クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735157

作品紹介・あらすじ

C0260【産業/産業総記】しゃべるスマホ、自動走行車、ビッグデータ──。人間が機械に合わせる時代から、機械が人間に合わせる時代への変化はすべて「AI=人工知能」が担っている。IT、家電、自動車など各業界のAI開発競争の裏側を描きつつ、その可能性と未来に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 世の中で発展し続けているIT技術についての知識の中でとくに「人口知能」についての社会での応用技術を広く浅く学べるような本となっており、少しでもこういったことに興味があるのであれば知っておいて損がないものとなっています。

    といっても出版されたのは2013年のものなので、わりと今では一般化されている技術についても触れられていて、なんだか不思議な感覚もありました。(笑)
    古本を読んでいくと逆をいく新しい発見があります☆(笑)

  • 彼らの予想では、機械が人間を超える日は2045年頃とみている。

    現在のAI研究は大きく3つの学派に分かれてい行われています。

    1つは昔ながらのやり方で、例えば文法や構文木(文章を名詞、動詞、形容詞など各品詞に分解した後、それらをプログラムが理解できるツリー構造に組み直したもの)のようなルールをコンピュータに教え込み、それによって知的処理を行うもので、「ルール・ベースのAI」などと呼ばれます。

    2つ目は、そのようなルールはほぼ無視して、大量のデータをコンピュータに読み込ませ、それによって統計的、確率的なアプローチから知的処理を行うAIです。

    現在、勢いを増しているのは2つ目の学派で、グーグルで検索エンジンや機械翻訳などに携わっている社員はほぼ、この統計・確率派に属する人達で占められていると見られます。ルール・ベースの古典的はAIは柔軟性に乏しく、実用化に向かないとする見解が主流となりつつあり、グーグルのエンジニアもほぼこのような見方をしている。

    大きな期待を浴びているのが第三のやり方、これは人間の大脳活動のメカニズムをコンピュータ上で再現する方法。言わば「AIの王道」とも呼ばれるやり方で、AI研究が始まった1950年代から「パーセプトロン」や「ニューラル・ネットワーク」などと呼称を変えながら研究されてきた長い歴史を持っています。しかし、王道であるだけに実用化は難しく、何度もその未来が絶望視されました。ところが、こちらも2006年に、「ディープ・ラーニング(Deep Learning)」と呼ばれる画期的な手法が考案されたことで息を吹き返したのです。


    グーグルは阿多rしい検索エンジンを「セマンティック検索(Semantic Search)と呼んでいる

    グーグルによれば、セマンティック検索とは「(検索に使われる)言葉の意意味を理解して、答えを返す検索エンジン」。

    グーグル会長のエリック・シュミット氏によれば「文明の始まりから21世紀初頭までに生産された情報量は約5エクサ・バイト(エクサは10の18乗)だが、これと同じ情報量が現代社会ではたった2日間で生産される」とのこと。

    よく知られているように、グーグル検索は同社創業者の一人であるラリー・ページ氏が考案した「ページ・ランク・アルゴリズム」と呼ばれる仕組みに基づいている。
    このアルゴリズムでは、あるホームページが他のホームページからリンク(参照)されればされるほど、そのホームページは検索結果の上位にランクされます。


    フェイスブックの弱みと強み


    アップルやグーグルとは違って、フェイスブックは自社製のスマートフォンやタブレット、あるいはその上で動くOS(基本ソフト)など、いわゆるモバイル・プラットフォームを持ちません。これを補うため、以前から台湾のモバイル端末メーカーHTCなどと協力して、フェイスブックが使いやすいように改造したアンドロイド端末を提供してきました。


    グラフ検索とは何か

    フェイスブックは2013年の年明け早々に「グラフ検索(Graph Search)」と呼ばれる新型検索エンジンの試験運用を開始。

    「グラフ検索」は、AIの代表である自然言語処理の技術を採用。これにより、フェイスブック・ユーザーの誰もが日常使っている普通の言葉で検索できる。

    言葉で自由自在に検索できることが重要なポイント。
    これを使って例えば企業の採用担当者、人材紹介会社、結婚斡旋業者、さらには興信所などが、ありとあらゆるクリエイティブな問い合わせの仕方で、知りたい人物の人となりや行状を洗い出すのではないでしょうか。

    実際、フェイスブック自身が記者会見の中で、「グラフ検索は、恋人探しやリクルート関係者にぜひ使ってほしい」と強調している。


    3社とも「モバイル・インターネットへのゲートウェイ(入口)を押さえたい」という点で一致している。

    これまでパソコンであれば、インターネット(つまり広大な情報空間)へのゲートウェイは言うまでもなくグーグル検索でした。しかし、スマートフォンを中心とするモバイル・インターネットでは、まだゲートウェイは固まっていません。従ってフェイスブックにも十分チャンスは残されているのです。


    ベイズ理論とベイジアン・ネットワークとは何か


    ベイズ理論はいわゆる「主観確率」を出発点とします。
    私たちが中学校や高校で学んだ確率は「客観確率」とよばれますが、主観確率(ベイズ確率)はこれとは対照的な考え方です。

