歴史の読み解き方 江戸期日本の危機管理に学ぶ (朝日新書 434)
- 朝日新聞出版 (2013年11月13日発売)
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感想 : 35件
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784022735348
みんなの感想まとめ
多様な視点から江戸時代の日本を探求するこの作品は、忍者や武士の生活、治安文化、さらには幕末の教育制度に至るまで、歴史の教訓を現代に生かす方法を示しています。甲賀と伊賀の忍者の違いや、長州藩の政治的な仕...
感想・レビュー・書評
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一先ず読んだ。
甲賀と伊賀の忍者の違いの点は良く書けて有る。 -
超面白い。特に、薩摩藩の郷中教育と、司馬遼太郎の作品を分析する項。
前者では教育ってもっと地域ごとに個性があってよいと思った。
後者は日ごろ歴史文学を読む中でうすうす感じていたことを的確に表現してくれていて、にやにやしながら読んだ。
「いわゆる歴史文学には時代小説、歴史小説、史伝文学の3つがある。史伝文学は歴史小説よりもさらに歴史に史実に即した歴史文学で、時代小説のような荒唐無稽な創作を排し、古文書などの史料にもとづいて、実在の人物を登場させ、歴史小説より精密に実際の歴史場面を復元してみせる。まさに「事実は小説より奇なり」の文学であり、創作による架空を楽しむというよりも、歴史の中の事実発見や分析の妙を味わうことに、その主眼をおいています」
そう!そんな史伝文学が読みたいんです。楽しみにしています。
しかしそんな磯田氏をしてもって、「例外」と言わしめる吉村昭氏の圧倒的な筆力。でも確かに大衆的じゃないんだよな。
ちなみに甲賀忍術書の情報を取るコツは、そのまま記者が情報をとるコツと同じでした。
メモも大量になってしまった。
【江戸の武士の生活から考える】
・濃尾平野では兵農分離が自然的・経済的条件からすすみやすかった
・京都周辺ですが、延暦寺や東大寺だの中世の権化のような勢力が残っています。…武士たちは主君にタテ型の忠誠を尽くすというより、ヨコ型に地元で地域連合・宗教連合をつくっていました。
・結局中世的な武士の集団は寄せ集めでした。少数精鋭で、石のように固まって密集している江戸時代的な武士の集団にはかないません。
・徳川家康の時代には、日本最強の要素であった世襲武士の密集隊形が、時代が進み武器がかわると、最大の弱点になった。
・日露戦争の将軍はほとんどが禄高50石くらいの徒士出身です
【甲賀忍者の真実】
・明治前期までの日本では、識字率は京都周辺と、東海・瀬戸内が非常に高く、東日本や東北、南九州は低かった
・平常から、諸国に手づるをこしらえておいて、通達・交渉を自由にしておくことが肝要なり…なんでも芸を身につけなさいというのです。
・人を知るための「四知の伝」:「望・聞・問・切」
【江戸の治安文化】
・殺人や盗みをすれば、かならずお上のお仕置きをうけるという観念が民衆の通念となるのは、思いの外最近のことで、江戸時代になってからのこと
・銃の徹底管理 占領軍が日本の家庭から「刀狩り」を行った成果
・1700前後に、犯人の処刑は、公の裁判、つまり「公裁」にゆだねる治安文化ができあがってきた
・江戸時代の奉行所・代官所が、税務署と代用監獄ほどの役割しか担っていなかった
・この上意下達の構造がしっかりしていて、それがヨーロッパ人には驚きでした。
・中世以前の日本人はけっしてこのようにおとなしいものではありませんでした。この国には江戸時代になって、人を殺さない文化が根付きました。
【長州という熱源】
・こんな「不公平税制」を数百年やっていれば、商業が発達します。
・いまのところ、私は、幕末の日本の識字率は全国平均で男6割、女3割程度ではなかったかと考えています。
・(借金だらけで)つまり、江戸時代のおわりには、武士の経済の決定的崩壊が起きていたのです。
・ここに至って武士ははたと気付きました。もうだめだ、別の軍事体制にしないといけない。武士が個々別々に自弁で兵士や武器を調達して、下から集まって軍団を編成して出陣していく戦国型の軍団ではもうだめだという新しい意識が芽生えてきます。
・長州藩の御前会議:みなで数時間議論→家老が意見集約して決定→藩主「そうせい!」藩主の権威付けのもと、断固たる決定ができた。決定から実行までのスピードが早い。
【幕末薩摩の「郷中教育」に学ぶ】
・「正確な歴史は、未来に対する予見となる」という言葉は、私自身が、いちばん忌み嫌っているもので、そんなことを言うつもりはありません。
・柳田国男が求めた判断力の教育。
・歴史・政治倫理の知識や人事・教育能力が徳目の上位とされ、法律知識などの実務能力は下位におかれています。
・会津藩は身分格式がきっちりしており、日常生活が碁盤の目のように定められ、外見で身分をあからさまに示す藩風のなかで、徹底した秀才教育を行った……理由を主体的に考える文化が育ちにくくなる。一言でいえば、人間の思考を形式化してしまいます。
・学校でもって人材を国家が吸い取り、官僚に養成して、富国強兵をなしとげるも捏は、まず熊本藩がつくり、佐賀藩や会津藩がそれをまねしました。…「学校官僚制国家」の萌芽といってよいものが日本でも1750年くらいから発達…決まったモデルがあって国家建設を推進する場合に、実務完了を育成するのには非常に都合がいい。(→大隈重信の怒り)
