日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735850

作品紹介・あらすじ

【社会科学/社会】今秋から年明けに向けて国民的議論が沸騰すること必至の「集団的自衛権」問題。国連PKO上級幹部としてアフガニスタンなど紛争地の武装解除を指揮した著者による、フラットに考える「1冊でまるわかりの集団的自衛権入門」の本。

感想・レビュー・書評

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  • 最も安上がりで効果的な国防方法は敵を作らないための素質を高め、他国の敵愾心を煽る全ての行動を慎むこと。世界の国際問題を解決するためのスタンスである人道主義を味方につけること。領土問題は、中国にも韓国にもロシアにも共通にソフトボーダー化対応が可能なこと。
    国際紛争を武力で解決しないと憲法で高らかに宣言している日本にそれができなかったら、もう平和構築という意味で、この世界に希望はない。今集団的自衛権を議論している場合ではない。
    自称紛争屋の九条を盾に活動してきた経験からの言葉。

  •  政治が分からない…とよく思う。それは政治の本質「決めにくいことを決める」ことに由来するのかもしれない。誰が言っていることも、もっともに聞こえる。真実は1つでも、立ち位置が変われば見えるものも変わる。
     安保法案もそう。著者の指摘するとおり、集団的自衛権を認めなくても非常事態への対応はできるのかもしれない。その一方で、安保法案が通ったことで韓国や中国に対して外交的な交渉力が上がったようにも見える(認識が間違っているのかもしれないが)。
     判断が難しい問題の中で、著者の指摘がもっともだなと感じた点が2つある。
     1つはテロ対策。国家対国家の紛争は個別的自衛権、集団的自衛権、国連的措置という「力」での解決が有効かもしれないが、現代の紛争の相手はテロリストである。彼らに対しては力が通用しない。著者の提案する「ジャパンCOIN」はこれまでの実績に裏付けられた説得力があり、武力派遣以上に積極的に検討する価値があると思う。
     2つ目は領土問題。日本の将来を考えたときに、ロシア、中国、韓国との領土問題を未解決のまま残すことは、懸案領土を全てとられる時よりもマイナスが大きいと思う。ソフトボーダーの考え方は現実解としてありだと思う。安倍政権のうちにまず北方領土問題をソフトボーダーで解決して欲しい。これができれば東アジアでの外交力が格段に高まると思う。
     3つ目は軍法問題。この本を読むまで全く認識としてなかったが、既に紛争地域で自衛隊が活動している状況が存在する以上、自衛隊員に殉職者が出る前に、この問題は解決しておく必要があると思う。軍法として議論するとまた拳法9条の問題が出てくるが、個別的自衛権をもつことで合意ができるのであれば、個別的自衛権を行使する部隊の行動を規定する法についても議論ができるのではないだろうか。
     自らを「紛争屋」と呼び、現場経験の豊富な著者の見解は、どのような政治的信条をもつ人に対しても何らかの示唆を与えるのではないかと思う。

  • 非常に勉強になりました。政府が出している想定ケース一つ一つに対して反証があるので、集団的自衛権まで必要ない事はよく分かった。しかし、そもそも自衛隊や国防という事に向きあってない議論ばかりしても時間の無駄だったね。

    イラクでわざと目立つ迷彩服着ていった話とか悲しすぎる…

    日本にしかできない、世界平和への貢献の道を探るといえども、彼の国が邪魔するんだろうなー。

    平和を願うあまり、自衛を渇望するかぁ、たしかに。

  • 集団的自衛権の行使が意味することについて、勉強になりました。

    湾岸戦争や、記憶に新しいイラク戦争、アフガン戦争、今日のイスラム国に渡って集団的自衛権が行使された例と共にその顛末を、馴染みのない読者にもわかりやすく書かれています。

    また昨今の世界情勢に対して、本当に世界は日本が血を流す事を望んでいるのか、また法治国家としてのあるべき姿は何か、日本はどのように主体性を発揮していくべきなのか、今後のあるべき姿を、読者と共に描いていく、そんな構成になっています。

    少なくとも、根拠があやふやな安倍政権より遥かに頷ける点が多い。

    やっぱりねー、考えなしに選挙言っちゃ、マスコミと政治家の思う壺ですわね。

  • 集団的自衛権の本質が理解できた

  • 集団的自衛権と集団的安全保障というものがごちゃ混ぜに使われているのではないか。
    アメリカとよい関係を保つために必要なのは武力ではなく様々な国とうまくやっていく調整力。

    「血」をもって云々という情に流されてはいけない。
    今きちんと知っておかなければいけないことが書かれている。

  • 戦争
    政治

  • 実際に世界各地で紛争地帯へ行き、武力解除などに貢献した著者が、日本の集団的自衛権に関して物申す一冊。

    実体験があるので、集団的自衛権や国境紛争について卓越した意見を持っており、非常に勉強になった。

  • アフガニスタン等で武装解除の仕事をしてきた伊勢崎賢治が、昨今の集団的自衛権を巡る議論を解説している本。経験が経験なので、屁でもない自民党の「チキンホーク」(実際の戦闘経験もないのに態度だけは勇ましいやつを罵る言葉)政治家の言葉を制するような説得力がある。