    客観確率とは、たとえばサイコロを何万回、何十万回も振るように、無数の実験や測定を繰り返した末に計算される確率です。しかし、このように理想的な条件が最初から整うことは、私たちが生きている現実世界では、ほとんどありません。つまり客観確率は往々にして「絵に描いた餅」にすぎないのです。

    これに対して、主観確率の考え方では、私たちが過去の経験や勘などに基づいて、(言葉は悪いですが)適当に「確率」を決めても構いません。繰り返しますが、現実世界では、私たちが何かを判断するのに十分なデータが予め揃っていることは、ほぼないからです。
    従って、とりあえず自分の主観に従って、言わば「えいや!」で確立を決めてしまうのも、やむをないと考えるのです。


    セマンティック検索の仕組み


    機械翻訳以上にグーグルが力を入れているのが「セマンティック検索」です。セマンティック検索はまだ発展途上ですが、現時点ではパソコンから検索キーワードを入力すると、それに関する情報が画面右半分のボックス内に表示されます。またスマートフォンからは音声による自然言語(ユーザーが普通に話す言葉)で検索ができます。

    このベースとなっているものが、グーグルが構築中の「ナレッジ・グラフ(Knowledge Graph)」と呼ばれる巨大データベースです。そこには、この世界を構成する何億もの知識(つまり人物、場所、モノ、事件、・・・)と、それらの間に網の目のように張り巡らされた関係が蓄積されています。このような関係によってつながれた知識のリストは、AIの世界では「オントロジー(知識体系)」と呼ばれ、それらが無数に蓄積されたデータベースは「知識ベース」と呼ばれます。つまりグーグルのナレッジ・グラフは、AIにおける知識ベースの一種なのです。


    UI研究開発は、その初期に「夢見るAI」と「現実的なIA」の2派に分かれた


    UI研究 ①「コンピュータはある種の知的能力において人間と対等の存在になり得る

     →Artificial Intelligence(AI)

    ②「コンピュータはあくまで人間の知的活動を支援するツールに過ぎない

     →Intelligence Amplification (IA)


    現在、広く普及しているITシステムは概ねIA派の研究成果に基づいているといえる。


    セマンティック検索はまだ開発途中だが、ページ氏は
    その将来像を次のような事例で説明している

    「たとえば貴方が夏休みの旅行の計画を練っているとすると、(セマンティック検索では)旅行のプランを提示してくれる、それは貴方の好み、現地の天気、航空各社の料金表、ホテルの宿泊費などをすべて熟知し、それらの手配についても心得ている。これらすべてを検討したうえで、貴方に適した幾つかのプランを提示する。こういったものが我々の目指している検索エンジン。」


    自動運転車の基本原理を公開している。

    https://www.udacity.com/wiki/cs373


    代理ロボットの分野で先頭を走るのは、シリコン・バレーに本拠を構える「ウィロゥ・ガレージ(Willow Garage)」というベンチャー企業


    日本で65歳以上の高齢者人口は、2015年には約3,660万人に達する見通し。

    これは2011年に比べ20%以上の増加

    経済産業省の試算では、国内における介護ロボットの市場は2015年には167億円、2035年には4,043億円にまで成長すると見ている。


    今後AIの導入によって、”知性”を備えた機械やシステム(ソフトウエア)が私達の社会に浸透したとき、そこにはどんな問題が生じるか?それは次の2種類に大別される。

    (1) 人間が機械(システム)に依存し過ぎることで生じる危険性
    (2) 人間が機械(システム)に雇用や存在価値を奪われることへの不安


    コンピュータ(AI)が人間に追いつくまでに時間がかかる。

    たとえば、オセロで考えられる局面は総数は約10の60乗、チェスが10の123乗、将棋が10の226乗、囲碁が10の360乗くらいと見積もられている。

  • 攻殻機動隊のコンプリートから続く、未来のITを考える施策の続き。たまたま、ちきりんがソーシャル読書会(!?)で課題図書にあげていて本書を知ったのですが、自分の中の流行と合いすぎていてビックリでしたw 内容はAIの歴史と、その中身の分類、そして将来予測と社会的問題に関する考察でそれなりに専門的な内容ですが、とても読みやすくおすすめです。

    未来のAIが今のインターネットと根本的に違うのは「事前にプログラムされたアルゴリズム(論理)で動くコンピューター」ではなく、「(簡易版だけど)人間の脳みその再現し、それを学習させて動くコンピューター」になるということ。で、それは完全に攻殻機動隊のタチコマの世界観なんだけど、あれってSFじゃねと思っていたけど、ニコニコ超会議で話題の将棋ソフトとか、ルンバはそうやって動いているそう。

    加えて、福島原発の廃炉作業用のロボットとしてそういう自立的なコンピューターが必要とされている(電波が届かないので遠隔操作が出来ない)とか、軍事技術の進歩を考えると、10年、20年の時間軸の中ではかなり近い世界観が実現できなくない気もしてきました。

