新書345 第四の消費 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734457

感想・レビュー・書評

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  • 第四の消費

    共感する部分がとても多い。簡単に「モノよりコト」と言うが、なぜそういう消費志向になったかを歴史をたどって解析してくれている。
    ただ、シェアは単にお金がないから所有できないだけでは?とも思う。
    自分も車は持っていないが、お金があればシェアではなく、ぜひとも所有したい。

    ・団塊世代は第二の消費世代なので、もっと大きなものを界、私有することが幸せだという価値観が心に刷り込まれている。
    ・団塊世代と新人類世代は全く異なる特徴を持った世代だが、物質主義的な傾向が強いというところは共通している。
    ・第四の消費世代の健康志向は、人生全体を見なおさないと健康は得られないという思い
    ・新しいものをつくらなくても、古いものだけで消費者が十分満足する時代(大衆文化のストック化)
    ・現代の消費者(特に若者)は「複数の自分」を持ち、そのうちひとつを必ず「みんなと同じ自分」、つまり「同調する自分」として持っている。
    同時に彼らは「人と違う自分」、つまり「差別化する自分」を持っている。「同調する自分」に訴求すればメガヒットが生まれ、
    「差別化する自分」に訴求すればセールスは極小化する。逆に、「ひとつの自分」の時代のような中くらいのヒットが生まれにくくなる。
    ・欲求の基本的な源泉は不足である。食べ物が多様に大量に目の前に存在し、それを自由に選択できるにもかかわらず、
    むしろそれだからこそ、かえって食べることが面倒になっている。
    ・モノを持っていることの満足ではなく、情報を知っていて、それを他と分かち合う利他主義的な満足(モノ<コト)。ある意味社会志向。
    ・転勤族の子どもが多い世代になると、生まれた地域、育った地域によって自分の性格が形成されたという意識が弱い。
    いわば「故郷喪失」の世代。そういう世代はだいたい1960年代生まれから増えるが、彼らにとって共通の故郷はどこかといえば
    「日本」ということになり、こうしたことが、若い世代に日本への愛を生み出す背景にあると思われる。
    ・2035年 20代1046万人 65-89歳3293万人 若者1人に対して高齢者3人
    ・我々は第二第三の消費社会において、あまりにもお金がなければ生きていけない社会を作ってしまった。
    そのことへの反省が第四の消費社会の基調低音をなしていると言えるだろう。

  • 第四の消費 つながりを生み出す社会へ (朝日新書)

  • 三浦展氏の最近の著書は失礼ながら当たりはずれがありますが、本書はよくまとまっていて、論旨も明快だと思います。「下流社会」並みのヒットになる予感も。

  • 三浦展さんの「第四の消費 つながりを生み出す社会へ」、2012、4発行、楽しく読了しました。消費社会を展望したものです。著者の区分は、第一の消費社会(1912~1941)第二(1945~1974)第三(1975~2004)第四(2005~2034)となってます。第二~第三の5つの変化:家族から個人、物からサービス、量から質、理性(便利さ)から感性(自分らしさ)、専業主婦から働く女性。第三~第四の変化:個人志向から社会志向、私有からシェア、ブランドからシンプル・カジュアル、欧米・都会から日本・地方志向へ。

  • 人は誰でも消費をしますが、消費は人の行動の一部でしかない。

    だから、消費行動を分析するには、人の全体を知る必要があります。

    人の全体を知るには人を取り巻く社会や都市を知らないといけないし、社会や都市の歴史、変遷も知らねばならない。

    この文脈、使える。

  • 『下流社会』で三浦展が、戦前から現在までを分けて、現在は第4の消費時代と分析する一冊。

    戦前からの分析を丹念にしており、その部分は勉強になった。

  • 第一の消費社会(1912-1941)
    日清・日露戦争に勝ち、第一次世界大戦の戦時需要で日本は好景気に沸いく。しかし強烈なインフレにより一般労働者の実質賃金は下がり、米騒動が起こるなど、貧富の格差が拡大。大資本は強化し、都市部での人口増加で大都市の大衆消費社会が拡大。
    衣食住がモダンで文化的なことがよしとされた。大正の三大洋食「カレーライス・どんかつ・コロッケ」
    白木屋:1920年(大正9年)11月1日に阪神急行電鉄梅田駅ビル1階に182m²の梅田出張店を開業。実験的に池上電気鉄道のターミナル駅ビルを賃借して約3万円を投じて五反田分店を出店して、分店を出店することの成否を1か月間で判断することになった。この五反田分店が順調に立ち上がったことから分店の多店舗展開が進められることになった。
    *消費を享受するのは都市の中流階級以上に限定。多くの国民は貧困にあえいでいた。消費格差という矛盾を孕んでいた