    この本における説明では、国連加盟国において認められている軍事行動の三類型をベースにしているのだが、そこを押さえていると、昨今の議論のちぐはぐさがよくわかる。

    国連加盟国に認められている軍事行動
    ①個別的自衛権
    ②集団的自衛権
    ③国連的措置(集団的安全保障)

    上2つは緊急のもので、NATOによる軍事行動など国連決議とは関係ない。3つめは国連決議を踏まえて行われるもので、PKOなどがその代表。

  • 勉強になりました。

  • 著者の主張は、対米追随しか戦略のない本邦が集団的自衛権により軍事力の適用範囲を広げると、本邦の安全保障に直接関係のない戦闘に巻き込まれむしろ有害だ、といういわゆる護憲派からも良く出る議論だが、主体性のない戦略が安全保障に有害であるのは、本書での著者の議論でも明らかなように個別的自衛権に限定したところで同じだろう。

    そもそも日米安保自体が集団的自衛権を前提としていると思うが、著者の主張のように解釈次第で個別的自衛権でカバーされているのだとしても、事案ごとに解釈しつつ対応するのは胡乱であり、集団的自衛権を容認することにより即応性を高めておきたい、というのが国防を預かる側の立場なのだと思う。

    問題は個別的自衛権か集団的自衛権かではなく、国の独立を保つだけの胆力を国として持っているか、ということだろう。

  • 中国・北朝鮮・韓国が戰爭を仕掛けてくる=仮想敵国
    イラク戦争で自衛隊に死者は出ていない
    自衛隊を出さないとアメリカは助けてくれない
    などの情報は全部嘘
    だまされるなと伊勢崎さんは言う
    あなたの払った税金で自衛隊が人を殺すことを許容できますか
    と伊勢崎さんは問う
    憲法9条も日米同盟も絶対ではない
    この本で国際紛争地に身を起き続ける紛争処理のプロ=紛争屋による
    集団的自衛権の本質を見る

    伊勢崎さんは東京外語大大学院教授
    NGOでスラムの住民運動を組織した後
    アフリカで開発援助に携わる
    国連PKO幹部として東ティモール・シエラレオネ・
    日本政府代表としてアフガニスタンの武装解除を指揮
    著書多数

    あり得ない北朝鮮の脅威と引き換えという理由で日本は
    アメリカ軍の意向を汲みイラクの人の血と引き換えにしてきた
    これは非道な行為
    イラク開戦時日本政府は公式に支持し片棒をかつぎました
    そのくせイラク復興支援特措法に基づいたイラク派遣の名目は
    人道支援のためとされました
    どこが美しい日本なのか
    姑息で非道で恥ずかしい行為でしかない
    この身勝手な過干渉が集団的自衛権の正体だ

  •  『集団的自衛権』をわかりやすく解説してくれる本。
     こっちの方面はモノシラズな自分でも、つっかえずに読むことができました。

     内容は、多分、初歩の初歩。
     集団的自衛権と、個別的自衛権の違いとか。国連の集団的自衛権と、安倍政権の打ち出す集団的自衛権の違いとか。
     とはいえ、序章でさえわかんないところがあったので、国連についてwikiを開かなければなりませんでした。一般常識の欠如がこういうところで露呈する。

     現政権の方針に対して、著者の反対ポイントは実に明確。でも、それを読者に押しつけてこないスタイルがありがたかった。
     モノを知らない人間でも知らないなりに、著者の意見に対して「そこは納得できる」「そこは賛成しにくいなー」っていう考えをまとめやすかった。

     あと、戦争を、ずっと身近に感じました。
     世界のあちこちで紛争は起きていて、日本にとっても他人事ではないと、最近はよく言われますが。
     それが、すごく納得がいきました。 

  • 憲法解釈、集団的自衛権の問題について話題となっているが、ニュースなどでは「断片的な憲法解釈の解釈」について説明されるだけで、全体像がよく分からなかったので、それらの背景について学ぶよい手がかりとなった。著者の伊勢崎賢治氏は、開発援助業界では有名な人物である。明快な論理と、数々の実務から裏打ちされた説明で腑に落ちた。
    国際政治史を振り返りながら、中東情勢・南スーダンPKO・北朝鮮・北方領土問題のような日本を取り巻く状況と法治国家として日本が振る舞うべき姿、そして最後に少しだけ触れられている著者が考える日本の外交の未来について、思考を整理して考えることができて収穫である。
    湾岸戦争が国際社会にとって大きな転換になったというのは、自分自身もなんとなく感じていたことだったが、著者の明快な説明により、国際政治的背景を理解することが出来た。しかし「日本政治の湾岸戦争トラウマ」を理解するには、自分自身が日本の政治史に明るくないため、もう少し背景を学びたいと思うところである。

