歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734099

作品紹介・あらすじ

どう守り、返還させるか?威勢のいい言葉だけでは進展はない。解決策は「歴史」の中に書かれている!明治維新時の領土と、その後の戦争による拡大。敗戦での急激な縮小と、戦後の枠組み。それらの歴史の裏側までを厳正に検証する。21世紀の視点に立った日本の主張。

感想・レビュー・書評

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  • 竹島、尖閣については、日本人としてしっかりと学ぶべきだ。

    じゃあ、中国や韓国の人に堂々と語れるかといえば、ぜんぜん自信がない。

    とにかく他人事じゃないことを認識し、考え続けなければならない。

    あとがきにあるように、ロシアとは「歴史」が土台にある。プラス「外交」

    韓国とは「条約」プラス「外交」

    中国とは「資源」プラス「外交」

    それぞれの国ごとに対応を変えるのが重要だ。

  • 昭和史研究の第一人者・保阪正康の著書『歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか』を読みました。
    保阪正康の作品は、8年近く前に読んだ半藤一利との共著『そして、メディアは日本を戦争に導いた』以来なので久し振りですね。

    -----story-------------
    尖閣、竹島、北方四島――どう守り、返還させるか? 威勢のいい言葉だけでは進展はない。
    解決策は「歴史」の中に書かれている! 明治維新時の領土と、その後の戦争による拡大。
    敗戦での急激な縮小と、戦後の枠組み。
    それらの歴史の裏側までを厳正に検証する。
    21世紀の視点に立った日本の主張!
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    2011年(平成23年)に刊行された作品……明治維新時の領土とその後の戦争による拡大、敗戦での急激な縮小と戦後の枠組み、それらの歴史の裏側までを厳正に検証し、日本が取るべき領土問題の解決策を示した一冊です。

     ■序章 主張すべき姿勢とは
     ■第1章 昭和前期の領土空間とその崩壊
     ■第2章 近代日本の領土拡充史
     ■第3章 「歴史」と「政治」の北方四島
     ■第4章 条約と現実の竹島問題
     ■第5章 資源と外交の焦点・尖閣諸島
     ■終章 次代に託されている論点
     ■あとがき
     ■本書関連略年表

    近代日本の領土は明治以降に拡大し、昭和期には膨張と収縮の二つの局面をかかえた……近年は海底資源がからみ、関係国のナショナリズムが噴出する、、、

    日本は中韓露をどう論破し、世界に発信すべきか? 21世紀の視点から歴史を検証し、解決策を提議する。

    日本の領土問題に関する歴史的な検証と主張を述べた新書……この本の魅力は、歴史的な事実を丁寧に説明しているという点ですね、、、

    日本の領土問題において、日本の立場を強く主張しつつ、その主張の根拠や論理が詳細に示されていました……中国や韓国、ロシアの主張に対しても、反論や批判を行っていますが、それも歴史的な資料や文献に基づいており説得力がありました。

    領土問題を解決するためには、歴史的な真実を知ることが重要なんですよねー しかも、北方四島(ロシア)、竹島問題(韓国)、尖閣諸島(中国)は、それぞれ歴史や経緯も異なっており(歴史+外交(ロシア)、条約+外交(韓国)、資源+外交(中国))、ケースバイケースで考えないといけないことについても改めて気付かされました……日本の領土問題に関する歴史的な真実を知るためには、非常に参考になる作品だと感じました。

  • 領土問題は歴史問題なのか。隣接する中韓露とは各々領土問題を抱えている(公式には中国とは領土問題は存在しない)。それを歴史的に辿るわけだが、現在生じている問題はカイロ、ヤルタ、ポツダム、サンフランシスコの4つの条件により決定されるという事になる。あらためて敗戦国日本の置かれている状況が現代にまで続いている事を認識させられる。そして、この4つの条件により決定されていない事は、敗戦前や敗戦後の2国間の約束事により決定されるという事になる。
    歴史的に考えるとこういう構造になる事を整理できたのはよかっし認識しておく事も重要なのだが、歴史認識は各国で異なる。よって、歴史認識したところで領土問題の解決に至らないのは明らかである。歴史認識の問題と現実の外交問題は時として混同されやすいが、両者を分けて考える事の必要性を認識させられる。
    別途、日本が近代国家として領土的野心をどのように形成していったのか、欧米との違いはどこにあるのか、といった点をあらためて考えてみたいという気にもさせられた。
    尚、著者は作家であり学者ではないので、多少記述が怪しい所があるように思える。その辺は割り引いて読む必要はあるだろう。

  • 客観的に領土問題について記載されている。
    ただ、現在の日本の政治や現在の情勢を考えるとこのままの状態が続いていくのかなと。

  • 領土問題に関してはキチガイが多過ぎるためなるべく近づきたくなかったのだが、「保阪正康なら安心だろう」と思い手にとった。強気な書名がつけられてはいるが、内容的にはやはり冷徹な保坂史観。日本近代史を「領土」の観点から見直し、事実と論点を細かく整理している。

  • 竹島、尖閣諸島を日本の領土だと威勢のいい言葉でどなりたてても問題は進展しない。相手の主張も正確に理解した上で、その主張の問題点を反論していく姿勢が必要だと思うようになった。国境とは力関係で決まってきた経過があるので、いつの時点までさかのぼって考える必要があるのか。どちらにしても真摯な話し合いは必要である。

