うつの8割に薬は無意味 (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022736154

作品紹介・あらすじ

【自然科学/医学薬学】本当に抗うつ薬が有効なうつ病患者は全体の2割にすぎない。しかし現実に行われている治療のほとんどは、薬を処方するだけ。「うつは生活習慣病」が持論の獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授が、日本のうつ病治療のおかしさを徹底的に告発し、患者のための治療を教える。

感想・レビュー・書評

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  • 自分の人生の主役は自分自身。自分を治すのも自分自身。主治医は手助け。
    まずは睡眠量、睡眠相、断酒で生活を立て直す。
    睡眠は7〜8時間。過労者は睡眠不足改善、老人は不活化を防ぎ散歩30分、寝過ぎない。不登校児は朝日を浴び生活リズムの立て直し。
    家族や周囲の日薬と目薬。(時間が薬である〜時間が癒してくれる、あなたは一人では無いと伝え続ける)若者には夢を、年寄りには思い出を。自殺さえ食い止めれば鬱は治る、とにかく治ると希望を与え続けることが大切。どうしても自殺念慮がおこる時は、入院も一つの手段。

  • タイトルに書かれている通り、うつの8割に薬は無意味だなんてかなり言い切った文末表現だよね。
    薬が全てを解決する訳じゃないのも分かるけど、本来のうつ病患者さんと悩める健康人との境界線は難しいんだろーなって思った。

  • 素人なので、抗うつ薬は効果があるとかないとか、飲むべきだ飲まないべきだ、などと迂闊に言うのは憚りがある。ただ、抑うつ状態と診断されたら、または、精神科・心療内科に受診する前に、うつ病や抗うつ薬のマーケティングについての書籍を複数読んでおくのは意味があると思う。

  • 双極性障害について何冊かの本を読んできて、これはと思うものは少なかった。双極性障害のなんたるか(Ⅰ型とⅡ型があることなどなど…)、あらましを解説するものばかりで、さて本人としてはどう生活していくべきなのか、この大事な点まで踏み込んだものはそうなかったのだ。本書の著者は現医師であるにもかかわらず、治療に欠かせない薬物療法について過剰な期待をすべきでない、と始める。「患者を治せる精神科医はいない」とまで言う。本書では患者自身が病をどうとらえて生活し、身近な人々から社会まで、どう付き合っていくか、その見直しを説いている。

    双極性障害の患者本人が、以前のような生活を取り戻せるよう、必死に情報を収集しては挫折してきたのではないかと思う。本書は良薬や劇薬ではない。しかし双極性障害という病そのものをもう一度正しく見直し、ひいては自分自身についても見直す最良のきっかけになる本ではないかと思う。私は終章「メッセージ」まで読んで理不尽なこの病について、自身の不運や不幸に傾きがちだった精神状態がやや緩和されたような気がした。そして「やや緩和」それだけでも十分救われた気がしたのだ。

  • 現役の精神科医による、うつ病・双極性障害を主とした精神疾患を取り巻く種々の現象が批判的に分析された著書。
    近年うつ病患者が急増した背景や、現在治療の主な手段となっている薬物療法に対して、製薬会社と精神科医、そして患者の関係性を中心に私見を述べている。
    タイトルにある「うつの8割に薬は無意味」とは、プラセボ(偽薬)を用いた実験から、薬物療法に効果があるのは重症患者の2割のみであり、その他の「悩める健康人」に対しては、睡眠の質の改善、飲酒の制限等で十分治せるという意味で用いられている。

    本著では、現代のうつ病に対してやや刺激的、衝撃的な表現も交えながら論が展開されるため、薬の力を信じて投薬治療中のうつ病患者の方や、タイトルを見てショックを受けた方には読むことをあまりお勧めできない。「ひょっとして、私はうつ病ではなく『悩める健康人』なのでは?」という疑念が生じ、疑心暗鬼に陥ってしまう場合が十分にあり得ると感じられたためだ。
    投薬治療に疑問を感じ始めた患者の方やその家族の方等、これまでとは異なる側面からうつ病治療を捉えたい読者の方には、参考になる点はあると思われる。

  • 「脳の病気」の主張はほとんど宗教。というのには驚いた。今は仮説段階であり、これから実証実験がされていくのだろうけど。あとはだいたい想定していた内容。新型・軽症うつには薬は効かない。医者ではなく、弁護士が問題を解決する事も多いというのも尤もな話。

  • Disease Mongeringによるうつ病診断の過剰、抗うつ薬大量処方に対する批判の本。内容的には当事者向けで、「うつ」で病院にかかろうと思っている人、もしくは服薬していてあまり効果を感じてない人向けで、軽めの内容。

    ・MDPについて、双極II型という概念を後から付け加えておいて、治療の話になるとI型のことばかり論じるのはおかしいという。しょせんは「躁うつ病もどき」だから、I型のような薬物療法をする必要はない。

    ・飲酒者には原則投薬しない。断酒してもうつ・不安であれば薬物療法を考える。

  • 薬は2割の人にしか効かず、その2割の人のために全員に薬を処方している。うすうすそうではないかと思っていた。そして、薬以外の対処法を身につ行けていないというのもそう思った。カウンセリングでは傾聴が重要視されるが、「どうでしたか」とひたすら聴くだけで、アドバイスもなく、指針もなく、というカウンセラーが多いのかもしれないと思った。