    第二の消費社会(1945-1974)
    1955年(昭和30年)に社会党再統(日本社会党の統一)に危機感を覚えた財界からの要請で、それまで存在した日本民主党と自由党が保守合同して自由民主党が誕生し、保守政党が第1政党となった。見かけは二大政党体制となったが、自民党の議席は2/3、社会党の議席は1/3 であったし、二大政党制の長所であるはずの政権交代円滑化に資することはなかった。自民党は「改憲・保守・安保護持」を、日本社会党は「護憲・革新・反安保」を、それぞれ標榜した。同年、日本生産性本部・日本住宅公団設立、56年、日本道路公団。マイホーム・マイカーに象徴されるアメリカ型の大量生産大量消費を追い求める。
    ・三洋電機が1953年に発売した洗濯機から日本国内の洗濯機の売り上げが伸びて普及し、このことから大宅壮一は1953年を家電元年と命名
    ・1950年代後半、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目が『三種の神器』として喧伝された。1956年(昭和31年)の経済白書が「もはや戦後ではない」と明記し戦後復興の終了を宣言した神武景気以降、輸出拡大で日本経済が急成長した時期

    *人口動態特徴については検証したい

    ・普及しつつあった商品は生活必需品が中心で個性は求めず、デザインにこだわらず、隣の家と同じようなものを買った
    ・家族を中心とする消費。核家族化が進んだ時代。若い家族が子供の成長と共に物を買い換えていけば必然的にクルマも家も大きなものに買い換える。その中に団塊世代が組み込まれモノを買った。
    ⇒日本企業のマーケティング力は伸びなかった

    ・一般大衆は個性と言われてもどうしていいか分からない、というのが多数派
    ・73年のオイルショックを契機として一気に収束

    <団塊の世代(だんかいのせだい)>:第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代。第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれて、文化的な面や思想的な面で共通している戦後世代。第一次ベビーブーム世代。日本経済においては第二次世界大戦後の高度経済成長、バブル景気を経験。



    第三の消費社会(1975-2004)
    ・消費の単位が、家族から個人への変化し始めた。「家計から個計へ」とも言われた。個人がひとりで食事をする「個食」対応の食品が登場
    「軽薄短小」:日経ビジネスが生んだ時代のキーワード
    1981年11月30日号より
    《重厚さや長くて大きいものが尊重されたのは高度成長時代のこと。安定成長時代には「より軽く」、「より薄く」、「より短く」、「より小さく」といった要素が商品に強く求められる。
    軽自動車、薄い香りの男性用化粧品、短時間のカラー写真仕上げ、小容量のビールなど80年代のヒット商品や成長期待製品は、実のところ「軽・薄・短・小」の商品なのである》

    「パラサイト社会のゆくえ――データで読み解く日本の家族」作者名 : 山田昌弘

    生産年齢人口【せいさんねんれいじんこう】
    年齢別人口のうち労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層。これに対し15歳未満の年少人口と,65歳以上の老年人口を合わせたものを被扶養人口という。日本の生産年齢人口は2013年4月時点,7901万人で総人口の62.1%を占める。

    ・個人化とはひとりひとりの「こだわり」が強まること
    ・流行やマスコミにおどらされることなく、自分の好みにかなった生活のスタイルを創っていく志向。”豊かさのなかで個性的に”
    ・第二消費社会が実現した物質的な豊かさの上に、個性、自分らしさを付加していく時代として始まった