    とすると、AIが進んだ世界の中で、どういう仕事が人間に求められていて、価値があるのかを考えないといけないなとあらためて実感しましたし、まだまだスポーツには生かされてないからやれること一杯だなとか、いろんな気付きがありました。んで、これは本論とは関係ないけど、タチコマの凄さは(経験の)並列化ができるAIという部分だけど、その科学的発想の正しさは驚愕に値しますな(2014.05.25読了)

  • ○IT分野を得意とする評論家で作家の小林氏の著作。
    ○人工知能”AI"の研究開発の歴史をまとめながら、これから行われて行くであろうAI技術の発展や、Googleやappleが目指している新たな戦略の方向性など、最新のITを巡る動向を分析したもの。
    ○歴史もさることながら、現在のAIを巡る動向や商品化への動き(さらには軍事用途としての利用)については、とても整理されており、純粋に凄いなぁと思った。
    ○AI技術の発展で、私たちの生活は、さらに180°くらい変わっていくのだろう。その変化に取り残されないように、しっかりとフォローしていきたい。

  • ・ルールベースのAiから、ビッグデータと確率によるAiへ、さらにニューラルネットワークへとAiの歴史がよくわかった。昔、星新一の小説で、コンピュータにありとあらゆる知識をインプットしたらふっと消えてしまって神になったという物語を読んだことがあります。確かにあらゆる知識を溜め込めばあらゆる判断が可能になるというには、当時としては分かりやすいストーリーだったにかもしれません。
    この本を読むと、人間が機械より優っていることは何なんだろうと考えさせられます。産業革命のときも当時のイギリス人は同様に考えたのでしょう。
    ・確率ベースのAiを使えば、人間よりベターな判断ができるようになる気がする。会社の昔の実績が認められて偉くなった人の一言に振り回されることもなくなるのかもしれない。

  • 図書館
    クラウドからビックデータ更にAIへ

  • クラウドからAIへ。AIは冬の時代もあったが、ビッグデータと表裏一体でもありクラウドの発展により改めて脚光を浴びてきている。AIが生み出すチャンス、開発のアプローチ、AIにより発生する諸問題など、これからのAIを語る上えの論点が紹介されている。

  • 人工知能の歴史と現在、未来
    分かりやすい

  • 第4章 “知性"の陥穽 ── AIにまつわる諸問題 から読み始めました。
    今後の問題がざっと解ったところで、最初から読み進めます。

    まだまだ未来のことだと思っていた自動運転車、もう実現しそうですね。
    AIで活動するマシンは、うっかりミスはしないし
     これまで大量に蓄積された人間の知恵をあまさず活かしてくれるでしょう。
     そして、体験し学習し進化するロボットは、人間以上の能力を発揮していく。
    だが、おろかで間違いを犯す人間に対して ロボットはどう行動するのだろうか?
    これまでSFに描かれたロボットの反乱、ん〜 現実になりそう。

    タイミングのいい放送番組からも、今 AIが最も注目されていることがわかります。

    2013年10月23日(水)放送 クローズアップ現代 No.3420「ここまできた自動運転」 

    2013年10月28日(月)放送 TED スーパープレゼンテーション|Eテレ NHKオンライン
     Daniel Suarez (ダニエル・スアレース)
     The kill decision shouldn't belong to a robot 「殺しの判断をロボットにさせてはいけない」

    世界最強のスーパーコンピュータ IBMの「ワトソン」が、更に進化しているらしい。
    ⇒ IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる

    2013/8/15  予約 10/22 借りて読み始める。10/27 読み終わる。

    内容 :
    しゃべるスマホ、自動運転車、ビッグデータの解析…。
    共通するキーテクノロジーはAI=人工知能。
    なぜ今AIが産業の表舞台に再登場したのか、
    どのようなビジネス・チャンスをもたらしてくれるのか。
    AIの未来を読み解く。

    著者 : 小林雅一
    1963年群馬県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。KDDI総研リサーチフェロー。
    著書に「ウェブ進化最終形」など。

    目次 :
    第1章 なぜ今、AIなのか? ── 米IT列強の思惑
    第2章 “知性"の正体 ── AIの歴史から見る、進化の方向性と実力
    第3章 “知性"の正体 ── AIが生み出す巨大なビジネス・チャンス
    第4章 “知性"の陥穽 ── AIにまつわる諸問題

  • セマンティック検索。言葉の意味を理解して、答えを返す検索エンジン。
    今後我々は科学技術をどのように利用していくべきか。常に考えなければならないと感じた。

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著者プロフィール

1963年群馬県生まれ。KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授。専門はITやライフ・サイエンスなど先端技術の動向調査。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職。著書に『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』『ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃』『仕事の未来 「ジョブ・オートメーション」の罠と「ギグ・エコノミー」の現実』(以上、講談社現代新書)、『ブレインテックの衝撃 脳×テクノロジーの最前線』(祥伝社新書)、『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるか』(中公新書ラクレ)など多数。

「2022年 『ゼロからわかる量子コンピュータ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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