- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022735317
作品紹介・あらすじ
【社会科学/経営】あなたもブラック企業問題の加担者かもしれない。なぜ悪辣な企業がこの社会に根をはり、増殖しているのか。背後には、ブラック企業を生み出す"恐るべき存在"があった。ベストセラー『ブラック企業』の著者が真の「黒幕」を暴く!
感想・レビュー・書評
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今野晴貴氏、ここへきて新書の量産体制か。今回はブラック企業ビジネスとのことだが、ブラック企業を食い物にする弁護士、社労士、コンサルタントの話が中心。労組対策として、ブラック企業の経営者達に群がるらしい。経営者が被害者になってしまう。日本の労働問題、簡単には解決しないらしい。
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ブラック企業の後押しをする弁護士、社労士
自らブラック企業の道を歩む大型法律事務所
ブラック企業に学生を送り込む大学 -
「ブラック企業は単なる違法企業の問題ではなく、国家全体を揺るがす社会問題」とする前書(http://mediamarker.net/u/wishmountain/?asin=4166608878)から更にその背景に迫った本。
ブラック企業の背後には「ブラック士業」の存在がある。社労士、弁護士である「ブラック士業」は"内容証明、訴訟をちらつかせた脅し"や"法制度の攪乱"を用いて、ブラック企業社会に暗躍し、報酬をせしめる。
違法行為が明白であっても、辞めれば訴えるなど脅し、時には裁判を長引かせ、被告である労働者が疲弊し根負けするのを狙っている。いわばブラック企業の用心棒である。ブラック士業の目的は脅すこと自体にあり、費用を費やした人海戦術などで会社に火を認めさせることを諦めさせ、そもそも裁判までもちこませない。
残業代の未払いは刑事罰の違法行為。事項で民事的な支払い義務が消滅することと、この行為の違法性は全く別の事柄。会社側には労務時間を管理する義務があり、「承認」していないは(労裁的には)通じない。
ブラック士業は思想で動いているのではない。あくまでも企業からの報酬を目当てにしている。だから、労働者側にもつくことがあるし、動きすぎて法規制が強まっても(ブラック士業にとって)都合が悪いので、世の潮流を見て動く。
ブラック企業が社会問題となった背景には、人材の「使い潰し」があり、これを支える行政がある。この周辺お社会システム問題との関係を明確にする必要がある。
ブラック企業は大きく分けると以下のふたつがあげられるだろう。
1)法制度の形骸化 ― 社労士の技術的限界
2)生産性の低下 ― 法制度の運用予測可能性の低下し、労働者の意欲も低下する。経営者の低外信をいたずらに煽る結果にもつながる。
ブラック企業問題に真摯に取り組み、実際のエピソードも交えながら(ワタミとファーストリディングに訴訟を起こされ、圧力をかけられているほど)実践的に話を展開している点は大いに評価されるべきだろう。しかし、ロジックの展開が少し乱暴であったり、根拠の羅列の整合性が取れていなかったりと、少々読みにくい文章ではある。
しかしながら、標題で掲げている問題に意識がある人は一読に値するだろう。 -
タイトルからすると「ブラック企業のビジネス」について学べるように思えるが(もちろんその記述もあるものの)、私としてはブラック企業と一部の弁護士の関わり方をして、「ブラック企業向けビジネス」として紹介しているのかなと思う。 ブラック企業側に立つ弁護士が、非効率な戦い方をクライアントに提案し、クライアントからより多くのお金を巻き上げる手口。そういった手口で仕事を増やさざるを得ない司法制度改革後の弁護士業界の窮状は、業界外の人間からすると非常に興味深く見ることができた。
