新書402 やりがいのある仕事という幻想 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735027

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】私たちはいつから、人生の中で仕事ばかりを重要視し、もがき苦しむようになったのか? 本書は、現在1日1時間労働の森博嗣がおくる画期的仕事論。自分の仕事に対して勢いを持てずにいる社会人はもちろん、大学生にもおすすめ。

感想・レビュー・書評

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  • 国立大学の教員の傍ら作家デビューし、現在は一日の労働時間が1時間という、作家、森博嗣さんによる仕事論。

    一日1時間しか働かず、後は趣味の模型製作に没頭している著者の元には、迷える若い子羊が仕事に関する相談を寄せるらしい。

    そんな彼らに、著者は、そもそも仕事ってそんな大事?と問いかける。
    著者にとって「仕事」は、あくまでも生きるためにお金などの対価を得るための手段であり、仕事をしなくても生活できるのであれば、しないに越したことはないものである。
    それなのに、皆仕事に「やりがい」や「楽しい」を求めすぎている。いや、自分が本当に楽しいと思えることを考えることもなく、イメージや体裁だけで流行りの業種に就くことを、「好きなもの」や「楽しいもの」と勘違いしているだけではないか、と著者は分析する。

    著者は、仕事が楽しい、という人を否定しているわけではない。つきつめると、自分の価値観をどこに置くのか、よく見極める必要がある、ということだ。

    著者の語り口は明快で、ともすれば非情にも感じられるほどだが、私には、わかるわかる、と納得することが多かった。
    私も以前、「やりがい」を求めて転職した。前職を辞めた時は、やりたいことがやれるならお金なんて、と思っていたが、収入が激減すると、自由に使えるお金が少ないことが思った以上にこたえた。
    つまり、私は自分の中の価値観を見誤っていたのだといえる。

    幸い、収入の問題は、一定期間我慢すればある程度は解消することが可能なため、転職したことを後悔するまでには至っていないが、転職前に本書を読んでいたら、私は前職を辞めていなかったかもしれない。

    本書を読むと、「仕事」とはこうあるべき、といった固定観念が取り払われて、肩の力が抜けるような気がする。
    仕事に行き詰った時、読み返して目を覚ますのによい一冊である。

    • たなか・まさん
      この本、気になってました。
      この本、気になってました。
      2022/04/30
    • b-matatabiさん
      ぜひ読んでみてください。
      ぜひ読んでみてください。
      2022/05/02
  • この本には、「やりがい」のある仕事をするべきか、みんながうらやむすごい仕事に就くべきか、それとも高い賃金を取るべきか、そんな悩みに対する答えや励ましの言葉はない。自分の好きにしろと、冷たく突き放される。
    「人は働くために生きているのではない」著者の仕事に対する第一原理。
    「働くという行為が、そんなに「偉い」ことだとは考えていない。」「働きたくなかったら、べつに働かなくてもいいんじゃないか」というのが著者の基本的な立場だ。そしてこの本はそんな著者のエッセイである。

    【要約】
    仕事もルールに沿って行われている。偉い役職だと思っている人は人間的に偉いのではなく、部下に命令できる権限を持っているだけ。なぜなら会社でそういうルールになっているから。鬼ごっこをするとき、鬼はべつに偉いわけではない。怖いから逃げているのでもない。そういうルールなのである。

    仕事をしている人が、仕事をしていない人よりも偉いわけでもない。歴史がそうだっただけ。(日本における初めての選挙権は1889年の大日本帝国憲法で「直接国税15円以上納める25歳以上の男子」と定められた。つまり仕事をして(しなくてもいい人もいたけど)お金を持ってて一定額納税している男性しか投票できなかった。)

    子どもに将来の夢をきくと例外なく「どんな職業に就きたいか」ということを答える。大きくなったら何になりたい?という聞き方だけでなく、「何をしたいか」聞いてみたら。

    巨大な橋の建設に関わった人は、大根を毎年収穫する人よりも偉いわけではない。大人は仕事に「未来」や「やりがい」があると錯覚させようとしている。「自慢できる仕事」みたいな他者の目を気にした浅ましさにすぎない。