  •  2015年9月17日。本日まさに安保法案が採決されようとしている。国会議事堂の前では4万5千人もの人がプラカードやペンライトを手に強行採決反対のデモを行なっている。こんなにも国民の理解が得られていないのに、この集団的自衛権行使を含む戦争参加の法案が通ってしまうのだろうか。
     著者の伊勢崎氏は国連職員として世界各地の紛争地で、武装解除や紛争処理の任務にあたってきた実務者なので、その主張には説得力がある。
     もともと日本は個別的自衛権と国連決議を伴う国連平和維持軍(PKO)参加の権利は持っていて、自国を守るにはそれで充分なのだ。憲法9条に縛られている日本。しかしその9条が日本の盾となり槍にもなっている。戦えない国だからこそできることがある。それがジャパンCOIN,日本式の対テロ対策、すなわち武力ではなく現地部族の信頼を得て武装解除させていくことだ。日本はイスラム圏においては良いイメージを持たれている。(そのルーツは日露戦争にあるらしいが。)その財産ともいえるイメージを決して壊してはならない。
     自衛隊は現在でもPKOに大きく貢献しているし、巨額の資金を支援金に充てている。そのことにもっと誇りを持っていいし、これ以上アメリカのいいなりになる必要はまったくない。
     
     先ほど参議院本会議が始まった。自民公明など安保法案賛成派が多数を占める会議では採決もやむないのか…
    どうなるの?これからの日本。
    原発問題、沖縄基地移設問題、解決しなければならないことが山積みで不安だらけです。

  • 247頁:協力な武器
    248頁:戦争の大儀
    250頁:集団低自衛権

  • 粛々と忍び寄る相手に、
    どう向き合えばいいのか。
    みんな、戦いたい?と、聞きたい。
    防衛費が嵩めば、
    どこかを削らないといけないよ。
    武器を作って、
    世界中に売って儲けますか。
    対テロって名目で。
    持てば、使いたくなるよ。
    アメリカが原子爆弾を使ったように。
    戦争を終わらせるためには
    仕方がなかった、という名目で。

    武装しないと生きていけないと
    思い込み、辛かった。
    人間って、そんな愚かな生き物なのかと。

    だから、このひとの本を読んで、
    少し安心したんだ。
    このひとは、傷みを知ってる。
    そして、いちばん難しく、いちばん尊い
    働きをしようと言ってる。
    簡単でないことくらいわかる。
    裏切りや憎しみで、多大な困難が
    待ち構えているであろうことも。

    でも、世界にひとつくらい、
    そんな国があってもいい。
    日本くらい、精神性が進化した国が
    あってもいい。

    戦争は簡単。
    戦争にならないように、
    頭を捻るのが政治家だ。
    政治家にはただただもう良心さえ、
    求められなくなったのかな‥‥。


    後戻りせず進もう。勇気を持って。
    少しずつでも歩もうよ。共に。
    美しい未来のために。
    みんなの笑顔のために。

  • 集団的自衛権は、必要ない。そう確信できました。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2015年度第1回図書館企画展示
    「大学生に読んでほしい本」 第1弾!

    本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。

    木下ひさし教授(教育学科)からのおすすめ図書を展示しました。
        
    開催期間:2015年4月8日(水) ~ 2015年6月13日(土)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

    ◎手軽に新書を読んでみよう
    1938年に岩波新書が創刊されたのが新書の始まりです。
    値段も分量も手ごろな新書は「軽く」見られがちなところもありますが、内容的に読み応えのあるものも多くあります。気に入った著者やテーマで探してみるとけっこう面白い本が見つかるものです。広い視野を持つために、興味や関心を広げるために新書の棚を眺めてみましょう。刊行中の新書を多様な角度から検索できるサイトもあります。(「新書マップ」)

    ◇新書で社会を読んでみる
    本に書かれていること(情報)すべてを鵜呑みにすることはできません。しかし、情報を判断するための情報もまた必要です。多様なニュースソースから情報を得て、物の見方や考え方を養いマスコミに騙されないような自分をつくりたいものです。

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著者プロフィール

1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。2000年3月より、国連東ティモール暫定行政機構上級民政官として、現地コバリマ県の知事を務める。2001年6月より、国連シエラレオネ派遺団の武装解除部長。2003年2月からは、日本政府特別顧問として、アフガニスタンでの武装解除を担当。東京外国語大学教授。プロのジャズトランペッターとしても活動中。著書に『武装解除 紛争屋が見た世界』、『本当の戦争の話をしよう』『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿』(共著)などがある。

「2019年 『リベラルと元レンジャーの真「護憲」論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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