  • 抗うつ薬のNNTは5、つまり薬を投与して意味があるのは5人に1人。薬物治療とはそういうことかと、まさに目から鱗。いつか自分や家族が病を得たときに、それを受け止めるための新しい心構えをもらった気がした。今のうつや双極性障害の"患者"が時代の要請で作り出されたものだということもよくわかった。もちらん、彼らを非難する気持ちにはなれないが。規則正しい7時間睡眠の確保、適度な運動、アルコールの節制で、精神の調子が大きく上向くという、言われてみれば当たり前のことが、薬物治療という魔法に頼ることで霞んでしまっているのは、患者さん達にとってとても不幸なことだと思う。とはいえ、当たり前のことをやすやすとはできないのが人間。「人生の主役はあなた自身です。あなた以外の誰一人として、あなた自身の問題を解決してくれる人はいません。」本の最後に書かれたこの言葉を大きな励ましととらえられる私の精神は、今とても健康なのだろう。そのことに感謝しつつ、明日もまた規則正しい生活をしようと思った。

  • 従来 うつ病 遺伝や体質が原因とされる内因性のうつ病と、心理的なストレスや精神的な葛藤が原因とされる心因性の抑うつ状態にわけて論じられていた
    80年代 DMS-III 操作主義診断の導入 内因性と心因性の区別をなくした ノイローゼの概念そのものが消えてしまった

    英語圏の精神医学では、ノイローゼのことをマイナーデプレッションと呼ぶこともある。うつ病とみなされなかったノイローゼがマイナーデプレッションと名前を変えて、うつ病圏のグレーゾーンに取り込まれた

    サミュエル・ジョンソン 地獄への道は善意で敷き詰められている

    休業の診断書 第一弾
     適応障害(抑うつ状態) 上記にて一ないし4週に一回の通院加療を要する。就業継続は不可能ではないが、耳介がん勤務を控える等の配慮が与えられることが望ましい

    第二弾 適応障害(抑うつ状態) ◯月◯日に「時間外勤務を控える等の配慮が与えられることが望ましい」と記したが、何ら改善されず、患者の状態は悪化している。事業者に労働者の健康の保持を考慮して適切な処置を講ずる義務があることは、労働安全衛生法に規定されている。健康上の理由から、時間外勤務を控える等の措置を直ちに講じなければなならい

    第三弾 ◯月◯日までに時間外勤務を控える等の措置が講じられない場合には、精神医学的資料、診療録複写等を一式揃え、労働基準監督署に送付して、事態の収拾を同署の判断に委ねることとする

    MR かつてpropagandist

    自助努力
     1日7時間超の睡眠、睡眠相の安定、そして断酒

    クルマのるなら酒のむな、薬飲むなら酒のむな

    ガイドライン 薬のカタログとしては優秀であるが、それを超えたものではない

    エビデンスに基づくことが求められ言い換えられれば、エビデンスに縛られている evidence-bound

    この患者に今必要なことはなにかを考えることこそ精神療法的に思考するということ

    精神療法とは、個々の患者に応じて、優先順位を考えていくこと

    いまの精神医療の現場では、薬こそ出すけれども、生活習慣を見ようとはしない精神科医が多いのが実情です

    社会的問題の解消
     労働問題(超過勤務、パワハラ、派遣切り)
     貧困問題(失業、多重債務など)
     対人問題(恋愛、嫁姑、家族関係など)

    青年期のうつに必要なことは、「自分探しより職探し」であり、仕事をすることで経験を積み、新しい出会いがあり、新しい可能性をみつけることができるのです。

    家族や周囲の人は、日薬、目薬で接する
     帚木蓬生 逃亡
     日薬 なにごとも日時が経てば、状況が変わる。何事も、なんとかもちこたえていれば、好転する時が来る。どんな難題も時が解決してくれる
     目薬 誰かが見守ってくるる人がひるという実感です。そう思うと、かなりの苦しみにも耐えられます。逆にだれもみてくれるひとがいないと思うと、人間というものはもろいものです。

    こころのケア 若者には夢を、高齢者には思い出を

    悲しいことに誰も年を重ねるごとに、夢の数は減り、思い出が増えていきます。そして、いよいよ未来が過去より小さくなった時、人は老境を迎えます

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著者プロフィール

1962年神奈川県鎌倉生まれ。獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授。精神科医。東北大学医学部卒。自治医科大学大学院にて医学博士を、ケンブリッジ大学大学院にてPhDを修得。順天堂大学准教授を経て、2008年から現職。日本の大学病院で唯一の「薬に頼らない精神科」を主宰。専門は、うつ病、発達障害、プラダー・ウィリー症候群等。精神科臨床一般のみならず、産業医としてストレスチェックに対応し、精神保健判定医として医療観察法審判等の業務も行っている。
〈主な著書〉『精神科医島崎俊樹 ―人間の学の誕生―』(東信堂) 、『激励禁忌神話の終焉』(日本評論社) 、『精神鑑定の乱用』(金剛出版)、『思春期の精神科面接ライブ ―こころの診察室から―』(星和書店) 、『プライマリケアの精神医学 ―15症例、その判断と対応―』(中外医学社) 、『生活習慣病としてのうつ病』(弘文堂)、『うつの8割に薬は無意味』(朝日新聞出版) 、『うつの常識、じつは非常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) 、『うつ病から相模原事件まで ―精神医学ダイアローグ―』(批評社) 、共編著として『精神科臨床はどこへいく』(日本評論社)、『子供のこころ医療ネットワーク ―小児科&精神科 in 埼玉―』(批評社)。

「2017年 『精神科医と考える 薬に頼らないこころの健康法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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