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ブラック企業をブラックたらしめる、そして被害者、企業のどちらも食い物にするブラック弁護士、ブラック社労士の存在を生々しく告発する。そしてブラック弁護士を生み出す構造的な問題としての弁護士過剰供給問題、就職率の高さを宣伝に利用したい学校などに言及。単なる高負荷労働ではなく若者を食い潰すという観点から社会悪と断じている点など腹落ち。
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■ブラック企業問題は単なる違法企業の問題ではなく国家全体を揺るがす「社会問題」。
■ブラック企業が社会に蔓延る理由の一つにブラック企業を支え,儲けのタネにするような「ブラック企業ビジネス」が社会に広がっていることにある。
・ブラック弁護士やブラック社会保険労務士(社労士)(「ブラック士業」)
・ブラック企業の違法行為を専門家として手助けする
■自己都合退職の場合,雇用保険の手続で「自分から勝手にやめた人」の扱いを受け3か月間の給付制限を受けてしまうため,通常1か月の手続き期間があるため計4か月間無収入状態に置かれてしまう。
■ブラック企業側に立つ社労士としては違法な手続きを行う「メリット」を経営者に売り込むことで報酬を得る。トラブルになればその場に介入して相談料や対応料などの報酬を得るため,労働者側が諦めようと争ってこようと結局は自分に利益が入る仕組みになっている。
■「ブラック企業大賞」
■「恫喝的訴訟」(又は「口封じ訴訟」)は世界的に問題になっている。
・海外ではスラップ(SLAPP〔平手打ち:SLAPとかける〕)訴訟とも呼ばれる
・国や地方公共団体,資金力のある大企業などが,自らに批判的な意見を公的に表明した個人や団体を民事提訴し,彼らに精神的・身体的疲労,訴訟費用や時間の浪費による収入の減少などの負担をさせることで社会的意義のある意見の表明を妨害,抑止する目的の訴訟
■「ブラック弁護士」の典型的な手口
・「水際作戦」:交渉を拒否
・「交渉の引き伸ばし」:無意味な交渉を続けて諦めることを狙う
■司法制度改革と「ビジネス化」
・司法制度改革の第一の柱は「事前規制から事後規制へ」
・経済を活性化させるために規制緩和が訴えられ,その影響で問題が起きても,後から自己責任で対応できるよう,「事前規制型」から「事後救済型」への改革を行う
・規制緩和により司法救済の需要が増加するため司法機能を高める必要があるとして弁護士の大幅増加が必要とされた
・規制緩和により社会が不安定化し「紛争のビジネスチャンス」が増えると考えられた
■「2割司法」
・日弁連会長として司法改革を推進した中坊公平氏が提唱
・社会にある紛争は2割しか司法で解決されておらず紛争の多くは泣き寝入りや暴力団・事件屋などにより解決されている
・弁護士の増加によりこうしたニーズのビジネスチャンスが増えると考えられた
■本当の問題は司法裁判所の予算が少なく,裁判官や検事の人員も不足しているため裁判に時間や費用が掛かり過ぎることにある。
・裁判所の予算は対GNP比で0.4%を切っており,2011年は0.35%
・1965年から2005年の40年間に弁護士が7082人から2万1185人(2.99倍)の増加に対し,裁判官は1760人から2460人(1.4倍),検察官は1077人から1627人(1.51倍)の増加
・裁判官1人に対し弁護士が約11人と諸外国では見られない不均衡さ
■「ブラック士業」の工夫
①裁判規模の拡大
・大企業など経済力で優位に立つ者が「高額請求」で「費用の政治」を展開した場合,弁護士報酬のそれにつれて大きくなる
②裁判件数の増大
・違法な労務管理を指南することで達成される
・どんな中身でもよく労働者側からの残業代請求でもよい
・とにかく件数を伸ばすことで利益増大のチャンスが増える
