日本人も悩む日本語 ことばの誤用はなぜ生まれるのか? (朝日新書)
- 朝日新聞出版 (2014年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022735836
作品紹介・あらすじ
【語学/日本語】言葉は進化する。十数年前まで眉をひそめられていた言葉は、あっという間に辞書に載り、人々の定番の使用例となっていく。本書では、なぜこうした誤用が生まれ定着していくのか等、日本語をめぐる壮大な歴史を解き明かす。
感想・レビュー・書評
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ら抜き言葉、“はつまご”それとも“ういまご”?、“憮然”の意味の変化など、歴史やことばの成立過程をもとに「誤用」に関する謎を解き明かしていく。
本文で筆者は『安易に言葉の「正しい」か「間違っている」かを判断することはできない」と説く。誤用だと思っていても、時代とともに使用する人が増えればそれが正となる。言葉は社会と生活のなかで形を変え、新しく生まれ変わることもあれば消え去ることもある。言葉は柔軟で日々変化に富む、まるで生き物のようだと思った。
あらゆる時代の本を読んでいると多種多様な言葉に出会う。読みやすさ・読みにくさは、時代による言葉の移り変わりが影響していることも多い。今私たちが当然のように使っている言葉も、50年後100年後には古語のような扱いを受けているかもしれない。
それでも今の時代にある言葉をなるべく多く吸収して、上手に扱える生き方をしたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ことば
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これはとても面白い本でした。お薦めです。
現代の日本語の誤用を、「正しい日本語」でダメ出しするのではなく、まず「正しい日本語」がどういう背景を持った言葉なのか、次に誤用はどうして発生したのかを、全ての言葉に対して述べられているので、とても興味深く読む事ができました。
これが正しい文学者の取るべきスタンスだと思うし、生半可に「正しい日本語」を知っていて誤用を指摘するのはやめようと思える一冊でした。 -
言語学者が「それって正しい言い方なの?」と聞かれると、歯切れ悪くなる理由が縷々語られた本(笑)
一言で言ってしまえば、言語学者は、「規範より記述」を学問的態度として叩き込まれるから。
言葉の変化には、過去の用法から見てどんなにおかしなものでも、そのように変化する何らかの理由がある。
言語学者は、決して若者に阿って、物わかりのいい人ぶって、変化を追認しているわけではない―、と言いたいのかな?
あとは、「文法上の正しさ」と「使用の適切さ」が混同されたり、その文法さえ、完全な体系でなかったりすることも、「この言い方は正しいの?」に歯切れのいい答えができない要因であるようだ。
「雰囲気」が「ふいんき」と発音されるのは、「ン」+母音の影響で、「ン」が鼻母音化し、要は発音が甘くなって「フーイキ」➡「フインキ」が出来上がるらしい。
本来「ロウセツ」と読むべき「漏洩」は、「曳」=エイという発音の過般化現象で、広まってしまった以上、もう取り返せないらしい。
こんな風に、どうして「誤った」形が生まれたのかが説明されていく。
面白かったのは、ネットで誤りが拡散されていくという指摘だった。
もうちょっと時系列的に追跡してもらえるといいのに。 -
「いただいてください」は「召し上がってください」と改めるのが正しいとされる。但し、本書は単なる○×では留まらない。さらなる掘り下げがある。たとえば「いただく」と言っても自分でお茶を買い自分で飲む場合はへりくだる相手がおらず、場合によっては厳密な謙譲語から逸脱する用法となっている。いただく=謙譲語と断定してしまうのは、過剰な一般化であり単純化。一般化は度が過ぎれば寧ろ雑、雑駁になりうる。目上に「ご苦労様」が失礼な理由。「生きざま」が不適切なワケ。敬語のサイレントキラー。ら抜き発祥の経緯・・・・・・・すべてが明解に示されている。誤用の先にあるものを見据えながら、これからの日本語の行方を示唆している。
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「日本人が間違える日本語」を集めた本はこれまでにも数多く出されているが、この本の良い点は、単なる「語録集」ではなく「どうして誤用がうまれるのか」について言及している点だ。正誤は簡単に判断することができないという視点にたち、読み手側にも考えるよう示唆している点がすばらしい。
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日本語は難しい。
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すぐに食いつく。こういう内容の本は好き。