    常に勉強する姿勢を持つこと、それが人間の最も価値のある投資だと思う。

    なりたかったらもうしているはず。「どうしたら〇〇になれますか?と聞いてくるけど、本当になりたいなら、すでになにか手を打っているはず」いくつもいくつもやってみたら、自分で自分に才能があるかないかぐらいわかる。

  • タイトルにひかれて読みました。私は同じ仕事を25年続けていて、正直言って、つらいことの方が多い。それでも、「やりがいがある」と信じて続けてきた。だけど頭のどこかで、そんなの幻想だということも分かっていた気がする。そして、給料のために我慢する、とも考えている。
    本書は、現代社会では「仕事(職業)」が非常に重要視されて、どんな仕事に就いているかで人間が評価されたり、希望する仕事に就けなかったら(就職できなかったら)人生終わり、みたいになりがちだが、そんなことは全くない!ということを淡々と述べている。考えてみたら当たり前のことなのだが、仕事をしないと(働かないと)生活ができない以上、仕事は人生の中で重要なウェイトを占めてしまうのは仕方がない。逆に言えば、生活できるのであれば働かなくてもいいじゃないか、働くことがそんなに重要なのか?ということだ。
    著者は「すべてがFになる」でベストセラー作家になり、今は一生懸命働かなくても生活できるから、1日1時間だけ執筆活動をして、あとは好きなことをして暮らすことにしているらしい。残念ながら読んだことなかった(もちろんこれから読みまくります!)。
    どうやったら小説家になれますか?と聞かれるらしい。小説を書けばいいじゃないか、と思うらしい(笑)。書きもしないで悩む人が多いらしい。わかるわ~。目の前の仕事を一生懸命にやり、好きなことに夢中で打ち込み、ある意味社会的に成功している人(自分では特に成功した!とは思っていないが人からそう思われている人)からすると、何もやってみもしないでただ悩んでいるようにしか見えない。
    本書を読んで、好きなこと、やりたいなと思ったことは、いろいろ言い訳しないでまずやってみよう!と思えた。できない言い訳を考えている間は、それは本当にやりたいこととは言えないということだ。「〇〇したいのに…だからできません」などと悩むなら、それは本当にやりたいこととは言えない。本当にやりたいなら、どんな障害があってもやるはずである。
    私はフルタイムで働き、持ち帰り仕事や休日出勤も多いが、昨年、娘と一緒に子供のころからあこがれていたピアノを習い始めた。練習する時間なんてないかもしれない、100万近くする本物のピアノを買って、後悔するかもしれない、と悩んだが、買ってみると、初めて触れる本物のピアノは楽しくて、1日10分くらいしか弾けなくても、楽しくて仕方がない。子供のころはエレクトーンを習っていて楽譜は読めたが、軽い鍵盤に慣れていたのでどうしてもピアノが弾けなかった。今になって、ピアノが弾けるようになって、始めて良かったと心から思う。何歳になっても、新しく好きなことを始めるってなんて楽しいことなんだろう。
    読書好きの友達で、あることにチャレンジしてみようと思っている、と話していた人がいて、この本をお勧めした。ぜひ一歩踏み出してほしいな。

  • ★本書のメッセージ
    すごい成果が残せなくても、人が羨む職業に就けなくても、きみの価値は、かわらない

    ★読んだきっかけ
    仕事に悩んでいたので

    ★本の概要・感想
    仕事にやりがいを求める必要などないと説く本。仕事にやりがいを求めるのは、つまるところ、日々の生活に充実を求めているからである...。
    ただ、仕事にやりがいを求めないとして、では日々の生活に意味・意義(喜び)を見出していく、ということになる。
    それは確かに素晴らしい。自分も、それぐらいに入れ込みたいと思う。
    愛する人を支えるためとか、好きな漫画を読むためとか、面白い文章を書くためとか、そういったことを目的に?生きていけたら、どんなにいいだろう。
    もっと、定常的に、日々ハッピーを感じられたらなぁ