③事件の引き伸ばし
・書面の回数,枚数で儲けられる
・参加する弁護士の人数で稼ぐ
・紛争がもつれて偽装倒産や不当な刑事告訴を誘い込めばますます弁護士費用は増大
④成功報酬の割合増大
・1件当たりの事件の成功報酬の割合を高めることで報酬総額を増やすことができる
■「ブラック企業ビジネス」の弊害
①法制度の形骸化
②技術の問題
③生産性の低下
④富者の力の貫徹
■司法制度改革
①法科大学院(ロースクール)の設置
②司法試験制度改革
③裁判員制度の施行(2009年5月から)
■司法制度改革により弁護士の貧困化が進んでいる。
・最も大きな要因は弁護士になるまでに多額の費用を必要とする
・東京を拠点とする弁護士1万5894人のうち3割に当たる4610人が年収70万円以下
・全国の年収100万円以下の弁護士は2008年に2879人(約12%)で2011年には6009人(約22%)
■新人弁護士
・「イソ弁」:先輩の弁護士事務所に居候し給与をもらって実務を担いながら技術を磨くこれまでの弁護士
・「ノキ弁」:他人の事務所に「軒先」を借りて籍を置く弁護士で机といすはあるが給与は出ず仕事は自分で取って来なければならず,結局,技術を磨くことも顧客開拓もできない数年前からの形態
・「ソク独」:弁護士登録をして即独立する新たに生まれてきている形態で,携帯電話一つで仕事を受ける者もいて業界では「ケータイ弁護士」とも呼ばれる
■司法制度改革により法曹人口は拡大し「法務ビジネス」も広がったが,その結果によってもたらされたのは若手弁護士の貧困化とそれを使い捨てるようにして荒稼ぎする「ビジネス」。
■ブラック企業問題とはただの違法企業の問題ではなく「若者を使い潰す」という新しい問題。
■ブラック企業の語源はIT企業で働く若者たちがインターネット上に「悪口」を書き始めたところにある。IT業界は「35歳定年」などと呼ばれ過酷な労働で働き続けられなくなることで有名だが,そうした従来の日本型雇用(終身雇用)ではない正社員労働のことを批判する言葉として登場した。
・IT企業は労使関係不在の新興産業
・新興産業で生まれた新しい労務管理は,外食,小売り,介護,保育などに広がっている
・ブラック企業とは「新興産業において,若者を大量採用し,過重労働・違法労働によって使い潰し,次々と離職に追い込む成長大企業」と定義できる
■ブラック企業問題の本質を理解し解決していくための「射程」とは,「若者の使い潰しを可能にする労務管理の仕組みや社会システム・制度の問題」
①労務管理の問題
過労死を引き起こした企業や非正規雇用の中でも紹介予定派遣やトライアル雇用(非正規雇用で一定期間雇用し採用するかどうかを決める制度)を用いる企業はブラック企業との関連が強い
②社会制度の問題
・ブラック士業の問題
・ブラック企業に生徒を送り込む学校の問題
・ブラック企業に勤める子供を鼓舞してしまう親の認識の問題
・医療・福祉制度の問題
■「ブラック企業ビジネス」という現象は,これまでの日本の社会システムを支えた様々なアクターがビジネスに飲み込まれていくということ。
・「ビジネス化」することで社会は不安定化
・「ビジネス志向」により「ブラック企業ビジネス」の担い手となることでブラック企業の存在に加担し拡大させている
■日本の学卒と同時の就職は「間断なき移動」と呼ばれ世界的にみても特殊な非常に効率の良いシステムで,学生は卒業と同時に就職するのでキャリアに無駄がない。
■日本では普通教育が一般的でとくに仕事を教わる訳ではなく学校は基礎学力の教育に力を入れ,何ができるというわけではないままに企業に一括で入社させる。その際問われるのは成績評価であり,直接の仕事の能力ではない。
・「赤ちゃん受け渡しモデル」(本田由紀氏)
・学校と企業に対する社会の絶大な信頼がなければ成り立たない
・学校と企業の間の緊密な連携と信頼関係の不可欠