    <3.量から質へ>
    インスタントラーメン(消費社会的な大量生産品)も1981年に明星食品から「中華三昧」という「高級品」が発売。
    単にブランド志向へと現れただけでなく、例えば健康志向。1970年代中頃からのジョギングブームは長期トレンドとして残っている。第三の消費社会も後半になると健康ブームを変質し、よりメンタルな健康を求める傾向が増加し「healing ヒーリング」
    1990年代にアメリカで流行し日本にも波及してきた。
    その流れから第四の消費社会における健康は「ホリスティックWholistic」全体という意味。不健康とは本来あるべき全体から何かが欠如している状態であり、その全体を取り戻せば健康になると考える。
    全体とは身体、心身、生活の全体、行き方全体を見直さないと健康は得られないということ。

    「ディスカバー・ジャパン 美しい日本と私」藤岡和賀夫
    『従来の旅はややもすれば絵葉書型の目的地販売でありました。そうだと、それはテレビ情報と同じ次元の単なる観光に終わってしまいます。旅の喜びは自ら創る喜びでなければなりません。そこに自分自身が日本を発見し、又その中で自分自身を発見するといった旅でなければなりません。私たちがこのキャンペーンにDiscover JAPAN』と名付けたのはその意味であります。名もない田舎の埃にまみれた一本の道、そこにも永い歴史の道があったかも知れません。或いは幾多のドラマやロマンがその道を往来したかもしれません。汗の臭いや、収穫の歌が聞こえてくるかも知れません。そういったところに自分自身の足で立って見る、それが旅であり、Discover JAPANなのです』(「藤岡和賀夫全仕事Ⅰ」1988)

    1972年 成長の限界:ローマクラブが資源と地球の有限性に着目し、マサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズを主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクスの手法を使用してとりまとめた研究。「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしている。

    有名な文として「人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」

    とある。これは時系列で考えると「人は子供が生まれてその子供がまた子供を生むので「掛け算」で増えていくのに対し、食料はある土地では年に1回それも同じ量しか生産出来ない、つまり「足し算」になるという概念に基づく(この文はもともとはトマス・ロバート・マルサスの『人口論』による)



    <第2章>
    第二の消費社会から第三の消費社会への変化
    1.家族から個人へ
    2.物からサービスへ
    3.量から質へ
    4.理性、便利さから感性、自分らしさへ
    5.専業主婦から働く女性へ

  • 非常に読みやすい。これからのマーケティングの一助になるのでは。まぁ、本は3年前のものなので、すでに広がってる部分もあるけど。

  • ・ 戦後の豊かさイメージが所有の豊かさだったとすると、そのハビングが飽和状態になったところで、人々は持つことではなく、いかにあるべきか、ビーイングということに、自分だけの、あるいは自分らしい豊かさを求めざるを得なくなった
    ・ どうとでも使ってくれ、とモノが語りかけてくるとき、それじゃあどう使ってやろうかというイマジネーションがわくのである

  • メニムのような先がわからない物語を読んでいると不安になるので
    このような歴史をたどった本を間に挟んで読むのがよかったです

    作者は、パルコ系のアクロスに携わっていた方
    自分は、アクロス…覚えてない(;^^)ゞ
    宣伝会議は、チェックしてたんだけどな

    最初の章で消費社会の流れを振り返りました
    自分が生きた時代は、おーキタキタって感じ
    作者の個人的な経緯が見え隠れするのも面白かったです

    これからのキーワードは、大きさや豪華さじゃない
    「人とのつながり」
    これが、地方につながっていくかは分からないけど

    自分も物を買うときは
    ストーリーがほしくなってきているから
    そういう流れになってきているんだな、と実感

    山崎正和「やわらかい個人主義の誕生」
    当時人に薦められて読んだ本
    貸してもらったので手元に無いのが惜しいけど
    現在を予言していたかと思うとすごい本だったんだな~

    山崎亮 芸大の先生
    京都造形芸術大学

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著者プロフィール

三浦展(みうら・あつし)
1958年生まれ。社会デザイン研究者。カルチャースタディーズ研究所代表。家族、若者、消費、都市、郊外などを研究。著書に『 「家族」と「幸福」の戦後史――郊外の夢と現実』 (講談社現代新書) 、 『ファスト風土化する日本――郊外化とその病理』 (洋泉社新書) 、 『東京は郊外から消えていく!』 『首都圏大予測』 (光文社新書) 、 『愛される街』 (而立書房)などがある。

「2022年 『中央線がなかったら 見えてくる東京の古層』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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