イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022734945

作品紹介・あらすじ

オバマの立場は「イランの核武装は許さない」。イランは核弾頭の搭載可能な長距離弾道ミサイルにかかわる技術開発も進めている。両国の交渉には過去のイラン・アメリカ関係が色濃く影を落としている。そしてイランを知るには、さらに歴史を古代にまで遡らなくてはならない。そこにこそ、イランの本音を探る鍵が隠されているからだ。

感想・レビュー・書評

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  • イランに起こった数々の出来事の裏側や繋がりを知るのに良い本だった。それにしてもアメリカという国の手前勝手さを改めて思い知らされ、読んでいて胸が悪くなった。トランプのひどいところは悪びれないという一事であって、それまでの政権は正義ぶって欺瞞にみちていた。ある意味トランプの登場で真実が明らかになったといえるのか。
    ちなみに本書は2013年発行でトランプは出てこない。

  • 中東の話は先の大戦までさかのぼるな。

  • 読みごたえがある。
    イランや中東を理解するのに必要な現代史の知識を得られる。

  •  最近の情勢を扱った前半もいいけれど、第4章から先の、イランの歴史をたどるところが非常におもしろかった。
     イラン人の祖先は、紀元前七世紀に歴史に姿を現し、メディア王国に服属していた。のちに指導者キュロスのもとに立ち上がり、オリエント全域を支配するアケメネス朝ペルシア帝国を建設。紀元前539年、バビロン攻略。紀元前330年、アレキサンダー大王に屈するも、これをきっかけにヘレニズム文明が花開くことになる。再びパルチア、ササン朝ペルシア帝国を立ち上げたが、今度はイスラム教を奉じるアラブに侵略を許す。イスラム教を受け入れたペルシア人たちは言語を手放すことはなかった。ペルシア語はアラビア文字で記述されるが、アラビア語とは別系統……中国語と日本語のような関係だと著者は記している。ついでにいえば、「イラン」という国名は「アーリア人」から来ている……つまり、イラン人はアラブではなく、ヨーロッパ人と根っこは同一というのだ。『千夜一夜物語』は、武力を持つアラブ人(王)と文明を誇るペルシア人(物語をとく女性)の関係を反映しているのだそうだ。
     こうした輝かしい歴史から、イラン人は自分たちを「世界の中心」だと認識しており、もうひとつたびたびの侵略から非常に「被害者意識」が強く、外国に対して猜疑心をもっているのだと著者は説明する。
     近代にいたり、イギリス対ロシアのグレートゲームで、ロシアの防波堤としてイランは使われる。イギリスに搾取されるがままのイランは、第三国としてのアメリカに大いに期待するが、アメリカはイランを冷たくあしらう。モサデク政権下、イギリスの資本による石油資産を国有化したイランだったが、石油がほしいアメリカはモサデクをクーデターによって倒し、親米のシャーによる独裁をイランに押しつけた。アメリカはシャーを傀儡としてイランを支配した。
     腐敗しきったシャーを倒したのが、ホメイニ率いる革命勢力だった。革命勢力はアメリカ大使館を占拠、その非常事態下において憲法改正に成功、宗教指導者による国家統治を正当化する。人質事件により国際的に孤立したイランに、イラク軍が軍事侵攻。イラン・イラク戦争が開戦する。戦局は当初イラクに傾くも、イランが押し返す。しかし、アメリカの武器支援により、イラクも息を吹き返す。ようやくイラン・イラクが停戦したのち、イランというたがが外れ、軍事的な優位を得て調子に乗ったイラクがクエートに侵攻して湾岸戦争が勃発……。
     その後も、イランはアメリカに接近しては手ひどくしっぺがえしを食うという歴史を繰り返す。本書を読むと、イランのアメリカに対する態度も、むべなるかなという気になってしまう。中東情勢は「複雑」と言われるが、それをひっちゃかめっちゃかにしてきたのがアメリカだということも理解できた。
     読みやすくて、頭に入りやすい文章で、たいそうおもしろくイランの歴史、イランとアラブの関係、イランとアメリカの複雑な関係を理解できる。良書です。

  • イラン人はアメリカが大好きだった。
    かつて日本とイランはビザが不要だったから、たくさんのイラン人が来て、彼らは日本を経由してアメリカのビザが欲しかった。

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著者プロフィール

放送大学名誉教授。福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『中東の政治』(放送大学教育振興会)、『最終決戦トランプvs民主党』(ワニブックス)、『パレスチナ問題の展開』(左右社)など、多数。

「2022年 『イスラエル vs. ユダヤ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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