    ★本の面白かった点、学びになった点
    「自分の生き方に関する問題は、どこかに解決策が書かれているはずがない。検索しても見つかるはずがない。どんなに同じような道に見えても、先輩の言葉が全面的に通用するわけでもない。自分で生きながら、見つけるしかないのである。」

    「仕事に勢いが持てなくても、すごい成果が残せなくても、人が羨む職業に就けなくても、きみの価値は変わらない
    人々は、仕事に人生の比重を置きすぎだ。
    もっと自由に、もっと楽しく、もっと自分の思うように生きてみてもいいのではないだろうか。」

    *職業と貴賤が長年結びついてきた。だから、常に仕事には偉いとか、みじめとか、そういったイメージがつきまとう
    ・偉大さ、大変さなんてものは捏造されてきたのだ

    *営業は、意外と「話好き」でない人のほうが向いていたりする
    ・売れる営業マンは、自分の話よりも相手の話を聞くからだ

    *将来をイメージして、そんなに悪くないと思えるのなら、いい仕事なのかもしれない


    *働いているから偉いわけではない
    *働いているから偉いわけではない
    *働いているから偉いわけではない

    *勉強に身を置く時間というのが、人間にとって最も価値のある時間だと思う

    *成功したいと考える前に、自分にとってどうなることが成功なのか、よく考えよう
    ・おかしくなる前に仕事を辞めて、ぶらぶらしたっていいと思う

    *仕事が大変だ、という問題のうち、それが「技術的な難しさ」といえる部類のものであるなら、なんとかチャレンジしてみよう、と思える

    *長く働こうと思うから辞める
    ・長くここにいなければならない、という心理が、逆にもっと早く別のところへ移った方がいい、という思考にさせる

    *楽しくてしかたない、なんて仕事はない

    *仕事に意味を見出そうとしているようだが、では、あなたにはどんな意味があるのか?こたえられるだろうか。たとえば、生まれてから今まで育ってきたことに、どんな意味があったのか?

    *未来が不安になるのは、今が良い状態だから。今がとても悪ければ、未来のことなどをあやふやと考える余裕はないはずだ

    *繰り返していうが、人生の楽しみというものは、人からあたえられるものではない。どこかに既にあるものでもない。自分で作るもの、育てるものだ

    *本当に楽しいものは、人に話す必要なんてない



    ●本のイマイチな点、気になった点
    以下の批判には、あまり意義はない。ただ、思い浮かんではしまう「著者が、頑張って働こうとしなくたって、充分に食べていけるだけの給料や才能があるからじゃないか...」というような。
    凡人は、生きること、周りから認められること、面白い仕事をしようとすることに必死なんだなぁ、と。
    あと、結構、すごい人の論理だなぁとも思う。おっしゃる通り、別に仕事に意味を求めて苦しむくらいなら、意味など求めない方がいい。ただ、そんな簡単に、脳は割り切れないよ...。
    まぁあと、Q&Aに対する回答は、問題に対する解決の答えにはなっていない..本人も、そういうものだと書いているので、なんともいえないが

    ●学んだことをどうアクションに生かすか
    ・仕事にやりがいや意味をもとめない
    ・ましてや仕事に生きがいなんて求めなくていい
    ・生きる意味や充実感なんて、自分で作るものだ
    ・結局、社会や外から、自分の人生、仕事の意味について与えられる簡単な答えなどないのだから、日々動き続けるのだよ

  • 納得できるところもあるし、そうでないところもある。3:7で、違うなぁ、という感じ。
    著者の本は何冊か読んでいるが、いまいち刺さらない。
    擦り合わせることはできるだろうが、交わることは難しそうだ。程度問題だけれど。

    人は働くために生きているのではない、というのはそうかも、いややっぱり違うかも。
    (のっけからこんな具合の感想なのだから読後の感想は推してしるべし)。
    「他者を評価するときは自分との関係で見れば良い」。
    プライベートはそうかもね。
    でも上司となればそれだけじゃちょっと。
    実際は結局主観でしか見られないとしても、まだ上司というものに対して潔癖な自分がいる。

    読みにくいなぁと思ったのは、エネルギィとか、サラリィマンとかメジャとか、表記にいちいち引っかかったため。
    でも、インターネットとは書くんだね。なんで?
    という本論とは違うところに引っかかってしまうと、読み手としては結構苦痛。