  • 北方領土、竹島、尖閣諸島と日本が隣国と領有権を争っている領土の歴史的経緯に詳しく参考になった。ただ読後感は何となくすっきりしない。本書で3つの地域とも’暴力で奪い取った’ものではないことは明らかにされたが、編入手続きに若干の不備があったり、外交交渉でうまいことやり籠められたりして、正々堂々と日本固有の領土だと主張しにくい面もある。このような背景を踏まえ、我々一国民が何をすれば良いのかについての示唆が敢えて曖昧にしてある感があり、どうもすっきりしない。

  • ロシア、韓国、中国と抱える領土問題を歴史を紐解きつつ、著者は昭和18年の日本が高揚している時期の日本地図を度々引用しながら、領土とは何かを冷静に考えさせてくれる好著である。ソ連、中国の強かさだけではなく、ヤルタ会談以降、サンフランシスコ講和条約、沖縄返還に至るまでの米国の政治的な思惑が曖昧さをあえて残したということで、現在の日本と3国の対立の芽を残したという考え方はもの凄いですが、事実なのでしょう。著者によれば、ソ連はSF講和条約を拒否しており、日本は千島全体の領有を主張しても可笑しくないというのは、決して国粋主義的な考えというわけでなく、素直に結論できるということが理解できます。逆に1880年には琉球処分にあたり、「宮古島・八重山群島を中国領土とする」と清国に伝えたというのは皮肉なことであり、領土問題がその時代の政治的思惑に左右されていたという奥の深さを感じる本でした。竹島も島を発見したというフランスが領有権を主張していたら・・・考えるのも楽しいものです。

  •  北方領土、竹島、尖閣諸島に関して歴史的な推移を辿りながら、どのタイミングでどういった意図をもってどの国の領土と認められてきたか、そして現在はどう認識されていて、どういった反論が各国から存在するのか、日本はどう主張が可能か、綿密に考察している。こういった本を読むと、やはりテレビ・新聞等の大手メディアでは発信できる情報も限られ、一面的な報道がなされていると考えさせられる。よく外交上の会見などで政府が発言する”固有の領土”などというものは存在しないことがこれを読めばよく分かる。各国この問題に関しては、想像以上に戦略をもって発言・交渉をしている。一方が狂っていて、単純な断固たる態度のような力づくの理論で対応するといったような解決方法では解決できない問題が存在している。

  • 昭和十年代の日本(大日本帝国)の版図は、今よりもずっと広かった。北海道・本州・四国・九州に琉球列島・千島列島(占守(シュムシュ)島〜国後島)を加えたものが「内地」であり、朝鮮半島・台湾・樺太南部、それに関東州(遼東半島先端の旅順・大連)、南洋諸島(グアム、サイパンなどのマリアナ諸島・パラオ諸島・トラック諸島・マーシャル諸島)、そして新南諸島が「外地」であった。(新南諸島は、現在中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアなどが領有権を争っている南沙諸島のことである。)後発の帝国主義国家であった日本は、新たに獲得した領土で皇民化教育を推し進めていった。当時の日本が領土の獲得にいかに熱心だったかは、現在の領土問題を考える上でまず押さえておかなければならないだろう。

    本書は、北方領土・竹島・尖閣諸島についての歴史的背景を解説したものだ。それぞれに論点が異なるので、解決のための共通の処方箋はなく、ケースバイケースで考えていかなければならない。

    北方領土に関する歴史は、幕末の1855年、日露通好条約(下田条約)にまで遡る。このとき、日本とロシアとの国境は択捉島とウルップ島の間に定められた。1875年(明治8年)に、「樺太千島交換条約」によって千島列島の全てが日本領となった。さらに、1905年(明治38年)、日露戦争後のポーツマス条約によって南樺太(および関東州)も日本領となった。したがって北方領土は、歴史上一度もロシア領になったことがない。

    1945年8月18日、ポツダム宣言を受諾して武装解除した日本軍に対して、ソ連軍は千島列島北端の占守島への攻撃を開始した。8月28日に択捉島に入ったが、このときにはソ連軍との戦闘はなしに日本兵は降伏し、将校はすべてシベリアの抑留所に送られた。そして、9月5日までに、千島列島には含まれない色丹島・歯舞諸島をも占拠した。

    尖閣諸島は、1895年(明治28年)に日本領として編入されたが、そのときに清国は何のクレームも付けなかったらしい。清国は台湾にすら興味を示さなかったのだから、これは本当なのだろう。けれども1968年に尖閣諸島周辺に石油資源が埋蔵されている可能性が指摘され、それ以降中国および台湾が尖閣諸島の領有権を主張するようになった、というのが本書の立場である。

    竹島はもっと微妙である。竹島は1905年、中井養三郎という一人の漁師の熱意によって島根県に「編入」された。けれども韓国側は、これを韓国への侵略の第一歩とみなす。他にもいくつかの論点があるが、日韓双方の言い分はいつまで経っても平行線をたどり、決して立証も反証もできない。したがって、「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土」とは言えず、日本政府の主張は強すぎる。

    ただし、結局のところ、竹島問題が存在するのはサンフランシスコ平和条約で帰属が曖昧にされたからであり、それは日韓の間に紛争の火種を残しておいた方がいいという米国の思惑が働いたからである。竹島問題で熱くなっている人は、アメリカの掌の上で踊らされているに過ぎないのだ。

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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