。とにかく主家だけが絶対で、ひたすらそれに忠を尽くすことを至上価値とする教育を徹底していました。
・薩摩藩では普通の藩と違って、「禄券売買」が認められていました。
・きわめて実践的だった……「忠孝の道に大形なし」…耳から入ってくる生活的な道徳教育でした。目から教科書で教え込まれる藩校の朱子学の道徳教育とは違っていました。…明治維新は薩摩の甲突川のかたわらに彼らのグループがなし遂げた
・西郷たちの郷中教育は、本を読む時間は短いのです。読んだ後で、考える、問答する、そのための時間が非常に長く取られている。
・薩摩人は「もしこうなったら」と考える反実仮想力が高く、あらかじめ手を打つから、想定外のことが起きて、あわてることが少なかったのです。事実、幕末の薩摩はずるいといわれるほど政局判断に誤りがありませんでした。うまく渡り合って、幕府にとどめを刺した。その間、長州藩は無謀な戦いを何度も仕掛けて敗れ、会津はひたすら大義名分を訴えて敗者となり、朝敵の汚名を着せられました。長州も会津もリアリストたる薩摩藩にやられました。この背景に、薩摩武士のリアリズムにあふれた育ちというものが、おそらく関係しているに違いありません。
【司馬文学を解剖する】
・徳富蘇峰「近世日本国民史」
・司馬さんの敷いた歴史知識の高速道路の上を国民が猛烈に走り、前の世代とは比べものにならないほど、歴史知識の大衆化が達成されました。その意味で司馬遼太郎さんはやはり偉大であったといえるでしょう。しかし、その偉業の幾分かは基礎工事をした徳富蘇峰(「近世日本国民史」著)の功績であったことを忘れてはならないのです。
・いまの国民一般の歴史に関する文学の消費のあり方はお世辞にも健全なものとは言えないと思います。情緒に基づいて、歴史の中に司馬さんの描くようなヒーローを求め、歴史文学への陶酔に甘んじているかもしれません。
・読む者の心のなかに、司馬さんの叙述を史実として信じてよいのか、信じられないのか、という疑問をつねに引き起こしています。「司馬の悲劇」がおきていることになります。
・なるべく創作部分は減らして、その場面を史料に基づいてきちんと描くような、歴史小説を超えた史伝文学ができないか、と私は考えています。
・これから日本史を書いていこうということになれば、東京大学史料編纂所や国会の県政資料室や防衛省に残っておりような筆書きの史料、あるいは万年筆で走り書きしたような故人のメモまで取り集めて、歴史像をつくっていかないといけない。
・ただ吉村昭さんだけは例外です。史料調査が緻密で事実を正しく記録する点では超絶しています。しかし、司馬作品ほどの読みやすさや大衆性をそなえてはいません。 -
うなった。なかなかするどい。
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【目次】(「BOOK」データベースより)
江戸の武士生活から考える/甲賀忍者の真実/江戸の治安文化/長州という熱源/幕末薩摩の「郷中教育」に学ぶ/歴史に学ぶ地震と津波/司馬文学を解剖する -
明治維新を立役者がどのような教育を受けてのかがわかる本。朱子学も学ぶが、読み書き中心ではなく、具体的実践的で先輩が後輩を指導する教育、すごい。。
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[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
江戸時代と幕末の日本を参考に現代の日本と日本人についてを分析している。
江戸時代の甲賀忍者、治安に加え、長州と薩摩の教育、地震と津波の歴史、最後に司馬文学を題材に日本と日本人を分析し、解説している。
特に印象に残っているのは明治維新の中心的立場にあった長州と薩摩の教育が正反対だったことで、長州が秀才を育てる教育であるという印象で薩摩は判断力というか、決断力といったものを重視した教育であるという印象だった。
また、司馬文学の解析はちょうど「関ヶ原」を読んでいるところだったので種本の存在や史実と創作を調べながら読み進める手法は参考になった。 -
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磯田氏はNHKの「英雄たちの選択」で知ったのだけど、あれよあれよというまに有名人になっちゃいましたね。
遅ればせながら図書館で彼の著作を借りようとしたら、殆ど借りられていました。(^^ゞ
残っていた数少ない一冊がこれ。
寄せ集めで、内容に統一性はない。
歴史のトリビアに近い。
現代の日本人の特質とされる性質は江戸時代に形成されたというのは何となく分かるので、もうちょっと関連本を読んでみたくなった。
戦国時代と江戸時代では主従関係が根本のところで違っていたのは常識だろうが、再認識させられた。
彼の書きかたは面白い。
学者でありながら好奇心丸出しにし続けているのが好感を持たれる所以だろう。
古書をスラスラ読める特技があって、誰にも負けないという自信を隠していない、
本来なら埋もれてしまう才能なのだろうが、こういう歴史ヲタクが若いときから注目されるようになることは、日本にとって喜ばしいことだと思う。
今後の活躍を期待したい。 -
忍者の話が面白い。給料少ないのに労働が過酷。
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この本も内容が濃い!
