はSF講和条約を拒否しており、日本は千島全体の領有を主張しても可笑しくないというのは、決して国粋主義的な考えというわけでなく、素直に結論できるということが理解できます。逆に1880年には琉球処分にあたり、「宮古島・八重山群島を中国領土とする」と清国に伝えたというのは皮肉なことであり、領土問題がその時代の政治的思惑に左右されていたという奥の深さを感じる本でした。竹島も島を発見したというフランスが領有権を主張していたら・・・考えるのも楽しいものです。

  •  北方領土、竹島、尖閣諸島に関して歴史的な推移を辿りながら、どのタイミングでどういった意図をもってどの国の領土と認められてきたか、そして現在はどう認識されていて、どういった反論が各国から存在するのか、日本はどう主張が可能か、綿密に考察している。こういった本を読むと、やはりテレビ・新聞等の大手メディアでは発信できる情報も限られ、一面的な報道がなされていると考えさせられる。よく外交上の会見などで政府が発言する”固有の領土”などというものは存在しないことがこれを読めばよく分かる。各国この問題に関しては、想像以上に戦略をもって発言・交渉をしている。一方が狂っていて、単純な断固たる態度のような力づくの理論で対応するといったような解決方法では解決できない問題が存在している。

  • 昭和十年代の日本(大日本帝国)の版図は、今よりもずっと広かった。北海道・本州・四国・九州に琉球列島・千島列島(占守(シュムシュ)島〜国後島)を加えたものが「内地」であり、朝鮮半島・台湾・樺太南部、それに関東州(遼東半島先端の旅順・大連)、南洋諸島(グアム、サイパンなどのマリアナ諸島・パラオ諸島・トラック諸島・マーシャル諸島)、そして新南諸島が「外地」であった。(新南諸島は、現在中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアなどが領有権を争っている南沙諸島のことである。)後発の帝国主義国家であった日本は、新たに獲得した領土で皇民化教育を推し進めていった。当時の日本が領土の獲得にいかに熱心だったかは、現在の領土問題を考える上でまず押さえておかなければならないだろう。

    本書は、北方領土・竹島・尖閣諸島についての歴史的背景を解説したものだ。それぞれに論点が異なるので、解決のための共通の処方箋はなく、ケースバイケースで考えていかなければならない。

    北方領土に関する歴史は、幕末の1855年、日露通好条約(下田条約)にまで遡る。このとき、日本とロシアとの国境は択捉島とウルップ島の間に定められた。1875年(明治8年)に、「樺太千島交換条約」によって千島列島の全てが日本領となった。さらに、1905年(明治38年)、日露戦争後のポーツマス条約によって南樺太(および関東州)も日本領となった。したがって北方領土は、歴史上一度もロシア領になったことがない。

    1945年8月18日、ポツダム宣言を受諾して武装解除した日本軍に対して、ソ連軍は千島列島北端の占守島への攻撃を開始した。8月28日に択捉島に入ったが、このときにはソ連軍との戦闘はなしに日本兵は降伏し、将校はすべてシベリアの抑留所に送られた。そして、9月5日までに、千島列島には含まれない色丹島・歯舞諸島をも占拠した。

    尖閣諸島は、1895年(明治28年)に日本領として編入されたが、そのときに清国は何のクレームも付けなかったらしい。清国は台湾にすら興味を示さなかったのだから、これは本当なのだろう。けれども1968年に尖閣諸島周辺に石油資源が埋蔵されている可能性が指摘され、それ以降中国および台湾が尖閣諸島の領有権を主張するようになった、というのが本書の立場である。

    竹島はもっと微妙である。竹島は1905年、中井養三郎という一人の漁師の熱意によって島根県に「編入」された。けれども韓国側は、これを韓国への侵略の第一歩とみなす。他にもいくつかの論点があるが、日韓双方の言い分はいつまで経っても平行線をたどり、決して立証も反証もできない。したがって、「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土」とは言えず、日本政府の主張は強すぎる。

    ただし、結局のところ、竹島問題が存在するのはサンフランシスコ平和条約で帰属が曖昧にされたからであり、それは日韓の間に紛争の火種を残しておいた方がいいという米国の思惑が働いたからである。竹島問題で熱くなっている人は、アメリカの掌の上で踊らされているに過ぎないのだ。

  • 日本の領土問題、すなわちロシアとの北方領土、韓国との竹島、中国との尖閣諸島の領有に関する問題を日本の近代史を詳細にたどることで論じる書。

    大局的には、日本は日清戦争、日露戦争で領土を拡大し、太平洋戦争での敗戦によりその領土の大部分を失うということになった。
    そして、この領土拡大期以前に領土問題の対象地域がどこに帰属していたのか、また戦果により帰属した領土はどのような手続きで日本の領土となったのか、そして同様に太平洋戦争の敗戦でこの対象地域はどの国に帰属することとなったのか、またそれはどのような手続きによるのかを史実に基づき明らかにしていく。

    著者自身のスタンスはこのように史実から領土の帰属を明らめようとするものであり、一定のイデオロギーのもとに感情的に日本の領土を主張するものではない。
    以前にも著者の著書を読んだことがあり、この点は本書でも貫かれている。

    ただ、歴史に基づき客観的に領土問題を考察しようとすればするほどその帰属を明確にすることは困難であることを本書を読んで改めて理解した。
    竹島の帰属をめぐる日韓のやりとりについても詳細な文献が紹介されているが、必ずしも日本の主張が正しいとも言い切れないことが分かる。
    著者もはっきり白黒をつけることはしていない。

    また、本書では、日本が明治以降世界に領土を広げる前に今回問題となっている地域をどの国が実行支配していたのかについて、あまり書かれていない。
    実際にはどこにも属さない単なる岩礁のようなものでもあり、その当時はどの国に帰属するのか誰も関心を持たなかった地域なのかもしれないし、またそれゆえそれらに関する文献も存在しないのかもしれない。

    しかし、当該地域がどこに属するかを論じるにあたり、そもそもそれらがどの国に帰属していたかを明確にすることは重要なはずだが、それすらままならないところにこの問題の難しさがあるのだろう。
    また、日本が太平洋戦争に敗れ、連合国主導で日本が戦果として得た領土の返還を迫られたわけだが、その地域が不明確であったため、領土問題がなお今日的な問題として生き続けていくとになった。このように、連合国の領土問題への無関心も、今日の領土問題の原因の一因となっているのだ。

  •  千島列島をめぐる日露問題は歴史の観点、竹島をめぐる日韓問題は条約の解釈、尖閣をめぐる日中問題は資源と経済、それぞれの見方を提示してくれている。一緒くたにナショナリズムに訴えるよりは遙かに説得力がある。
     国家を超えたレベルで経済活動が世界を覆っているこの時代、領土を主張することにいかほどの意味があるのかと考える。国家の威信なんてものより、実利をとる方が利口ではないか。そのためにも、それぞれの歴史的経緯の冷静で正確な把握が大事なことを改めて確認した。

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プロフィール

1939(昭和14)年北海道生まれ。現代史研究家、ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。1972年『死なう団事件』で作家デビュー。2004年個人誌『昭和史講座』の刊行により菊池寛賞受賞。2017年『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。近現代史の実証的研究をつづけ、これまで約4000人から証言を得ている。『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『昭和史の大河を往く』シリーズなど著書多数。

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