    悩み相談も、苦しかった。
    著者曰く、「意見」を冷たく感じるだろうが、それに囚われているようではは問題改善になってない、とのこと。
    言ってることは正しいが言い方が気に食わない、は、そう受けとる方も悪いそうだ。
    だが私はそうは思わない。
    内容があっていればパワハラまがいの言動も許される、わけないよね?
    自分でも気にしておられるからフォローを入れているのでは?だったら初めから相談なんか受けなきゃいい。
    失業やハラスメントについての考察はお粗末な内容だと思うし、職場の雰囲気についての意見は同意しかねる。
    仕事は見て覚えるもの、については「できる人のご意見ですね」と返したい。
    言い返したいことはたくさんあるが、ここらでやめておこう。

    取り敢えず、私の仕事のやり方とは違いますが、参考にさせていただきますね、と慇懃無礼に締めとしたい。

  • とても共感できる内容だった。
    他者からいいね、と言われることではなく、自分のやりたいことをやる。やりがいは人から与えられるものではないと再認識し、自分のこころに耳を傾ける時間を大事にしようと思う。大した趣味などなくても、本を読んだり、日記を書いたりする時間はそれに値するのではと思う。

    一部、共感できない点があるとすれば、あたたかさ。ご本人は冷たい言い方をしていると書いているが、内容はあたたかさを感じた。でも、やっぱり私は伝え方にもこだわりたい。できていないけど、
    自分の中の憲法を定めていきたい。

  • 「人生の目的は自由の獲得のため」
    冒頭、こんな表現があったが、そんなことを考えたことはなった。

    仕事に一生懸命になること自体を否定しているわけではない。
    ただ、あまりにも多くの人が仕事にがんじがらめになってはいないだろうか?
    どんな仕事をしているか、役職がどうかだけが人間を測るものさしではない。
    仕事などやめたければやめれば良いのだ。もちろんそれにより失うものもあるが、そんなことより自分のやりたいことをやるべきではないか?
    自分が本当にやりたい、楽しめるものを見つければ仕事の悩みなんてちっぽけなものに感じるのではないだろうか。

    この本を読んで、これまでの仕事人生を振り返ってみると、知らず知らずのうちに会社にしがみついている自分がいた。
    こんな自分からはおさらばしたい。そう思い、自分の本当に興味のあること、自分から能動的にやりたいと思えることにチャレンジしようと思えた。

    やりがいは空から降ってくるようなものではない。自分で作り上げていくものなのだという気持ちをもって、もっと広い視野で人生を謳歌したいと思う。

  • 自分が会社員だったらもっと深く刺さったかな。
    人生は一度きりだからと覚悟を決めた後だったから評価は低め。

    まぁ、他者の目を気にせずに自分の好きなようにやればいいのよ。
    「そうは言ってもさ」「迷惑がかかるかも」って諦められるくらいならばやらない方がいいのよ。

    楽しいことをやってると、その楽しさは自分が一番分かってるから誰かに言う必要ない。って好きだなぁ。

    俺もインスタやってるけど、義務でも自己顕示欲でもない。共有することで、俺の世界が好きな人も楽しめたらいいなって気持ち。だからやりたくなるし、続くのかも。

  • 仕事をして10年。転職もしないで、スキルも身に着けないでこのままで良いのかとか色々悩ん出たときに、タイトルに惹かれて買った。
    そんなに仕事にかけなくていいよと言ってくれてホッとしたしら仕事つまらないとか、嫌なことがあると読み返す。なかなか、ここまでドライにはなれないけど、こういう考え方もあるから、クヨクヨしなくても良いなって思える。やりがいのある仕事を選んでも良いし、出会えなくてもいい、あくまで仕事は人生の一部分だとそう思わせてくれる。悩んだときは、手にとるようにしてる。軽い書き方なので、読みやすいし、好き。

  • 本当に楽しいものは、人に話す必要なんてない、の箇所に泣きそうになった。
    人知れず始め、自分のためにすることを、私もやりたい。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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