江戸の武士団と戦国の武士の考え方から江戸の武士団と奇兵隊の戦術の違いに始まり、忍者の定義や甲賀忍者と伊賀忍者の違い。
江戸の治安がどのようにして守られ、現代日本にどのように反映されているのか。
薩摩の郷中教育とはなにかを会津藩等との比較で明らかにし、歴史から震災を学び、さらには司馬遼太郎の文学と資料としたと思われる古文書から歴史文学に今何が必要かを語る等々。
これらの大半を古文書を一次資料とし面白くて判り易く解説してくれている。 ちょいちょい著者の他の本でも読んだ内容が含まれてはいるが、そこはその章の流れからして仕方ないので、あっ前にもこれ読んだな程度で流せばよし。
ますます著者の他の作品も読みたくなった。 -
「武士の家計簿」の著者による、いくつかの雑誌向けの短編をまとめたもの。
テーマは、以下のような感じでまとまりなく見えるが、副題は「江戸期日本の危機管理に学ぶ」となっている。そういうことだったのか。
①江戸の武士生活から考える
②甲賀忍者の真実
③江戸の治安文化
④長州という熱源
⑤幕末薩摩の「豪中教育」に学ぶ
⑥歴史に学ぶ地震と津波
⑦司馬文学を解剖する
著者の考察がどこまで深いものか自分では評価できず、一部「本当か?」という記載もあるものの、全体としては面白かった。
・明治維新は、地主(庄屋)たちの議会進出ともいえる
・兵農分離が進んでいないと遠征には限界がある(上杉・武田などが都に入れなかった背景の一つ)
・幕末のイギリス外交官「日本の藩の意思決定は誰がやっているのかわからない」。長州では、きちんと殿様が評議の場にも参加し、実務官僚が挙げてきた案について「そうせい」と一言発することで実効性を持たせた
・プロテスト=教会を通すことなく、自分で聖書を読んで神と自分との間に1対1の関係を作り出す ⇒ 識字率が高くなる
・徳川家康=しっかりと準備をする。いざ戦いが始まると、狂う。「準備は慎重に、実行は大胆に、これに尽きる」
・徳川家康「人間の本心を見たいなら、言葉よりも行動を見よ」
・年貢は近代的な意味での「税」とは違う。住民へのサービス提供が当然とは考えられていなかった ⇒ 公的部門の機能が小さい ⇒ 小さい争いは公に持ち込まず私的に解決
・年貢を取り続け、商工業への課税は限定的という「不公平税制」は、商工業の発展を促した。しかし、長州の経済官僚は非農業の経済規模を把握していた
・薩摩の教育「小さいことでもいい、とにかく考えさせる。事が起きる前に、事態を想定して考えておく」。会津は詰込み型 -
「長州という熱源」で出てくるコメ以外の生産活動の記録があることで、当時の経済状況がしっかり把握できるという話は非常に面白かった.各地で様々な商工業活動が江戸時代に税法上優遇されていたことが、明治以降の工業的な発展の基礎になったという視点は重要だと思う.「郷中教育」に代表されるように各藩ごとに独自の方針で教育を行ってきたことが、多様な地方文化の源だと感じており、文科省が一律的な教育を思考するのは間違えだと思っている.
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むぅ…おもしろい!
一番好きなのは会津などの学習方法と薩摩の学習方法の対比ですね。
どっちが良いとかではなく、江戸時代の学習方法が藩によって全然違うということ!
現代は情報社会で、それこそ自分に合った学習方法を選べる時代なんだから、恵まれてるよねぇ…
なんて思っちゃったよ。。。
…情報過多だけどね…。。。 -
各章のテーマが具体的で解りやすい。「歴史に学ぶ地震と津波」の章は考えさせられた。大阪人も津波に用心。地震予知はぜひ古文書から。
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江戸時代および幕末時代の政治や教育について紹介している。
人を殺さない日本人は、治安が確立された江戸時代以降のこと。その確立には、五人組の制度に表されるようないわゆる世間体が影響を与えてきたこと。この辺りの話は自分たちを理解する意味において興味深い。
また、実学の大切さ。今でいえば大学や社会で培う力を幼小から続けるなんて、効率のよいことこの上ない。今に通じる記憶学問に批判的だったのが、大隈さんということで、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 -
歴史物を読んで勉強したい反面、日本史をずらずら並べたものには抵抗があって…というときに読んだ。最近の震災につながる読み解きは面白かった。あとはEU諸国のGDPとからめたところとか。面白く読めました。
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著者プロフィール
磯田道史の作品