・学校は優秀な生徒から順に提携企業に紹介し,企業はその人材を長期雇用して育成することで学校の信頼に応え,学校は企業の求める人材の育成に尽力する
・日本の学校は学生に労働法や職場のトラブルへの対処法を教えない
■学校から学生へ「3年以内離職率100%」の企業への就職を紹介。
・異様に高い就職率を売り物にする学校
・学校と企業の「ビジネスの共犯関係」が成立
■「ブラック企業ビジネス」に対抗するには「ビジネス」の論理ではない専門家や業界の組織づくりが最も重要になる。
・弁護士であれば日本弁護士連合会
・社労士であれば全国社会保険労務士連合会
・日本労働弁護団や過労死弁護団など
■弁護士も学校もよく見定めること
・「正社員なら大丈夫」「有名な弁護士事務所や学校だから大丈夫」などと思わない
・家族の役割も見直す(学校や正社員雇用をただ信用し教育投資すればよいのではない)
■ブラック企業から身を守る3つのこと
①自分を責めない
・ブラック企業は若者を追い込む技術に長けている
・違法な行為も若者の側が悪いと思い込ませる
②勤務記録をつける
・出勤と退勤の時刻
・勤務時間中にどのような業務命令を受け従事したか
③専門家に相談する -
前著「ブラック企業」(読んでない)がブラック企業そのものに注目したらしいのに対し、これはビジネスとしてブラック企業に寄り添う面々に注目したもの。
例えば、ブラック企業の被害者(従業員、元従業員、ルポライターなど)に対して圧力的な要求や裁判をふっかけるのは、そういうのを生業としている弁護士(ブラック弁護士)がいるから。この場合、企業側が負けてもブラック弁護士側は商売として成り立っている。万が一、企業側が敗訴・廃業となったとしても、ブラック弁護士は痛くも痒くもない。
またブラック弁護士活躍の背景の一つが司法制度改革。弁護士が増えても裁判官が増えないので弁護士が余る。そうすると若い経験のない弁護士は経験を積むことができず食えなくなってしまう。そうすると名義貸しというようなことまでやってしまう。
さらに学校もブラック企業を支えるビジネスの一つ。学校のうりの一つが就職率。ブラック企業に卒業生をどんどん送り込むを就職率がアップ。で、卒業生がどんどん辞めていくと、さらに次の卒業生を送り込むことができる。まさに持続可能な世界。
あと家庭(親)もブラック企業を支えている。せっかく入社したんだから諦めずに頑張れよ、とか。
ブラック企業の被害者は若者だけかというと、決してそんなことはなく巡り巡って社会全体のコストを上げている。
なので、社会全体で考えていくべき問題。
とはいっても、アンケートを取ってみるとブラック企業と呼んで企業をいじめている、というような意見も少なくないとか。
難しいね~
とちょうど昨日のニュースだと、ハローワークがブラック企業の求人拒否を検討しているそうで。
いいことだと思う。
とそんなこんなでいろいろおもしろかった。★4つ。 -
弁護士の実在像がショックだった。
社会がブラック企業化していることや思わぬ提携など、働くことを、考える一冊 -
人間は儲けるためなら何でもする。人も裏切るし、違法行為も平気でやる。だから人間を信用するな。って事につきるのだろうが、会社とか学校とか弁護士事務所とか病院とか福祉施設とか警察とか役所とか組織名が付くと、「悪い事はしないだろう」となんとなく根拠もなく信用してしまう所はある。各々の組織の中に居るのは儲けるためならなんでもする信用できない人間の集まりであるという事を忘れないようにしないといけない。
もちろん中には正直に誠実に働いている人もいるだろう。が、組織の論理にはどうしても負けてしまい、結果違法行為に加担してしまうのだろう。被害に合わないためには自分で勉強して物事を見極める力を養うしかない。
※(社労士は裁判になるとクビなので訴訟にならないように交渉を延々を引き伸ばすというのは気が付かなかったなあ。相手はどうすれば儲かるのか?そのために何をするのか?というのを考えないといけないな。)